機動戦士ガンダムSEED〜狂戦士は嗤う〜   作:零崎極識

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書きたい描写がかけないジレンマ


第3話 対峙

 カナトは奪われた新兵器であるイージスへ近づいていく。

 

「……作った機体が敵の手に渡ったのなら……それを壊すのは俺だ……!」

 

 メイスを振り上げて叩き潰そうとするが相手はさすがにそのような大振りの攻撃には当たってくれず距離を開ける。

 

「これが新型……!5機のやつとはまるで違うっ!!」

 

 アスランは迫り来るベルセルクの姿に焦りと恐怖を感じていた。だが、やつの武器は手に持ったメイスだけだと判断し距離を取ってビームライフルを向ける。

 

「……武器の性能はわかりきっている……!」

 

 一瞬だけ銃口が光るのを見逃すことなくカナトはベルセルクを操作し、ビームが発射される前に射線から離れる。そのコンマ数秒後にイージスの放ったビームが先程までいたはずのベルセルクの位置を通過する。

 

「なっ!?」

「……油断したな……!」

 

 ビームが避けられるとは思っていなかったのか、戦闘中にも関わらず動きを止めてしまった。そしてその隙を逃すまいとカナトはベルセルクを接近させる。

 

「これで終わり……!」

 

 メイスを振り下ろそうとした瞬間、横合いから一機のジンが突っ込んできた。

 

「アスランっ!!」

「ミゲルかっ!?」

 

 ベルセルクに組み付いたジンが地面に押し付けようとスラスターを吹かすがそれに抗うようにスラスターを噴射する。いつの間にかメイスが手から離れ、押し返すためにジンのマニュピレーターを握る。

 

「くっ……!なんてパワーだ!」

 

 ジンは押し返されるパワーを利用して拘束を解こうとするが逆にベルセルクによってマニュピレーターを握りつぶされてしまった。

 

「今はあんたが邪魔だ……!」

 

 カナトはベルセルクで当て身をしてジンの体勢を崩す。

 

「行け……ベルセルク……!」

 

 瞬間的に加速させ、懐に飛び込むと手刀を胴体に繰り出したが、ジンは咄嗟の判断で機体を飛びのかせて回避する。

 

「……逃がさない……!」

 

 近くに落ちていたシャフトのパイプを拾うとジンに向かって全力で投擲する。ロックオンマーカーも出ない攻撃にジンは反応することが出来ずに、パイプが胴体に突き刺さった。

 

「はぁぁ……!!」

 

 接近する時にメイスを回収し、そのまま流れるように振りかぶる。

 

「脱出できない!?」

「……終わりだ……!」

 

 振り下ろされたメイスによってジンは地面に崩れ落ち、スクラップのごとくペシャンコになった。

 

「み、ミゲルーっ!!」

 

 アスランの悲痛な叫びがコロニーに響き渡った。

 

「……よくもミゲルを……!」

 

 アスランの乗るイージスはベルセルクに対して烈火のごとく反撃を開始するが、それに気づいたストライクがイージスに追いすがる。

 

「キラ……!やはり君なのか……!?」

「アスラン……!どうして君が!どうして君がザフトになんか!!」

 

 イージスとストライクがお互いに攻撃を仕掛けるがその様子はどこか、戸惑っているような感じで動きがぎこちない。

 

「お前こそ、どうして地球軍にいる!どうしてナチュラルの味方をする!」

「君こそ……どうしてザフトになんか!なんで戦争をしたりするんだ!!」

 

 ストライク、イージスとともに動きと攻撃に戸惑いと躊躇いがこもっていて見れるような戦闘ではなかった。それに業を煮やしたカナトが介入に入る。

 

「……今は戦闘中だ、他のことに気を使っている暇なんてない……!」

 

 スラスターを使いイージスに攻め込む。それに気づいたイージスがビームサーベルを抜きベルセルクと対峙する。

 

「邪魔をするなっ!!」

「……その機体を渡すわけにはいかない……!」

 

 イージスのビームサーベルとベルセルクのメイスが切り結び接するところでスパークが飛び散る。

 

「……ただの鉄の塊じゃないのさ……!!」

 

 そのメイスはジリジリとイージスの方に迫っていくが思いっきりがいいのか、イージスは後ろに下がりながらビームライフルでベルセルクを攻撃する。

 

「なんだあの機体は……只者じゃない……!」

 

 アスランはベルセルクの性能だけでなくパイロットにも驚きを覚え、やむなく遠距離戦を仕掛けることにした。

 

「そんな狙いで……当たるわけないよ」

 

 カナトは銃口を見てその直線上から回避しつつ着実に距離を詰める。そしてメイスを再び握り直して下からすくい上げるように振った。

 

 アスランは寸前で機体を後方に動かすが手に持っていたビームライフルがメイスによって薙ぎ払われた。

 

「なんて威力だ……!」

「ちっ、外した……」

 

 もう1回踏み込もうとするが予想以上にバッテリーへの負担が大きく、OSに不具合が生じ始めた。

 

「これじゃ……戦えない」

 

 カナトは一転して撤退するために戦闘宙域を離脱するのだった。

 

「……あの新型に……勝機はあるのか……?」

 

 アスランはイージスの中で1人、呟くのだった。

 

□□□□□□

 

