魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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追記 UA45000超えありがとうございます!


番外編③
誕生


四月二十四日の午後四時、私は今分娩室の前で使用人以上に不安と闘いながら待っていた。姉さんが破水し陣痛が始まったのが二十四時間前つまり昨日。もうそろそろ生まれてもおかしくはないが未だに生まれてこないのでこちらが先に倒れそうだった。

 

初産でありながら双子の出産となると大変なことだが姉なら耐え抜き元気な赤ん坊を生んでくれるだろうそう思っていた。

 

「おぎゃ~。」

 

と扉の奥から産声が聞こえたことで私の鼓動は高まった。そして数十秒後

 

「おぎゃ~。」

 

先ほどより声は小さいが元気な産声が聞こえてきた。ドアが開き助産師が手招きするので部屋に入ると血の匂いが鼻を衝くがそんなことが気にならないほど私の心は震えていた。

 

「姉さん大丈夫?」

「真夜、大丈夫よそれより見てよこの二人もう互いの手を握り合ってる。」

「ええ、本当に可愛いわ今すぐにでも食べちゃいたいぐらいに。」

 

疲労を滲ませた笑顔を浮かべるも幸せそうな姉に少し安堵しながらも本心を伝えると我が子を私から遠ざけるように自分に抱き寄せた。

 

「ダメよそんなことを言うような怖い妹には抱っこさせてあげない。」

「ご、ごめんなさい姉さん許して。だからどっちかを抱っこさせてください。」

 

必死に謝るとにこやかに微笑み双子の一人を抱っこさせてくれた。腕に体重がかかるが重くはなく心地いい重さだった。今すぐにでも散ってしまいそうな儚い命をこの腕に抱くと自分の本当の子供を産みたいという気持ちが溢れくるが自分の体では不可能だと思い少し気分が落ち込む。しかし自分を見つめる純粋な眼に癒される。

 

「真夜が抱いているのが克也、私が抱っこしているのが達也どう良い名前でしょ?」

「名前の由来とかはあるの?」

「克也は誰にも負けない魔法師に達也は病気にならない健康な魔法師になって欲しいそんな意味を込めたの。」

「活躍する魔法師で克也、たくましく育つ魔法師で達也ね姉さんの割にはしっかりと考えたわね。」

 

茶々を入れると嬉しそうに言い返してきた。

 

「あらその言い方は不本意ね私はいつもよく物事を考えて行動しているつもりだけど。」

「ふふ、そういうことにしておきましょうか姉さん。白川さん英作叔父様を呼んできてくださらない?」

「かしこまりました。」

 

白川夫人が四葉英作を呼びに行った背中を見送りながら深夜は真夜に聞いた。

 

「叔父様に魔法を視てもらうのね?」

「ええ、四葉の魔法師ならどんな魔法を使えるのか知りたいもの。」

 

 

 

英作が息を切らしてやってきたのは三十分後だった。二人はその間に母乳をたくさん飲み幸せそうな顔で互いの手を握りながらベビーベッドで眠っていた。

 

その二人に英作は優しい笑みを浮かべていたが真顔に戻し両手を克也と達也にかざし眼を閉じた。魔法が発動したと気付いたころには既に英作は二人の魔法を調べ上げており驚愕していた。

 

「叔父様?」

「深夜、お前は素晴らしい子供を産んでくれた一族を代表して礼を言おう。」

「叔父様二人は一体どのような魔法を持っているのですか?」

「達也は全てを破壊する魔法と全てを再構築する魔法を有しているがこの二つの魔法のせいで達也は他の魔法を自由に使えない。だが想子は一族で一、二を争うほどの保有量だ。克也は達也に及ばないが傷を治す魔法と魔法を焼失させる魔法を持っている。そして…真夜お前と同じ『流星群』を使える。想子量も達也と同等だ。」

 

叔父の報告に私はしばらく反応できなかった。自分の子供でもないのに自分と同じ魔法を使う甥っ子が生まれたことに感極まっていた。英作が部屋を出て行った音で私は我に返り姉さんにお願いをすることにした。

 

「姉さん、克也を私に預けてくれない?」

「構わないけど何故?」

「同じ魔法を使えるなら家族としての愛情ではなく実子として愛を注げば『流星群』の使い方をより理解してくれると思うの。」

「いいわその代わりたまには私のところにも連れて来てよ?独り占めは許さないんだから。」

「も、もちろんそんなことはしないわよ。」

「今嚙んだわよね!?全く信用できないんだけど!」

「じゃあね姉さんまた連れて行くから!」

 

そう言い残して逃げるように部屋を出る。

 

「待ちなさい真夜!話すことはまだいっぱいあるわよ戻ってきなさい!」

 

個人差はあるが産後一時間ではまともには動けないそれをよしとして私はプライベートスペースに克也を連れ込んだ。

 

自分と同じ魔法を使えるのであれば自分の手で育て姉には懐かないように教育しようと大人げない野望を胸に秘める真夜であった。

 

 

 

当主としての仕事である事務処理をする傍ら克也の世話をするという多忙な毎日を送っているけど克也の世話をすると疲れが吹き飛ぶそんな気がする。

 

書類に眼を通していると克也がぐずり始めたので仕事を中断し克也のもとに向かう。

 

「はいはい泣かなくても大丈夫よ。」

 

ベビーベッドでぐずっている克也に人肌の温度に温めた粉ミルクを入れた哺乳瓶を近づけると自分の手で口まで運び見ているこっちが驚くほどのスピードで飲み始める。

 

