月光の迷い人   作:ほのりん

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第五章 覚醒の序曲
第五十三話『女神救出作戦、始動』


「~~~♪」

 

 明るく白い金属質の廊下を、一人の少女が行く。

 鼻歌を口ずさみながら、とても楽しそうに。くる、くると時折回り、弾むようにステップを踏みながら、足音を立てずに。

 彼女が回る度、黒いミニスカートと、黄金色の長い髪がふわりと膨らむ。踊るように進む度、白のリボンで結ばれたツーサイドアップの髪が揺れる。

 その碧玉色の瞳が映すのは、誰もいない廊下。そのなかを、進んでいく。

 やがて着いた扉の前。そこで少女は一回だけ深く息を吸い込むと、悪戯っぽく笑い──

 

 ──まだ誰もいない扉の先へと入っていった。

 

 

 

 

 


 教会の一室。魔法陣のような図形が書かれた地面に立つ私達へ、イストワールさんはその外側から話しかけてきた。

 

「──それでは出発前に改めて本作戦の内容の再確認をします。

 まず皆さんにはこれから転送陣を通して、ギョウカイ墓場へと乗り込んでいただきます。そして女神様を発見し次第救助。最初の転送陣を通し、こちらへ戻っていただきます。……よろしいですね?」

「はい。大丈夫です、いーすんさん」

「ようは着いたらバッとお姉ちゃんたちを助けて、またバッと帰ってこればいーんでしょ? そんなの、このラムちゃんとロムちゃんがいれば簡単よ!」

「みんなで、お姉ちゃんたちを助ける(おーっ)」

「そう簡単にいけばいいけどね。向こうも、ただお姉ちゃん達をギョウカイ墓場に拘束して終わり、なんていい加減なわけがないでしょうし」

「うん……。今も多分、いると思う。四天王の一人が……」

 

 ネプギアの視線が下へと落ち、顔が強張る。

 それはそのときの恐怖をまだ覚えているから。そして、本当に助け出せるのかって不安なのかもしれない。

 けど……

 

「大丈夫よ、ネプギア。周りを見てみなさい」

「あっ……」

 

 アイエフさんに言われたようにネプギアが周りを見れば、そこには同じ女神候補生達。ユニは落ち着いていて、ラムは自信満々な笑みで、ロムはネプギアの不安を和らげるように優しい笑みを向ける。どれもやる気に満ちた表情の皆は、ネプギアが旅の途中で出会い、親交を深め、仲間になってくれたのだろう頼もしい仲間達だ。

 残念ながら私はそのとき別の場所……というか次元にいたから、その場面に立ち会えなかったけれど、きっと仲良くなったから三人ともネプギアの提案を受け入れてくれたんだと思う。

 ……ううん、仲良くなったのは確実かな。だって昨日の夜、皆楽しそうだったから。

 と、ところで私も、頼もしい仲間の一人に入ってたりしない……かな? 

 

「前はギアちゃんを助けるだけでせいいっぱいだったですけど、今は皆さんがいるです。だから今度は、絶対女神様を助けられるです!」

「コンパさん……はいっ。ユニちゃんにロムちゃんにラムちゃん、ルナちゃんもいますから。絶対にお姉ちゃん達を助け出してみせます!」

「その意気です、ネプギアさん。それでは、転送陣を起動させます」

「おねがいします!」

 

 ネプギアのその返事と共に転送陣は仄かな光を放ち、それは徐々に目も開けられないほどの強い光となり、浮遊感が全身を包んでいき──

 

 

「──にゃあっ」

「え、ねこ……!?」

 

 猫の鳴き声と共に、私達は教会から姿を消した。

 

 

 

 


「──わっ、ったぁっ!?」

 

 転送直前、胸に飛び込んできた生き物に押された私は、予想外のことに受け身なんて取れず、そのまま尻餅をついてしまう。

 けど咄嗟のことでも生き物が傷つかないように抱えることは出来て、おかげで仰向けに倒れた私の胸の上に乗る生き物……白猫は傷一つ付かず、私をじっと見つめた後、目を細めながらまた「にゃあ」と鳴いた。

