前回のあらすじ。
バーチャフォレストでプラネテューヌのゲイムキャラから力を、ルナは剣を得たことをイストワールに報告したルナ達一行。次の目的地をラステイションへと決め、旅立ちました。
それではごゆるりとお楽しみください。
第十四話『初めての
私は一人、ある場所に行った。そこは木々に囲まれながら、中心に大きな大樹がある少しだけ空けた場所。大樹は一年中その枝いっぱいに桃色の小さな花を咲かせ、その花びらで地面は少し、桃色で染まっていた。
その大樹の下に、小さな女の子がいた。金色の髪と碧玉色の瞳を持つ、幼い容姿の女の子。でもあの子は私よりも大人だ。私よりもずっと幼い見た目をしていて、それなのに私より大人の女の子。彼女は私の頼れる●だ。私はあの子の●でいられることに誇りを持っている。
そう考えながら見ていたら、あの子は私に気付いてくれた。私を見て、柔らかく、優しく微笑んでくれた。私を見て、私が来たことに嬉しそうに。
私はあの子の笑顔が好きだ。私を幸せな気分にさせてくれる笑顔が好きだ。どんな時も頼りになる笑顔が好きだ。どんな絶望のどん底にいても、励ましてくれる優しい笑顔が好きだ。私や周りを勇気づけさせてくれる逞しい笑顔が好きだ。どんなに暗い雰囲気でも、明るくさせてくれる太陽みたいな笑顔が好きだ。
だから私は、あの子の顔を曇らせることが嫌いだ。あの子を悲しませることが大嫌いだ。
だからあの子を悲しませる奴は絶対に許さない。誰であっても、大嫌いだ。
例えそれが、私であっても……────
[ラステイション]
「ここが、ラステイション……」
「わあ…本当に機械だらけの街なんですね!」
私の呟きにネプギアが続く。目を輝かせ街を見渡す彼女に、こういうのが好きなんだな。意外だなと思った。
まあ人の趣味はそれぞれだし、機械が好きな女の子も世の中少なくはないだろうしね。
「ルナちゃんはともかく…ギアちゃんはここに来るの初めてですか?」
「はいっ! 話には聞いていたんですけど。お姉ちゃんが、たまにラステイションの機械を買ってきてくれたりして。ああ、楽しそうだなぁ。見て回りたいなぁ……」
「今は我慢しなさい。私達にはやらないといけないことが山積みなんだから」
「そ、そうですよね。私達ががんばらなきゃラステイションもなくなっちゃうんだし。ガマン…ガマン……」
「それであいちゃん。何か行くアテはあるんですか?」
「そうね。まずはギルドで情報収集かしら。ついでにクエストでシェアの回復もしなくちゃいけないし」
「なら私、街で情報収集してきます。きっとギルドで集められない情報も出てくると思いますので」
「じゃあ街での情報収集はルナに任せようかしら」
「はい! いってきます!」
と、私は跳ぶようにラステイションの街へ駆け出した。頼りにされたのが、何となく嬉しかったから、思わず駆けだしたわけだが、それを
「あっ、ちょっと! …あの子大丈夫かしら。初めて来る街で地図もなしに……」
「た、多分大丈夫だと思いますよ。Nギアに基本機能として地図アプリも入っているはずですし」
「それもそうね。もしものときは連絡も取れることだし、私達は私達で行きましょうか」
「はいです」
「…ここ、どこ?」
アイエフさん達と分かれて早々、私は暗い裏路地にいた。
どうしてこんなところにいるかっていうと、いつの間にかこんなところにいたというか……
色んな人にゲイムキャラや犯罪組織について聞こうと歩いてて、気付いたら当たり前な話だけど全く知らない場所にいて、アイエフさん達と分かれた場所が分からなくなって、あっちこっち歩き回っているうちにこんなところに着いてしまった。
つまりは……
「迷子になっちゃった……」
…この歳で迷子かぁ……
どうしよう。アイエフさん達はクエストに行っちゃってるから、どこかで合流とかはできないだろうし、せめて分かれた場所に着ければいいけど、その場所も分からなかったりするし、こんなところに人なんていないだろうし……
そう思ってたら、どこからかコツコツと足音が聞こえた。こんな裏路地に人って来るんだな、と思ったけど、もしかしたら不審者だったりするかな。どうしよう、せめて大通りへの行き方を聞ければいいけど……
と、私が警戒をしていると、その足音の主は曲がり角から姿を見せた。
「あれ? こんなところに女の子がいるなんて、珍しいね」
