機動戦士ガンダムSEED〜狂戦士は嗤う〜   作:零崎極識

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第14話 インド洋海戦

 無事に砂漠の虎との決戦をくぐり抜けて、インド洋へと進出するアークエンジェルだったが、受けた被害は少なくなかった。ストライクは片腕を切り飛ばされ、ベルセルクのI.W.S.Pは大破してしまい、使い物にならなくなってしまっていた。

 

「ひとまず砂漠は抜けたけど……ここからアラスカまでがまた遠いわね……」

「ですが、これ以降は大規模な戦闘はないかと」

「そうね……ただ、まだザフトの勢力圏内であるということは忘れないでね」

 

 マリューとナタルで今後の動きを確認すれば、ひとまずマリューは部屋に戻ることにしたのだった。その一方、戦闘を終えたキラとカナトはそれぞれ、格納庫で次の戦いに備えて着々と準備していた。

 

「キラ……ベルセルクのOSの調整をしてくれないか……?」

「いいですよカナトさん、あ、それなら僕のストライクを見て貰えませんか?」

「構わない……むしろ、やって欲しいことがあれば言ってくれ……」

「それならえっと……」

 

 そうして、2人で機体を整備しているとマードックも入ってきて3人で機体を調整する。しばらくして、3人が満足気な表情を浮かべると出来上がった機体を見上げた。

 

 ストライクは切られた片腕を付けるだけでなく、腕部の中にアーマーシュナイダーを格納、展開するギミックを付けて咄嗟の時に使えるようにしたのと、バッテリー効率を上げて稼働時間を長くした。

 

 一方で、ベルセルクの方には、左腕にソードストライカーのパンツァーアイゼンを装備し、吹き飛んだI.W.S.Pからフライトユニットだけを移植して、飛行能力を付与することに成功した。

 

「これで……空戦力は……なんとか」

「フライトユニットだけだったらメイスを持っても飛べるだろう」

 

 これでひとまずの機動力は確保したが、それでもあのディンには追いつけないと判断するといざと言う時に備えて、ベルセルクシステムを使用した際に現れる内部のフレームだけではなく、脚部にもスラスターを増やして機動力を上げたのだった。

 

 そしてもうひとつ、あのシステムを使った時の感覚を体感するためにもう一度使ったが、その時には特に何も感じずに終わったため、キラにOSの調整を頼んだのだった。

 

「えっと……言われたとおりの所に特に異常はなかったんですけど、もっと効率よくするために要所要所は書き換えました」

「んっ、ありがとう」

 

 それぞれの機体の整備と調整が終わると、キラとカナトは展望デッキへと向かう。デッキへ向かうと水着姿のフレイとはしゃぐトールやミリアリアたちが居た。

 

「あっ、キラ!」

 

 フレイが真っ先にキラを見つけると駆け寄ってきて腕をとり、デッキの手すりの近くまで引っ張っていく。カナトは、特に目を向けることも無くその集団とは離れた所に行き1人で海を眺める。

 

「えっと……カナトさん」

「ん……?」

 

 海を眺めていると、トールが声をかけてきた。

 

「あの……っ!俺も、パイロットにさせてください!」

「……なぜだ?」

「昨日の戦いで……自分に出来ることを増やしたくて……!」

「……そんな1日2日でパイロットができるわけじゃない」

「それは分かってます!でも……このままじゃ嫌なんです!」

 

 それでもなお食い下がるトールにカナトはため息をつくと、ついてこいと言わんばかりに歩みを進める。

 

「えっと……どこに行くんですか?」

「……ここだ」

 

 カナトが案内したのはシミュレーターだった。これは、スカイグラスパー用のシミュレーターで一応、カナトやキラの戦闘データも組み込んでありいい訓練にはなるだろう。

 

「まずは……レベル1からだ……」

 

 無理やりトールをシミュレーターに突っ込むと実際に体験させる。

 

 それから数分後、すっかり疲れきった表情を浮かべたトールがシミュレーターの中から出てきた。

 

「……うえっ……」

「……これよりも何倍も厳しいんだ……戦いというものは……」

 

 カナトはそう言うとトールに水を渡してその場を去ろうとする。

 

「……もし強くなりたいのなら……いつで来い」

 

 それだけ言うと自分の部屋に戻るのだった。

 