 

「あはは……ま、まぁ、君に怪我がなくてよかった」

 

 あまりにも可愛らしいその仕草に、ついその頭をそっと優しく撫でれば、今度は甘えるような鳴き声で自分から手に擦りついてくる。

 はぁ~……かわいいなぁ……

 

「いや和んでいる場合じゃないから」

「はっ!?」

 

 アイエフさんの呆れ混じりの声に、今がどういう状況か思い出し、慌てて猫を抱えたまま立ち上がる。

 い、いやだって猫が落ちて怪我をしないようにとか、そのまま逃げちゃっても困るかなと思って……

 

「ルナちゃん、だいじょうぶ……?」

「う、うん。怪我とかはしてないから大丈夫だよ」

「ならいいけど……この猫、どこから入ってきたのよ……? あの部屋に猫っていなかったはずよね?」

「うん。教会で飼ってるって話も聞いたことないけど……外から迷い込んじゃったのかな?」

 

 ロムが心配してくれて、ユニとネプギアは猫がどこから来たのか確認し合う。

 そんな中、ラムだけは猫をじーっ……と見つめながら何かを考えていて……

 

「……、にゃっ!」

「あっ……あーっ!」

「へっ!? なになに!?」

「ちょっと! 急に大声出さないでよラム!」

「だってだってこのネコさん! ほら、ロムちゃんも知ってるよ! あのときのネコさん!」

「ふぇ……? あっ……!」

 

 猫はそんなラムをじっ、と見つめ返して、まるで「よっ!」と軽い挨拶でもするかのように片手を上げる。その仕草で心当たりを思い出したらしく、急に声を上げたラムはロムにも声をかけ、ロムもその言葉で思い出したらしい。

 知り合いかな、と聞けば「前にモンスターと戦ってた時、助けてくれたのよ!」と。

 

「ネコが、アンタたちを……?」

「うん。ネコさん、とっても強かった……(なでなで)」

「にゃあ~♪」

 

 猫が戦う、なんて想像できないのか疑うユニへロムが頷くと、猫の頭をそっと撫でる。すると猫は機嫌よく鳴いて、自分からその手に擦りつくように頭を動かした。

 うん、やっぱり猫も可愛いね。

 

「……ちょっと?」

「はっ!? す、すみません!」

 

 二度目のアイエフさんの声に再び自分達が戦場にいたことを忘れていたと気付く。

 だから、あの、はい……今度こそ気を付けるので、怒らないでいただけると……

 

「でもどうしようです。モンスターさんも出ますから、このまま放置しておくわけにもいかないですよ……?」

「そうね……帰りの転送陣は一回きりだから、ここで使ったら私達が帰れなくなるし……」

 

 かといってこんなことで一旦全員で引き下がる。そんな手段もなくはないのだろうけど、皆は敢えて言わない。皆一刻も早く女神様を……皆のお姉さん達を助けたいんだから。

 

「……、……。にゃあっ」

「あっ、ちょっと待って! 離れたら危ないよ!」

 

 皆が悩む中、猫は全員の顔を見つめた後、どこかをじっと見つめたかと思うと……腕からぴょんと抜け出し、そちらへ駆け出してしまう。声をかけても猫には通じなくて、どんどん先へ行ってしまった。

 

「あいちゃん、確かあっちは……」

「ええ……ネプ子達が囚われている場所だわ」

「じゃあ、あっちにお姉ちゃん達を倒したっていう四天王の一人がいるってことよね?」

「っ! なら早く止めないと! ネプギア!」

「うんっ! 皆、行こう!」

「うん!(ええ!)」

 

 ユニからが確認するように口にした言葉に、猫の最悪な結末を想像してしまう。この先にいるのは、ネプギア達が逃げるので精いっぱいだったっていう相手だって聞いてるから。

 だからネプギアに呼びかける。ネプギアも私ほど嫌な想像はしてないだろうけど、猫が傷つくのは嫌だと思ったから。

 そうしたらネプギアも頷いてくれて、皆へと声をかける。それに皆も頷いて、ネプギアを先頭に駆け出す。

 別に誰がリーダーとか決めたわけじゃないけど……このなかで一番適任の人が、自然と前に立つんだって。私は頭の片隅でそう感じていた。

 

