機動戦士ガンダムSEED〜狂戦士は嗤う〜   作:零崎極識

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第11話 熱砂の歓迎

 アークエンジェルが、先遣隊と合流するもザフトの猛攻にあい、予定ポイントとは全くちがうアフリカ砂漠に突入して半日、周囲はすっかり暗くなり空には満点の星空が輝いていた。

 

「しかしそれにしても派手にいったな」

「……それだけ激しい戦いだったということよね」

 

 格納庫の中では、整備主任のマードックと艦長であるマリューが並んで格納したストライクを眺めていた。大気圏突入という無理なことをしたはずだが、装甲が焦げ付いただけで、動力系統や制御系統には特に異常はみられない。

 

 だが、中にいたパイロットはさすがに無傷とはいかず、高熱を出してしばらくは療養が必要らしい。

 

「その間は、悪いけどカナトくん1人で戦ってもらうことになるわ?」

「……分かっています……」

 

 ストライクの武装パーツの調整をしながらマリューの言葉に返事をするカナト。第八艦隊と合流した際には僅かながら、追加の武装を貰っていたのだった。

 

「ひとまずは、地上でも何とか戦えるレベル……ということかしらね?」

「しかしそれにしても、連合本部もこれしか寄越してくれないとはな」

 

 第八艦隊からの物資は『スカイグラスパー』が2機とストライカーパックの補充、そして、試作段階だった『I.W.S.P』と呼ばれる複合ストライカーパックだった。

 

「……ベルセルクもストライカーパックは付けられるので……ありがたいと言えばありがたいですが……」

 

 飛行能力のないベルセルクが地上戦をするとなると機動力の低下は免れないが、この支援は非常に有難かった。

 

「だがよ、お前さんのそのメイスを装備するとなると飛べるのか?」

「……理論上は」

「お前さんがそんなこと言うの珍しいな」

「とりあえず……やってみなければ分かりませんよ……」

 

 そう言いながらカナトはベルセルクへ『I.W.S.P』を装着させる作業へと移った。

 

 

「まさかこんなに大物と出会えるとはね」

 

 遠くから双眼鏡でアークエンジェルを覗きながらコーヒーを飲む男の姿があった。

 

「隊長、準備できましたよ?」

「そうかそうか、それなら……みんなでちょっかいをかけにいこうじゃないか?」

 

 そう言うとその男はコーヒーを一気に飲み干すと、モビルスーツへと乗り込んだのだった。

 

 

 そんなことはまるで知らず、カナトはなんとか作業を終えると休憩するために1度コックピットから降りた。その時にちょうど、ムウが格納庫へとやってきたのだった。

 

「それにしても、なんとかやりくりしてるって言う感じだよなぁ」

「……まぁそうですね……」

「それに今はキラも倒れて……これで敵が来たらてんやわんやだろうな」

「……その時は……何とかしますよ」

 

 するとその時、アークエンジェル内に警報が鳴り響いた。そのアラートに反応するとすぐさまコックピットへと飛びこむ。

 

『コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!』

 

「坊主!」

「分かっています……!」

 

 カナトはベルセルクをカタパルトへ動かすと固定させていつでも出撃できるように待機させる。

 

「カナトくん、敵はバクゥよ?大丈夫?」

「……初めての地上戦ですが……やってみます」

「分かったわ、ベルセルクガンダム発進して」

「了解……カナト・サガラ、ベルセルク……出ます」

 

 Gを感じながらアークエンジェルを飛び出せば砂地へと着地をするも、砂の流れに足を取られて上手く動くことが出来ない。

 

「くそ……設置圧が逃げてるのか……っ!」

 

 あいにく、この場でOSを書き換えるのは不可能だと判断して空中戦に切り替えることにする。そして、空へと浮かび上がろうとするも、やはりメイスが重いのか完璧に空を飛ぶのは困難だった。

 

「すぐそばまで敵が来てるわ!対処して!」

「了解……っ!」

 

 ホバーをする要領で滑りながら敵のバクゥを捉える。一方でそのバクゥ達もベルセルクとアークエンジェルを狙う隊と半分半分にわかれた。

 

「まずいな……」

 

 こちらに迫るバクゥは6機。どれも背中にはキャノンのようなものを付けているタイプだった。カナトは機体に狙いを付けさせないように常に動かしながら、新たに装備したシールドガトリング砲で牽制をする。

 

 その新兵器を危険と判断した敵の部隊は各個に散開し取り囲むように動いて的を絞らせないように立ち回った。それを追いかけるように、ベルセルクもホバー移動のように追いかける。

 

「くっ……やはり敵の方に地の利がある……」

 

 バクゥをロックオンしてガトリング砲を撃つが舞う砂埃のせいか照準が合わずになかなか当たらない。いっそのこと、牽制に使った方がマシだと判断すると、後ろから追いすがるように距離を詰める。

 

 その動きに合わせて残りの機体がベルセルクの背後をとるように隊列を組んで、それぞれ攻撃を仕掛けてくる。機体を掠めるようなレールキャノンに僅かに機体を動かしてスレスレで回避しながら、最初から狙いをつけていたバクゥのインレンジに入る。

 

「もらった……!」

 

 背中のスラスターの出力を上げて一瞬だけ、空へと舞い上がると右肩に装備したメイスを抜いて振り下ろす。突如舞い上がったベルセルクに驚いたのか、一瞬の判断ミスを起こしたバクゥはそのまま無残にコックピット部分をペシャンコに潰されてしまった。

 

 その戦い方に一瞬だけ動きの止まるバクゥ隊。それを正面に捉えるように機体を振り向かせれば、ホバー移動で次の敵へと移動する。

 

 さすがにメイスを食らうと一撃なことを理解した敵はさらに距離をあけて、牽制しつつ背中のレールキャノンでちまちまと攻撃してくる。

 

「そっちだけが……有利だと思うなよ……っ!」

 

 ターゲットスコープで軸のあったバクゥをロックするとガトリング砲ではなく、I.W.S.Pに付属しているレールガンを放った。音速を越える弾丸はすぐにバクゥの胴体を撃ち抜き爆発させたのだった。

 

「次は……っ!」

 

 2機もやられたバクゥ隊はこちらへと牽制をしながら後退をしていき、カナトはアークエンジェルの方へと援護に行くのだった。アークエンジェルの方へ行くと、ストライクがランチャーパックを装備してバクゥ隊を翻弄していた。

 

「おいおい……ストライクは地上専用じゃないんだが……」

 

 まるで砂地に適応したかのようにしっかりと踏みしめながら腰だめにアグニを撃ち、また一機のバクゥを爆散させた。

 

 アークエンジェルを襲撃していた連中も撤退を始めたようだ。それを追いかけようとするキラを慌ててカナトは止める。

 

「やめとけ……今行くとパワー切れを起こすぞ……」

「……了解」

 

 こうして、地上戦の初陣を圧倒的勝利で納めたアークエンジェル隊であったが、その結果がここから先の戦闘をより苛烈にすることを彼らはまだ知らなかった。


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