魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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投稿遅れて済みません!内容を考えているとこんなに時間が経っていました。


12章 レプグナンティア編
第六十七話 微妙


今日は三月十日、将輝が金沢に帰る日がやってきた。一高への臨時転校は昨日で終了しておりあとはキャビネットに乗るだけで帰宅できる状態になっている。克也は一人で将輝の家からほど近いキャビネットの駅に見送りに来ていた。

 

「いろいろすまなかったな将輝。」

「迷惑なんてかかってないぞ克也。有意義な時間だったからむしろ感謝しているさ。」

「そう言ってもらえると助かる。向こうでも変わらずやるんだろ?」

「ああ、克也に勝てないことはこの二ヶ月で思い知らされたからな。お前以外の魔法師には負けないようにもっと実践での作戦を考えられるように一から勉強するつもりだ。」

「ジョージにでも頼むのか?」

「もちろんだあいつは俺の参謀だからな。結果を期待できる作戦を考えてくれるさ。」  

 

そうこう話している間に帰る時間が来てしまったため送り出すことにした。

 

「何かあったら連絡してくれ可能な限り便宜は図らせてもらう。」

「その時は頼みにしてるぜ友人。」

 

お互いの拳と拳を軽くぶつけ別れの挨拶をした。将輝の乗ったキャビネットが見えなくなるまで見送りそのまま学校に向かった。

 

 

 

今日は日曜なのだが入学式に向けての準備があるため学校に行かなければならず面倒だとはいえ疎かにすることは出来ない。

 

達也と深雪は真夜に呼び出されているため今日は学校に来ないので克也が中心となって準備を進めることになる。別に入学式が嫌いというわけではなく準備をするのが面倒くさいので嫌なだけである。

 

学校に到着すると部活動をする同級生や下級生のかけ声や応援が聞こえてきた。卒業式はもう少し先だが三年生が登校しないため生徒達は先輩気分で練習に励んでいた。

 

克也も山岳部とバレー部に入部しているが最近は忙しくここ二ヶ月ほど参加できていない。各部長に小言を言われるが所属部員のCADを調整することで許しを得ている。最近では部員から『名誉部員』と呼ばれているらしく不本意だが受け入れるしかなかった。

 

生徒会室に到着し部屋に入ると達也と深雪以外の役員がそろっており着々と準備が進んでいた。ほのかは『会計』として入学式にかかる費用を計算しているらしく難しい顔をしながら何度も何度も電卓をたたいている。

 

泉美はプログラムの見直しを職員とするために足早に生徒会室を出て行った。

 

「水波、総代の答辞はできた?」

「すみません克也兄様、どう言葉を紡げば良いのか分からなくて。」

「貸して。」

 

水波にキーボードで打ち込んでいた答辞の原稿を見せてもらうと全体を変えようとしていたらしく余計に時間がかかっていたようだ。

 

「ここ十年以上答辞の原稿は変わっていないらしいから全体を変える必要はないよ水波。所々を前年度と被らないようにすればそれでいい。どうせ総代が自分なりにアレンジしてくるだろうからね。」

「ということは七宝君の時も変わっていたんですね?」

「深雪も変えてたらしいから多少の変化は誰も気にしないそうだ。」

 

水波の質問に少し論点をずらして答えた。その後も準備を進めある程度の目処が立ったところで早めに帰宅することになった。

 

 

 

三月十五日、今日は魔法科高校の卒業式であり先程まで卒業生送別パーティーが開かれていた。終了すると寂しげな空気が校内に漂っていたが今年も俺はその空気に乗れずにいた。

 

まだ卒業ではないのもあるが何より花音に連行されているのが主な理由だった。花音に連行された場所はかつて彼女が委員長として使っていた風紀委員会本部だった。

 

何故ここに呼ばれたのか分からなかったが俺は文句を言わずついて行っていた。部屋は幹比古が委員長に就任してからさらに整理整頓され生徒会室にも劣らない綺麗さだった。

 

摩莉や花音が使うと散らかっていたせいなのか幹比古の整理整頓能力には驚かされる。性格もあるだろうし古式魔法師としての理由もあるのだろう。

 

「司波君、言いたいことがあるんだけどいいかな?」

「構いませんが何故ここに連れて来たかを先に教えて下さい。」

 

委員長席に座りながら聞いてくる花音に俺はこの部屋に連れて来た理由を聞きたかった。

 

「ここに来たのは誰にも邪魔されないと思ったからよ。私が高校最後の日にここを訪れても文句を言う人はいないから。」

「ここに来た理由は分かりました。では本題に入りましょうご用件は何ですか?」

「たいしたことじゃ無いけど会うことはそうそうないだろうからここで言っておくね。私はあんたのことが好きだったのよ。」

 

花音の告白に俺は少々驚いていた。少しで済んだのは俺に水波がいたことが大きかった。

 

「初耳です。自分は千代田先輩が五十里先輩のことを好きだと思っていましたから。」

「啓は幼馴染って感じだからそんな感情はなかったの。私の気持ちを知っていて欲しかっただけだから何も答えなくてもいいよ。今年も一高をよろしくね。」

 

俺が答えるよりも早く花音は風紀委員会本部から出て行った。たとえ花音に告白されていたとしても俺は受け入れなかっただろう。

 

嫌いではなくむしろ人間性は好きなのだが女性として見ることはなく仲の良い友人という存在に近い気がした。俺は風紀委員会本部にしばらく立ち尽くしていた。

 

 

 

元生徒会の卒業生やそれなりに関わりのあった沢木先輩、桐原先輩、壬生先輩には卒業のお祝いの言葉を何度も言っているためもう一度会いに行く必要は無かった。俺は正門前に咲く桜を見ながら高校に入学してから二年経ったことを実感していた。

