それからというもの論文コンペが中止になった後も変わらず一高はのどかな生活を送っていた。といっても大なり小なりの事件は起こったがそれなりに楽しく過ごし瞬く間に卒業の日を迎えた。
桜が舞い散る講堂の前で俺は一人澄んだ青空をぼーっと立ちながら見上げていた。式自体は既に終了し卒業生は各自友人や部活に最後の挨拶をしに向かっている。
深雪は生徒会長としての立場があり次の生徒会発足のための助言をしているためここにはおらず達也もその付き添いだ。婚約者兼ボディーガードなのだから離れるはずもないので別段おかしなことは何もない。
俺も山岳部とバレーボール部に顔を出さなければならないのだが面倒くさいのでさぼっている。人前で何かを話すなど俺の性分ではないので行く必要はないと思っていたのもある。
しばらくするといつものメンバーが出てきたので合流することにした。
「待たせてすまないな。」
「我慢強さには定評があるから十五分程度気にしたりはしないさ。」
達也の言葉に軽く答える。
「それはいいけどよ克也も山岳部に顔を出せよ今ならギリギリ間に合うぜ?」
「よしてよレオ、俺は人前に立つのは苦手なんだ。それより『アイネブリーゼ』行こうよ行きたくてうずうずしているんだ。」
俺が急に話題転換すると
「ごまかした。」
雫の容赦ないツッコみで笑いが起こったがこれも今日で最後だと思うと寂しくなるが一生離れ離れになるわけでもないのでこれはこれでよしとすることにした。
克也達は『アイネブリーゼ』を高校最後の日に貸し切りにして「卒業おめでとうパーティー」を開催することにした。もちろん話題は高校三年間の話で盛り上がっていた。
「まさか入学初日からいざこざが起こるなんて思ってもいなかったね。」
「あれは不可抗力だと言ってほしいよな深雪?」
「そうですねあれは不可抗力としか言えません。でもそのおかげでほのかや雫とも仲良くなることができましたから結果的に良かったと思います。」
深雪の言葉に全員が納得するかのように頷いた。
「その後は『エガリテ』だったよな?」
「ああ、壬生先輩や桐原先輩と関わることになったな。」
「僕は詳しく知らないから何とも言えないけど戦闘自体はそんなに苦戦しなかったよ。」
「あら、ミキも戦ってたんだね。」
「僕の名前は幹比古だ。あれだけ派手に動かれたら戦わざる負えないよ。」
「私は講堂で震えてましたけど。」
「柴田さんが落ち込む必要はありませんよ私と雫も震えてましたから。」
ほのかが美月をフォローするが自分を追い込むことになるとはほのかは思いもしなかっただろう。
「私はそんなに震えてないよ震えていたのは主にほのか。」
「それ言っちゃダメだって言ったのに!」
ほのかの抗議の声に笑い声が店内に響く。
「九校戦は克也さんと達也さんと深雪の独壇場でしたね。」
「そうだな克也と司波さんの魔法力は最初から知っていたけど改めて間近で見ると全然違ったな。達也のCAD調整能力にも驚かされたぜ。」
「俺達だけじゃなくてほのかや雫も褒めてあげてよレオも幹比古も頑張ったんだからさ。」
「もちろん四人とも頑張ってたよね。」
エリカが手放しで褒めるのでさすがの四人も照れた笑みを浮かべながらもまんざらでもなさそうだった。
「その後は横浜事変かな?よく考えたらあれが一番大きな出来事だった気がする。」
「それよりほのか及びピクシー事件じゃない?」
「雫!」
俺の意見に対抗するようにピクシーのことを聞いていた雫も出来事を暴露するとまたしてもほのかが真っ赤になりながら雫を追いかけ始めた。それを微笑ましそうに残りのメンバーは見ていた。
「ピクシーといえばリーナもなかなかでしたね。」
「確かにあのキャラは俺たちの中にはいないからな。」
「個人的には克也が吹っ飛んできたのが印象的だな。」
「レオやめてくれよ、俺だって飛んできたくて来たわけじゃないんだからさ。」
レオの言葉は第三演習場で俺が『パレード』で変装していたリーナに魔法で吹き飛ばされた時のことを言っているのだ。あれは全くの予想外で俺でも即座には対応できずレオに向かって吹き飛ばされていた。
「それ以降は概ね平和でしたね。」
「…そうだね。」
