あーところで、皆さんってなんか忘れちゃった思い出とかってありますか?
あれ、消えるときは数年以下で消えちゃいますよね。
ブランちゃんの想い出は消えて欲しくないなぁ...
自分は、何故倒れているのだろう。
私は、もう何度問うたかわからない質問を、言葉も発せぬ自身に投げかけた。
こんなにもみじめに、何もすることができずに。
近くに何者かの気配があるのにもかかわらず、それを確認するための目も、あまつさえ思考すらノイズが走っているかのように掻き乱されて、もはや原型を留めてはいない。
少しずつ、少しずつ。
その悪化の具合は、酷くなっていっていた。
きっと、それは私があまりにも『人でなし』で、大切な何かすら、これまでの時間で忘れてしまうような屑だからなのだろう。
『ごめんね』
とても心安らぐ、いつ聴いても胸の奥底が現れるような、優しい声。
でも、性質はわかるのに、どんな声だったか思い出せない。
声の高さ、抑揚、感情。
分かることは、ただ少女の声というくらいだった。
それが、『大切だった』ことがわかっている、なのに、それ以上の方が全くわからない自分への積もり重なった怨念と憤怒を、更に高く積み上げていく。
もうどれだけの年月が経ち、自身の許容量などはるかに越えてしまったのではないだろうか。
きっと、今自分の顔を見たら、自嘲の腐った笑みで一杯だろう。
眼を開けても、私の目の前に映るのは、ただ、風化して黒く塗りつぶされた役に立たない視界だけで、肌に感じられるのも、どこまでも冷たい、『終わり』の空気だけ。
『でも、ずっと待ってるから』
だからこそ、私は彼女の言葉が。
身をよじってでも聞くことを嫌った。
耳を澄ましてでも聞くことを願った。
『約束』
身体はどこも痛まない。
感覚がないからなのか、そもそも怪我をしていないのか、それすらもわからない。
だが、一つだけ、私の中で、吐き気がするほど、脳髄が焼き切れるほど、全身をねじ切られる程に痛い部分がある。
『いつか...』
『もしね、私が...「&◆」くなったら』
『もし、ダメだったら』
どんな声さえも覚えていない、廃れて焼きついた記憶なのに。
『彼女』が自分にとって、どんな存在だったかもわからないのに。
『私を「&□❒□」して』
心が、引き裂かれるように痛かった。
黒と白、そして、付近の建物の光しか存在しない場所。
先程までは静かなだけだった雪は、ここに来てその勢力を増し始め、じわじわと強く障害物へと殴りかかり、破壊しようと目論んでいる。
今はまだ軽いジャブにも満たない悪戯だが、既に生物から命を奪い去る冷え切った死神の鎌としては、充分すぎる斬れ味を成していた。
そんなおぞましい自然な状態とは裏腹に、周囲を見渡せば、なんともメルヘンチックな建物が並んでいるのだが、今の彼にはそんなもの目に入るはずがない。
──おっと間違った、目に入らないのではない、そもそもその眼を使う意識が無いのだったか。
まぁ、そんな下らない訂正はさておき、『彼』は、先ほど、まるで糸が切れた人形のように、この真っ白い雪の世界で、ドサリと濁った音を立てて倒れ込んでしまった。
何故、そんな急に、しかもこんなところに大の男がぶっ倒れた理由はと問われれば、全くの不明。
急に現れたと思ったら、言葉通り膝を折って雪の上に突っ伏したのである。
意識もなく、ある程度厚手の黒いコートを羽織っているようだが、その端はいくらか風化しているかのようにボロボロになっているし、そもそもちょっと服を着ただけでは、人間が寒さに耐えられるはずがない。
そんな寒さをあっさり耐え忍ぶのなら、それこそ『女神』レベルの化け物どもと言えるだろう。
次々と降り積もる雪達が、そんな情けない『人形』を避けてくれるはずも無く、彼の上にも無情に雪は少しずつ積もっていき、ポツポツと黒が白に、水彩を少しずつ足らすが如く変わっていく。
簡単に時間とともに埋もれてしまう男の姿は、まるで、自身がどれだけ覚えていたくても、記憶が虚しく忘れ去られていく慈悲のない侵食のようにも思えた。
きっと、このまま雪に積もれば、いつか溶けるまでは綺麗な冷凍死体一丁前の出来上がり、とでも言うところだったが。
「お姉ちゃん!人が!人が倒れてる!」
──おっと。
埋まる前に掘り起こす人が『たまたま』現れるとは、なんと幸運なのだろう。
どうやら彼は、しんしんと降り注ぐ雪に埋もれ、早過ぎる埋葬という形で永遠の眠りにつく事無く、なんとか一条の生を掴んだようである。
快活な幼い女の子の声に引かれてか、建物の光の奥から、硬い地面を踏んで近づく音が響き...やがて、心底有り得ない、とでも言葉の奥底から湧いて着そうな冷静な声で、音の主は小さく呟いた。
「...家の前で人が倒れてる、なんて本の中の出来事かと思ってたわ」
「いやいや、雪に倒れるようなぼすって変な音したからね...って、早く助けないと!」
寝ていたのだろうか、少し可愛らしい寝間着を着た、静かな少女。
なんともまぁまぐれ、と言うか、この男がぶっ倒れたのは、人が住む家の玄関前だったらしい。
一方、絵に描いたような元気っ子と感じる、こちらも茶色の髪を持ったピンクのパジャマに身を包む少女の方はといえば、男の身体に触れて、生の証である温もりを確かめて。
「まだ生きてる...お姉ちゃん!」
「わかってるわ。...今日は雪が激しくなりそうだから、とりあえず家の中に運びましょう」
近づくと、本当に生きているか手首の脈を取り、実際に生きている事を再度確認しつつ、軽々と、その上なんとも言い難い、大の男を少女が『お姫様抱っこ』している形で、轟々という音が少しずつ強くなっていく吹雪の中、光が漏れる家の中へと運び込み、それに元気な方の少女が続く。
彼の脈はそこまで重大でもないらしいが、外は少し前よりも更に勢いを増しつつある暴風、少女達の髪の毛は煽られ、そこかしこに白い雪化粧の彩りが付着する。
普通なら自宅に運び込むなんて考えないだろうが、この状況、病院まで連れていくほうがリスクが大きい、と判断したのだろう。
だが、運び込み、玄関の扉を閉める瞬間の少女は、どこか憂いのようなものを見せていた。
それは、知らない人間を宅に入れるための不安だろうか。
もしくは、今彼女しか気づかなかった、『何か』があった為であろうか。
果たして、パタリ、と家から外界を遮断する壁がしまった時。
そこにあったのは、先程まで埋もれていた男の形が一切残っていない青白のカーペットと、暗夜。
そして──
先程まで『あれ』がそこにいたかの如く、ほんの微量だけ漂う『瘴気』のみであった。
かつてここまでおっそろしい見た目のオリ主を発想した方はいるだろうか。
居たらすごい、ねぷねぷ世界観にぶちこんで私自身もとってもやべーって思ってる。
そういえば、どこかに絵文字で言葉を表せる文字列があったような気がします。
なんでしたっけ...winなんちゃら。