月光の迷い人   作:ほのりん

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前書き~

前回のあらすじ
下っ端にパープルディスクを破壊されたものの、中身のゲイムキャラのおかげで力を得ることが出来たネプギアとルナ。月のように輝く剣も手に入れ、好調のルナたちは、今回のことを報告するために教会への帰路を辿ったのでした。
今回は街中の移動からお送りします。
紅茶でも片手に、ごゆるりとお楽しみください。



第十三話『外への旅立ち』

 この剣は生きている。そう感じたのは多分ゲイムキャラがこの剣に吸い込まれたとき。

 でも意思を持っていると感じたのは私の声に答えてくれた時。

 じゃあこの剣が力を持っていると感じたのはいつかって言うと……

 

「なんか、今日は驚かされっぱなしな気がするんだけど」

「も、申し訳ないです……」

「る、ルナちゃんが悪いわけじゃないよ」

「あいちゃん、意地悪な言い方しちゃダメですぅ」

 

 そう言いながら私達は教会へ向かって、町の中を移動していた。

 

 

 ──あのモンスターの大群に囲まれて絶体絶命だって、そう思った。

 でもゲイムキャラが剣に吸い込まれて、剣の命が蘇った時に勝敗は決した。

 剣はとんでもないくらい力を秘めていて、それでいて私の体の一部かと錯覚するくらい私の体と力に馴染んでた。

 あれだけ悩んでた…というほど悩んでないけれど、キングスライヌ以降魔力の欠片すら感じなかったのに、剣を振るってるうちに感覚で剣に魔力を込めて使うっていう使い方ができるようになった。例えば剣の属性を変えるとか? そんな感じ。後その感覚で魔力を使う感覚を思い出したのか斬撃とか放ったり、少し余裕がなくなってきたら魔力弾っていう魔力で作った弾を放ったりなんてことができるようになってきた。

 その結果、モンスターは徐々にいなくなっていって、見事私達パーティの勝利を収めたのだ。わっはっは。強いだろー。

 

 ちなみにみんなして終わる頃には息が切れてたけどね。

 でも経験値っていうのかな? いっぱいモンスターと戦ったら、今はもういっぱい強くなった気がするよ。

 今じゃ何も意識しなくても魔力弾が生成できてしまう。それも少し練習するだけ複数の弾を生成することが出来そうだ。もっとも、あのときみたいなとんでもない威力を持った魔法はまだ無理みたいだけど。

 

 ともかく無事に私達は教会へ帰還できる。それはとても良いことで、しかもきちんとゲイムキャラの協力を得ることが出来た。

 まぁあのリンダ…ああ下っ端のことね。そいつのせいでゲイムキャラのディスクは壊されちゃって、残った力をネプギアと私に渡したら消えちゃったのは少し残念だったかな。出来るならゲイムキャラを壊されず、尚且つ協力を得られたら文句なし。追加で下っ端を捕まえられたら大手柄だった。

 でも過ぎたことをくよくよ嘆いても仕方ないし、人生前向きに生きていかなきゃ。…記憶喪失の私の言葉だから、少しは説得力あるかな? 

 それにネプギアが力を貰っただけじゃなくて、私が専用武器と、ゲイムキャラの加護? を得たのは思わぬ収穫だ。大幅に戦力アップしたということ。

 もっとも、この剣も私が記憶がないせいでまだ十分に力を発揮出来てない感じがするけど……

 そこは鍛えるしかないね!! 

 

 とりあえずイストワールさんには良い報告が出来そうで、ネプギア達の表情も少しばかり明るい。それが嬉しくて、こっちまで嬉しくなっちゃうね。

 心なしか、腰につけている鞘に入った剣も嬉しそうにしてる気がするよ。

 …え? 私にまた会えたことが嬉しいの? それに私が嬉しそうにしているのが嬉しい? 

 そっか、私はまだ君のことを思い出せないけど、嬉しいなら、良かったよ。

 と、少しばかりの心の中での会話。

 戦闘が終わって休んでいた驚くことにこの剣は感情を…意思を持っていることに気が付いた。

 つまり生きている剣、ということで、とんでもない剣だ。

 しかしその剣と意思疎通ができるのは私だけで、どこかの異世界の留め具をカチカチ鳴らして話す口の悪い剣とは違って話すことが出来なかった。

 それでも力が全て戻れば少しはマシになるらしいのだが、その力…守護の力は四つに分けて各国のダンジョンにあるらしい。何それ聞いてないんだけど。

 ま、まあどうせこれから各国を周ることになるんだし、そのついでに戦力アップも兼ねて力を回収していこう。あくまでもしもの時の一時的な避難所にするためにそこそこ安全なダンジョンに撒いただけみたいだし、女神様を助け出して、犯罪神を封印か倒すことができれば必要なくなるらしいし、そのどちらも達成するためには、力を取り戻さないといけないから、どっちにしても回収しないといけないみたいだし。