 

 

 猫の足は素早い。私達の足は遅いわけじゃないけど、それでも追いつけない。

 途中見失いそうにもなった。けど猫はその度に立ち止まって、振り返って、私達が追いつきそうになると走り出す。分かれ道も止まって、また振り返ってから駆け出していた。

 

 まるで私達を道案内するかのように。

 

 まさか、と思ったのは私だけでなく、一度この道を通って奥へと行ったことがあるアイエフさんも。ほかの皆も、何か変だと感じているようで、アイエフさんとユニは怪訝な顔をしていた。

 もしかしたらこの猫が転送直前に飛び込んだのも、こうして私達の前を走るのも、偶然ではないのではないかと。

 でも、じゃあこの猫は何が目的なのか。そう考え、分からない中で答えを出そうとしたけど、答えが出る前に猫は何かに気付いたのか更に速度を上げ、大きなコントローラーのような廃棄物の後ろへと回り込んだ。

 

「うぉっ!? テメェ、なんでここに……!?」

「ぢゅーっ!? ネコっちゅか!? なんでここにネコがいるっちゅか!?」

 

「あれ、この声って……」

「またあいつらってわけ……?」

 

 コントローラーの後ろから聞こえた声に、全員が足を止める。驚いている声も、猫に怯えている声も、どっちも全員が聞き覚えのある声で、ユニは呆れたようにジト目になった。

 そのなかで私は、どことなく知り合いっぽい声色と言葉が気になり、そこへすぐに突撃するのではなく、こそっと近付いて、コントローラーを背に聞き耳を立てる。

 

「にゃあっ、にゃ~」

「おい、鳴くんじゃネェ、見つかっちまうだろうが……!」

「そうっちゅ……! 静かにするか、さっさとあっち行けっちゅ……!」

「にゃあ?」

「あぁ? なんでって……そりゃこの先にジャッジ・ザ・ハード様ってお方がいて、アタイらは見つからネェように隠れてるからだっての」

「あいつらがさっさと女神を助けに来ないっちゅから、オイラたちが代わりに戦わされそうになってるっちゅよ」

「にゃあ、にゃああぁ、にゃ」

「じゃあ戦えばって、イヤっちゅよ、そんなの。オイラは犯罪組織のマスコットっちゅ。戦闘ばっかの脳筋女神たちとは違って、オイラの体はデリケートなんだっちゅ」

 

「あんのネズミ……っ!」

「抑えて……! 抑えてユニちゃん……!」

 

 ワレチューらしき人(?)の発言に、私と同じように近寄って聞き耳を立てていたユニが怒りで拳を握り、ネプギアはユニが感情のまま突っ込まないよう焦った表情で抑えていた。

 でもネプギアだって今の発言に何も感じていないわけじゃない。ただ今感情のままに突っ込むのは愚策だと自分の心も抑えつけているだけなんだと思う。だからこのあとに大きな戦闘を控えて居なかったらきっと、お姉ちゃん達を侮辱するなって二人の前に出ていたかもしれない。

 そしてそれは他の全員が同じで、アイエフさんもコンパさんも、表情の怖さに差はあれど、顔をしかめていた。

 

「『のーきん』ってわかんないけど、お姉ちゃんをバカにされた気がする……!」

「お姉ちゃんは、のーきんさんじゃないもん……!(ぷんぷん)」

 

 ラムとロムは言葉の意味こそ分からなかっただけで、話し方から侮辱だというのは理解して、こちらも怒りを表していた。それでも出ていかないのは、そちらはアイエフさんが抑えているから。

 だから二人に気付かれないように声を潜ませて反応する。猫を追いかけてきたときに消費した体力の回復と、戦闘準備を整えるまでは、バレないように、と。

 

