月光の迷い人   作:ほのりん

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前書き~

前回のあらすじ。
黒髪の彼女(ユニ)と再会しました。下っ端が潜んでました。クジラ(ホエール)を置いて行きました。呆気に取られました。
今回はそのクジラを何とかするようです。
それでは今回もごゆるりとお楽しみください。


第二十話『ホエールと白金の少女』

「フォオオオオン! フォオオオオン!」

 前回のあらすじ。下っ端が置き土産を置いてった。(遠い目)

 

「なにこれ、とんでもなくデカいクジラですね。実物大ですか?」

「現実逃避しない! というかなんでこんなデカいモンスターがこんなところにいるのよ」

「実はかくかくしかじかでして」

「まるまるうまうまなわけね…ってそれで通じるわけないでしょ」

「えー」

 

 さすがにまだそこまで仲を深めてたわけじゃないから通じないかー。

 それならそれで普通に説明するけどね。

 と、私はさっきまでの出来事を包み隠さず伝えた。

 

「またアイツなのね」

「犯罪組織には下っ端さんしかいないです?」

「いや、さすがにそれはないかと……」

 

 と、コンパさんに答えつつも、実際犯罪組織の構成員は下っ端しか見ていないネプギアの表情は苦笑い気味。

 大丈夫、ちゃんと構成員は下っ端以外にもいっぱいいるからね。少なくともラステイションにはいっぱいいるから。犯罪組織ってなれば、ネプギア達女神様を倒したっていう四天王もいるし……

 

「でもこれ、見た目的にクジラ…水棲動物のモンスターですよね? どうして下っ端は陸に出したんでしょうか?」

「モンスターの中には水陸どちらでも生活できる種族がいるのよ。で、今ここにいるのは多分ホエール種だとは思うんだけど……」

「通常の個体の何まわりも大きいですね……」

「そうなんですか?」

 

 質問ばかりの私だけど、私自身に知識なんて皆無なのだから仕方ない。

 そんな私の疑問に、今度はユニが答えてくれた。

 

「そりゃ個体によっては異常な変化を遂げた個体もいるわ。最近じゃ犯罪神のシェアに当てられた汚染化されたモンスターもいる。でも、こんなに大きくなることなんて、まずありえないわよ」

「ルナの話だと下っ端が何かしらの方法でここにこのモンスターを出現させたんだとは思うけれど……」

「例えば某ポシェモンを運ぶための紅白のボールのような?」

「そんなものあるとは思えないんだけれど……」

 

 アイエフさんはそう言って何か考え始めてしまったので、私は改めて目の前のモンスターを見る。

 全体的に水色の肌に白っぽい色のお腹。頭の方には触覚みたいなのが二本生えていて、角みたいなのも確認できる。相変わらずこの世界のモンスターはコミカルというかファンシーというか……

 でもそうやって冷静に見ていると、不思議に思ったことがあった。

 

「あの、この個体が異常な大きさをしているのは分かったんですが、そのホエール種? も水陸両生なんですか?」

「…? ええ、そうだけど……」

 

 アイエフさんは「それがどうしたのか」と聞きたそうな顔で私の質問に答えてくれた。

 でも、本当にアイエフさんの言う通りであるなら、私の疑問はさらに深まる。

 だって……

 

 バタバタ。バタバタ。

 

「フォオオン! フォオオオン!」

 

 バタバタ。バタバタ。

 

「…本当に?」

『……』

 

 私の言葉に、皆さんは黙ってしまった。

 だってこの目の前にいるクジラ型モンスター。バタバタとヒレを動かしてるだけで、全くその場から動くことができていないし、私達を倒そうとすらしていない。

 そう、まるで浜辺にうちあげられたクジラのようで……

 

「これ、本当は水の中でしか生きられないんじゃ……」

「生きられない、というよりは移動できないみたいですね」

「本当、何なのかしらこのモンスター」

 

 もはや脅威もへったくれも無くなったクジラに、呆れ顔の私達。

 なんだって下っ端はこんなので私達を倒そうと思ったのか……

 