 

{あと一年か。今年は何も起こらないことを祈っているが俺達が望んだところで敵がそれに合わせてくれる保障はない。『ノーブル』はほぼ壊滅状態に近いがそれでもまだ大きな権力をUSNAで振るっている。『ブランシュ』と合体しなければいいが。}

 

顧傑によって設立され彼によって崩壊しかけている『ノーブル』は有力幹部や大多数のメンバーを失ったがまだ勢いはとどまらず彼らの主張が徐々に浸透しているのは日本でも確認済みだ。

 

先月一高前で襲撃してきた『エガリテ』の残党のように手荒な活動はしていないがニュースで名前を取り上げられると良い気持ちはしない。

 

最近は『ブランシュ』も大人しくしているらしく顧傑の死亡が大きな要因であることは疑いようもないことだ。

 

 

 

今日は春休みだが克也達は学校に来ていた。三日前まで達也と深雪が沖縄に行っていたため入学式の準備が遅れているのだ。

 

克也が中心となって準備を進めていたが二人がいないとそれなりに不都合が生じる。入学式の準備を生徒会で経験しているのは克也とほのかだけなので二人では回せない仕事も含まれてくるためそれほど進まなかった。

 

そのせいか二人には疲労が蓄積しており克也は普段のように生活できず暇さえあれば眠っている有様だ。ほのかはいつも明るく振る舞っているのにここ一週間はからげんきだった。

 

「はじめまして三矢さん。第一高校 生徒会長司波深雪です。」

「はじめまして司波先輩。三矢詩奈(みつやしいな)ですよろしくお願いします。」

 

深雪の優しい挨拶に詩奈は緊張し強張っていた表情が年相応の柔らかい表情に変わった。

 

「四葉先輩はもう少し怖い方だと思っていました。」

「名前だけ聞けば怖がっても仕方ないよ正確に言えば今は司波だけど。」

 

詩奈の質問に俺は優しく答えてあげた。水波から少し睨まれてしまったが。

 

「答辞の長さはこれくらいで良いと思います。もし覚えられなければ原稿を持って呼んでもらっても構いませんよ?」

「大丈夫だと思います。」

 

詩奈との打ち合わせは昼前に終わり俺は山岳部に向かい久々に汗を流すことにした。

 

 

 

更衣室で運動着に着替え第三演習場に向かうと既に一年生がへたり込みレオがため息をついていた。

 

「レオどうした?浮かない顔して。」

「おお克也、メニューを考えてやらせたらこの有様でがっかりしてたんだ。」

「どんなメニューなんだ?」

「林間走十五km 魔法を使って端から端まで枝を使って飛び移るのを1往復だ。」

 

レオのメニューにため息を隠そうともせずつく。

 

「レオ、それはお前の考えだろ?後輩の気持ちを考えてやれよ。あいつらだって死にかけているぞ。」

 

克也の言葉通りレオの後ろには地面にあぐらをかいたり木の幹に背を預けて空をぼんやり眺めている者その他諸々、同級生が疲労で動けていなかった。上級生でこの有様なのだから下級生からすれば地獄だろう。

 

「県(あがた)前部長の推薦は間違ってると思うのは気のせいか?」

「俺はちゃんと断ったんだぜ?それでもやれって言われたんだから仕方ないだろ。」

「俺はこのくらい問題ないがもう少しだけ軽くしてやってよ。せめて走りは十kmにするとかね。俺も同じメニューしてくるからそれまでに全員起き上がっておくこといいね?」

 

部長のレオに軽く説教しながら他の部員達にも副部長として命じておく。十五kmなら魔法を使わなくてもすぐに終わる。俺は走り出しの森の中へと向かった。

 

 

 

二時間後メニューを終わらせ先程の所に戻ると今度は岩場を両手だけで登る練習と加重系魔法や硬化魔法で崖を歩くメニューだった。

 

崖の高さは二十五m幅は十mでごつごつした岩場と凹凸のない平らな場所に別れているため互いに五mずつに分けられている。

 

この崖は地面に収納可能な素材であるため怪我をする可能性は低い。落ちた場合にも下にクッションを敷いているため問題ない。

 

「レオ、今度は何をやらせてるんだ?」

「俺の気まぐれと偶然こんな物があったからやってみただけだ。案外みんな楽しそうにやってるからいいと思うんだが克也はどう思う?」

 

レオの言葉に応える前に壁を上っている下級生と同級生を見ると皆珍しそうにしながらも楽しそうに登っていた。俺もやってみたかったので否定的な意見は言わなかった。

 

「なかなか面白いと思う俺もやってみたいし。ただ…。」

「ダンケ克也、でどうした?」

「何故こんな物がここにあるのかが知りたい。」

「言われてみると確かに。」

 

そもそもここにある必要性を感じなくもなかったが経験したことのない鍛え方が出来るならやることにこしたことはないので俺とレオは部員達に混じって登ることにした。

 

ごつごつした岩場は片手でも簡単に上れたので後から上ったにも関わらず一番に登ると全員から睨まれた。凹凸のない壁は『ウォール・ラン』で楽々登りまたしても睨まれた。

 

「克也、普通その魔法誰も使わねえぜ?」

「そんなことを言われても俺からしたら当たり前に使える魔法だからどうしようもない。」

「この二年間ずっと見てきたけど今だに驚かされるぜ。克也と達也はほんとうにびっくり箱だ。」

「褒められたととっておくよレオ。」

「素直にありがとうって言えよ克也。」

 

レオに笑顔でバシバシと背中を叩かれ痛みを堪えながら笑みを浮かべた。どこかで聞いた言葉だったが思い出すこともなく部活は終了した。

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