「にゃふ……にゃ、にゃあ?」

「じゃあお前はって、猫のくせに無茶ぶりすんじゃネェ。相手はあの四天王のジャッジ様だ、アタイが相手したところでストレス解消のサンドバッグにしかなんネェよ」

「そうっちゅ。下っ端じゃサンドバッグにすらなんないっちゅ」

「だ・か・らぁ! アタイは下っ端じゃネェ! 今度そう呼んだら猫の餌にすんぞ!」

「ちゅーっ!? それだけは勘弁してほしいっちゅ!」

「にゃふ……にゃ、にゃあ、にゃああ」

「あぁ? 家猫はネズミを食べるよりも遊んで殺すことが多い……って、んなマジレスいらネェわ!」

「どっちにしろ死ぬのはイヤっちゅ! オイラ、オイラは……コンパちゃんと添い遂げるまでは死ねないっちゅ~!」

 

 そんなこんなしてたら会話の流れで二人がヒートアップして、声量が大きくなっていく。最後の方なんて叫んでいた。

 

「あんのネズミ……!」

「あ、あいちゃん抑えるです……! ユニちゃんと同じ反応になってるですよ……!」

 

 今度はアイエフさんが拳を握り、怒りに表情を歪めていて、それをコンパさんが必死に抑える。もしこれでアイエフさんが飛び出していたら、ワレチューは棒に手足を括りつけられて、丸焼きにされていたのでは、とあり得ない想像が頭の中で浮かぶ。

 けどいいんだろうか。二人は確か隠れていて、だから声を抑えていたはずなのに。あとついでみたいな感じだけど、何気に猫と会話してなかった……? 

 

 と、浮かべた疑問は解消されなかったけど、不安に思っていたことはすぐに現実と化した。

 音が聞こえ、そちらへ向けば猛スピードでこちらへ飛んでくる物体が見えた。

 黒鉄の魔術師みたいな姿のロボット。そんな印象を受けるそれは、大声量で笑いながら来ていて、轟音を立てながら二人の……そして私達の近くの地面へと勢いよく着地した。

 

「ふは、ふははぁっ、はあっはああっはあああぁぁあっ!! 見つけたぞぉっ、貴様等ぁぁあああっ!!」

「ヒイィッ!? ジャ、ジャッジ・ザ・ハード様……! ア、アタイたち、別に隠れてたわけじゃ……!」

「ちゅー……ダメっちゅ……オイラ、ここで死ぬっちゅか……。……でもせめて、もう一度だけでいいから、愛しのコンパちゃんに会いたかったっちゅ……」

 

 目当ては二人で、リンダは怯えながら嘘を吐き、ワレチューは自分の死期を悟ったように望みを呟いた。

 

「っ、ジャッジ・ザ・ハード……!」

「ぬ? ぬぬぬ? 貴様は女神、候補生……おおぉっ! あのとき取り逃がした奴ではないか! くくくっ、会いたかった……! 会いたかったぞ女神候補生ぃぃぃいいっ!!」

「へ? ジャッジ様、まさか戦いたがり過ぎて幻覚を……ってうぉぉいっ!? テメェらいつのまに!?」

 

 そんな中、憎ましげに呟いたネプギアの声はばっちりジャッジと呼ばれた人物へと届き、気付いたジャッジは私達を……もっと言うならネプギアを見て、歓喜するように叫ぶ。

 それでようやくリンダ達も、ジャッジの視線の先を見て、私達に気付いて驚く。リンダは敵がすぐそばまで来ていたことに対して。けどワレチューはさすがというか、別の部分に驚いていた。

 

「ちゅっ……!? コンパちゃん……? そこにいるのは幻でも何でもなくコンパちゃんっちゅ……!? まさかオイラの願いを叶えるために来てくれたっちゅか!?」

「お久しぶりです、ネズミさん。ここへはねぷねぷ達を助けにきたですよ」

「ちゅーっ! だとしても会えて嬉しいっちゅ! コンパちゅああぁぁ~ん!」

「えぇいっ! 私のコンパへ近付くんじゃないわよ変態ネズミ!」

「ぢゅうぅぅぅうっ!?」

 