「って、ああっ!?」

「なっ、どうしたのよ一体! 急に大声だして!」

「だだ、だってあれ!」

 

 そう言って私が指差したのは、モンスター…ではなく、正確にはモンスターが動けないでいる道の奥。つまり通路。

 

「“あれ”? モンスターしかいないけど」

「何を驚くことがあるっていうの?」

「そのモンスターが塞いじゃってる道だよ! ここ行き止まりなのに!」

 

 女神候補生の二人の言葉に私はすぐに答えると、皆さんはようやく気付いたようで「あ…」と口を開けた。

 少しメタいかもだけど、読者の皆さんも考えて欲しい。今私達がいるのはセプテントリゾートで、海のダンジョンである。そしてこのダンジョンは人工的に作られた幾つかの円形の陸と、それを繋ぐ細い通路で出来ている。

 その中で私達が今いるのは、行き止まりの陸。つまりここへ来るのも、ここを出るのも陸の道は一つだけ。

 そりゃ女神候補生のお二人なら変身して空を飛べば何の問題もないが、私やアイエフさん、コンパさんの飛べない三人はどうしようもない。

 唯一陸以外で移動手段があるとすれば、海を渡ることだが、こんなとこに船なんてないし、泳ぐなんてもってのほかだ。水着なんて持ってないし……

 ちょっとした、袋の鼠というわけである。

 

「まさか下っ端のやつ、これを狙ったんじゃ……」

「と、とにかくこれを何とかしないといけないのは絶対ですから、何とかしましょう! ユニちゃんも手伝ってくれる?」

「ま、まあ別にいいわよ。手伝ってあげようじゃない」

「わーい! ありがとう、ユニちゃん!」

「べ、別にアンタのためってわけじゃないんだからね!」

 

 ああ、微笑ましいかな、青春」

 

「ルナちゃん、声に出てるです」

「おやうっかり」

「全く。ともかくネプギア、このモンスターをどうにかするにしても、何か案はあるわけ?」

「えっと…このモンスターを何処かへ移動させるか、倒すか、ですよね」

「移動は流石に無理でしょ。こんなのアタシやネプギアがやっても重くて運べないわ」

 

 ユニの言ってることに納得する私。普段は普通の女の子に見えるネプギア達…いや美少女だろ、とか女神化後もただの美少女にしか見えないだろ、とかのツッコミは置いておいて、そんな二人だけど、女神化後は人間の何倍も力が増すらしい。力が増すってのはつまり、筋力も増すということ。一体あの華奢な体のどこに人間の何倍もの筋力を出せる筋肉があるというのだろうか。

 …こほんこほん。ともかく、力が私達よりあるネプギア達がやっても無理ってことは、私達が手伝っても無意味だということだ。

 移動作戦は即落とされた。

 

「なら倒すってことでいいですよね?」

「ええ、それが一番手っ取り早いわ」

「でも油断しないで。このモンスター、ホエール種は総じて危険種以上。このモンスターが新種なのか異常個体なのかは分からないけれど、強いのは確かよ」

「分かりました!」

「了解です!」

「いえっさー!」

「分かってるわ!」

 

 そうとなったら行動は早い。変身を解いていなかったネプギア達は空から。私達人間組は地上から攻撃をし始めようとした。

 でも……

 

『止まってください、マスター』

「えっ…?」

 

 私は月光剣の言葉に思わず動きが停止。

 だけれど周りは私が止まったことに気付かず攻撃をし始めて、すぐに月光剣が止めた理由が分かった。

 

「どうなってるのよこの皮! 全く剣が通らないじゃない!」

「針が…針が折れちゃったですぅ!」

「ダメ、弾丸も通らないわ!」

「こうなったらM.P.B.Lで…ってこれも効かないっ!?」

「…あぁ~」

 

