次回からある人達とのコラボの物語を展開するのですが……今回はその前日談のようなものです。
この作品はコラボも正史として扱うので、是非コラボストーリーも楽しみにしながら今回のお話をどうぞ!
今回もごゆったりとお楽しみくださいな!
第五十一話『別の国へ……いや別の次元へ?』
「わ~、速い速い! 風が気持ちいいですね~!」
「だろうっ! この風の良さが分かるなんて、嬢ちゃんなかなか見どころがあるじゃねえか!」
「あははっ、褒められて悪い気はしませんね!」
「いや~気に入った! どうだ? 今度おじちゃんと釣りにでも行かねえか?」
「いいですね! いろいろ終わって平和になったらどうです?」
「ああ! そんときはおじちゃん、頑張って大物釣って嬢ちゃんに食べさせてやるからな!」
「やった! 楽しみにしてますねっ!」
そんな楽しい会話をどこで誰としているかというと、リーンボックスの漁港からラステイションの漁港まで猛スピードで進むフィッシングボートの上で、漁業を営む船長としていた。
元々私の知り合いとかではない。ジンさんのお知合いで、今回私をラステイションまで送り届ける役目を受けて下さった人だ。
おかげで私は楽させてもらってます。港から出る定期便も速くないわけじゃないけど、この船の速度に比べたら数時間くらいの差はあるからね。
「にしたって嬢ちゃんも大変だな。その歳でギルマスにこき使われるたぁ」
「今やってるやつはやりたくて志願したものですから。大変でもやりがいはありますよ」
「おぉ、仕事に対する態度も立派たぁ、いや~俺の歳がもう二十くらい若けりゃ嬢ちゃんに嫁にっつってアタックしてたってのにな!」
「残念、私はまだしばらくはそのつもりがないので、アタックされていたとしても無理でしたね!」
「くぅ……振られちまったなぁ! あっはっはっは!」
そんな軽口を叩きながら、船は順調にラステイションへと近づいていき、やがて一番近い漁港へと着いた。
船からぴょんっと着地して、くるっと回って船長の方に向きお礼を言う。
「っと。送り届けていただきありがとうございました!」
「いいってことよ! ギルマスの頼みだったとはいえ、こんな若くて可愛い嬢ちゃんと一緒にいられたんだ。いやぁ~役得だなっ!」
「いやいや、私はそこまで可愛いわけじゃないですよ~」
「謙遜しなさんなって。にしてもすまんな、ルウィーまで送ってやれずよ」
「いえ、ここからは交通機関を乗り継いで行きますから」
「そうか。そんじゃ元気でな、嬢ちゃん。また平和になったら釣りに行こうな!」
「はいっ、おじさんもお元気で。またそのときに~!」
背を向けながらもこちらへ手を振る船長に、こちらも大きく手を振って見送る。
そして船の姿が小さくなったところで、振る手を下ろした。
「…とっても溌剌とした方だったね」
『でしたね。次会う時が楽しみですか?』
「そりゃね。釣りをするって約束もしたし、楽しみだよ」
『ですね。その時は私を使って捌きますか?』
「えっ……さ、さすがに君が生臭くなるのはちょっと……」
『そうですか……生臭い私は使ってもらえず、他の方に浮気されてしまうのですね……』
「そこまで言ってないよ!?」
『冗談です。洗剤を使って洗い、消臭剤をかけていただければきっと匂いはとれます』
「そもそも魚を捌くのに使わないからね……?」
そんな会話を月光剣としつつ、先へ進む。
今回の行き先は更に向こうだ。
──ネプギアと約束してから一週間後、私は未だにリーンボックスにいた。
「ジンさん、今回の調査報告をしたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、頼む」
晴れてギルドマスターの権限により異常化モンスターと偽シェアクリスタルの調査を依頼された私は、ひとまずリーンボックス国内にて調査を行っていた。
といってもやること自体は文章化すると簡単。まず一つ、目撃証言が来たらその地の調査。大抵の場合モンスターは既に討伐された後が多いため、他にも異常化モンスターがいないかの確認。いれば通常個体との違いをメモし、討伐。可能なら写真も撮る。