 結論から言うと、トールは必死にシミュレーターに張り付いていた。カナトはそれを見ながらああでもない、こうでもないと指導をしながら、飛行機ではなくモビルスーツの操縦も指導していく。

 

 トールは意外にも才能があり、ザフトのジン程度ならばどうにか扱えるようにはなった。もっとも、そのOSはカナトの使っている余裕のない処理のものではあるが。

 

 そんな訓練を続けて3日、ついにアークエンジェルは敵に捕捉された。たまたま、対潜ソナーに反応があり、その機影は2機だけという少数なものではあったが、果敢に攻撃をくわえてきたのだった。

 

「コンディションレッド発令!モビルスーツ隊発進して!」

「ちっ……!カナト機出ます……!」

 

 格納庫にいたカナトはすぐにベルセルクへと飛び乗り、起動するとそのままカタパルトへと前進する。遅れて、キラもストライクへと乗る。

 

「ストライカーパックはエールを選択!」

「キラ、カナト、敵は恐らくどこかに母艦があるはずだ!俺はそいつを叩く!」

「了解!」

「了解……!」

 

 ムウの指示で作戦を立てれば、真っ先にカナトが飛び出す。落ちれば海面に沈む緊張感はあるものの、自らが調整したフライトユニットはなんの問題もなく稼働し、十分な推力を持っていた。

 

「機体バランスも……想定通りだ」

 

 敵は海中から攻撃をしてくるということでアークエンジェルは離水し、バリアントやミサイルはいつでも放てるように準備する。

 

「艦長!レーダーに機影!数は……5機、『ディン』です!」

「なるほどね……っ!対空防御、キラくんのストライクを直援に回して!」

「了解!」

 

 キラのストライクも出撃すると、アークエンジェルの船体に着地して、ディンとの接触まで待つ。一方のカナトは海面に沈んだ敵を見つけるために上空から索敵し、敵が出てくるであろうポイントに目星をつける。

 

「……捉えた、そこだ……っ!」

 

 上空を旋回して浮上してくるタイミングを見計らってメイスを投げつけると、魚雷を放とうとしていたグーンに見事突き刺さり、そのまま魚雷ごと爆発した。

 

「次の敵は……」

 

 ひとまず、左腕のパンツァーアイゼンでメイスを回収し、次の敵を探し出す。

 

 キラもエールストライクの機動力でディンを翻弄すれば、確実に1機ずつ落としていく。

 

「フラガ機!敵母艦を発見!これより攻撃に移る!」

 

「こちらカガリ!これより、敵母艦への攻撃に参加する!」

「なっ!?」

「今更……っ!」

 

 カガリのスカイグラスパーをカナトが慌てて止めようとするがそれよりも先にもう1機のグーンが海面から浮上しようとするのをレーダーで確認するとそちらの方へと機体を向ける。

 

「こんな時に……!」

 

 左腕のパンツァーアイゼンを打ち出すとグーンの胴体へと突き刺さり、こちらへと引き寄せる。軽々と持ち上がったグーンはベルセルクの方へと引き寄せられれば、膝蹴りを胴体へと繰り出し、吹き飛んだところをメイスでカチ割る。

 

 海面へと叩きつけられたグーンは海中に沈むとすぐに爆発し、水柱が吹き上がる。その間にカガリはムウの方へと飛び立っていく。

 

 カガリとムウは敵の潜水艦を発見し、空からミサイルを放つが、潜水艦は間一髪で避けてディンを出撃させるために浮上した。

 

「ちっ!ジリ貧じゃねぇか!」

「どうにかしなければ……っ!」

 

 すると、潜水母艦が浮上するとそこからさらにディンが2機出撃してくる。出撃したディンは、2機のスカイグラスパーをそれぞれ狙う。ムウの方は易々と敵の攻撃をかわすが、カガリにはその経験が少なく、ふらふらとした回避運動をしてしまい、機体に何発か被弾してしまった!