 そうだった。これは通常の個体とは違う、異常な個体。

 私達は見た目の大きさとか、何故か陸を動けないとかが印象的過ぎてそこまで考えてなかったけれど、普通異常なところは外側だけでなく、内側もそうだと考えておくべきだった。

 異常なのは、見た目だけじゃないんだ。

 

「となると、私達にこのモンスターを倒せるのかな?」

「ごめんなさい。油断するなとか言っておきながら、油断してたわ。まさか防御まで異常だったなんて」

「こんなのどうしろっていうのよ……」

「あ、あきらめちゃダメだよ! 何か方法はあるはず……」

 

 女神化を解除したユニの言葉に同じく女神化を解除したネプギアが励ます。

 しかし残念ながら私達のレベルではあんな防御力に能力値全振りしたようなモンスターを倒すなんてそんなの……

 

『いつからあのモンスターを倒さねばならぬと錯覚していた?』

 

 なん…だと……!? 

 って、君までパロネタ使えるの!? 

 

『私はマスターの剣。マスターには及びませんが、少量であれば』

 

 昔の私はどんなやつだったんだよ……

 それはまあ、今は置いておいて。

 さっきの言葉の意味、教えて。

 

『はい。まずあのモンスターですが…私達に敵対心を持っておりませんでした』

 

 でした…ってことは、今は違うの? 

 

『はい。先ほど皆様が攻撃したことにより、彼も攻撃した皆様のことを敵だと認識したようです』

 

 なら今の攻撃が通じた通じてないはともかく、悪手だったか。

 

『しかし彼はどうやら私達に攻撃するつもりはないようです。先ほどまでのバタバタは動けなかったため。今のバタバタは私達から逃げようと必死になっているだけのようです』

 

 そ、そんなの分かるんだ……

 

『マスターの剣ですから』

 

 便利な言葉だね……

 で、どうしろっていうの? 

 

『はい。彼は私達と戦いたいわけではありませんので、逃がしましょう』

 

 逃がすって、この場に放置? 

 

『放置はさすがに可哀想です。この太陽の下。長時間水に浸からずに放置されれば……』

 

 あ~うん。分かった。あんまり想像したくないからそれ以上言わないでくれ。

 でもそうなると、このモンスターをどうにかして海に戻す…戻す? いや水棲動物だから戻すでいいんだよね…? 

 ともかく、海にインさせちゃえばいいんだよね? 

 

『はい』

 

 でもそれって凄く難しいんじゃ……

 だって女神候補生二人の力を使っても持ち上がりそうにないこの巨体。一体どうやって移動させれば……

 

『こういう時の私の記録と、マスターの力です』

 

 記録は分かるけど…私の力……? 

 

『はい。記憶と力を失ったマスターといえど、この程度のモンスターを運ぶなんて造作もありません!』

 

 そ、そうなの? 

 

『はい!』

 

 そ、そーなのかー……

 

『というわけで、このモンスターを運ぶためには、まず一旦落ち着かせてください。このままでは運ぶ時に暴れられて落としてしまいます』

 

 わ、わかった……

 

「──ナちゃん。ルナちゃん?」

「あっ、うん。なに、ネプギア」

「ルナちゃんは何か思いついた?」

「え? あー、うん……」

 

 思いついたといえば思いついた、私じゃなくて剣が考えた案ならあるけど……

 

「あのね、最初に却下されたこのモンスターを移動させるって案。どうも出来るみたいで……」

「はあ? どうやってやるっていうのよ」

「そ、それは…そのぉ……」

 

 ど、どうやってやるの!? 

 

『女神候補生にマスターの力を一時的に与えます。それにより女神の力が一時的に上がり、このサイズのモンスターを運ぶことが出来るはずです』

 

 って、私じゃなくて二人がやるんかい! 

 しかもそれすらどうやるか分からないんだけど!? 

 

『今回、コントロールはこちらで行いますので、マスターはこちらの指示に従ってください』

 

 従えって、私がマスターのはずなんだけど!? 

