「機体の状況は良好……ひとまずは動くな……」
何度も起動実験とシミュレーションはこなしてきたが……それでも実戦となると不安にはなる。スロットルを丁寧に扱いながら戦闘宙域へと向かう。
「坊主、お前……その機体は……」
「はい、さっきまで積んでいた新兵器ですよ」
「だがそれはまだ未完成じゃ……」
「武装がほとんどないだけです」
「……充分未完成だよなそれ……」
ムウのメビウス・ゼロと合流し、ザフトを確認したポイントに向かうと既にジンが5機待ち構えている。
「各機散開っ!!」
ムウの指揮とともにメビウスが散る。それに合わせてジンがメビウスに向かっていく。
「ここを通すわけには行かねぇんだよ!」
メビウス・ゼロがガンバレルを展開し、一機のジンを狙う。狙われたジンはなんとか回避しようとするが、逃れることは叶わず宇宙の塵となった。
「これが……戦い……」
「ぼさっとするな!!」
ムウの声にハッと意識を戻すと一機のジンがカナトの方へ向かっていく。その手にはマシンガンがあり既に銃口が向けられていた。
「……当たらないよ……」
カナトはスロットルとレバーを操作し、銃口から機体を逸らす。その挙動にジンはついていけずに銃口を合わせることが出来ない。
「……遅い……!」
カナトはスラスターを吹かし、ジンの懐に飛び込むとマニュピレーターで手刀を作り、コックピットを貫いた。貫かれた機体は爆発することなくその場を漂い、貫かれた位置からは、赤い液体が浮いているのが確認出来る。
「……まず一機……」
ジンを一撃で仕留めた新兵器に恐怖を抱いたのか、ザフトのジンは動きの精細さを欠いてきた。カナトは冷静に相手を捉え、スラスターで動き回る。
「……よく狙いなよ……」
カナトは片方のジンを襲うふりをして、援護に入ろうとしていたジンの前までスラスターを吹かす。呆気に取られたジンはコックピットを手刀で貫かれ、マシンガンを奪われるともう一機に対して全弾叩き込む。
マシンガンで攻撃されたジンは爆発し、周囲に破片を撒き散らす。
「とりあえず4機……」
「坊主!俺らの船がやられた!このままだとまずい!」
「……了解……」
カナトは3機葬ったが、味方のメビウスと貨物船が沈んでしまったらしい。完全に負け戦であるが、ムウの援護に向かうためにスラスターを吹かす。
「……!?この感じ……まさか!」
「……どうしたんですか?」
「ラウ・ル・クルーゼが来るっ!!」
その時、ベルセルクのレーダーに反応が出た。どうやら敵の増援らしい。
「ちっ……!坊主!注意しろよっ!」
そして、1機の白いモビルスーツが急接近でこちらへと近づいてくる。
「来たかクルーゼ!!」
「シグー……か」
ムウは、シグーへと攻撃を開始し相手のシグーもそれに応えるようにフラガ大尉へと攻撃する。残りのジンは、カナトの方へ向かってくる。
「……邪魔だな……」
カナトはスラスターを吹かせ、ジンへと肉薄する。あまりのスピードに対応出来ないジンはあらぬ所に弾をばら撒くがそんな射撃には当たらない。
「……これで……」
同じように貫手でコックピットを潰すともう一機の方に目を向ける。相手は動揺していたものの、しっかりと銃口がベルセルクを向いていた。ジンは躊躇うことなく、引き金を引き弾丸を発射する。
「……そんなもの……当たらないよ……」
ジンを振り払うと機体を蹴り、それと同時にスラスターを噴射する。一気に加速した機体は弾丸の軌道から逃れ、距離をとる。
「……それだけじゃないよ……」
カナトは機体のスラスターを調整し、機体を一回転させると今度は漂うデブリを蹴って、ジンへと肉薄する。立体機動に翻弄されたジンはなす術なく貫手でコックピットを貫かれるのだった。
「次は……」
その時、コックピット内にアラートが鳴り響く。どうやら、バッテリー温度が上がりすぎたらしい。これ以上無理をさせると機体が最悪爆発してしまう。
「……ちっ……」
カナトは機体をコロニーの方へと向け、慣性でゆっくりと向かわせることにした。
