前回、周りが倒れる中必死に食らいついたルナ。しかし頭を強打して瀕死に。そこへネプギア女神化。下っ端を倒しました。しかし下っ端はゲイムキャラを破壊して逃げてしまいました。落ち込む彼女たちに謎の声が……
今回もごゆるりとお楽しみください。
「うぎゅ…まだ痛い……」
「あたりまえです! あんなにいっぱい硬い物で殴られたらこんなにひどいケガだってするです!」
「まあまあ、ルナのおかげでゲイムキャラの力を得ることができたみたいだし、結果オーライってことでいいじゃない」
「そ、そうですよ! いやまぁまさかこんな形で役に立ってたとは思ってなかったですけど。アイエフさんの言う通りです!」
「確かにそうだけど…でもルナちゃん、本当に死んじゃうかと思ったんだよ!」
「うぐっ……ご、ごめんなさい……」
実際あと一歩遅かったらもう少し眠ってたかもしれない、とは言えないよね……
あの後、凛とした声の主であるプラネテューヌのゲイムキャラとネプギア達が話をした。
どうも私達がリンダと戦ってる間に目が覚めて、リンダが自分を破壊しようとしているのに気づいたそうだ。そしてネプギアが女神候補生だっていうのも気付いていた。だから破壊されても力の一部を分け与えられるようにと色々やっていたら、破壊されたそうだ。
でもギリギリ間に合ったようで、ネプギア達に力を渡すことができたのだ。
で、アイエフさんの言う私のおかげっていうのは、時間稼ぎのこと。身体を張って時間を稼いだおかげで間に合った、とゲイムキャラにお礼を言われた。私としてはネプギアやアイエフさんの回復をーとか思ってたんだけど、どうやらそれ以外にも効果を与えていたようだった。
ちなみにそのゲイムキャラさんはまだ消えておらず、私達の先頭に浮いてどこかへ案内しております。どうやら私達に何か見せたいようです。
というのは、ゲイムキャラが消えてなかったと知って安堵しつつ、コンパさんに応急処置をしてもらった後血を拭いてちゃんと顔を合わせて対面すると、ゲイムキャラは私の顔を見て驚きの声を上げ、私の名前を口に出した所から始まる。
淡い紫の光、意思だけの存在となったゲイムキャラは私の周りを飛ぶと、「やはり……」と言った。それに対して私は「私のことを知ってるんですか?」と訊くと「知ってるも何も数か月前に一度、犯罪組織に狙われていた私を助けてくださったではありませんか」と驚きの発言をした。
“数か月前”…それは私が記憶を失う前の頃だ。私はまだ記憶を失って数日程度なのだから。
しかし旅を始めて…いやまだ始まったようには思えないけど、初っ端からまさか記憶を失う前の私を知る人物に会えるなんて……
って驚いて、すぐに私について逸る気持ちで説明も無しに「あ、あのっ! 私について教えてくれませんか!?」って事情を知らなければ意味不明なことを言った。ゲイムキャラも何のことか分からず困っていたが、そこはアイエフさんがすかさずフォロー。今の私が記憶喪失で、自分に関することを調べていると説明してくれた。それに納得したゲイムキャラに、私は再び、今度は表面上は落ち着いて訊くと、ゲイムキャラも私のことをあまり知らないそうだった。
というのも数か月前にあったのが最初で最後。しかもあまり会話もなかったそうだった。
その後ゲイムキャラは少し考えた後、私達に見せたいものがあり、その道中で自分の知っている私に関することを教えてるそうで、今現在その見せたいものまで案内してくれているのだった。
「ルナちゃん、もうこんな無茶しないでね」
「う、うん。分かったよ」
すみません。多分同じ状況になったら同じこと繰り返すと思います。
と、会話しつつも本題に入っていった。
「先ほども言ったように、私が記憶を失われる前のルナさんと出会ったのは数か月前が最初で最後です。その時は今ここにいるルナさんとは似てないほど暗い方でしたが……」
「あ、私って暗かったんだ」
「うーん、今のルナの性格は全く暗くないわよね」
「むしろ明るいです」
「ええ。おそらく元の性格も今と同じだったかと思います。ただ、長い事多くの敵と戦ってきたのでしょう。それが性格を暗くしてしまったのかと」
「…戦ってきた?」
そんな覚え、当たり前だが全くない。
しかしそう考えれば確かに剣は扱えるようだし、魔法も使えるようだから、納得はいくけど……
「お話を少しした時に、聞いたのです。あれは、寒い冬のころでした———」
と始まる回想。私はフェードアウト~
当時は先程いた場所とは少し奥の方、今から行く場所で隠れていたところ、彼女は突然私の前に現れました。
頭まで深く被ったフードに、全身を隠すように覆うローブはボロボロ。隙間から見える着ている服や、靴までもが。しかし腰に身に付ける鞘にしまわれた剣は輝いておりました。まるで数々の修羅場を潜り抜けてきたような方だと思ったのが、第一印象ですね。
彼女は私にこう言いました。「最近、犯罪組織がこの地でゲイムキャラを探しているという。近々ここに辿り着いてしまうかもしれない。だからこの場から逃げて、遠くに隠れてほしい」と。
私はその時彼女を信用することはできなかったので、「私はあなたがどなたなのか存じません。そして初対面の方を信用することはできません。申し訳ありませんが、そのご提案には従えません」と答えました。
その言葉を聞いた彼女は「じゃあいいよ。ここで奴らが来たら、私が追い払う。それまでここにいてもいい?」と私に訊いて来ました。それ自体はよかったので許可を出したのですが、私はここに犯罪組織が来るなんて思いませんでした。何せプラネテューヌの教祖のおかげで私の居場所は誰にも分からず、その上私自身もある程度期間が経ったら場所を移動するようにしていましたので、居場所がバレるとは思わなかったのです。
