機動戦士ガンダムSEED〜狂戦士は嗤う〜   作:零崎極識

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 お久しぶりです、どうにもモチベーションが上がらなくて執筆スピードが遅いですが、それでも読んでくださってありがとうございます。
 稚拙な文ではありますが、どうぞ。


第10話 大気圏突入

「なに?第八艦隊からの先遣隊……?」

 

 カナトがブリッジへと招集され伝えられた内容は第八艦隊から先遣隊が出てこちらに向かっているとの情報だった。おまけにその船の中にはアルスター外務次官が乗っているとのことらしい。

 

「どうやらキラ君の友達のフレイさんが心配で同乗したらしいのよ」

「……素人が……」

「ま、娘が心配になるのは分かるがな」

 

 カナトは舌打ちをするように吐き捨てるが直後のムウのフォローに顔を顰める。

 

「カナト、親は子供を心配するのは当たり前なんだ、そう敵意を向けなさんな」

「……失礼しました」

 

 カナトは素直に謝る。

 

「えっと……それで我々は先遣隊と合流することになるんだけど……」

「……何かあったんですか?」

「その先遣隊がザフトに掴まったらしい。既に戦闘が起きている」

「……厄介すぎませんかそれ」

 

 どうやら先遣隊からの信号により判明した事実なようだが、度重なる戦闘により燃料や弾薬に不安があり十分な援護が出来るかどうか不安なところみたいだ。

 

「行きましょう、友達の親を助けないと……!」

「坊主がやる気なのは分かるがな……」

「……人だけ助けるのならポッドを回収すればいいけど……」

「それが至難の業なんだよ」

「ひとまず、救援には行くのね?」

 

 マリューが3人にそう確認をとる。

 

「はい!」

「……それしかないですね……」

「やるっきゃねぇよな」

「分かりました、これよりアークエンジェルは先遣隊の救援に向かいます!全速前進!」

 

 アークエンジェルのエンジンを吹かし先遣隊の元へと向かう。一方、それぞれのパイロットが機体へと乗り込んで待機する。

 

「……キラ、友達を討つ覚悟は出来たか?」

「……はい……」

「……そんな覚悟じゃ守れない……俺がやってもいいぞ?」

「いえ、それは……」

 

 カナトの言葉に返事が曖昧になるキラ。

 

「……まぁいい、死なない程度にがんばれよ……」

『戦闘宙域に到達!ベルセルク、発進どうぞ!』

「了解……カナト・サエキ、ベルセルク発進する……!」

 

 シートに押し付けられるGに耐えながらカタパルトから発進し、スラスターを吹かす。

 

「……かなり……ひどいな……!」

 

 既に戦艦が2隻落とされており、残りは1隻だけとなっていた。全速力でアークエンジェルの方へ向かっているようだがその後ろからバスターとデュエルが狙っていた。

 

「やらせはしない……!」

 

 カナトは近くにあったデブリを蹴ってバスターの方へと飛ばす。そしてその射線上に機体を滑らせてメイスを機体の正面に持ってくる。その直後、デブリを突き抜けてきたビームがメイスへと命中した。

 

「……まず一機……」

 

 そしてバスターを止めるためにスラスターを吹かして距離を縮める。

 

「またこいつかよ!今度こそは落とす!」

「ディアッカ!連携だ!」

「OK!」

 

 カナトを止めるためにデュエルがベルセルクに踊りかかり、その後ろから隙間を縫うようにバスターが攻撃を仕掛ける。

 

「おっと……」

 

 バスターの射撃を躱すと、メイスを振りかぶってデュエルへと振るう。

 

「同じ手は2度も食わん!」

「……ちっ」

 

 そのメイスを受けることなく1度後ろへと下がったデュエルは肩についたレールガンをベルセルクに向けて放つ。その射線を見切ったカナトは肩を掠らせるように受け流してデュエルの懐へと飛び込む。

 

「ちぃっ!!」

「この距離なら……!」

 

 デュエルがビームサーベルを抜いてメイスと切り結ぼうとする。だが、メイスの方が重くもあり切り結ばれた表面では火花が散っていた。

 

「……押し切る」

「くっ!このっ!」

 

 メイスを叩きつけるために操縦桿を押し込んでいくがそれより先に攻撃を示すアラートが鳴る。メイスを手放し、すぐに後退すると一瞬遅れてビームが左からさっきまでいた場所を通り過ぎて行った。

 

「ニコルか!」

「あの機体は……僕達3人で止めましょう!」

「……3機はさすがに面倒だな……」

 

 レールガンを右腕に構えてまずはブリッツをねらうが敵も下手ではなく見切られてよけられる始末である。だが、メイスを回収する余裕は生まれ、背中にメイスを格納する。

 

「ディアッカ!」

「行けるぜ!」

 

 遠距離からバスターのミサイルとビームが襲いかかり、ベルセルクはその攻撃をデブリの中に入ってやり過ごす。

 

