月光の迷い人   作:ほのりん

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前書き~

前回のあらすじ。
ホエールを海に返したら懐かれました。ルナは彼に「エル君」という名を与えました。彼女の中だけで、です。
今回は宝玉と血晶を手に入れたルナ達があの方へ渡しに行くところから始まります。
そして後書きにはお知らせを載せておきました。ただの広告です。でも見てくれると嬉しいです。
それではどうぞごゆるりとお楽しみください。


第二十一話『教祖にも知らないことはある』

 さて始まって早々読者の皆様に問題です。

 私達は今から教会内へ入ろうとしているのですが、この先一体何が待ち受けているでしょうか。

 …え? 問題文が十八話と全く一緒? 

 せ、選択肢は違うから、ね? 

 

1.教祖が「おや、思ったより早く来たね」と驚いている。

2.「何者だ貴様等」と強面職員に迫られる。

3.実は教祖は何もかもお見通し。私達が今日ここへ来ることも知っていた。

4.その他

 

 正解は──

 

 

 

 

 

「やあ、どうやらもう集め終わったようだね」

 

 『3.実は教祖は~』でした。

 本当に色々と知っているようでなにより。

 

「相変わらずこっちの行動は全部お見通しって訳ね」

「すみませんケイさん。実は宝玉と血晶は見つけてきたんですけど、マナメダルは……」

「おや、あなた達のことだから全て揃えてくると思ったのだが……」

「マナメダルは現状私達には入手不可ですよ。とある者達が持ち歩いているので」

「それは知らなかったね。僕も知りえない情報をどうやって知ったのか、気になるところではあるけれど。では代わりにその情報を教えることで、今回は妥協しようか」

 

 と、なんだかケイは上から目線。まあこっちが欲しい情報をあっちが知ってて取引してるわけだから、そうであっても仕方ないのかもしれないけど、やっぱり取引って互いに対等じゃないとダメじゃない? 

 まあ情報は言えるかどうかで言えば、言えるんだけど……

 

『マスター、その前に教祖に何故マナメダルを欲しているのか聞いてもらえますか?』

 

 ん? あぁそういうこと。

 

「その前に一つ訊いてもいいですか?」

「なんだい?」

「何故あなたはマナメダルを必要としているのですか?」

「…それは、答えなければならないことかい?」

「ええ。…教祖ですからあり得ないとは思いますけど、マナメダルを悪用するつもりで欲しいと思っているなら、私はあなたにマナメダルに関する情報を渡すわけにはいきませんから」

「疑っているのかい?」

「信用できるほど、私はあなたと仲良くなった覚えはありませんよ」

 

 本当は大丈夫だって分かる。

 彼女は賢い人だろう。だから犯罪組織を手伝うなんて馬鹿な真似はしない。だって女神側に着いた方が利益が沢山だ。

 でもだからってそう簡単に言えるような情報でもない…と思う。だって剣がわざわざ私に「聞いて」と言ったのだから。

 この教祖ですら知ることが出来なかった情報。それは超激レアというより隠さねばならぬほど重大なアイテムであるか、存在感がないだけか。

 ゲイムキャラが持っているというとこで前者なのは間違いない。

 だからきちんと用途を確認しなければいけない、と私は思っている。

 

「それもそうだね。…実はラステイションではとある開発をしていてね。詳細は言えないが、今回あなた達にお願いした材料は、必要不可欠なものなんだ」

「開発……? 聞いたことないわね」

「それもそうだろう。これは信頼できる者だけで行っている極秘のことだからね」

「よそに情報が洩れるようなヘマはしてない…ってことね」

 

 悔しそうに言うアイエフさん。

 そっか。アイエフさんの仕事は諜報。情報を集めるのが仕事だもんね。プライドが刺激されたんだ。

 

「でもそれをわたし達に教えちゃって大丈夫なんです?」

「あなた方に教えたところでこちらが不利になるような情報でもないからね」

「ふーん……」

 

 何を開発しているのか気になるけど、きっと犯罪組織とか犯罪神とかを倒すのに必要な開発…だよね? 今各国での最優先事項は犯罪組織及び女神様のことなんだろうし。

 どう? これ以上聞いても教えてくれなさそうだけど……

 

『はい。私も何を開発しているのか興味がありますが、悪用するために欲しているようではないのは分かりました。情報を伝えてもよろしいかと』

「そういうことでしたら分かりました。情報の入手先は教えれませんが、マナメダルがどこにあるのかはお教えしましょう」

 

 そう言って、私は教祖にマナメダルは一部のゲイムキャラが持っていることを伝えた。

 

