月光の迷い人   作:ほのりん

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第四十一話『運命という名の偶然』

 リーンボックスに来る道中でNギアを壊してしまった私は、何件も修理屋を訪ねたけど直せる人は見つからず、その夜を公園のベンチで明かそうとしていた。

 きっと今の私を星占いとかで占ったら最下位で金運0って結果が出るんじゃないかな、ってぐらい不運だったけど、だからって今日一日全部が不運で終わったかと言えばそうでもなかった。

 むしろこの幸運に今日一日分の運を使ってしまったからこそ不運続きだったのかもしれないって思うほど、目の前に訪れた幸運は私にとってとても嬉しいことだった。

 

 そしてその幸運のおかげで私は今、宿に泊まることができています。

 さらにコンビニの弁当にありつけることができています。

 女神様、ありがとうございます。いやまじで女神様ありがとう。感謝の気持ちで目から水が流れちゃうくらいありがとう。

 

「ゆにさまぁ…ありがとぉ……」

「はいはい。まったく、何度お礼言う気よ」

「なんどでもぉ……」

「一度でいいわよ。…で、どうしてアンタが公園で寝てたの?」

「ぐすっ…うん、えっとね、かくかくしかじかで」

「それでお金が引き出せない状態に、ねぇ……」

 

 あ、通じた。やった通じたよ相棒! ついに私、ユニとかくしかまるうまで通じる仲になれたよ! 

 

『いえ、実際には普通に理由話してますよね? 端折ってるだけですよね?』

 

 いやまあうん、そうなんだけど……

 

「…アンタ達、アタシも声が聞こえてるってこと覚えてる?」

「あ……てへっ」

『てへっ』

「いや誤魔化せてないから」

 

 ふたりしてそんな風にふざけたけど、まあ当然誤魔化せないよね。

 いやぁ、だってユニと会ってない間にたくさんのことが一気に過ぎていったわけだし、ちょっと覚えてないくらい、許してね? 

 

『こほん…では、改めましてユニ様、お久しぶりです。お元気でしたか?』

「ええ、まあそれなりにね。アンタ達は?」

「私もまあそれなりかな」

『マスターが毎日手入れをしてくださるおかげで今日も切れ味抜群ですよ』

「それは元気って解釈していいの……?」

『もちろんです』

 

 どことなく月光剣の声のトーンが高いから、月光剣もユニと会えて嬉しいのかな。そうだよね、普段私以外に会話できる人っていないもんね。それはそれでその、ごめんね? 

 

『いえ、マスターが人に心を許しにくいことは既に知っていることですから』

 

 月光剣…君ってやつは本当に良い子で……

 

「…何の話?」

『マスターがユニ様のことをとても慕っているという話ですよ』

「いや違うよね!? ただ君の話し相手が増えなくてごめんねって話だったよね!?」

 

 月光剣…君ってやつは本当に……! 

 

『ともかくマスター共々、ユニ様と再びお会いすることができ、とても嬉しく思っているということです』

「それはちが…わないけど……」

「そ、そう。ま、まあアタシもアンタ達と会えて嬉しいと…お、思ってなくもないわね!」

「~~っ。うんっ、他国でも会えて、とっても嬉しいよ、ユニ!!」

「きゃっ! ちょっ、ちょっと! 急に抱き着いたりしたら危ないでしょ!」

「えへへ…ごめんごめん~」

 

 すりすり……

 う~ん、やっぱりユニは可愛いなぁ…最近ずっと癒しがなかったからこういうところで補給しないと心が持たないよ~……

 

『マスター、気持ち悪くなってます。どれぐらいかというと昨日より何倍も顔が緩み切ってます』

「失敬な! 私はただユニの可愛さに癒されていただけで決して気持ち悪くなどなっていない!」

『いいえ淑女として台無しな顔になってます。確かに今のユニ様はとても可愛らしかったですが、だからといって急に抱き着いてはいけません。せめて一旦抱き着いて良いか確認してから……』

「ユニの可愛さについ考えるよりも先に体が動くんだから無理だね! うん、無理!」

「~~っ! い、いいから一旦はなれなさーい!!」

 

 

 

