魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第七十六話 継承

友人達との高校生活最後の団欒を終え帰宅し水波を含めて順番に入浴しリラックスしていると電話が鳴り出ると叔母からだった。

 

『こんばんわ四人とも。』

「「「「こんばんわ叔母上(様)(ご当主様)」」」」

『卒業おめでとう克也、達也さん、深雪さん。』

「ありがとうございます叔母上それでご用件は?」

『先ほど風間大佐から克也を司波克也としてではなく【神代要(かみしろかなめ)】を国家戦略級魔法師として明日発表すると連絡がありました。』

 

克也と達也は二つの意味で驚いていた。一つは風間の階級がまた一つ上がったことと明日という予想以上に早い段階で公表するとは思っていなかったのである。

 

「そうですか顔は公表されるのですか?」

『まだ未成年であるため顔は公表しないそうです。貴方が成人しても顔が漏れることはないでしょうから安心していいと思いますよ。それから深雪さんにお話があります。』

 

深雪を大画面の中央に立たせて左右から俺と達也が立つと真夜が話し始めた。

 

『三月三十一日に私の退冠式と深雪さんの当主継承式を同時に執り行います。そのため三日前には本家に来ていて欲しいのだけれど構わないかしら?』

「問題ありません叔母様。」

『よかったわ達也さんはもちろん克也も水波ちゃんもいらっしゃいな豪華に華やかに執り行いましょう。』

「「「かしこまりました叔母上(ご当主様)」」」

『それじゃあ会える日を楽しみにしているわお休みなさい。』

 

俺達四人のお辞儀を見てから真夜は電話を切った。

 

 

 

電話の後自室に引っ込もうとすると視線を感じたので振り返ると水波が立っていた。

 

「水波どうした?」

「卒業プレゼントをお渡ししたいのですが何にすればいいのか思いつきませんでしたので今この場で聞こうと思いまして。」

「別に無理して渡さなくてもいいんだよ?」

「そうはいきませんこれは婚約者としてのお願いです。」

「そう言われてもな~。」

 

正直今欲しいものは特には無いのだが少し水波をからかってやろうと思い意地悪をすることにした。

 

「そうだな~じゃあ水波で。」

「はい?」

「水波が欲しい。」

「わ、私ですか?…はっ!?」

 

何かしら答えに辿り着いたらしく顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。初心で純粋な水波には刺激が強すぎたらしいので落ち着かせることにした。

 

「冗談だ、今満足してるから特にはいらないよ水波がいてくれるだけでいいから。」

 

頭を優しくなでながら言うと笑顔を向けてきたのでなんとか元に戻せたようだ。

 

「じゃあ、また明日ねお休み。」

「お休みなさいませ。」

 

互いに別れて自室に引っ込んだ。

 

 

 

水波はベットに寝転がりながら顔を真っ赤にさせていた。

 

{わ、私が欲しいとはそ、そういうことですよね!?はわわわわわわわ。まだ、は、恥ずかしいというのに克也兄様はなんということを!}

 

水波もそれ相応のそっちの知識はあるが同年代からすれば知らないことの方が多いだろう。婚約者同士とはいえ互いに学生(克也は卒業したが)であることがそういう知識の吸収を阻害しているのかもしれない。

 

水波にだってそういうことを大好きな人としたいという感情がないわけではなくむしろしたいという気持ちが強いのだが羞恥心が好奇心を上回っているため行動に移そうにも途中で停止してしまう。

 

{でも、いつかは結ばれたいそれが五年後でも十年後でも。}

 

水波は幸せそうな顔で眠りについた。

 

 

 

翌日からは克也、達也は新作CAD発売のためFLTに出社したり八雲との体術の稽古で忙しく深雪は継承式の準備で忙しかったため一ヶ月などあっという間に過ぎ去ってしまった。

 

