魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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14章 捜索編
第八十六話 行動


克也は幹比古と久しぶりに話せたことと同盟を結べたことに喜びを感じながら帰宅していた。本家に入ろうとすると慌ただしい雰囲気を感じ何があったのか気になりながら敷居をまたぐと使用人や執事達が必死な形相を浮かべながら廊下を走り回っていた。

 

「リーナ、何があったんだ?」

 

偶然通りかかった金髪碧眼の少女に話しかけると信じたくなくそして伝えることに悩んでいる表情で振り返った。俺はその表情と慌ただしい雰囲気から良くないことが起こったのだと察知した。

 

「リーナ、教えてくれ何があった?」

「…。」

「リーナ!」

 

なおも回答を拒否するリーナの肩を掴み無理矢理こちらに顔を向けさせようとがそれでも顔を合わせようとしない。昔のようなツインテールではなく左肩の後ろ辺りに髪を流しポニーテールにしたリーナの顔は前髪によって隠れ俺の角度からでは見えなかった。

 

しばらく返答を待つが答える様子がないので他に当たろうと背を向け歩き出そうとすると背広の裾を掴まれた。

 

「リーナ、一体何だ?」

「…のよ。」

「何?」

「水波が拉致されたのよ!」

「なっ!」

 

俺は雷に打たれたかのような衝撃を受け取り乱すことなくむしろ頭が冷えた硬質な声が自分の口から発されるのを耳で聞いた。

 

「何故拉致されたと分かった?」

「っ!辰巳さんの遺体が渋谷の大型ショッピングモールの一角で発見されて十五分前に身元の確認ができたって連絡があったの。」

「水波の居場所は?」

「行方不明よ目撃証言もゼロかなりの腕前みたい。それと関係があるのか分からないけど奇妙な人を見たって人がいるの。」

「奇妙?」

 

魔法師や一般人ましてや人間に使うような言葉ではないことに違和感を俺は抱いた。

 

「ええ、見た目は普通だけどなんだか生きているように見えないそんな人だったって。」

「確かに奇妙と言えるな。それでこのことを達也と深雪は知っているのか?」

「まだ知らないけど雰囲気で薄々感づいてるかもしれないわ。真夜様と葉山さん達が伝えるべきか会議中よ。」

 

当主に伝えるべきだが不安を与えたくないので伝えるべきではないと俺は結論付けリーナに伝言を託す。

 

「リーナ、今からその場所に行って俺の伝言を伝えてきてほしい『深雪と達也には伝えるな水波が見つかるまで隠し通せ』と。」

 

リーナは目を見開きその蒼い眼で見つめ返してきたが俺はそれを無表情に見つめ返す。

 

「カツヤ、あなたもしかして単独で動く気?」

「水波は俺の妻だ誰にも触れさせん。四葉家に援軍を頼むと大人数を動かすことになるそうなれば相手に警戒させることになりかねん。単独で動いた方が相手に警戒されずに済む。」

「ならせめて黒羽家を連れて行きなさい!貴方が捜索に向かうのは止めないわ。でも単独じゃ非効率的よ自分の分家の血を信じなさい。」

「…分かったよでも人数は最小限に抑えろこれは命令だ。」

「わかったそう伝えておく。」

 

俺はリーナの返事に頷きを返し吉田家の誓約書をリーナに渡しそのまま玄関を出る。

 

「今から行くの?」

「この行動を見たらそれしかないだろう?早く見つけないと俺の気が収まらん。」

 

言うべきことだけ言いそれ以外は時間の無駄とでも言うかのように玄関のドアを閉めて出て行くのをリーナは克也の背中をただ心配そうに見つめることしか出来なかった。

 

捜索に加わりたいが自分は派手すぎる。分かっていてもままならないのが人間の心だそんな物があるから自分は大切なときに動けず誰かにすがることしかできない。

 

{カツヤ、あなたは自分の身が壊れてでも救うの?自分が死んでもいいとでも思っているの?}

 

リーナがそう思ってしまうほど克也の背中は覚悟を決めているかのように見えた。

 

 

 

克也は連絡をくれた警察と第一発見者に直接何を見たのか聞きに行くためコミューターではなく自車で渋谷に向かっていた。コミューターより普通に運転する方がよっぽど速く着く。時間を無駄にしないためには最短時間で目的を成さなければならない。

 

克也は不安と怒りを強靱的な精神力でねじ伏せ抑え込んでいたが水波の無事な姿を見ない限りそして水波を拉致した何者かを消し去らない限りこの感情は消えない。克也の頭にあるのは『水波の安全』『何者かの消去』この二つだけだそれ以外は無意味な物だと切り捨てている。

 

一時間もかからず渋谷に到着し辰巳の発見場所からほど近い交番に向かうと自分と同い年ぐらいの警官が交番前で立っていたので声をかけることにした。

 