「はぁ…で、アンタ達がどうして公園で寝る羽目になったのかはわかったけど…そもそもどうしてアンタ達はリーンボックスに来たのよ。…ネプギア達は?」

「あ~…うん。えっと…言わなきゃだめ?」

「そうね。このまま部屋から追い出してもいいならそれでもいいわよ」

「ね、寝床で脅すのはひきょーじゃないかな!?」

「じゃあそこにさっきのお弁当代も追加して……」

「わああ喋ります喋ります! 喋るから許してぇ!」

 

 うぅ…今の私に拒否権はないのね……

 

『マスター、腹をくくりましょう』

 

 …うん(泣き)(かっこなきかっとこじ)

 

「えっと…ネプギア達とは今、別行動中なんだ。…まあ一時的なやつじゃなくて永久的な方だけど……」

「はあ? …なにがあったわけ?」

「ちょ、ちょっとね。いろいろあって、私が足引っ張っちゃって…それでパーティ追放的な?」

「追放って…アンタが何したのか知らないけど、そんなことでルナを追い出すなんて、ネプギアってばどんな神経して……」

「ネプギアは悪くないよ!! …ただ、皆の期待に、私の実力が追いつかなかっただけ。だからネプギアのことを悪く言うのはやめてほしいな」

「…ごめんなさい」

「ううん、いいよ。ユニは私のことを想ってくれただけだもん。謝られても困っちゃうよ」

「…それで、その、続きは聞いて良いのかしら……?」

「…うん。それでルウィーで別れて、なんやかんやあってプラネテューヌに戻ったんだけどね、なんというか、教会に帰りづらいなぁって。それでリーンボックスに来ちゃった」

「なんやかんやって…まあそこはつっこまないけど、別に教会に帰りづらくたって、わざわざ海越えてこの国に来る必要ないじゃない。ルウィーにそのまま留まることも、ラステイションに行くこともできたでしょ?」

「それはまぁ、そうなんだけど……」

 

 恥を捨てて教会に帰るって選択肢もあったわけだしね。

 それでもリーンボックスへ行くって選択肢を取った理由は……

 

「ルウィーでね、助けてくれた人がいたんだ。たまたまお店で出会っただけなんだけどね、私に食事を奢ってくれて、いっぱい話もして…まあほとんど私からだったけどね、そのあといっぱいお世話になっちゃって。その人のおかげで私はこうして心が潰れずに今も元気でいられるっていうか、心を休ませてくれた人で…その人がいなくなるとき、私は寝てたんだけど、置き手紙でリーンボックスに行くって書いてあったから。また会えたらいいな。ちゃんとお礼を言えたらいいなって。そう思って、この国に来たの」

「へぇ…良い人に会えてよかったわね、ルナ」

「うんっ!」

 

 いつでも思い出せるくらいあのお店での出会いは私にとって大切な思い出の一つで、あの人に会えたからこそ私はこうして今も自分がやりたいと思う行動が出来る。

 だからその感謝を伝えたい。伝えられないままもう会えないのは嫌だ。

 だから探そうと思って来たのが、この地に足を踏み入れることにした理由の一つで、でも他にも理由はあって。

 

「それにね、やっぱりこのまま引き下がるのは嫌だなって。私もアイエフさんやコンパさんと同じように、ネプギアやユニ達の手助けをして、女神様を助けたいって思うから。友達のために頑張りたいから。だから今度は私が思うように、私に出来る範囲で陰ながら手伝えればいいかなって」

「ルナ……」

「あ、そ、それにね、皆に言われた通りプラネテューヌには一度帰ったわけだし、その後の行動については何も言われてないからさ。なんて…屁理屈かな」

 

 怒ったのか。それとも呆れられたのか。どんな感情を込めた言葉だったのか。それはわからない。だって気恥ずかしさで顔を見れなかったから。その恥ずかしさを誤魔化すように、言い訳するように言ったけど、その言葉への反応もなくて、もしかして自分勝手な行動に怒らせちゃったのかなって思い始めてしまって。

 その不安が表情にも出ていたのか。ユニは「こら、なんでそんな表情するの」って言うから「自分勝手なこと言ってユニのこと怒らせちゃったのかなって……」って答えた。

 そしたらユニは「へぇ…そう」って言って私の両頬を…って。

 