 後、剣が意思を持っているのは皆さんには伝えてある。というかさっき剣が光ってた時にそんな感じになってたから分かっている。でも私が剣と意思疎通ができるというのは伝えてない。

 剣とは向こうの意思は曖昧に伝わってくるだけで具体的には伝わってないって言っておいた。だって剣と会話できるみたいなこと言えば、なんか心配されて、病院送りにされない? 具体的には精神科送り。それは絶対に避けたいかなぁ。目が覚めた日に色々なって病院送りになったわけだし……

 ま、まあそのうち言えばいいよね。大丈夫大丈夫。

 ちなみに意思疎通が可能だって分かったところで剣の名前を聞いてみたら『月光剣(ムーンライトグラディウス)』って名前なんだって。どうりでさっき頭に君の名前と思わしき名が頭に浮かんだわけだよ。なるほどぉ。そこまでカッコいい名前でもないね。長いし。

 さらにこの剣、ちょっとした収納機能があるみたい。さっき鞘に入った剣って言ったけど、その鞘はこの剣から出てきたものだ。そして鞘以外にもう一つ、今は収納されてないけど、別のあるものが入るみたい。でもそれ以外は収納できないし、出すこともできないんだって。本当にちょっとしたものだね。もう少し何か入れれてもいいじゃん。

 まあそこはNギアがあるからいいとして、このままだと体のどこかに剣を身に着けておくことになるから、Nギアの武器収納機能が使えるかって聞いたら「使えるけど嫌だ。外に出ていたい」だって。君は何処かの頬っぺたが赤い黄色いネズミのポシェモンなのかな? 

 まあ実際身に着けてみると別に気にならないし、重いとも感じなかったからいいけどね。

 

 …しかしこれでしばらくこの国とはお別れか……

 まだ目覚めてからそこまで経ってないし、行った場所だって少ないけど、それでも愛着が湧き始めてただけに寂しく感じる。それに少しだけだけど一緒に働いた事務部の人達との別れもだ。

 でもやっぱり帰ってくるんだから、今だけの別れなんだから大丈夫だよね。

 ほんの少し先に心配するんじゃなくて、もっと先に希望を持たなきゃ。

 それで一日でも早くネプギアのお姉さん達を助け出して……

 そうそう、過去の私が言っていた、私の使命も忘れないで。

 ゲイムギョウ界を、頑張って救おう。皆さんと一緒に。

 それで平和になった世界でいっぱい遊んで、いっぱい仕事して。いっぱい頑張る。

 それでいつか私の記憶も取り戻さないとね! 

 イストワールさんに報告するのが、今から楽しみだなぁ。

 …まぁ私は報告するとき一緒にいて、剣について説明するくらいだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


[プラネテューヌ教会]

 

 

「──では無事にゲイムキャラの協力を得ることが出来たのですね」

「しかしゲイムキャラは壊され、犯罪組織の組員を逃してしまいました。申し訳ありません」

 

 教会に着いた私たちはすぐにイストワールさんの元へ。

 今はアイエフさんが今回のことの説明と、結果報告。ひとまずゲイムキャラの協力を得られたことと、犯罪組織の組員に襲われたことを報告した。

 

「いえ、今回の目的はゲイムキャラの協力を得ることでした。それを達することが出来、皆さんが無事に帰ってきました。それで十分ですよ。しかし……」

「はい。マジェコンヌの連中も、ゲイムキャラの存在に気付いてるってことですよね」

「おそらく犯罪組織は他の国のゲイムキャラも破壊しようとするでしょう。それだけはなんとしても防止しなければ……」

 

 もしゲイムキャラが全て破壊されれば、女神様もゲイムキャラも失ったこの世界は、きっとすぐに犯罪神に支配されてしまうだろう。そんなことは直接聞かなくても分かることだ。

 と、そこでイストワールさんの視線が私へ向いた。

 

「ところでルナさん。貴女の腰に着けている剣は一体……」

「えっと、実は──」

 

 今度は私が説明する番だった。

 私はゲイムキャラに会った時、向こうは記憶を失う前の私と出会っていたこと。それで昔あった犯罪組織による集団襲撃から昔の私がゲイムキャラを守ったこと。それにより私が倒れて、そのままいなくなってしまったこと。その場に剣だけが残されて、その剣が今こうして手元にあることを説明した。

 

「そうでしたか…ルナさんの失ってしまった過去にそのようなことが…ルナさん、よろしければその剣を少し見せていただけませんか?」

「はい、いいですよ」

 

 そう言って私は見やすいように、と剣と鞘を別々にして置いた。

 