もっとも、彼女に居場所がバレた時点で考え直すべきでした。
彼女は私の許可をもらうとその場に座り込んで、数日間一食もせず、最低限の水を飲んでその場にずっとい続けました。夜になれば剣を大事そうに抱き、座って寝る。しかし一時間程度しか寝ておりませんでした。それ以外ではずっと何もせず座り続ける。焚火もせず、ただただ体力を温存するかのように動かず、正直よく生きていると思いました。
そんな生活が一週間ほど続いたある時、大量のモンスターを連れた犯罪組織の方々が現れました。彼女はそのことを足音で気付くと、私を物陰へ隠し、魔法で姿が見つからないようにしてくれました。
そして犯罪組織の方々がその姿を現すと、大事に抱えていた剣を鞘から抜き、彼らと戦いました。
大量のモンスターと、武器を抱えた構成員達。そんな相手に臆することなく彼女は彼らと剣を交えました。その様子は本当に驚くものでした。ほとんどの攻撃を魔法と剣でしのぎ、素早い動きで駆け回る。
そして彼女はその剣と詠唱なしの魔法だけで敵を余さず倒したのですから。
しかし彼女も無傷とは言えず、傷だらけでした。ローブは意味をなさず、引っかかっているだけ。モンスターが吐いた炎で火傷もひどく、垂れさがった指先からは血が滴るほど。その状態でも彼女は敵がいなくなるのを確認するまでずっと地面に突き立てた剣を支えに立っていましたが、力尽きて倒れてしまいました。
その後は私にも状況を理解することはできませんでした。彼女に近づこうにも、まだ敵がいるかもしれないと思い隠れて見守っていますと、何処かに隠れていたのか二足歩行のモンスターが現れたのです。そのモンスターは手に持っていた“何か”を彼女に近づけました。すると彼女から光が溢れ、その光は“何か”に吸い取られていったのです。光が出なくなると、モンスターはそのまま何処かへ走り去ってしまいました。すると今度は空から光が注いで、辺りを白く塗りつぶしました。そして光が消えると、その場に彼女はいなくなっていたのです。その後、しばらく経っても彼女は現れず、私は今後犯罪組織が現れるかもしれないことを考慮して今の場所に移りました。
「そんなことが……」
「はい。そして今のお話に出てきた彼女こそ、ルナさん、あなたなのです」
「き、記憶喪失前の私ってとんでもないほど強かったんですね……」
「今のアンタからはあんまり想像できないわね」
「凄いですぅ」
まさか記憶喪失前の私がそんなことをしていたなんで、驚きだ。しかも大量のモンスター&構成員を一人で倒したなんて、今の私にはできそうにない。
しかし剣というのは気になった。というかさっき弾き飛ばされた剣回収するの忘れてたなぁ……
「そしてその数日の中で私は色々お話を聞きました。とはいっても私から質問し、彼女が答えてくれただけですが……」
「それでいいので教えてください。今のお話を聞いて尚更気になりましたから」
「そうですか。では、まず私が聞いたのはあなたのお名前と何をしている方なのか訊きました。そこであなたは自分のお名前を『ルナ』と名乗り、旅をしていると言いました。その後も色々訊きました。するとあなたは自分はゲイムギョウ界を女神や私達ゲイムキャラといった者達とは別の観点から守護する存在であり、ここに来たのは犯罪組織がゲイムギョウ界を支配するために邪魔ものを排除するためゲイムキャラを探しているから、守るために来たと言っていました」
「…私が、守護する存在?」
それは初耳だ。まあ喪失前の私を知ってる人に会ったのは今回が初めてなんだからそりゃそうなんだけど……
「はい。さらにお話を訊くと、ここに来る前も色んな場所で、色んな敵と戦いながら来たと言っておりました。そのせいで長い間使っていた衣類がボロボロになってしまったと」
「だからルナが落ちて来た時の服がボロボロだったのね」
「そして自分の使命はゲイムギョウ界を守ること、と言っておりました」
「ゲイムギョウ界を守る……」
記憶を失う前の私は、そんな重大な使命を抱えていたのか。今の、記憶を失った私が回避したいような重いことを。
それに女神様とは違う、守護する存在ってなんなんだろうか。それに記憶を失う前の私は何がしたくて、何が出来たんだろう。
どうしてその私は、そんな使命を抱えることになったんだろう。どうしてそれを受けたんだろう。
頭が痛くなる。それはさっき殴られたのが痛むんじゃなくて、あまりにも話が膨大になったからだ。
想像してたのは、記憶を失う前の私がたまたまゲイムキャラに会って、お話をした程度だと思っていた。
でも実際には守るとか戦うとか。そんなことばかりだ。
なんでなんだろうな……
「それ以外のことは何も教えてはくれませんでした。ただ無言でいるだけで」
「そうでしたか……」
「まさかルナちゃんがそんなに凄い存在だったなんて……」
「ならなおさら早くルナの記憶を取り戻さないと」
「それでゲイムキャラさん。今向かっている場所はそのルナちゃんが戦った場所とのことですが、何故そこに私達を?」
「その場所にはルナさんの剣が残されているのです」
「私の、剣……?」
「はい、丁度見えてきました」
そう言われて先を見れば今私達がいる長い通路の終わりが見えてきた。通路を抜けるとそこは広々とした今までいた場所以上に広い場所で、その中心には光に照らされて銀色に輝く剣が地面に垂直に突き刺さっていた。
後書き~
正直武器は何にするかルナの名前以上に考えました。結果、ルナの名前の由来から連想づけて考えました。次回武器の名前が登場するはずです。
それでは次回も会えることを願って。
See you Next time.