そう言いながら私に近づいてきたのは、灰色のフードの付いたパーカーを着た小柄な男性だった。私は変な人ではなかったとほっとしたが、すぐにあることに気付いて先ほどよりも強く警戒した。
男性が着ている服は、ここに来る前。バーチャフォレストで見た犯罪組織の構成員。下っ端のものと同じものだったからだ。
「どうしたの? もしかして迷子なのかな?」
「…ええ。ちょっと道に迷ってしまって」
「そっかそっか。この裏路地って妙に入り組んでるからね」
相手は私が警戒していることに気付いていないようで、私に微笑む。あの下っ端と比べたら良い人みたいだけど、警戒を解くわけにはいかない。
「そうだ。ここで会ったのも何かの縁。よかったら僕の話を聞いてくれないかな」
「話?」
「そう、いいかな?」
「まぁいいですけど……」
何を話すかは分からないけど、もしかしたらゲイムキャラについての情報か、敵の情報が聞けるかもしれないからいいかな。その後ネプギア達と分かれた場所まで案内してもらえればいいし。
「実は僕、犯罪神を信仰している犯罪組織マジェコンヌに入ってるんだ。まぁ組織の中でも下っ端だけどね」
「へぇ……」
「それで色々と活動してるんだけど、その活動の中に『仲間を増やす』っていうものがあって、色んな人に声をかけたりしてて」
「…もしかして勧誘ですか?」
「ははっ。ぶっちゃけちゃうとそういうことだね。とはいっても君に声をかけたのも、ここを通りかかったのも偶然だけどね。でもせっかくだ。よかったら見学だけでもいいから、マジェコンヌを見てみないかな? それであわよくば仲間になってくれたりして…なんてね」
「でも犯罪組織は悪い組織だと周りから聞かされてるんですが」
「うーん、確かに悪いことをする人も組織の中にはいるよ。でもそれって他の集団でも一人はいるような存在。皆が皆、悪いことをする人じゃない。困っている人を助けたい。そう思って活動している仲間の方が多いんだ」
「は、はぁ……」
「君も困っている人を助けたいとは思ったことはない?」
「…そりゃありますよ。自分で言うのもなんですが、目の前で重い荷物を持っているおばあちゃんがいたらすぐに助けるタイプです」
「そんな君なら犯罪組織にぴったりだ! 何せ犯罪組織はそういう人だけでなく、個人では助けられない人を、そして女神様に救われない人を助けるための組織なんだ。だからまずは見学だけでも来てよ! 大丈夫。見るだけなんだから!」
まぁ集団で人助けを行えば個人で助けられない人を助けられる。女神様の手が届かない人も助けられるだろう。でもそれで犯罪に走るのはどうかと……
あっ、でもこれはチャンスかも。
女神候補生のネプギアや教会職員のアイエフさん達と違って私は悲しいことに何の職にも就いていない一般人。だから顔も知られてない。知られてるとしたら下っ端ぐらいだろう。それは犯罪組織の中に私を知ってる人はいないに等しい。だから彼は私を仲間に誘ってきたのだろう。
ならば見学するふりをして、色々と情報を聞き出そう。うん。我ながらなかなかいい考えだ。
よし、この考えを悟られないよう、慎重に事を運んでいこう。
「…まぁ、見学だけなら……」
「よかった! なら活動している場所を案内してあげるよ。こっちこっち!」
彼は嬉しそうに私を手招きする。後に着いていけばスキップでもしそうなくらい嬉しそうに歩くのが、後ろ姿でも分かるくらいの浮かれぶりで、私の考えなんて全く気付いていない様子に安堵。
このまま彼に着いて行って、そこで彼ら犯罪組織の活動拠点…仮でもいいけど、そこさえ見つけられれば真か嘘のゲイムキャラの情報を集めるよりも良い手柄になる。だって少なくても犯罪者を捕まえることが出来るのだ。敵の戦力を削ぐには良い機会。
さぁて、女神様、ひいては楽したい私のために活動拠点への案内をよろしく頼むぜ?
後書き~
道に迷った先で構成員に誘われ、それをチャンスとし犯罪組織を見学することにしたルナ。はたして目的は上手くいくのでしょうか。
それでは次回もお会いできることを期待して。
See you Next time.
支配エンドルートが読みたいかどうか。
-
読みたい
-
読みたくない
-
支配エンドとは、
-
ゲハバーンを手に取ったネプギアが、
-
次々と女神を殺すエンドである。