 アークエンジェルの艦長であるマリュー・ラミアスはメビウス・ゼロのパイロットである、ムウ・ラ・フラガと副長であるナタル・バジルールを集めて今後の方針について話し合いをしていた。本来の艦長は別の人物なのだが、先程の襲撃で半数以上のクルーが死んでしまった。

 

「でも、こっちの戦闘力は虎の子のストライクと……カナト君のベルセルクだろ?俺のゼロはさっきの戦闘で被弾したしな」

「それでもまだ戦えるだけましです」

 

 ムウとマリューは残された戦力とザフト側の戦力を見ながらげんなりしていた。

 

「ですが、1人はコーディネーターですっ!そんなものに機体を任せておいてよろしいのですか?」

「ナタル……」

 

 そして2人が少しばかりげんなりする理由がもうひとつ。それは、軍規に少しばかり厳しい副長『ナタル・バジルール』少尉の存在だった。彼女はストライクにコーディネーターが乗っていることに対して意を唱えている。

 

「……じゃあ、副長さんはストライクを出さずにベルセルクだけで戦えと?」

「なら、貴方がストライクに乗ればよろしいのでは?フラガ大尉」

「あのねぇ……あんなOSの機体、誰が乗れるんだよ……そもそも、テストパイロットのひよっこ共ですらまともに動かせなかった機体だぜ?」

 

 ムウはやれやれと言わんばかりに肩を竦めて首を横に振った。

 

「第一、そんなことしたら治ったゼロは置いておくのか?そんなことするぐらいだったら、少し酷だがあの坊主に乗ってもらうしかないぜ」

「……民間人にパイロットをしてもらうのは……」

 

 ナタルが難色を示し否定的な意見を出そうとするがなかなか思いつかないようだ。

 

「……分かりました、ひとまずは現状維持ということですか」

「そうそう、もっと物事は柔軟にな」

 

 それだけ言うとムウはブリッジから出ていった。あとに残ったのは艦長と副長のマリューとナタルだけだった。

 

「……ラミアス艦長、もし何かあった時は艦長らしく判断をよろしくお願いします」

 

 マリューにそれだけ言うとナタルもブリッジから出ていった。

 

「……大丈夫なのかしら……」

 

 マリューは不安げな表情を浮かべながら艦長席に座るのだった。

 

□□□□□□

 

 カナトはベルセルクをなんとかアークエンジェルの近くまで動かして、マリューへと通信回線を開いた。

 

「こちらカナト、これより着艦します……」

「カナト君?イージスはどうなったの?」

「分かりませんが……ベルセルクが不調になったので帰還しました……」

「そう……それなら、ベルセルクはすぐに整備に入って?またすぐに敵が来るわ」

「了解しました……」

 

 通信を切ると上部デッキに着艦して格納庫の中へと収納される。そして、定位置に固定をしてもらうとやっとコックピットの中から出ることが出来た。

 

「……ふぅ……」

 

 狭苦しい空間から出るとやはり、ほっと息をつきたくなり深呼吸をする。

 

「よう、結構むちゃをしたみたいだな!」

「……あなたは?」

「おっと、自己紹介がまだだったな!俺の名前は『コジロー・マードック』ってんだ!ストライクとベルセルクの整備担当だよろしくな!」

「パイロット兼整備員の、『カナト・サガラ』です、よろしくお願いします……」

 

 カナトは整備担当のマードックとしっかり握手を交わす。その手からは歴戦と言わんばかりな雰囲気を感じ、いい刺激を感じた。

 

「実はお願いしたいことがあるんですが……」

「どした?言ってみろ」

「機体の排熱について、アドバイスを頂けないかと」

「なるほどな……俺が考える改良としては、排熱用のダクトとかを増設するんだが……」

「ただ……そうなると、機体重量のバランスが……」

 

 カナトはそう言いながらOSでの制御バランスを端末に入れてマードックに見せた。

 

「おいおい、なんでこんなに余裕のない処理を?」

「余計なリソースを使わないようにと、プロセスを増やすと反応速度が落ちるからです……」

「だから、ナチュラルとは思えない反応速度で動く理由か」

「……そればっかりは仕方ないことなんですけどね……」

 

 カナトは余裕のない自分へか、それともここまでしないと倒せないことを改めて実感したからか、深いため息をついた。

 

「ひとまず機体の方は余裕が出来てからだな……それよりも、お前さんの機体の武器をここに置いてるんだが……」

「それについてはそこの滑腔砲だけひとまずつけてください……」

 

 カナトが指を指したのは300mm電磁初速加速砲『カラドボルグ』だ。中の砲弾を電気で加速させることによって貫通力と破壊力を増している。有り体にいえばレールガンと同じだ。

 

「そう言えば……どうしてお前さんの機体はビーム兵器を積まないんだ?」

「積まないんじゃなくて、積めないんですよ……電力をビームに変える変換器を……積んでませんから」

 

 ベルセルクは元からビーム兵器を運用するというコンセプトは持っておらず、他の5機がバッテリーダウンした時の予備兵力のようなスタンスの運用の仕方を考えているため、継戦能力を高くするために実弾運用を考えていると言うわけである。

 

 そして、実弾が切れた時ようにメイスやマニュピレーター、関節部が他の機体よりも強く、廃材などを使っても戦えるようにもなっている。

 

「わかった、とりあえずその作業は始めておくからお前さんは休め」

「……ありがとうごさいます」

 

 カナトはマードックに作業を任せるとひとまず、ブリッジに行き報告することにした。

 


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