魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第七十四話 謝罪

名誉挽回のための任務も失敗した俺は精神的に病んでしまい一時的に本家へ強制送還させられ四葉お抱えの医師に「過剰なストレスによる精神的な疾患」と診断された。

 

一週間ほどは安静にしていなさいと言われ仕方なく本家で大人しく休んでいた。

 

三日ほど経つとほぼ回復し暇だったので叔母の事務処理を手伝っていた。叔母は昔からこういう手作業の仕事が苦手らしく葉山や紅林さんに手伝って貰っていたらしい。

 

当主でもあろう人が事務処理が出来なくてどうするのだと思いながらも素早く事務処理を進める。

 

「やっぱり克也は事務処理のスピードが早いのね。『母親』として誇り高いわ。」

「叔母上、無駄口叩かずに手を動かして下さい口よりも手をお願いします。」

「…まさか『息子』に事務処理で怒られる日が来るとはね時が経つのは早いわ。」

「叔母上、二度も言わせないで下さい無駄口叩かずに手を動かして下さい。」

「…分かりました。」

 

克也の言葉に項垂れ何故か敬語を使いながら事務処理を再開する真夜の動きはノロい。同じ分量を与えられているにもかかわらず克也はこの三時間でほぼ終わらせていたが真夜は未だに半分も終わっていなかった。

 

そんな微笑ましい光景を葉山はニコニコしながら見ていた。克也に自分が事務処理をせずに済んだことを感謝しているのかはたまた二人のやりとりを見ていて楽しいのか分からないがなんとも温和な人物である。

 

「葉山さん、この支出は何ですか?他の物と比べるとやけに額が大きいのですが。」

「それは奥様の個人的な支出でございます。」

 

葉山がためらうことなく暴露すると真夜がジロリと睨んだが葉山はそれを無視し克也との会話を続けた。

 

「一ヶ月でこの出費は酷すぎませんか?」

「何に使ったかまではこの老いぼれには分かりかねます。」

「叔母上、一体何に使ったらこんな金額になるのですか?」

 

質問すると叔母は「記憶にこざいません」とでも言うように事務処理に没頭しているふりをし始めた。そんな叔母に俺はため息をつきながら{何故この人が当主なのか}と何度目かも知れないことを思っていると叔母が顔を上げて聞いてた。

 

「克也、今失礼なことを考えなかった?」

「お察しの通りです。」

 

俺が無表情に見返すとしばらく睨んできたが真夜は勝ち目がないことに気付き事務処理に戻った。

 

「それより叔母上、こんなものを自分に見せて良いのですか?」

「次期当主の補佐なのだから今から知っていても問題ないと思うのだけれど。」

「程度という物があります。何故『青波入道(せいはにゅうどう)』閣下、東道青波(とうどうあおば)の極秘用件まで見せられるのですか?まだ俺に早すぎると思いますが。」

「貴方が他言しなければ問題ないわ。」

 

「処置なし」と思ったのは葉山もだろう。いくら次期当主補佐とはいえ執事序列一位の葉山にしか知られていない四葉のスポンサーの要請資料を見せて良い物ではない。もちろん他言はする気は無いのだがタイミングを考えて欲しい。

 

「それと今回のこととは関係ないのですが添い寝はやめてもらえませんか?」

「嫌なの?」

「俺は高校三年ですよ?いくら叔母上に溺愛されているとはいえ知られたくありませんし恥ずかしいんです。水波や達也、深雪に知られれば非難の眼を向けられるのは容易に想像できます。」

「親離れしたいと?」

「叔母上もいい歳なのですからそろそろ子離れして下さい。」

 

これは俺の切実な願いだ。既に十八歳、成人ではないがほぼ大人の仲間入りする直前なのだ本当に辞めて欲しい。

 

「今日で最後にするわ。」

「…それ何回目ですか?それに今日もするつもりだったのですか…。」

「数えてないから覚えてないわ。」

「…。」

 

返答に頭を抱えたくなった。さすがの葉山も微妙な表情をしているのだから真夜の性格がどれほど捻れているかが分かるだろう。それからは真夜の事務処理が終わるまで付き合い自宅に帰宅する前日まで添い寝をした(させられた?)。

 

 

 

夏休み明けの一週目を休んでしまい二週目の久々の登校は何か新鮮に感じられ心なしか歩調が少し軽い気がした。教室に入るとほのかと雫に心配された。

 

「克也さん大丈夫ですか?」

「問題ないよこの一週間で完治したから。」

「確かに前より顔色は良い。」

 

元気なことをアピールすると安心してくれたようで二人は肩の荷が降りスッキリした顔をしていた。

 

「実習と座学は大丈夫ですか?」

「生徒会に行ってる間に可能な限り終わらせるよ。実習は補充授業してくれるらしいから週末に居残りかな。」

「今週の座学はかなり難しかったけど?」

「時間がかかろうが解いて提出すれば問題ないよ。」

 

俺からすれば高校の座学の内容など朝飯前であるためすんなり終わると思っていたが放課後生徒会室で課題をしていると雫の言う通りなかなか歯ごたえのある問題だった。猛スピードでキーボードを叩きこの一時間で一日のうちの半日分の座学を終わらせていた。

 

「相変わらずとてつもないスピードですね克也お兄様。」

「さっさと終わらせて部活に行きたいからね。」

 

といっても五分ほどでその問題をクリアし達也と深雪以外に引かれてしまったが。

 