 と、ともかく伝えよう……

 

「えっとね、まずこのモンスターを大人しくさせて、それからネプギアとユニの二人へ力を与えるから、二人が運んでくれると嬉しいなぁ…って」

「嬉しいなぁって、大人しくさせるとか力を与えるとか、そんなことアンタに出来るの? 出来るようには思えないんだけど」

「ま、まあまあユニちゃん。ルナちゃんも何か考えがあるみたいだし、やってみよう」

 

 疑いの眼差しを向けてくるユニを、ネプギアが宥める。

 そんな目で見られても、私だって出来るのか不安だ。大人しくさせるのは…まあ言葉を理解してくれるなら大人しくなってくれるだろうけど、力を与えるっていうのは、どんな感じなんだろう。

 …そういえば以前バーチャフォレストでピンチになった時、アイエフさんがネプギアに力を分けたって聞いたっけ。そんな感じなのかな? 

 その時はどうやったのか、詳しく訊いてもネプギアもアイエフさんも顔を真っ赤にさせちゃって答えてくれなかったから分かんないけど。

 

「ま、ネプギアの言うとおりね。それに他にやれそうなこともないし」

「皆で協力するです!」

 

 アイエフさんもコンパさんも、私の案に乗り気だ。

 これでもし反対されていたら、本当に途方に暮れる羽目になったわけだし、有難いことだ。

 

「で? 私達はルナの案に賛成だけれど、ユニはどうするの?」

「うっ……」

 

 私達三人から一斉に視線を向けられ、言葉が詰まるユニ。

 じ~っと見つめてると、こめかみがピクピクしてるように見えてきた。

 

「ユニちゃん……!」

「うぅ…! ああもう分かったわよ! ルナに協力すればいいんでしょ!?」

「やったあ! ありがとうユニちゃん!」

「ふ、ふん!」

 

 ネプギアがトドメを差して、ようやくユニからの協力も得ることが出来た。

 さて、これでなんとかできそう…かもしれない。

 

「それで、まず何をすればいいって?」

「あっ、うん。まずは落ち着かせないと」

 

 現在進行形でバタバタ暴れているモンスターを落ち着かせなければ、移動中に落としてしまう。落とした先が陸だと、海に浮かんでいるだけの場所だから陸が壊れて海に落ちるとか嫌だし、落とした先が海でも、水しぶきか波でずぶ濡れになるのも勘弁したいからね。

 

『マスターはモンスターの体に触れて、言葉を投げかけてください。その言葉に精神を安定させ、不安を和らげる精神干渉系魔法を付与させます』

 

 一体そんな凄そうな魔法いつ使えるようになってたんだー? 

 

『今のマスターはまだ魔法制御が十分にできませんので、おひとりでは使用できませんよ』

 

 うーん。君がいないと本当に私は無能になってしまうんだな……

 なんて自虐は置いておいて、モンスターを落ち着かせよう。

 

「このモンスターが言葉を理解できるかは分かりませんが、声を投げかけていけば落ち着いて、大人しくなると思います」

「まあ言葉を理解できるモンスターもいるみたいだし、やってみましょう」

「さっきは攻撃してごめんなさいです。もう攻撃しないですから、大人しくしてくださいねー」

「大丈夫だよ~。痛くしないから」

「お、 落ち着きなさいよ。落ち着きなさいってば」

「ユニちゃん! もっと優しく言わなきゃだよ!」

「ぅええ!?」

 

 皆さんそれぞれ優しく言葉をかける。でも、なかなか落ち着いてくれない。

 私はバタバタさせているヒレを避けながら、モンスターの身体へ手を当て、優しく撫でる。少しでもこちらは敵意はない、と伝わるように。

 

「…大丈夫。安心して。もう君を傷つけないよ。ごめんね、痛かったよね。苦しいよね。でも大丈夫だから。少しでいいの。落ち着いてほしいな」

「…フォオオン」

 

 言葉が効いたのか、或いは魔法が効いたのか。

 少しずつだけどヒレの動きが遅くなって、止まった。

 鳴き声も苦しそうな、怖がってたような声じゃなくなって、落ち着いてる。

 よかった。成功したんだ。

 