水波は一高生徒会副会長としての入学式などの仕事があり家を空けることが多かった。「克也不足病」とでも言うのか克也と過ごす時間が限りなく減ったためか一緒にいれる短時間でも克也に甘えるようになっていた。

 

それを見た深雪も達也にすり寄り達也は{仕方ないな}とでも言いたげな表情で受け入れていた。

 

双子で互いに視線を合わせて苦笑したり和やかな空気が司波宅のリビングにほぼ毎日流れていた。

 

 

 

三月二十八日になり深雪の継承式準備のために本家に赴く日がやってきた。今回も運転をしてくれるのは辰巳で会うのは慶春会以来なので一年振りぐらいだろうか。

 

今年の年末年始は真夜に「無理して帰省しなくて構わないから仲良く過ごしなさい」という意味深なお言葉を頂戴していたため本家には戻っていない。

 

「仲良くしなさい」という謎の命令を聞いた俺達は{五十路のお方が言うべきことだろうか}という共通の疑問を無意識の間に共有していた。

 

何故か帰省した直後に事務処理を手伝わされ理不尽な疲労を覚えさせられた。

 

継承式準備といっても式の流れを簡単に説明されどのように振る舞えば良いのかを教えて貰うだけの簡単なものだった。メインは深雪と達也なので俺と水波は雑用をしたり指示を飛ばしたりしていた。

 

 

 

そして三月三十一日、ついに深雪が当主の座を継ぐ日がやって来た。俺と水波は出席者の参列する最前列に座り深雪の登場を待っていた。真夜の退冠式が終了しそしてその時がやってきた。

 

「四葉家次期当主 司波深雪様のご登場です皆様拍手でお迎え下さい。」

 

アナウンスと共に達也に連れられて深雪が登場すると式場は感嘆に包まれる。薄い翡翠色のドレスを着た深雪は神々しくこれまで以上に美しく見えた。

 

「綺麗ですね。」

「ああ、普段も十分綺麗なのに今はさらにその上を行っている。」

「…そうですね。」

 

何故か水波が拗ね始めたので不思議に思い聞くことにした。

 

「水波、お前から聞いてきたのに何故お前が拗ねる?」

「別に拗ねてなんかいません。」

「明らかに拗ねてるだろそれ。深雪を俺が手放しで褒めるからさては嫉妬したな?安心しろ水波も十分美少女だよ。」

「っ!そんなことを言って欲しいんじゃありません!」

 

小声で怒りながらプイッと顔を背ける水波だが頬が緩むのを隠し切れておらず褒められて嬉しいのだと俺は思った。

 

「姉さん、克也兄さんが女性の扱いに慣れ始めちゃったよ。」

「困ったものね。」

「二人とも聞こえてるぞ。」

「聞こえるように仰いましたので聞こえていても驚きはしませんわ。」

 

後ろに座る二人に抗議するがまともに取り合ってくれない。なんとなく最近二人に弄ばれることが増えた気がするのだが気にしたら負けだろう。

 

 

 

「本日を以て司波深雪を四葉家当主に任ずる。」

「慎んでお受けいたします。」

 

今この瞬間深雪は司波深雪から四葉深雪に名称を変更し四葉家を率いていくことになった。これからのルール変更は深雪主導で行われ達也、克也が確認した後葉山によって発行される。

 

 

 

深雪が当主の座を継承を受け入れ継承式が終了すると深雪は楽な服装に着替え達也と二人きりの時間を部屋で過ごしていた。

 

「深雪お疲れ様疲れただろう?おいで。」

「はい!」

 

達也に呼ばれ深雪は達也の左隣に座りながら達也の左腕を抱きかかえた。そんな甘えてくる深雪に達也は苦笑しながらも優しく受け入れていた。

 

継承式は深雪にとって大切なものだったので神経を張り詰めながら参加していたため疲れ切っていた。克也や達也ならこんなことでは疲弊などしないだろうが深雪とってはかなりの重労働だった。

 