「い、いひゃいいひゃい(いたいいたい)! ほっへひっはらないへー(ほっぺひっぱらないでー)!」

「全く…アンタの中でのアタシは、そんなに怒りんぼうなのかしら? ねえ?」

ひひゃうひひゃう(ちがうちがう)! ふひはひふもやはひいはほ(ユニはいつもやさしいよ)! やはひいはらもおやめへー(やさしいからもうやめてー)!」

「そう。ならいいけど」

 

 いいって言うわりに私の頬は離してくれないんですか。

 

「…ぷっ、あははっ! アンタ変な顔ね~!」

ふひはほうひてふんははいはー(ユニがそうしてるんじゃないかー)

 

 ほっぺ掴んだままぐにゅぐにゅって、そりゃ変な顔にもなっちゃうよ。

 って抗議の気持ちも込めてちょっと不機嫌そうにすれば「ごめんごめん。謝るからそんな顔しないの」って、ようやく私の両頬は解放された。

 うぅ…いたかった……

 

「でもアンタの想いはよくわかったわ。だからこれからはアタシが一緒に…と言いたいけど、アタシもアタシでこの国でシェアを稼がなきゃいけないのよね……」

「べ、別にいいよ! 子どもじゃないんだから単独行動くらい平気だし」

「それでさっそく街で野宿することになったのは誰だったかしらねー?」

「うぐっ…それを言われると弱い……」

「…うん、そうね。とりあえず明日は一緒に行動しましょう。それくらいはいいわよね?」

「う、うん。それくらいは…むしろこっちがお願いしたいくらいではあったけど……」

「じゃあ決まり。ほら、もう夜遅いんだし、さっさと寝る準備して寝ましょ」

「え、えっと、でも……」

「ほらほら、さっさとお風呂入って来ちゃいなさい。あ、タオルなら浴室の上の棚に入ってるわよ」

「わ、わかったから。わかったから押さないでー!」

 

 なんだか無理矢理話を終らせられた気がするけど、ここのお金は全部ユニに払ってもらっている以上逆らえる立場に私はいないので。

 結局押し込められるように浴室に入ってシャワーをさっと浴びて、寝支度もして。

 さて寝ようってなったけど……

 

「さて、じゃあユニおやすみ──」

「いやアンタどこで寝ようとしてんのよ」

「どこって、ユニの隣?」

「隣は隣でもベッドの隣の床じゃない。まさか雑魚寝でもする気なの?」

「だってこの部屋椅子はあってもソファはないし……」

 

 元々ユニ一人が泊まる部屋に無理矢理私が入ったわけで、寝る為だけのシンプルな部屋にはシングルベッドに椅子、机にテレビと最低限しか揃えられていない。

 じゃあどこで寝るかっていったらそりゃ床ぐらいしか他に寝る場所無いし……

 

「ベッドで寝ればいいでしょ」

「ユニはどこで寝るの?」

「アタシもベッドで寝るわ」

「…うん? ユニがベッドで寝るのは当然で、私もベッドで寝るとしたらそれは…つまり?」

「い、一緒に寝ればいいでしょってことよ! わかった!?」

「…うぇっ!? ででで、でもさすがに二人で寝たら狭いよ!?」

「他に寝る場所がないんだからしょうがないじゃない! 他の部屋もコンサートがあったとかで満室なんだから!」

「だだだ、だとしても添い寝は……! わわわ、私達にはまだ早いんじゃないかな!?」

「なんで一緒に寝るだけなのに早いも遅いもあるのよ! いいからほら、明日は早いんだからつべこべ言わずさっさとこっちに来る!」

「は、はい!」

 

 もう有無も言わせないユニの勢いに押され、私は渋々ユニの隣へおじゃまする。

 うぅ、ほ、ほら、やっぱり一人用ベッドに二人は狭いよ。ちょっと動くだけでユニの体に触れちゃうし……

 

「電気消すわよ」

「う、うん……」

 

 ユニは枕元に置いてあったリモコンを操作して、部屋はすぐに暗闇に飲まれる。

 けど少しずつ暗闇に目が慣れていって、窓から差し込む僅かな月明かりのおかげで、そばにいるユニの顔は見れた。

 見れた、んだけど……

 

「…えっと、ユニ? なんでそんなじっと私を見ているので?」

「…別に。アンタって黙ってれば可愛いわよねーって」

「かかか、かわいいって……! も、もう寝る! 寝るもん!」

「はいはい、ふふっ。…おやすみ、ルナ」

「…うん、おやすみ、ユニ」

 