「ここは僕の距離です!」

「ミラージュコロイド……っ!」

 

 隠れた先にはブリッツが待ち構えており、咄嗟に機体を滑らせて至近距離からレールガンをぶち込もうとするが、横合いからデュエルのグレネードが迫る。

 

「……厄介だな」

 

 ブリッツとも、距離を開けるが既にブリッツの居場所が分からなくなっていた。そしてデュエルが正面からビームサーベルで切りかかってくる。

 

「……っ!」

 

 機体を右へと滑らせると予想通りバスターの砲撃が迫ってきていた。カナトはあえてその攻撃をメイスで受け止め、その合間に何も無い空間にマニュピレーターを突き出す。

 

「なっ!?」

 

 そこにはブリッツが居て咄嗟にPS装甲を展開させマニュピレーターの攻撃を受け止めた。

 

「動揺は……隙なんだよ……っ」

 

 マニュピレーターを軸にして縦に回転し踵落としをブリッツへと食らわせる。下方へと飛んでいくブリッツを尻目に今度はデュエルへと踊りかかる。

 

「貴様っ!!」

「……戦いはクールにだ……」

 

 熱がこもったデュエルの攻撃をいなし、レールガンの砲身を横薙ぎに振るう。その攻撃を予想していなかったデュエルの動きが一瞬だけ止まり、その胴体にレールガンをぶち込んだ。

 

「イザーク!てめぇ……!」

「遠距離型は……大人しくしとけよ……」

 

 バスターが距離を詰めながらビームとガンランチャーを放つが弾幕の隙間を縫うように距離を詰め、貫手で胸部に叩きつける。システムが異常をきたしたのか一撃でPS装甲が落ちた。

 

「……これ以上追撃を許す訳には……」

 

 その時後方で大きな爆発が起きた。

 

「……味方の船がやられたのか……」

 

 カナトはトドメをさすことなくアークエンジェルの方へと全速力で向かうのだった。

 

 向かった先では既にドレイク級の船が1隻沈んでおり、生き残りもエンジン部がほとんど止まっていた。その一方でイージスとストライクの戦いは続いていた。

 

「ちっ……」

「坊主!ジンの相手は任せた!」

「フラガ大尉……?」

「俺はあっちの援護にいく!」

 

 そしてメビウス・ゼロはストライクの支援へと向かう。カナトはレールガンでジンを次々と屠っていく。

 

「……ちっ、こんなことをして……」

 

 艦隊に攻撃していたジンを全て撃墜したはいいものの生き残りの船も全て沈んでしまった。

 

「くそ……弾切れ……!」

 

 レールガンの残弾が無くなったもののひとまずこの周囲に敵はいないようだ。だが、キラのストライクと敵のイージスとの戦いはまだ続いていた。

 

「アークエンジェル、1度帰投する」

「了解したわ!整備班!ベルセルクの弾薬準備!」

 

 通信越しにマリューが指示するのが聞こえ、カナトはベルセルクを艦へと戻すように動かした。

 

 難なくアークエンジェルに着艦するも、想像以上に地球への高度が近づいており、再び出撃して戦うのは困難な状況になってしまった。

 

「くそっ!ここまでが限界か!」

 

 ムウのメビウス・ゼロも高度限界が近づいてきたため、アークエンジェルに着艦するがストライクは未だに戦闘中だった。

 

 

「キラ戻れ!それ以上戦っていれば、船に帰って来れなくなるぞ!」

「ちっ……!」

 

 そんな光景を見届けるしか出来ないカナトはやむなくブリッジに行き、船ごとストライクに近づけるように上申しようとした。既にマリューも同じ判断をしたようで、アラスカへの降下ルートを逸れて、ストライクの回収を試みることにした。

 

「キラ……!いい加減にしろ!」

 

 どうにか、機体に近づきはするも、完全に帰還不能高度へと達してしまい、アークエンジェルは大気圏突入シークエンスを開始する。

 

 キラのストライクもようやくそれに気づいたのかどうにか、機体の姿勢をしっかりと安定させて大気圏に突入する。

 

 大気との摩擦熱で、船体が揺れて不安にかられる若い隊員が何人か情けない声を出すが、カナトは無言で大気圏への突入を眺めていた。

 

「艦長、ストライクの回収のために出撃してもよろしいでしょうか?」

「分かったわ、と言いたいところなんだけど地上に降り立つまで待ってくれないかしら?こっちとしても貴方までも出撃してもらうと困るのよ」

 

 そう言いながらマリューの起動した地図を見ると、降下予定ポイントは明らかにザフトの勢力圏であるアフリカだった。

 

「なるほど……これは確かに……」

「そういうことだから、降下したら速やかにストライクの回収と、周囲の索敵をお願いね?」

 

 そうしてしばらくたち、どうにかアークエンジェルは砂漠地帯に降下したのだった。


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