「深雪は最初に何をしたいんだ?」

「このような山奥にひっそりと暮らすのではなくもっとオープンに暮らしたいのです。『秘密主義の四葉』ではなく『頼れる四葉』に変えていきます。そうすればこの先生まれてくる次世代を担う四葉家の子供達が私達のように苦労せずに生きていけるそんな社会を作りたいと思っています。」

 

深雪の覚悟を達也は美しいと思った。これまでの四葉は『秘密主義』を貫く闇の存在として十師族の一角を担ってきた。だが深雪の考えは根本的に覆し魔法社会の発展を願うことを応援したいと達也は思い当主であり妹(従妹)でありそして婚約者である深雪を全力で支え続けると誓った。

 

「克也にはいつ伝える?」

「今日は遅いですからまた後日。」

「そうだなそろそろ入浴するかまた後で話そう。」

「分かりました。」

 

互いに着替えとタオルを持って脱衣所に向かった。

 

 

 

その頃克也は水波の機嫌を絶賛なだめ中だった。

 

「水波そろそろ機嫌を直してくれよ俺も仲良くしたいんだけど。」

 

ツーンと顔を背けいくら声をかけても無視されるのでどうすれば機嫌を直してくれるのか思い詰めていた。このままでは帰宅するまでに仲直りができず険悪なムードはいつまでたっても解決しないだろう。

 

切り札其の一「耳元で名前を呼び掛け機嫌を取ろう」を発動させることにした。方法は簡単だ今水波は俺に背を向けて部屋に向かう廊下を歩いているため背中から抱き締めることが可能だ。早速行動に移すことにした。

 

「水波。」

 

優しく背中側から抱き締め耳元で名前を呟く。

 

「っ!」

 

顔を真っ赤にさせて反応を見せたがまだこの程度では効果は発揮されないらしいので切り札其の二を発動させることにした。方法は「水波の好きなもので機嫌を取る」という単純なものだが単純が故に期待できるので試す価値がある。

 

「せっかく帰ったら新しくできたネコカフェに行こうと思ってたのにな~先着五組限定しかもその五組の中でも最初に入れるのに行けないのは困った困った。」

 

わざとらしく残念がり声と表情は会心の演技ですると水波の肩が震えていたためかなり我慢しているらしいのでとどめを刺すことにした。

 

「それと全世界一万冊限定かの有名なチャーリー・クリントン待望の最新作『ようこそ、夢の城へ』も運良く先行予約出来たのに残念キャンセルするしかないみたいだな~。」

 

すると水波は涙目になりながら必死にお願いしてきた。

 

「仲直りするので連れて行って下さい!買ってください!お願いします!」

「…涙目は反則。」

 

ポツリと呟くが必死な水波には聞こえていないようで脇腹の皮を掴みながらお願いしてきた。しかもそれがかなり痛いのでこちらも折れることになった。

 

「分かった、分かったから無意識につねるのやめて痛いから!」

 

そう言うと正気を取り戻していつもの水波になったと思いきや今まで以上に甘え始めた。その様子に悶え死にという世にも奇妙な死因が書類に記されることになりそうだったがなんとかセーフだった。

 

「約束だから連れて行くし買うよ。そろそろ入浴しよう地味に疲れも溜まってるしね。」

「はい!」

 

着替えとタオルを持って脱衣所へ仲良く向かった。

 

 

 

浴場には予想外なことに達也が来ていた。互いにたわいない会話で笑い合いタイミングを合わせて水波と部屋に帰った。

 

「深雪様はこれからどうされるのでしょうか。」

「深雪のことだから何か考えて…イル…ハズ…。」

「どうされまし…。」

 

部屋に入り和室を覗き込みながら放していた俺の発言が尻すぼみになったことに疑問を感じ同じように水波が覗き込むと同じように言葉が消えていった。

 

部屋の和室には慶春会前のように敷布団が一枚と枕が二つ。慶春会以来二回目の出来事に頭痛が襲ってきたが毎回毎回やられては性に合わない。

 

