結び姫の幼馴染み   作:Rokubu0213

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おそらく4〜5話で完結する予定です。

よろしくお願いします。


introduction

時刻は午前5時。

サラリーマンや部活の朝練へ向かう高校生が駅に向かう道を逆走する一人の女性がいた。

見慣れない黒のスカートとジャケットを着て、髪をバレッタでアップに纏めている。

化粧は薄くしか施していないがそれでも十分に整った顔立ちをしていていかにもキャリアウーマンというような雰囲気を醸し出している。

しかし彼女の目は充血しており、整った顔が台無しになっている。力なくとぼとぼと歩いていていかにも疲れ果てた様子が見て取れた。

駅から歩くこと20分、東京都のとある高級マンションにたどり着いた彼女は103号室の扉を開けて部屋へと入った。

 

 

「ただいま〜。」

 

 

彼女はキャリアウーマンとはかけ離れた緩い声でリビングへと向かう。

 

 

「おかえり、麻里。」

 

 

リビングでは一人の男がパンをかじっていた。

その男は中性的な顔立ちをしていて、少年のようにも少女のようにも見える。髪の色は銀髪だが、決していかつい雰囲気はなく、彼の中性的な神秘さをより際立たせていた。

本人はこの顔立ちがコンプレックスで嫌いなのだが、周りの人からはかなり評判がいい。

そして彼もまた見慣れない黒い服に身を包んでいた。

 

 

 

「ただいま太一。」

 

「夜勤お疲れ様。」

 

 

弓削麻里はリビングに入ると同時にソファーへとダイブした。

 

 

「疲れてるのはわかるけど、せめて防瘴戎衣だけでも脱いだらどう?一応神聖なものなんだから。」

 

「そんなこと言って、太一も防瘴戎衣の上にパン屑こぼしまくってるじゃない。」

 

 

麻里に言われて太一は自分の防瘴戎衣へと視線を向けてバツが悪そうにティッシュでパン屑を拾った。

 

 

「じゃあ着替えてくるからコーヒー淹れといて。」

 

 

麻里からのお願いに太一は面倒臭そうに顔を歪める。

 

 

「コーヒーくらい自分で淹れてよ。」

 

「私が淹れるより太一が淹れる方が美味しいんだもん。なんでわざわざ手間掛けて不味いもの飲まなきゃならないのよ。」

 

 

太一は面倒臭そうにキッチンに向かいコーヒーの準備を始める。

 

 

着替えてラフなピンクのダボダボのズボンとT-シャツに着替えた麻里に太一は出来上がったコーヒーを差し出した。

 

 

「なんで今日はこんなに遅かったの?」

 

「そうそう、聞いてよ。ヒゲがね………」

 

 

それから太一は約1時間、ノンストップで弓削や自身の上司である『ヒゲ』こと宮地磐夫の愚痴を聞かされた。

 

 

「そこでヒゲがさぁ……」

 

 

 

ーーープルルルルーーー

 

 

突如携帯が鳴った。

その携帯の持ち主、太一は携帯を開いて電話の相手を確認する。

その相手はちょうど今話題になっている人、宮地磐夫だった。

 

 

 

「ハイ。……はい。……中央自動車道で。了解です。」

 

 

上司から手早く必要な情報だけが与えられて電話は終了する。

 

 

「呼び出し?」

 

「フェーズ3だって。」

 

 

太一は短く答えると、鍵入れから車のキー取り出して出かける準備をする。

 

 

「まだ勤務時間外なのに……」

 

 

弓削は頬を膨らませてブツブツと文句を言っていた。

これは弓削の昔からの癖である。

何か不満なことがあると頬を膨らませる、本人はこれが子供っぽいとコンプレックスであまり人前ではしないようにしているのだが太一の前ではなんの遠慮もなくこの顔をする。

それほど太一のことを信頼しているということだろうか。

 

 

「行ってきます。」

 

「……行ってらっしゃい。」

 

 

麻里の方はまだ不服そうだったが太一は気付かないふりをして、車のキーだけを片手に持ち、家を飛び出して行った。

 

 

✳︎

 

 

東京都の中央道を一台の黒塗りの車が法定速度を50キロもオーバーして爆走している。

周りの車は全て路肩に避けて止まっていた。

中央道の中央を爆走しているその車は三菱デボネア。1964年から1999年まで製造されていた高級セダンである。

そんなアンティーク車の持ち主は当然年配の人だと思うだろう。

しかし、その持ち主は40オーバーのエリートサラリーマンでも60以上の退職した元社長でもない。

若干23歳の若造だ。

俺は朝の彼女とのひと時を邪魔されたことに苛立ち、さらにアクセルを踏み込み速度を上げていく。

普通ならば法定速度を超えて走っている車は警察に止められるだろう、しかし俺の車が止められることはない。

それは何故かって?

その理由は俺の職業にある。

 

 

目の前に競馬場が現れたのを確認してブレーキを強く踏み込む。

タイヤが悲鳴をあげて粉塵をあげる。

車が完全に停止すると、ゆっくりと俺は車から出る。

競馬場の入り口で俺を待っていた祓魔官がその粉塵に気付いて駆け寄ってくる。

 

 

「現場はどこですか?」

「競馬場の中です。」

 

 

現場の祓魔官に案内されて競馬場の中へと入っていく。

競馬場の中に行くにつれて瘴気がどんどんと強くなって行った。

 

 

「これはまたでかいなぁ……」

 

 

競馬場の中に行くと、そこには10人の祓魔官と対峙しているフェーズ3タイプオーガがいた。

 

 

「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」

 

 

祓魔官たちは火界呪を放った。

祓魔官10人で放った火界呪はなかなかの大きさのものだ。

だがタイプオーガは雄叫び一つでその火界呪を無効化した。

 

 

「!?」

 

 

現場にいた祓魔官たちに動揺が走る。

その隙にタイプオーガは祓魔官目掛けて歩みを進めた。

祓魔官たちが次なる術の準備に取り掛かろうとしたのを確認して俺は術の構築を始める。

 

 

「タニヤタ・ウダカダイバナ・エンケイエンケイ・ソワカ!」

 

 

俺は全身の霊力を水気に変換して水天法をタイプオーガに向けて放った。

莫大な量の水の雫がうねり、ある時はクジラのごとく大きく、ある時はサメのように凶暴に、まるで意思を持っているかのようにタイプオーガに向かい襲いかかった。

 

 

タイプオーガは予想外の方向からの攻撃に反応しきれず、俺の水天法をもろにくらう。

タイプオーガは体勢を崩して倒れた。

耳をつん裂くタイプオーガの叫び声が鼓膜を打つ。

 

 

「ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バルナヤ・ソワカ!」

 

 

その叫び声を聞きながら続いて真言を唱えて、発生させた雫を動かし一本の長い縄のような物へと変える。

 

 

その水でできた縄は大きくしなり倒れているタイプオーガの身体に巻きつき、タイプオーガを締め上げる。

タイプオーガが悲鳴をあげながらのたうちまわる。

その身体にはラグが生じている。

なおもタイプオーガは抜け出そうと抵抗するがその拘束は一向に緩む気配がない。

ついにタイプオーガは力尽きて大人しくなり、それと同時に消失した。

 

 

「修祓完了。」

 

 

俺は小さく呟いて水天法を止めた。

 

 

「お疲れ様でした。賀茂独立祓魔官。」

 

 

俺の隣にいた祓魔官が歓喜の声をあげた。

 

 

俺の名前は賀茂太一、23歳の社会人5年目。

職業はーーー

 

 

独立祓魔官だ。

 




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