「…まさか本当に落ち着くなんて……」

「きっと皆の気持ちがモンスターさんに伝わったんですね!」

「よかった。それでルナちゃん、次は私とユニちゃんに力を与えるって言ってたけど……」

「うん。二人とも、私の手に触れて」

 

 そう言って私が二人の前に手のひらを上にして出すと、右手はネプギアが。左手をユニがそれぞれ手を乗せる。

 すると剣が私の中の力を自動で制御したのか、力が手のひらを通じてネプギアとユニ、それぞれの女神候補生に流れていくのを感じた。

 それと同時に少しずつ疲労感が募っていく。だがこのモンスターのためだ。倒れない程度にやっちゃってくれ。

 

『Yes,master.』

 

 剣はそう返事すると、今まで出力を抑えていたのか、少しだけ力が流れる速度が上がったように感じた。それと同時に疲労感が溜まる速度も上がっていくが、眩暈がし始めたぐらいで力の流出が止まった。

 うん。ナイスコントロール。

 

『お褒めにいただき光栄です』

「二人とも、もういいよ」

 

 そう言って私が手を離すと、二人とも驚きながらも、やる気に満ち溢れた表情になっていた。

 

「すごい…これがルナちゃんの力……」

「これならあのモンスター程度、持ち上げるのなんてどうってことないわ!」

 

 二人は再び女神化すると、モンスターの上空へ飛ぶ。

 

「フォオン!? フォオオオン!」

「大丈夫だよ。二人は君を傷つけようとしているわけじゃないよ。君を海へ戻そうとしてるだけなの。だから落ち着いて。大人しくして、ね?」

「フォオオン? フォォン……」

 

 二人がまた自分を傷つけるんじゃないかって暴れ出しそうになったモンスターだけど、私がまたモンスターに触れて宥めたおかげで大人しくなってくれた。

 大人しくなった隙に二人はモンスターを下から持ち上げる形で前後に構え、「いっせーの!」の合図で持ち上げる。

 すると驚き。あの巨体が上へ上へ上がっていく。しかも二人とも平気そうな顔で持ち上げている。

 

「すごいすごいよユニちゃん!」

「ええ! こんなに力が溢れることなんて初めてだわ!」

 

 二人とも楽しそうだ。よかったよかった。

 

「二人ともー、大丈夫…そうね。あれならあのモンスターを海に戻せるわね」

「見た感じモンスターさんに怪我もなさそうですし、一安心です」

「それはどうかしら…あのモンスターが海に入った途端こちらへ敵意を示さないわけじゃないだろうし……」

「いえ、それはないと思いますよ」

「どうしてかしら」

「まぁ…単なる勘ですよ、勘」

 

 これは本当に、そう思うだけ。剣が言ったんじゃなくて、私がそう思っただけ。

 だからこそ、さっき暴れそうになった時に声をかけたら大人しくなってくれた。今度は魔法も何も使わず、ただ優しく声をかけただけだったのにだ。

 アイエフさんも、私の言葉に納得したらしく、後は何も聞かない。

 そのまま順調に海へ運ばれ、ゆっくりゆっくり降ろされ、ようやく海へ戻ることの出来たモンスター。慎重にやったおかげで互いに怪我無く、水しぶきもそれほどあがらずに着水することができた。

 うんうん、よかったよかった! 

 

「ふぅ…やったねユニちゃん!」

「え、ええ。ま、まあ今回はアンタ達のおかげね」

「フォオン♪ フォオオオオンッ♪」

 

 モンスターも嬉しそう。海の中に潜ったり浮上したり。本当に嬉しそうにしてる。

 モンスターは基本敵だけど、こういうモンスターだったら倒さなくてもいいよな。

 …ってあれ? なんだかモンスターが私をじっと見ているような……

 

『マスター。どうやらこのモンスターはマスター達に懐いたようです』

 

 まさかの「ホエールが なかまに なりたそうに こちらを見ている」!? 