{これは一度文句を言わなきゃ俺の気が済まんな。}

 

真夜への怒りを覚えた克也は水波に少し待っているようお願いし書斎への廊下を歩いていると十字路の右から達也が同じような浴衣を着てやって来た。

 

「達也もしかして叔母上に用事か?」

「その言い方だと克也も用件があるんだな大体は予想つくが。」

「こっちこそお前が来た瞬間に直感したよ。」

 

お互いに深い深いため息をつき書斎にいる真夜に説明を求め許可なしに音がしないようにドアを開け中に入ると画面に見入っている叔母の後ろ姿が見えた。その画面は俺達の部屋が映し出されておりどうやら盗撮した映像を見て楽しんでいるようだ。

 

「「叔母上少しよろしいですか?」」

「かっ、たっさん、なっ、そっ!」

 

「克也、達也さん何故そこにいるのですか!」と聞きたかったのだろうが突然声をかけられ、上ずった声を上げ聞き取れない謎の真夜語を発してきた。

 

「叔母上それは監視カメラの映像ですよね?何故そのようなことをされているのか最初にお聞きしてもよろしいですか?」

 

すごみのある笑顔で聞くと慌てて画面の前に立ち塞がり隠そうとするが真夜の細い体では大画面を隠すのは役不足だった。

 

「趣味が悪いですよ叔母上。」

「…どんな様子なのか見たかったのだから少しぐらいいいでしょ?」

「…。」

 

抗議しながら元の位置へ戻る真夜に冷ややかな眼を向けながら無言を貫く。さすがにこの空気に耐えられなくなったのか真夜は怒られて萎縮する少女のように見えた。

 

「はあ〜、達也消して。」

「了解。」

 

達也が克也の命令通りに二つの部屋へ『分解』を行使し天井に隠れるよう設置されていた監視カメラを分解した。その後録画し落としていたメモリーディスクも目の前で粉々に砕く。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

可愛い悲鳴が書斎に響き渡り魂を奪われたかのように床に倒れ込んだ真夜に近寄り視ると気を失っているようだったので抱き上げベットに運ぶ。移動魔法で掛け布団を移動させ真夜を寝かした後もう一度移動魔法で掛け布団を優しくかけてやる。

 

電気を消し書斎を出て自分達の部屋に向かいながら二人で愚痴をこぼしていた。

 

「あれが前四葉家当主なのか?幼児退行している気がしてならないんだけど。」

「寄る年波には適わないということだろう。若く見えても中身は五十代だ何かあっても可笑しくはない。」

「本人に聞かれたら終わるぞ達也?」

「そうなったのは克也が叔母上に溺愛されているのが元凶だ俺は何も悪くない。」

「俺だって溺愛されたくてそうなったんじゃないんだから俺のせいじゃない。むしろ叔母上の問題だ。」

 

訳の分からない子供じみた言い合いをしながらも顔は笑っていた。

 

「じゃあ明日な気を付けろよ。」

 

達也はそう言って自分の部屋に向かって行った。

 

{気を付けるも何も部屋は目の前なんだけど盗聴も警戒しろってことか?}

 

克也はドアを開けて水波に帰ったことを連絡し仕掛けられていないか視て二つほど発見し燃やして消した。

 

『念話』で発見したことを達也に伝えると水波に布団に一緒に入るよう催促されたので言うとおり潜り込むと嬉しそうに抱きついてきた。

 

しばらくして睡魔が訪れたので互いに抱き合いながら夢へと落ちていった。

 

 

 

翌日、真夜が罰の悪そうな眼で俺達を睨んできたが二人して無視し何もなかったかのように振る舞っていた。

 

 

 

そして四月二日、日本魔法協会本部を通じて司波深雪が四葉家当主に就任し四葉深雪になったことを師補十八家及び百家、ナンバーズなどに報告された。

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