 さっきの仕返しなのか。自分が言うのは何ともないのに言われると嬉しくて恥ずかしくて、無理矢理寝ようと目をつぶればなんだかしてやったりみたいな笑い声が聞こえて。

 けどその「おやすみ」は優しい声で、なんだか安心できた。だから私もそれに返して、体の力を抜く。

 それだけでなんだか不思議とすぐに眠気が私を夢の世界へと誘いに来て。

 なんでだろうって考えてみれば、そういえば私は今日朝からドキドキハラハラな出来事に遭って、モンスターとも戦って、街を駆け回ってたんだった。そりゃ疲れるよ。

 でもそれだけじゃないかな。

 安心できる誰かがいて、その温かい体温が心地よくて。

 …うん。これはもう、寝れない要素はないかな。

 だから、おやすみ。また明日、よろしくね。

 

 

 

 

 


(うそ、ついちゃったわね……)

 

 わずか一分も経たずに聞こえてくる寝息に少しだけ驚いて、それだけ疲れていたのねと納得して、その安心しきった寝顔にさっき感じた罪悪感が蘇った。

 ルナにネプギア達といない理由を聞いた時、この子が何をしたのか知らないって言った。本当はもう知ってたのに。ルナがルウィーで刺されたことも、死にかけたことも、それをきっかけにネプギア達がルナを置いて行ったことも、それでもルナが戦ったことも、ネプギアに黙ってルナがプラネテューヌに帰ったと伝えられたことも。

 全部ネプギアから聞いてた。今日の昼間に偶然会ってしまって、そこでルナがいない理由を聞いた時に全部。

 だから公園でこの子の姿を見た時、最初は幻覚かと思った。それか他人の空似。

 けど暗い中でも輝いているように見えるその髪も、腕に抱くその銀色の剣も、全部見覚えがあって、つい声をかけて、お腹が空いているようだったから遠慮するこの子の手を引っ張ってコンビニに寄ってお金が無いって言うこの子の代わりに払って、行く当てのないこの子をアタシが泊まっているホテルに連れ込んだ。急に人が増えてしまってスタッフさんには申し訳なかったけど、アタシの部屋でいいからって無理言って一人用の部屋にこの子を追加させてもらった。

 それでどうしてここにいるのか。たったひとりでなんで。

 それにネプギアに置いて行かれたときどう思っていたのか。

 それらを聞くためにちょっとずるい手を使ってでも無理矢理話させた。

 もしネプギアの想いがルナに伝わってなかったら。ルナ自身が本当はネプギアと行動したかったんだとしたら。お互いの想いがすれ違っていたんだとしたら。

 ネプギアの想いはもう聞いたし、ネプギアの気持ちもわかる。もしアタシがネプギアと同じ立場だったら、アタシも同じようにしていたと思う。

 けどルナはどうなのか。ネプギアは、ちゃんと想いを伝えられなかった。伝えられないまま別れてしまったと言っていたけど、本当にそうなのか。もしそうなら、ルナをネプギアと会わせた方がいい。お互いの想いもちゃんと伝わらないままじゃ、ずっとすれ違ったまま。それは絶対ダメだと思う。

 だからアタシが既にネプギアと会ったとは言わず、理由も知らないと言ってルナの視点でのその話を聞こうと思った。…ルナはその話をあまりしたがらなくて、知らない人が聞けば何があったのかわからない内容だったけど…それでもルナの想いはよくわかった。ネプギアに置いて行かれてもなお、友達のために頑張りたいって想いが。

 だからなおのこと二人はもう一度会った方がいい。二人の、お互いを想う気持ちは、想い合う気持ちにした方がいい。

 

(けど、やっぱりおせっかいかしら……)

 

 ネプギアはルナと仲直りしたがっていて、けどルナはもう諦めて、そのうえで行動してる。

 もしアタシの手で二人を会わせたら…ネプギアは喜んでくれそうだけど、ルナはどうなのかしら。もしかしたらアタシのことを嫌いになる? 

 それはイヤだけど…でもやっぱりアタシは、このまま放っておくことなんてできない。

 …明日、連絡してみましょうか。




後書き~

次回、ルナちゃんネプギアと会う!?え、まさか君がそうなの!?やったこれで直る!…ってやることは簡単だけどね……
そんなこんなで次回もお会いできることを期待して。
See you Next time.
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