「育て方間違ってないわよね?」

 

初めての子育てのため不安なことが多い。自分がこうなのだから姉もそうだろうと思い始めていた。

 

「姉さんに聞いたほうがいいかしら。」

 

不安になったので姉に聞きに行くことにした。仕事は少しの間葉山に任せても許してくれるだろう。葉山に何も言わずにプライベートスペースから出て姉のいる部屋に向かう。

 

数分後、姉の部屋に入るとちょうど達也に母乳をあげているところだった。

 

「姉さん少し聞きたいことがあるのだけどいい?」

「どうしたの真夜?」

「克也のミルクを飲むスピードが異常で間違っていないか不安になったの。」

「スピードは赤ん坊によって変わるから気にしなくても大丈夫だと思うのだけれど。」

「それならいいのだけれど。」

 

心配そうに呟く妹に応援を送った。

 

「この一ヶ月そのスピードで育ったんでしょ?克也に何も起こっていないなら大丈夫よ。」

「そうね、ありがとう姉さんおかげで気が楽になったわ。」

「ならいいけどそれより仕事はどうしたの真夜?」

 

言葉に詰まる双子の妹にため息をつく。

 

{何故お父様は真夜に当主を任せたのかしら。別に自分が当主になりたいわけではないのだけれどそこだけが疑問ね。}

 

私の心中を察したのか仕事に戻って行く真夜の背中を見て何故か悲しくなった。

 

 

 

克也と達也が生まれて半年経った頃、「達也を殺すべきだ」という意見が分家の間に上がり始めた。分家の当主たちが世界を破壊することのできる魔法を持つ赤ん坊を望んだのはあの事件が起こった後であるならば仕方なかった。真夜が人体実験の被検体にさえされなければこんなことは望まなかった。だが生まれてしまった今では考え直しても仕方がないそれならばいっそすべてがなかったことにすればいいという結論に至り達也暗殺計画が練られたが英作の一言ですべては決まった。

 

「感情が暴走しないよう感情に蓋をすればいい。」

 

この一言だけで分家の当主たちは受け入れ達也の成長を見届けることに決めた。しかし達也に向けられる眼は『四葉の血を引いているくせにたいした魔法も使えない欠陥品』という意味合いを込められたものだった。深夜や真夜がいる前では本心から喜んでいるふりをしていたが二人がいないときは存在さえしていないかのように見ていた。

 

そのことを深夜も真夜も知っていたが咎めることはしなかった。達也が欠陥品なのは事実なため反論すれば達也だけでなく克也にまで火の粉が振りかかるのを恐れた。当主命令でやめさせることが出来るがこの程度を話題に挙げることもせず二人が愛情を注げば二人は健やかに成長してくれると二人は信じていた。

 

 

 

そして克也、達也の一歳の誕生日の日、深夜と真夜は英作から「分家の意識を逸らすためにと「達也の感情を暴走させないための子供を作る」、「感情に蓋をすること」を命じた。二人には到底受け入れられるものではなかったが二人のためならばやむを得ないと心を決め英作の案を受け入れた。

 

そして四葉の科学力と魔法の粋を結集させた調整体『司波深雪』を作り出し感情への蓋はある程度の年齢に達した頃に実行することを決めた。

 

 

 

ある日深夜は自室で深雪をベビーベッドに寝かせ達也をあやしていた。

 

「魔法がたとえ満足に使えなくても私の子供に変わりはないのよ達也。だから気にせずすくすくと育ってね。」

「克也よく頑張ったわね偉いわ!」

 

腕の中で眠る達也の髪を優しくなでながら独り言を呟いていると少し開いたドアの外から妹の興奮した声が聞こえてきたので頭痛を感じ偶然通りかかった葉山に声をかけた。

 

「葉山さん真夜はいつもああなの?」

「…左様でございます。克也様が歩かれるようになってからというもの毎日何時間もああして一緒に遊んでおられます。そのせいで書類が山積みになっておりまして私と紅林殿で手分けして処理していますが間に合っておらず増えていく一方でございます。」

 

疲労の残る顔で話す葉山の言葉に別の頭痛が襲ってきた。

 

「…葉山さん今日の夕方真夜を私の部屋に来るよう伝えてください克也も一緒に。一時的に克也を取り上げて事務処理が終わるまで会わせないよう命じます。」

「名案でございます。」

「克也が真夜のように溺愛しなければいいのだけれど…。」

「御心配には及ばないと思われます。たまにですが克也様は真夜様の声を無視することがあるので嫌になっているのかもしれません。」

「余計な心配だったかしら。」

 

互いに苦笑しながら葉山は真夜に深夜の伝言を伝えに深夜は深雪の様子を見に自室に引っ込んだ。

 

 

 

数時間後、深夜は真夜に『事務処理が終わるまで克也の接触を禁ずる』と命令し真夜が抱いていた克也を取り上げ笑顔で自室から追い出した。命令された真夜の顔は生きることに絶望した人間そのものだった。

 

 

 

再起動を果たした真夜は睡眠と食事、入浴以外の時間を全て事務処理に費やし溜まっていた書類を三日間で終わらせ克也に会いに行った。その仕事ぶりに葉山と紅林が嬉しそうに見つめ内心『ざまあみろ』と思っていたのは本人たち以外内緒だ。




二人の誕生秘話を書いてみました。自作の物語とずれているかもしれないので違和感があれば感想でお願いします。
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