□□□□□□
「クルーゼ……!!」
「私が貴様を感じるように……貴様も私を感じる……不幸な宿縁だな、ムウ・ラ・フラガ……!」
「なんでこんな所に!!」
メビウス・ゼロがガンバレルを展開し、シグーを追い詰めようとするが、まるで展開場所を知っているかのようにシグーがマシンガンを向け、ガンバレルを狙撃する。
「くそっ!」
ムウはブースターを吹かし、距離を取ってリニアガンで狙うがそれも回避される。
「そこだ……!!」
クルーゼはすれ違いざまにマシンガンを撃ち、そのうちの1発がムウのメビウス・ゼロを捉える。
「しまった!?」
「終わりだ……!」
クルーゼがトドメをさそうとした瞬間に、巨大な熱源
が戦闘宙域を通っていった。
「くそっ!撤退だ!」
その隙をついてムウはコロニーの中へと逃げ込んだ。クルーゼもそれを追うためにスラスターを吹かしコロニーへと向かった。
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バッテリー冷却が間に合い、スラスターを使ってコロニーへ向かっていると、コロニーに巨大な熱源反応を観測した。カナトは急加速でビームの射線から離脱する。
「……これは……ストライクのアグニ……!?」
カナトが携わった機体のデータは網羅しているためすぐにピンと来る。だが、これが発射されたということはコロニーの中でも戦闘が起きているということである。
「……テストパイロットのやつらですら……アグニの火力は知ってるはず……なのに、コロニーの中で撃つということは……」
考えられる可能性が2つあるがどちらにしても良い結果にはならない。とにかく、急ぐためにバッテリーが上がらないように出力を調整しながらがコロニーへと向かう。
しばらくしてコロニーへたどり着くと、中の状況は悲惨と言っても過言ではなかった。幸いにしてまだ崩壊はしていないが、それでも危険レベルが高い状態で住人はシェルターに入っているのだろう。
コロニーの地表も所々に穴があり、どうやら中でもドンパチしたようだ。ひとまず機体をオーブの会社の近くに下ろす。
機体を下ろすと荷物の運搬をしていたストライクがカナトに気づきあろう事か、アーマーシュナイダーを抜く。カナトは敵対する意志がないことを示すためにコックピットハッチを開いた。
「ベルセルク……稼働できたのね……」
「ラミアス大尉……無事でしたか」
遅れて現場に来たマリュー・ラミアス大尉の姿を見てほっとしたカナトは機体を置いてコックピットから降りた。
「……他のはどうしたんですか……?」
「実は……他の4機は全部敵の手に渡ったわ……」
「……そう……ですか」
事態はもっと最悪だったようだ。まさかザフトに新型を4機も奪われてしまうとは。この事実にさすがのカナトも怒りを覚える。
「……それで残ったのはストライクだけ……パイロットは……?」
「正規パイロットは……敵に撃たれて死んだわ……今は、民間人の少年が操縦しているの」
その事を聞いて、どうやらナチュラルが操縦しているわけではないと一目で見抜くことができた。そもそも5機のGはOSの調整が全く出来ていなく、ノロノロと歩くのがやっとだったのだが……
さっきのアグニを見る限りだと弄ったとしか思えなく、そうなるとナチュラルがいきなり操縦出来るわけないため、必然的に可能性が縛られる。
「……まぁ今はそれしか手段がありませんから……」
現状で戦える戦力はカナトのベルセルクと少年のストライクだ。ひとまず、ベルセルクの武器が欲しいところではあるが……
「それはそうと……カナト君、ベルセルクの武器が完成してるみたいだから受け取って?」
「……了解しました」
すぐさまベルセルクに乗ってコンテナの中に入っている物を次々と回収していく。そしてストライクも武装の回収を協力してくれるのだが、ひとつ問題点があった。
「あの……この武装持ち上がらないんですけど……」
「それはベルセルクのためだけに作ったものだから……」