 

『いえ、仲間には出来ません。このモンスターは海では現在のマスター達より強いですが、それ以外の場所では先ほどの様子で分かるように何もできませんから』

 

 ふむ。それもそうだね。

 じゃあここに来た時に戯れる程度の仲になるってことで。

 

「よしよし。仲間には出来ないけど、時々遊ぼうねー」

「フォオオン♪」

 

 近づいて頭らしき場所を撫でてあげれば嬉しそうに目を細め鳴くモンスター……

 いや、こうして仲良くなったんだし、いつまでもモンスター呼びは可哀想かな。

 よし、これから私は君のことを『エル』君(仮)と呼ぶぞ。ホ“エール”だからな! 

 …安直かな。でもペットの名前ってそんな感じだよね。

 

「モンスターさん、私達のことお友達だと思ってくれたんでしょうか」

「どうやらそんな感じではあるわね。モンスターが人間に懐くなんて稀に見る事例だけど」

「わ、私も撫でても大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。ねー?」

「フォオン」

「じゃ、じゃあ……」

 

 ネプギアは恐る恐るエル君の頭に手を近づけて、撫でる。

 エル君は気持ちよさそうに目を細めている。どうやら本当に私達に懐いたようだ。

 

「わあっ、ホエールってこんな感触なんだ…ユニちゃんも触ってみて」

「はあっ!? な、なんでアタシが……」

「まあまあ。この子も喜ぶと思うなぁ。ユニみたいな可愛い子が頭を撫でてくれたら」

「か、かわ……っ!? い、いいわよアタシは! もう帰るわ!」

「ええ!? ユニちゃんもう帰っちゃうの……?」

「ええ。アンタ達となれ合うために来たんじゃないもの」

「ネプギアとの決闘の勝敗は……?」

「また次回に持ち越しよ。じゃあね!」

 

 と、女神化したまま飛んで行ってしまうユニ。

 でもま、次回に持ち越しってことは、また会える機会があるよね。

 その時はネプギアと仲良くなってくれると嬉しいんだけど……

 

「うぅ…ユニちゃんなんで怒っちゃったのかな…? 私、何か言っちゃダメなこと言ったのかな……」

「ネプギア……」

 

 ネプギアがこんな調子だと、二人が仲良くなるのはいつになるやら。

 

「元気出しなさい、ネプギア。どうせまた会えるんだから」

「そうです。その時に仲直りすればいいですよ」

「そ、そうですよね! その時仲直りすれば……」

 

 ネプギアの機嫌も直ったところで私達はエル君に別れを告げ、教会へ向かう。

 宝玉と血晶。一つ足りないけれど、どちらも十分激レア素材。あの教祖も妥協ぐらいしてくれるはずだ。そうじゃなくてもマナメダルはゲイムキャラが持っているって話だから、ゲイムキャラに会わないと分かんないんだし。

 よし、これでようやくラステイションのゲイムキャラに会えるんだな。このまま順調に四か国のゲイムキャラの力が集まるといいんだけど……

 そう順調に行ってほしいものだよね。




後書き~

次回予告。ついに犯罪組織の自称マスコットキャラ現る!?
それでは次回もお会いできることを楽しみにして。
See you Next time.

今回のネタ?のようなもの
・某ポシェモンを運ぶための紅白のボール
 ポケモンに出てくるモンスターボールですね。

・「いつから~と錯覚していた?」
 「なん…だと……!?」
有名なBLEACHのネタですね。有名すぎてもはや元ネタを知らずに使っている人が多数いるかと……(かくいう私もその一人でした)

・そーなのかー
 東方projectのルーミアの台詞です。ルナちゃんは別に常闇を操ったりなんてしませんし、人を食べることもありませんよ?

・「ホエールがㅤなかまにㅤなりたそうに こちらを見ている」
 某ドラゴンでクエストなゲームの定番パロですね。エル君は大きさ的に仲間になれませんけどね。

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