追いかけっこから復帰したほのかの言葉に克也と達也、深雪、エリカ、レオ、幹比古は微妙な表情をしたがそれは一瞬だったためほのかと雫、美月は気づかなかった。
「あるとすれば香澄と七宝の喧嘩ぐらいかなすぐに解決したけど。」
「でもそれって克也君が上手く丸め込んだからでしょ?」
「正確には俺が七宝を模擬戦で軽く捻っただけだよ。」
その試合を観戦していたほのかや幹比古は「あれが軽くなの(か)?」と思っていた。
午後三時頃からパーティーを開いていたにもかかわらずいつの間にか三時間近くが経過しており集中とは恐ろしいと思い始めていた。
「そういやレオは卒業後どうするんだ?」
「俺は爺さんの故郷を見に行こうと思ってるぜその後は機動隊に志望届を出して試験を受けるぐらいだな。」
「ドイツってそんな簡単に行けるのか?」
「ローゼンの日本支社長が便宜を図ってくれるらしい。」
「エリカは?」
「私は日本全国を回って道場破りしてやるんだ。」
「資金援助ならするぞ?」
「いいよ実家に出させるから。」
「幹比古は?」
「僕は実家を継ぐつもりだよ。」
三人は既に目標が決まっているらしくためらうことなく教えてくれた。
「それは美月を迎え入れてか?」
ニヤリとしながら聞くと二人が顔を真っ赤にさせ言い返してきた。
「気が早いよ克也!」
「そうですよまだそんなに進んでないんですから!」
「ほのかと雫は?」
熱々な二人の抗議を無視して二人に問いかけると後ろの方からギャーギャー聞こえたがそれも無視する。
「私達は魔法大学に進学しますまだやりたいことは決まってないですけど必ず四年間の間に見つけるつもりです。」
「二人なら素晴らしい発見できるよな、深雪?」
「はい、達也お兄様の言う通りです。」
「そういや二人はいつ式を挙げるの?」
「まだ決まっていないからなんとも言えないなたぶん挙式より当主の座の継承が先だと思う。」
「克也君は?」
「俺の場合は水波が卒業してからだからまだ先だよ。」
正直今すぐにでも挙げたいのだが水波の立場を考えるとそういうわけにもいかないので気長に待つことにすると決めた。水波の気持ちも考慮しなければならないが時期尚早なのでしばらくの我慢だ。
俺は今週末に大々的に発表されるてあろう情報を全員に伝えることにした。
「実はみんなに伝えることがあるんだ。」
「どうしたんだ克也大事なことなのか?」
「かなり、そのうちニュースで流れるだろうけどみんなには早めに伝えておくよ。自分司波克也は本日を以て四葉家次期当主補佐及び戦略魔法師であることを報告いたします。」
「「「「「「…は?」」」」」」
俺の爆弾に達也と深雪以外が眼を丸くさせ呆気に取られていた。そりゃ今まで友人であった人物が国家公認戦略級魔法師であると言われては信じるのは難しいだろう。
「…克也それって本当?」
「こんなことを冗談で言えると思うか?」
恐る恐る聞いてきた幹比古に少し強い口調で言うと押し黙ってしまった。
「…まさか高校最後の日になってまで驚かされるとは思わなかったぜ。」
「…同感ね。」
「それだけじゃないぞ達也も戦略級魔法師だ公式には発表されていないけど。」
「「「「「「はい?」」」」」」
さらなる爆弾で追い打ちをかける。
「…兄弟そろって戦略級魔法師だなんて世も末ですね。」
「…ほのかに一票。」
「俺も。」
「僕も。」
「私も。」
「あたしも。」
全員が驚くことにも疲れたらしく感情をあまり表さずに答えた。
「達也お兄様の場合は国家機密だから他言無用でお願いね?」
「なんで達也君は隠さないといけないの?」
「叔母様のご意向だから詳細はわからないわ。」
「達也のCAD調整能力がかなり注目されているのにさらに戦略級魔法師だと知られたら暗殺されるのが落ちだろ?だから内密で頼むよ。」
俺のお願いに全員が頷いたので安心して残り時間を過ごすことができた。
解散時刻前になり最後の高校生活の締めとして集合写真を撮ろうということになり最後までレオとエリカは喧嘩する態勢で達也の左に深雪が右にほのか克也の右に雫、そして幹比古と美月が隣同士という立ち位置で水波に集合写真を撮ってもらった。
達也の笑顔は入学した頃のぎこちない笑みとは違い優しく穏やかでとても嬉しそうな笑顔だった。
四か月分のネタが思いつかなかったのでかっ飛ばしたことを何卒お許しください。