次にその地の近くに研究所がないかの確認。以前リンダがエル君を持ち運んでいた時みたいに、何かしらのアイテムでモンスターを持ち運び研究所から十分に離れた場所で放している場合もあるけど、もしかするとその研究所から逃げ出してきた子もいるかもしれないから。
そして他にも細かいことや、時々ただのお使いを頼まれる時もあるけど、基本はこんな感じにやっている。
そしてもちろん依頼者であるジンさんは、今は私の上司だ。
「──以上が今回の報告となります」
「ご苦労。いつもありがとう」
「仕事ですから」
そう言い、彼が用意してくださった紅茶を一口飲む。うん、今日も美味しいね。
「さて、それで次の調査地だが……」
そう言ってジンさんは一枚の写真を私に見せてきた。
こういう時は写真付きの目撃情報となるが、さてどこで見つかったのか……
「…白い地面……もしかして雪、ですか?」
「ああ。お前さんに次に行ってもらいたい土地は北の雪国、ルウィーだ」
拝啓、ネプギアへ。申し訳ありません。まだしばらくプラネテューヌに戻れそうにないようです。
あと露天風呂で出会ったお姉さんに教えてもらったお店のエッグマフィン、美味しかったです。今度お店の位置情報送ります。
そもそもどうして今まではリーンボックス国内だけの活動だったのかというと、単純に目撃情報がリーンボックス国内でしか寄せられなかったからだ。他の国ではまだ目撃されていない、或いはただのモンスターとして討伐されていたから。つまり今回が初の国外からの情報。
情報元はルウィーのギルド。ギルドマスター同士の情報網からの提供だった。
向こうのギルドマスターには私が行くことを既に伝えてあるらしい。だから私がするのはルウィーに着いたら向こうのギルドマスターに挨拶、その後いつも通りに仕事をする、といった感じ。
そういうわけだから私はただいま電車に乗ってルウィーに向かっているんだけど……
「……だーれもいないね」
『そうですね。貸切状態のようです』
時間が早いわけでも遅いわけでもないのに、列車の中には私だけ。他の乗客は別の車両にいるのか、いないのか……
まあいないならいないで気にしなくて済むからいいけどね。ひろーい席を独り占めできるし。
にしても……
「……会えなかったな」
結局会えなかった。レナに。
まあ行った国が分かったところで会えるとは限らないんだし、当然と言えば当然ではあるんだけど……会いたかったなって。会って、またお話したかったな。あの時は私ばかりがお話したから、レナの話を全然聞けなかった。名前くらいだよ、聞いたの。普段何をしているのか、他国に行くってことは私みたいに旅人みたいな感じなのかなとか、そういうの聞いてみたかったな……
『……今は会えなかっただけです。またそのうち会えますよ、マスター』
「そうだといいなぁ……」
…まあそう思う方が良いよね。広いゲイムギョウ界ではあるけど、それでも同じ空の下にいるんだから。別次元にいるよりも逢える可能性は大なんだから、いつかまた逢える。
…それに例え別次元にいたって、会いたいと願えば、いつかまた……
「皆にもまた、会いたいな……」
別次元で出会い、別れた彼らに、またいつか。
そう願いながら、右手首にある
列車はガタンゴトンと走る。その振動と音が心地よく、降り注ぐ太陽の日差しが暖かくて、意識は徐々に微睡んでいき……
──気付いたときには、私の身体は空から真っ逆さまに落ちていた。
「って、またかあああ!? うえぇ……ダレカタスケテー!」
私はまた、前に同じことがあったときのように叫んだのであった。
「──しまったな。想いの力に引き寄せられたか……
まあいいか。これもあの子の成長に繋がるってことで。向こうにもあの子はいるし、きっとなんとかしてくれるだろう。そうでなかったら迎えに行くだけだな。
……はてさて、今度はどんな物語を繰り広げてくれるのか。
見せてもらうよ、私のお月さま」
後書き~
次回、ルナちゃん三度目の別次元へ!そこには初めて出会う人達も、再び出会えた人達もいます。
はてさて、そこでルナちゃんはどんな物語を歩むのか。
次回もお会いできることを期待して。
See you Next time.