「なるほど、ゲイムキャラがね。であればゲイムキャラの居場所を知らないあなた方には得ることは不可能。無理難題だった。すまない」

「い、いえ。ケイさんも知らなかったんですから仕方ありません。それであの、これが残りの宝玉と血晶です」

「うん。確かにこれは宝玉と血晶だね。確かに受け取ったよ」

「でしたらゲイムキャラの居場所を」

「その前にもう一つ。ギョウカイ墓場であったことを教えてもらおう」

 

 ネプギアが二つのアイテムを渡して、ゲイムキャラの居場所を聞こうとしたら教祖はそれを遮った。

 それ自体は元々の約束に含まれていたから、とネプギアは三年前にネプギアのお姉さん達とギョウカイ墓場に乗り込んだこと。その結果。何故自分だけが今ここにいるのかを話した。もちろん、ラステイションの女神様が囚われてはいるものの、生きていることも。

 

「そうか、ノワールは無事か…よかった……」

「そんなに心配なら、もう少し協力的でもよかったんじゃない?」

「先ほど言ったようにあなた方に持ってきて頂いた材料はこちらには必要不可欠。あなた方が独自に女神救出を進めているように、こちらにも考えがあるんだよ。さて、次はこちらの番だね。少し約束とは違うが、ゲイムキャラの居場所をお教えしよう。居場所はこの紙に書いてある」

 

 そう言ってケイさんはポケットから二つ折りにされた小さな紙を一枚取り出し、ネプギアに差し出した。

 

「ありがとうございます。これでゲイムキャラの元に……」

「ただ、素直にあなた方の要求が飲んでもらえるとは思わない方が良い」

 

 紙を受け取ったネプギアに、ケイはそう言った。

 どうして? 居場所へ行くには特別なことが必要だったり? 

 

「どうしてそう言うのよ?」

「行けば分かるさ。まあ上手く交渉が進むことを祈っているよ」

 

 そう言う教祖に私は頭の中を「?」にしながらも私達は教会を後にした。

 一体何があるんだというのか……

 ラステイションの街を歩きながら私は考える。

 ゲイムキャラの居場所が分かった私達であったけど、今日はもう暗くなり始めていて、今から出発したら確実に夜になるので今日はもうお休み。

 急いでいる私達ではあるけれど、だからって夜にダンジョンへ行くなんて危険な真似はしないのだ。

 なので今向かっているのはラステイションに来てずっと泊っている宿屋。

 今日もまた、お世話になります。

 

 

 

 

 

 翌朝。しばらくお世話になった宿屋の部屋で自分の荷物を片付けて、お金もきちんと払って出発した。

 ゲイムキャラが見つかれば、すぐに次の国へ出発するからだ。

 なかなか居心地がよく、スタッフの人柄もよかったのでまた機会があれば利用したい。まあ旅の途中だとはいえ女神様が利用した宿なんて高いと思うから、多分利用しようと思う時はしばらく来ないと思うけど……

 

 

 

 ラステイションの人々の朝は忙しい、と思う。人は忙しそうに歩いて行くからそう思う。

 多分彼らは仕事へ行くのだろう。アイエフさん曰く、女神様が仕事に熱心な方だから、それが国民にも表れているそうだ。犯罪組織の人間達も楽せずに普通に働いた方がいいと思う。一部はそれぞれの信念があるみたいだけど。

 それはともかく、街中を歩いてダンジョンへ向かう私達4人。

 その道中、目の前をネズミが走っていった。

 …いや、それだけならいいんだよ。本当に“ネズミ”が通っていったのならいい。

 でも私達の目の前を走っていったのは、ネズミよりも絶対にデカい、二足歩行の灰色のネズミ型モンスターであった。

 街中でモンスターが出現するなんて一大事だ、ってアイエフさんとネプギアはそのモンスターを追いかけていって、その後を追う私とコンパさん。

 ネズミは路地裏へ駆けて行って、私達が追いかけているのに気付くと「ぢゅぢゅっ!? なんで追いかけてくるっちゅか!?」と慌てて駆け足から逃げ足に変わった。

 ネプギアは「逃げるなんて、何かやましいことでもあるんでしょうか?」と言ったけど、その前に自分より大きな身体を持つ人間4人に何故か追いかけられたら、そりゃ逃げるでしょうよ、と思う。

 というかモンスターって喋れるのもいるんだね。そこが驚きだよ。

 そして想像通りというかなんというか、ネズミの逃げ足は速く、このままだと逃げ切られてしまうかなと思ったその時、ネズミがその辺に転がっていた道端の石ころの躓いて転んだことで、追いかけっこは終わった。呆気ない終わりである。

 しかもそこそこなスピードで走っていたために派手に転び、頭をぶつけてそのまま気絶してしまった。まぬけだな。

 そして、転んだネズミに反応したのは意外なようで納得のコンパさんであった。

 