ストライクが持とうとしていたのは大きな鉄のメイスだった。カナトはベルセルクをメイスのところまで動かし、それをひょいと持ち上げる。
「……他の機体と違ってパワーシリンダーを入れてるからこれくらいはどうってことない」
裏を返せば他の機体が持とうとすると関節が吹き飛んでしまう。
「……ひとまずはこれで全部か」
母艦を失ったムウとカナトは連合軍の新造艦『アークエンジェル』に搭乗することになったため、新装備を全て積み込んでいた。と、その時アークエンジェルのアラートが鳴り響いた。
「ザフト再び接近!!」
「これは……拠点攻撃用のD装備かよ!!」
迫り来るジンは両手に巨大な対艦用のミサイルと脚部に小型のミサイルポッドを装備していた。おおよそコロニーへ撃ち込んで良い装備ではない。
「くっ!僕が行きます!!」
ストライクのパイロットはソードストライカーを装備してジンへと向かっていく。
「……行こうベルセルク」
カナトも新しく手に入れたメイスを右手に持ち同じくジンへと飛翔していく。
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一方ザフト艦の中では連合の新兵器の性能に唖然としていた。
「わずか……数分の間にジンが5機も……」
「……この機体を野放しにするわけには行かない」
「だが、アスラン……その機体はついさっき奪取してきたばかりだ……乗れるのか?」
「行けます、行かせてください!」
アスランと呼ばれた青年は力強くそう言った。
「……わかった、すぐに発進準備をしろ」
熱意に負けた艦長はアスランを出撃させる判断を下した。
(キラ……いや、まさかあんなところにいるなんて……)
そんな感情を抱きながらアスランは発進シークエンスを開始する。
「アスラン・ザラ、出撃する!」
彼は幼なじみであるかを確かめるためにもう一度コロニーへと向かう。
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コロニー内では激しい戦闘が繰り広げられていた。ストライクのパイロットはなんとか近接戦に持ち込もうとしているが、巨大な剣を警戒するジンはなかなか近づかせないように距離をとっている。
カナトの方も重力がかかっている状態での挙動に慣れずにさっきの戦闘の時よりは幾分か手間取っていた。
「……スラスターの出力を上げるとバッテリー温度が上がる……難儀だ」
地面を這うようにスラスターを吹かしながらジンを追いかける。ジンはその挙動に翻弄されながらもむやみに突っ込むことはせずに距離を開ける。
「……面倒だ……!」
カナトはフットペダルを踏み込み一気にスラスターを吹かし、ベルセルクを加速させる。突然のことで対処に迷ったジンだったが、既にベルセルクの間合いに入ってしまっていた。
「……潰れろ……!」
横合いからメイスを振り抜きジンを殴り飛ばす。質量と速度によってジンの装甲は完全にひしゃげ、かなりの速度を持って地面へと転がる。そして、その隙を逃すことなくジンへと近づくとコックピットをメイスで叩き潰す。
「……まず1機」
だが、動きの止まったカナトを狙うジンが大型ミサイルを発射する。避けようとするがその後にはコロニーを支えるシャフトがあった。
「……それなら……!」
ミサイルが着弾する前にメイスを正面に構えて機体を守るように持つ。次の瞬間、大きな爆発がベルセルクとカナトに襲いかかった。その爆発の余波で周囲に黒煙が立ち込める。
「……その程度じゃ、このベルセルクは落とせないよ……!」
黒煙を切り裂いて飛び出したベルセルクはメイスの先端をジンのコックピット目掛けて突き出す。反応出来なかったジンはなす術なくパイロットを失い機能を停止した。
「次の敵は……」
その時ベルセルクのレーダーが新たに接近する機影を確認した。その機体は連合軍の新兵器のひとつだった。
「……イージス……」
カナトは奪われた新兵器を落とすためにイージスへ攻撃を仕掛けるのだった。