内容的に高校生分野では手に負えない問題だったため担当教員に文句を言いたくなった。他の生徒もよく解けたなと思うほどの難易度でどうやって解いたのか聞きたくなった。

 

四日かけて一週間分の座学課題を終わらせ担当教員に提出すると「手伝って貰ったのでは?」と疑われたが俺のこれまでの行いを知っている他の教員がその疑った教員を力尽く(文字通り魔法力)で黙らせ受け取ってくれた。

 

実習も説明を一通り読んだだけでテストを行ったため日曜の一日で一週間分の実習を終わらせ監督教員に呆れられたのは言わなくても分かるだろう。ちなみに干渉強度以外の項目でトップの成績を叩き出し職員一同を悩ませてしまった。

 

 

 

九月も終盤、論文コンペの学内選考が終わり後は準備を終えるだけの状態でいた生徒会はある日の放課後、いつも通り業務を全うしていると予想外の報告を受けることとなった。

 

「克也お兄様大変です!」

「泉美どうした?」

 

職員室から呼び出され帰ってきた泉美の右手には紙が握られており驚きを隠せない様子で走ってきた。渡された紙を見ると泉美が驚いていた理由が分かった。

 

「今年の論文コンペは中止かまあ仕方ないね。」

「学内選考一位の幹比古には悪いな。」

「克也さん、達也さん何と書かれているんですか?」

 

ほのかが不思議そうに聞いてきたのでなるべく驚かさないように説明した。

 

「今回の論文コンペは中止らしい。理由は九校戦のような惨事を起こしてはならないという論文コンペ開催地の魔法協会関東支部の判断だよ。」

「残念です。」

「吉田君には申し訳ないですけど準備を中止させなければなりませんね。今すぐ報告しに行きますか?」

「いや、後でいいだろう。時間的にも余裕がないし幸い今日はみんなで帰る予定だから『アイネブリーゼ』に寄ってそこで話そう。」

 

達也の説明に深雪は納得し実務に戻り帰宅準備を始めた。

 

 

 

校門前でいつものメンバーと待ち合わせ最寄り駅への一本道を歩いてる途中克也からの申し出で『アイネブリーゼ』に寄り道しお茶をすることにした。ちなみに水波は克也の横に座りながら上級生の話を真剣に聞いていた。

 

「幹比古、いきなりだけど謝らせて欲しい本当にごめん。」

「いきなり何克也?」

「今回の論文コンペ中止になったんだ学内選考で幹比古が選ばれたことを喜んで応援するなんて言ったけど出来なくなってごめん変に期待させちゃって。」

 

俺の謝罪に幹比古は穏やかに微笑みながら優しくかぶりを振った。

 

「克也が謝ることなんてないよ確かに論文コンペが中止になっちゃったのは残念だけど克也が謝る必要は無いんじゃないかな。」

「違うよ、今回の論文コンペが中止になったのは俺のせいなんだ。」

「克也君、それはどういうこと?」

 

エリカが話しに割って入ってきたが機嫌を損ねることもなく質問に答えた。

 

「先の九校戦で天井が落下して多数の死傷者が出たのは知ってるだろ?」

「もちろん私達の近くで起こったことだから。」

「その時俺は会場の外で警戒していたんだ。だけど失敗して迷惑をかけその上被害を出してしまった。」

 

俺の報告に今まで楽しそうにおしゃべりしていたみんなが押し黙る。

 

「克也はまだそれを思い詰めているのか?」

「俺が死ぬまで背負うべき罪だよ。俺は『母上』から情報を貰いながらも未然に事故を防げなかった。」

「克也君があの時いなくなったのはそういうことだったんだね。」

「でも、それは克也が思い詰める理由にはなんねえだろ?」

「そうだね形はどうあれ守ろうと行動したんだから非難される理由が見つからない。」

 

レオや幹比古が慰めてくれるが失った命の数があまりに多すぎたため雀の涙ほどしか安らぎはなかった。

 

「情報を貰っていたにもかかわらず死傷者を出したんだ責められて当然だよ。」

「そんなの関係ないじゃないですか!克也さんが守らなかったらより多くの人が死んでいたんですよ!?その事を私達が知っているからそれでいいじゃないですか!」

「ほのか…。」

「私も同じ意見だよ克也さん。克也さんは自分のできる限りのことをしたんでしょ?いくら十師族の四葉家、ましてや『神速』の二つ名を持つ克也さんでも不可能なことはあるよ。化け物でも兵器なんかじゃないだって克也さんは一人の人間だもん。だから私達は克也さんを失敗したことを責めることなんてしないよ。誰よりも克也さんはみんなを大切に守ってくれる優しい人だって知ってるから。」

「雫も…。」

 

二人の熱弁に俺も涙が溢れてくるのを抑えきれなかった。年甲斐もなく涙を流しても誰も笑わず優しく見守ってくれていた。

 

「ありがとうすっきりしたよ。」

「克也が沈んでたらみんなが明るく振る舞おうが空気は悪いまんまだかんな。」

「克也が明るくてこそのこのメンバーなんだからね。」

「でも、克也君が泣いてる場面を目撃できて嬉しいな~これからこれで弄ろうっと。」

 

最後に変な言葉が約一名から聞こえたがそれをスルーするのも友人としての優しさだろう。明るい笑い声が『アイネブリーゼ』から少し寒くなり始めた初秋の夕暮れに響き渡った。

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