「大変です! お怪我は…あっ、お顔を擦りむいちゃってるです。手当してあげるです」

「ちょっとコンパ。ネズミなんて汚いんだから、触んない方がいいわよ」

「でも怪我してるです。なら手当てしてあげないといけないです。放っておくなんて出来ないですよ」

 

 そう言ってコンパさんは常備している応急箱の中身を使ってネズミの顔の傷を消毒して、ペタンと女の子の持つような可愛らしい絆創膏を貼った。

 貼り終わってコンパさんが後片付けをしていると、軽い気絶だったようでネズミはすぐに目を覚ました。

 

「ちゅ…どうしておいらはこんなとこで寝てるっちゅ……!?」

「あっ、目を覚ましたですか? よかったです!」

 

 目を覚ましたネズミにコンパさんは純粋に喜んでいるが、ネズミの方はコンパさんの顔を見ると身体を硬直させていた。どことなく顔が赤いように見えるのは気のせいか? 

 コンパさんはそんなネズミの様子に「ネズミさん? ネズミさ~ん?」と呼びかける。

 するとネズミはハッとするとコンパに話しかけていた。

 

「ちゅ…! あ、あのあの…お、お名前はなんというでちゅか?」

「お名前ですか? コンパです~」

「コンパ…コンパちゃん……」

 

 ネズミはコンパの名前を呟くと、明らかに顔を赤くさせて「ちゅー!!」と叫びながら走り去ってしまった。

 一体なんだったのか。よく分からないけど、とりあえずあのネズミは見た目は灰色だけど、どうやら知性のあるモンスターのようで街で暴れるわけでもなさそうだから大丈夫と判断して私達は再びダンジョンへ向けて出発しようとして──―

 

──―キランッ

 

「……? なんだろうこれ」

 

 私はネズミが転んだ辺りの隅で何かが光ったように見えてそこに近づいた。

 そこにはゲームセンターのメダル程の大きさの白銀のメダルが落ちていた。手に取って見てみると、両面によく分からない模様が描かれていて、中心には小さな紫の宝石が埋まっていた。

 こんなのゲーセンのメダルなわけないだろうし、お金じゃない。かといって何のメダルかよく分かんないけど、綺麗だな。それに宝石っぽいのがはまってるし、もしかしたら高価なものかも。

 もしかしてさっきのネズミが転んだ拍子に落としたのかな? 

 

「ん~…このままだと誰かに取られちゃうかもだし、後で交番に届けておこうかな」

 

 そう思った私はそのメダルをズボンのポケットに入れるとネプギア達の後を追った。

 

 

 

 

 


「はぁ…コンパちゃん…マジ天使っちゅ~」

「よおネズミ。やっと帰って来やがったか…って何まぬけ面晒してんだ?」

「ちゅっ!? ま、まぬけ面じゃないっちゅよ! ちょ、ちょっと街で天使にあっただけっちゅ!」

「いや意味分かンネェし。で? 例のブツはちゃんと手に入ったんだろうな?」

「ちゅ。きちんと手に入れてきたっちゅよ。全く、林の中でこんな小さなものを探すのなんて、これがなかったら絶対に見つかんない……ぢゅぢゅ!?」

「ど、どうした!?」

「ない…ないっちゅ! メダルがないんだっちゅ! 確かにこの中に入れておいたはずっちゅ! はっ…まさかあのとき……」

「おい、ないってどういうことだ!? 確かに持ってきてんだろうな!?」

「た、多分街で追いかけられて転んだ時に落としたんだと思うっちゅ……」

「追いかけられたって教会にか?」

「いや、女の子っちゅ。4人組で、一人天使がいたっちゅ」

「天使はどうでもいいだろ! …しかし4人組の女か…まさかアイツ等じゃネェだろうな……」

「ど、どうするっちゅか?」

「ンなモン決まってンだろ! さっさと探しに行きやがれ!! 早くしネェとマジック様が来ちまう!」

「ちゅ~! ど、どうしておいらが下っ端に使いパしられてるっちゅかー!?」




後書き~

次回予告。
次回、ついにルナ達はゲイムキャラへ会いにダンジョンへ。そこは実は意外なところで……?
奴との再会も!エル君ではないですよ。
次回も再びお会いできることを楽しみにして。
See you Next time.

【お知らせ】
7月より本作の主人公『ルナ』がシモツキ様の小説『超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay』のコラボストーリーに出演させていただいております。
このコラボストーリーではルナの他にも様々な方のオリキャラが出演していて、その誰もが魅力的なキャラとなっております。
シモツキ様が織りなす物語も必見物です。
是非彼らの活躍を読んでいってください!
詳しくは下のリンクより、目次に繋がっております。
https://syosetu.org/novel/194904/

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