 

「うわぁっ!」

「ちっ!お嬢ちゃんは早く帰投しろっ!」

「大丈夫だ、ナビゲーションモジュールに当たっただけだ!まだ戦える!」

「だめだ!第一、そんなチョロチョロと飛ばれると邪魔なんだよ!」

 

 ムウは強くそういうとディンに対してバルカンを放つ。カガリは自分の力量の無さに歯噛みするとやむなくアークエンジェルへと帰投するルートへと入った。

 

「くそっ!いい加減落ちろよ!」

 

 2機のディンを相手にして、高機動戦闘で敵を翻弄し軸を合わせてバルカンを放つ。狙われたディンはムウの動きに着いてこれずにバルカンを避けるが、その先にはアグニの砲口が向いており、躊躇いなくトリガーを引かれれば、直撃し爆散した。

 

「よっしゃー!もう一撃!」

 

 落とされたのを堪らないと感じたもう1機のディンは距離を開けながらムウを牽制する。その間に、潜水母艦はふたたび潜水してしまい、ムウとディンとの1対1に移ったのだった。

 

 一方キラは、最後のディンをビームライフルで撃ち落とすと、一旦アークエンジェルの甲板に着地してエネルギー補給に入る。

 

「マリューさん、母艦の方はどうなっていますかっ?」

「さすがに苦戦してるみたい……」

「分かりました、それならソードストライカーで援護に行きます!対艦刀はビームを切れば使えますし、宇宙空間でも活動できますから、気密性には問題ないはずです」

「そうね……ではこれより、アークエンジェルは離水し、敵母艦への攻撃に移るわ!」

 

 マリューの判断により、アークエンジェルは離水し、スカイグラスパーの援護に向かうために移動する。もう1機のグーンも落としたカナトも1度、アークエンジェルへと着艦し一緒に移動をする。

 

「ヤマト少尉、発艦っ!こちらも援護するわ!」

 

 マリューの指示とともにキラのストライクがアークエンジェルを離れると海面へと潜る。

 

「敵の船は……!」

 

 その時、ストライクのレーダーに反応があり、急速に接近する機体が見えた。

 

「あの機体は……っ!?」

「貴様の相手はこの私だっ!」

 

 緑色の大きな球体のような機体『ゾノ』がストライクへと攻撃を仕掛ける。両腕のフォノンメーザー砲を向けるがその瞬間に、キラは腕の延長線上から機体をずらす。

 

「やはり動きが遅いっ!」

「水中ではこのゾノこそが王者だ!」

 

 ゾノはすぐさま反転してくれば、クローで薙ぎ払うように腕を振るう。その動きを読み、機体を仰け反らせて回し蹴りを振るうが敵の重さと水圧によりあまり威力が乗らずに受け止められてしまう。

 

「しまった!」

「この距離ならひとたまりもあるまい!」

「やらせるか!!」

 

 至近距離でメーザー砲を撃たれる前に腕部に仕込んだアーマーシュナイダーでゾノの腕の関節部を切り落とせば、その場で爆発し、互いに吹き飛ばされる。

 

「な、なにぃ!?」

「はぁぁ!!!」

 

 すぐさま体勢を建て直したキラは、対艦刀を突き出しゾノの胴体を貫く。そして、そのまま横合いになぎ払えば、見事に真っ二つに分断されて爆発するのだった。

 

 アークエンジェルの方も奇抜な方法で敵潜水艦を破壊しようとしていた。

 

「ノイマン少尉、1度でいい、この艦をバレルロールさせて!」

「む、無茶ですよ!?」

「艦長!?」

 

 マリューの大胆な判断に他のブリッジクルーが思わず目を開く。

 

「ゴッドフリートの射線を取るわ、1度で当ててよね!」

「分かりました!」

「行きますよ……!」

 

 ノイマンの操縦により、アークエンジェルの巨体がバレルロールをし、ゴッドフリートの照準が敵の潜水艦を捉える。敵はアークエンジェルの巨体がバレルロールをしたことに目を疑い、回避運動をすることを忘れていた。

 

 その一瞬が命取りとなり、ゴットフリートが潜水艦を直撃し、沈没するのだった。艦載機のディンも母艦が沈んだことにより動揺が生じ、その隙をついてムウのアグニが撃ち抜いた。

 

「ふぅ、なんとかなったなこれより帰還する!」

 

 ひと仕事を終えたムウがアークエンジェルへの帰還ルートを取り、無事に着艦するのだった。

 

 





 ちなみにシミュレーターというのは『連〇vsザ〇ト』を思っていただければ問題ありません。

 それにしても戦闘描写がむずい……

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