 私達よりも、恋のお相手になってしまっているコンパさんへ意識が向き、会いに来てくれたと勘違いするワレチュー。そんな敵でも心優しいコンパさんは笑顔で接して、ヒートアップする発情ネズミ。その感情のままにコンパへと跳んだネズミは、その前に立ちはだかり得物のカタールでぶん殴るアイエフさんによって飛ばされた。さすがに刃の腹ではあったけど。

 しかし“私の”かぁ……うんうん。

 

「あ、あいちゃん……」

「あっ、ち、違うわよ……!? い、今のは、私の親友のって意味であって……!」

 

 コンパさんの照れる表情に、真っ赤な顔で、自分の勢いで出てしまった発言を取り繕うとするアイエフさん。もちろんその意味であることはコンパさんも、聞いていた皆も分かっているだろうけど、それでも微笑ましくてつい笑みが浮かんでしまう。別に「本当は違うくせに~」みたいな意味で笑っているわけではないからね? 

 

「いやあの~、そんなことしてないであれなんとかしてほしいんすが~……」」

「ふはははぁぁああっ! さあ俺と戦え女神候補生ぃぃいっ!! あのときの屈辱、倍にして返してくれるわぁぁぁああっ!!」

 

 ジャッジのサンドバッグになるのは、敵であるはずの私達へ助けを乞うくらい嫌なようで、逃げ腰になりながらそう言うリンダ。きっと戦いが始まったらすぐ逃げるんだと思う。私達が自分を追う余裕はないって分かっているんだろう。

 こっちもそれは分かっている。彼女のことはまた別の日に回しても大して問題は起きない。そう考え、彼女を意識から外す。

 皆も彼女に構っている場合じゃない、と判断したのかジャッジへと向き合い……ネプギア、ユニ、ロムとラム、それぞれがほぼ同じタイミングで女神化した。

 そして、全員が武器を持ち、構える。

 

「あのときは弱くて、逃げることしか出来なかったけど……」

 

 そう、振り返るネプギア。その声色に、瞳に映るのは恐怖は不安ではない。

 あるのは、固い意志のみ。

 そして、同じ意志を持つ皆が、ネプギアへと頷き返す。

 皆、姉を救いたいって。その気持ちで、ここまで来たんだから。

 だから……

 

「……けど、今は違います。アイエフさん、コンパさん、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん、ルナちゃん。皆が一緒に戦ってくれる。私自身も強くなりました。だから……

 今度こそ負けません。絶対にあなたに勝って、女神を取り戻してみせます!」

 

 決意を言葉にして。

 今、ネプギアの宣言によって、戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 


「にゃふ~♪」

 

 岩の上。いつの間にか移動していた白猫は、戦闘に巻き込まれない位置で、楽しそうな様子で観察していた。

 そこへ、悪そうなパーカーを着た肌色の悪い女性が近づく。その手には細くて黒い尻尾が握られていて、その先には灰色のネズミがぐったりと意識を失っていた。

 

「あっ、テメェここにいたのか。おいっ、ここにいたら危ねぇんだ、さっさとズラかるぞ!」

「にゃー!」

 やだぜ~! 

 

「やだって、戦いに巻き込まれて死んでも知らねぇかんな」

「にゃふふ」

 これで死ぬほどヤワじゃないから、平気だぜ。

 

「ああそうかい。ならアタシだけでも逃げるからな。テメェはテメェで勝手に野垂れ死んでろ!」

「にゃ~」

 達者でな~。

 

 せっかくの好意を無下にされ、苛立った女性は猫へ怒鳴ると再び逃げていく。

 その背を白猫は横目で見て、再びその視線を戦いへ向ける。

 向ける視線は戦い、その中でも一人の少女へ。

 

「にゃあ~……」

 

 お月さま、あなたはどれだけ、戻ってきたのかな。

 

 昔を思い出すように目を細める白猫は、そのまま碧玉色の瞳を地上の月へと向け続けていた。




本当はもう少し先の展開まで書く予定でしたが、意外にも文字が多くなったのとちょうど良かったので一旦ここで区切ります。
次回、どうなるでしょうね……頭で展開は考えていても、あんまりその通りに進んでくれるかどうかは不安です。
それでは次はなるべく早く会えるように。
See you Next time.
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