「仕事中すみません、この近くであった殺人事件の被害者の関係者なのですが連絡をしてくださった方はおられますか?」

「あの方のお知り合いなのですね?上司に聞いてきますので少々お待ち下さい。」

 

若い警官は人を優しく包むような笑顔で返事をし交番の中に入っていた。落ち込んでいるだろうと思い元気づけようとしたのだろうが親しい人物がつい先程殺されたばかりなのに笑顔を向けられるのは気持ちの良いものではない。

 

気遣いは必要とはいっても余計な気遣いは人の心に影をつくり人間関係を悪化させる原因にもなる。空回りすれば自分も気まずくなり相手との会話もギクシャクしてしまう。

 

「上司の許可が下りましたこちらにどうぞ。」

「ありがとうございます。」

 

先程の思考をなかったかのように振る舞いながら交番内に入り奥の部屋に通されるとそこには五十代とおぼしきドラマで見るような正義感に溢れた人物が待っていた。

 

「ようこそ渋谷第一交番へ。あなたが伺いたいのは殺害された人物のことのようですが関係とはどのようなものなのか教えていただけませんか?」

「構いませんよ、彼は自分の師匠であり五年前までボディーガードでした今年から妻のボディーガードとして護衛させていました。」

 

こちらの情報を盗む気なのか信頼するために聞き出しているのか分からないがこの程度知られたところでたいした問題ではない。そう辰巳が殺されたことより水波が拉致されたことに比べれば…。

 

「そうでしたか、では何をお聞きしたいのですか?」

「彼の死因と発見当時の現場について。」

「では彼、故四谷辰巳さんの死因は内臓破裂と背後からの多数の刺し傷による出血多量死です。」

「背後からですか?」

 

克也は内臓破裂という単語より背中の傷について聞き直していた。辰巳が背後を取られるなど克也は思っていなかったのもあったがそれより多数の傷という単語を気にしていた。

 

「はい、奇妙なことに全ての刺し傷の幅の形状がまったく同じだったのです。」

「一寸の狂いもなくですか?」

 

その警官は重々しく信じられないとでも言うように頷きながら話を続けた。

 

「普通、同じ人物が同じ包丁で刺しても角度や力加減によって傷口の深さや形状は変わりそれは機械でも同じです。ありえないのですよ全ての傷がまったく同じような形状なのは。」

「つまり武器も分からず使用者も予測がつかないと困ったものです。現場を見ることは出来ますか?」

「出来ますがどうなされるのですか?」

「現場を見れば何かわかるかもしれませんから。」

 

その言葉に納得したかのようにその警官は頷きながら立ち上がり部下に待機するよう命じ克也を連れて現場に向かった。

 

 

 

現場には規制線が張られ警官が複数警備にあたっているのでまだ鑑識が仕事をしているようだ。規制線を越えることは許されたが鑑識が終わるまでは自由に動くことは出来なかったが運良く十分ほどで鑑識は撤収した。

 

「ここに辰巳さんが血を流して倒れていたと。」

「その通りです。この場に俯せになって倒れていました。」

 

克也は辰巳が倒れていた場所に膝をつき右手を地面につける。警官は克也が何をしているのか理解できずにいたが冥福を祈っているように見えたことだろう。だが克也がしていたのはそんな優しいことではなく辰巳に致命傷を与え死に至らしめた魔法の痕跡を探しているのだ。残存想子は感知できたが生憎微量でノイズが酷く解析できるような代物ではなかった。

 

残念に思いながら顔を上げると謎のへこみが店の看板横にあることに気付き近寄る。そこにはかなり激しい勢いでぶつかったようなへこみがあり深さが五cmにもなっていた。

 

「これは…。」

「そこにも彼の血や衣服の繊維が付着していました。」

「魔法ならもっとへこむはずだ体術じゃなきゃこんなことにはならない。」

 

克也は警官の説明も耳に入らず独り言を呟いていた。ポケットから取り出した携帯端末で様々な角度から撮影し証拠を消されないように残しておく。

 

「第一発見者の方とお話は出来ますか?」

「申し訳ないがその女性は回答を拒否されている思い出したくないと。」

 

どうやら発見当時のことは知ることが出来ないようだが肝心なことを忘れていた。

 

「監視カメラの映像と想子測定器の録画はどうでした?」

「どちらも不審な点は見当たりませんでした。」

「見当たらない?カメラに映っていないのに女性が見つけているんですよ?」

「ええ、ですがカメラにはデータの改ざんが見られなかったのです想子測定器にも。」

「ありえません必ず何者かの介入があったはずです。」

「しかし…。」

 

再度調査をしようとしない警官に愛想を尽かし俺は家路についた。




リーナの髪型を上手く表現できませんでした。NARUTOをご存知の方は疾風伝 山中いのを思い浮かべてください。いのの前髪をいの自身から見て右頬側に流し後ろ髪は左肩に向かうような感じです。
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