「では…ってこれは!?」

「どうかしましたか? イストワール様」

「…ルナさん、こちらの剣はどこで拾われたのですか?」

「え? えっと…今回行ったバーチャフォレストの最深部…その更に奥だったかな……」

「はい、ゲイムキャラさんに案内されたのは奥でしたけど…いーすんさん。この剣がどうかしたんですか?」

「…実はこちらの剣…私の古い友人が持っていた剣と僅かな違いが見られるものの、ほぼ同じものなのです」

「えっ!? それってどういうことで……」

「わかりません。しかし何らかの事情で過去のルナさんがこれを手に入れ、そしてゲイムキャラが言っていたことに繋がるのではないかと……」

「…じゃあもしかしたら、そのイストワール様の古い友人とルナには何かしらの関係があるかもしれない。その可能性が出てきたかもしれないってことね」

「あくまで可能性の範囲ですが、そういうことですね」

「…ってことはまたルナちゃんの記憶の手がかりが掴めたんですね! やったねルナちゃん!」

「う、うん。あくまでそうかもしれないってだけだけど、何もないよりはマシだね」

「はいです。それでいーすんさん。そのお友達は今、どこにいるです?」

「それが、ずっと昔に旅に発たれてから行方が分からず……」

「ってことはこの国にいない可能性もあるわけね……」

「でしたら他の国へ行ったときに街の人達に訊いてみましょう! そしたらそのお友達も見つかるかもしれません!」

「そうね。旅の道すがら探してみましょうか」

「すみません。私の事情に皆さんを巻き込んでしまって……」

「謝らなくていいよ、ルナちゃん。私達がやりたくてやってるんだもん」

「それに見捨てることもできないしね」

「女神さん達も、ルナちゃんの記憶も、絶対に取り戻すです!」

 

 あぁ、やっぱり皆さんは本当に優しい人たちだな。

 前にも思ったけどさ。私、記憶喪失になってから会ったのが皆さんでよかった。

 正直まだ記憶が取り戻せる目処は立ってないけどさ、それでもこの人達についていけば何とでもなるんじゃないかって思えるんだよね。

 それでも記憶を取り戻さなきゃいけないって、ゲイムキャラさんの話を聞いた後だとそう強く思うようにはなったけど、それでもやっぱりこのままでもいいって思う私もいるのが、少し嫌だなって思った。

 まあなるようになるさ。頑張ろう。

 

──この時はそう思ってた。でも私は後になって思う。この時の私を全力で殴ってやりたいって。そんな甘い考え消し飛ばさないと死ぬぞって。

 

 …なーんて。そんなことを思うような未来が来ないといいな…

 

「さて、それじゃあ次のゲイムキャラを探しに行くわけだけど……」

「あの下っ端さん、次はラステイションに行くって言ってたです」

「急いで追いかけましょう。でないと、また先を越されちゃいます」

「…どうやらネプギアさんは、もう吹っ切れたみたいですね」

「あ…はい、まだちょっと怖いですけど、でも、もう平気です!」

「安心しました。さて、そういうことでしたら、みなさんは急いでラステイションに向かってください。そこでシェアの回復とゲイムキャラの探索、ルナさんの記憶の手がかりを…ああ、そうです。もう一つ大切なことがありました」

「大切なことです?」

「ラステイション、そしてルウィーにはそれぞれ、ネプギアさんと同じ女神候補生がいます。彼女達にも協力を仰いでみてはいかがでしょうか?」

「ノワールさんと、ブランさんの妹ですね」

「私と同じ、女神候補生……」

 

 確か前にイストワールさんに説明してもらった内容だと、ラステイションの女神様がノワール様で、ルウィーの女神様がブラン様だっけ。その二人の妹さんか…。きっと女神様の妹なんだし、ネプギアと同じで可愛い子達なんだろうな。仲良くできるかな。できれば仲良くできると嬉しいな。

 

「それぞれの国にも事情はありますし、すんなり頷いて頂けるかは分かりませんが、まずは、話だけでも聞いてもらいましょう。彼女達も、お姉さんである女神を救いたいという気持ちは、同じはずですから」

「それじゃ、やることは決まったわね。さあ、行きましょうか。ラステイションへ!」

「「はいっ!!」」

 

 その返事はネプギアさんとハモって、皆で笑ったら、何だか不安が飛んでっちゃったかもしれない。

 …うんっ。頑張ってネプギアのお姉さんを助けないとね! 

 ふぁいとー…おー!




後書き~

次回、多分ラステイションからお届けします。
それでは次回も会えることを期待して。
See you Next time.

今回のネタ?らしきもの。
・どこかの異世界の留め具をカチカチ鳴らして話す口の悪い剣
『ゼロの使い魔』から主人公才人が手にする相棒「デルフリンガー」です。月光剣は彼と違い口は悪くない…はずです。

・頬っぺたが赤い黄色いネズミのポシェモン
某ポケットに入るモンスターの中で一番人気のあるあのモンスターですね。ポシェモンは原作ネプのネタです。

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