結び姫の幼馴染み   作:Rokubu0213

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despair

『被害状況を報告しろ!』

『負傷者4名。内2名は霊的ダメージが相当大きいと報告があります。』

『担架用意してくれ!』

 

 

現場では大勢の陰陽庁関係者が負傷者及び被害状況の確認に尽力していた。

忙しく動き回っている人々を見渡しながら私は唇を噛んでいた。

 

 

もっと被害を抑えられたのではないか?

 

 

そんな疑問が頭の中をグルグルと回る。

私が結界でタイプキマイラの動きを拘束するまでに約1分。

その後タイプキマイラの修祓するまでに約45秒。

修祓完了までに擁した時間は1分45秒。

これでは遅すぎる、他の十二神将、局長や木暮先輩、後輩の鏡や太一も私よりももっと早く処理できていただろう。

十二神将として情けない、そんな自己嫌悪が私を襲う。

 

 

「!?」

 

 

自己嫌悪に苦しめられていた体が突如強張った。

強大な鬼気の爆発を感じ反射的に霊気の出どころを探る。

 

 

鬼気の出どころに目を向けるとそこには、小太りの男と、190cmを超える長身の女がいた。

 

 

「シット!意外と祓魔官が残ってるじゃないか。」

 

「キー!ドーマン様ぁ、このブス倒すのだわ〜。」

 

 

男の方は妙にアメリカかぶれした口調で、女の方は妙に甘ったるい声でそれぞれ、言葉を発した。

 

 

「……」

 

体内で霊力を製造しながら、考える。

私と残った祓魔官だけで、はたして相手ができるのか。

見た目はふざけた二人だがその体から発せられる鬼力は並大抵のものではない。下手したらフェーズ4レベルじゃないかしら……。

 

 

「キャー!」

 

 

女の方が奇声をあげながら強大な鬼気を纏った拳で殴りかかってきた。

咄嗟に最大出力の結界を展開する。

結界と拳がぶつかり激しいラグが生じる。

結界のラグが徐々に激しくなっていく。

 

 

「まずい!」

 

 

一瞬で後ろへと飛び去る。

結界が破壊されてつい何秒か前まで自分がいた場所を鬼の拳が通過する。

 

数秒遅れいたら死んでいた。

そのことを感じて背筋が凍る。

 

 

「ムキー!逃げるんじゃないのだわ〜。」

 

 

女は再び猪突猛進に突っ込んでくる。

 

 

確かにこの女の鬼気はとんでもない、でも戦い方が突進一辺倒ならこちらにも勝機はある。

再び結界を展開する。

 

 

「無駄なのだわ〜。」

 

 

なんの躊躇もなく結界に向かって拳を振り下ろす。

結界はラグを起こすことなく、ぐにゃりと曲がって鬼の腕を包み込む。

異変に気付いた女の顔が驚愕する。

 

 

「ムキャー!動かないのだわ〜。」

 

 

鬼が腕を引き抜こうとデタラメに腕を振り回そうとする。

激しく結界がラグを起こす。

とてつもない鬼気だわ……でも一度捉えれば逃しはしない。

 

 

「千切る。」

 

 

結界の形状を固体化する。

 

 

「ムキャー!いたいたいだいたいだいたい。」

 

女の腕が激しいラグを起こす。

女の悲鳴だけでも一般人ならやられてしまうのではないかと言う程の霊力が込められている。

改めて目の前の女の強さに身震いする。

 

 

このまま鬼の手を千切る!

 

 

「シット!」

 

 

もう一人の小太りの男が私に向かって殴りかかる。

これも予想済み。

 

 

地面にあらかじめ仕込んでおいた結界を発動させる。

小型の結界が男の足元に形成され、足枷のように男の鬼の足を止める。

 

 

「ウォッ!?」

 

 

男の鬼の動きが一瞬止まる。

この隙に行ける!

 

 

「なに!?」

 

 

再び霊力を流しこもうとした瞬間、背後で同僚の祓魔官の悲鳴と強大な火気を感じた。

間一髪のところでその火気を避けた。

 

 

振り返るとそこには、炎に焼かれている同僚5人と、彼らの上空を悠然と飛行する火気を纏った大鳥がいた。

 

 

「なによあれ。」

 

 

自分の置かれている状況を整理すると目眩がする。

鬼二匹の相手だけでも既に精一杯なのにこの上あんな鳥の相手までしなきゃならないなんて……

 

 

私は祈るように懐から携帯を取り出そうとする。

 

 

 

「ほっ。」

 

 

その時戦場に似合わない、気の抜けた声がこだました。

声の出ところを目で追うとそこには一人の老人がいた。

 

 

「狐をおびき出すエサのつもりだったが案外骨のある術師であった。」

 

 

老人は一度手を叩いた。すると、私が渾身の思いで放った二つの結界をいとも簡単に消失させてしまった。

 

 

「あなた……何者。」

 

「私は蘆屋道満……そうじゃな今の呪捜部にはDと呼ばれているしがない術者よ。」

 

 

そう言うと老人……蘆屋道満はククククと気味悪く笑う。

 

 

私は携帯を取ろうと懐に入れた手を止めて、元に戻す。

 

 

「ほっ。誰かに助けを求めないとよいのか?」

 

「これくらい私だけで十分よ。独立祓魔官を余り舐めないで欲しいわね。」

 

 

蘆屋道満は確かに狐と言った。

あれが私の聞き間違いじゃなければ彼はここには呼べない。

 

 

頭の中に浮かんだのは、血だらけで笑う幼い少年の顔。

()()()以来、私は彼を守るために結界術を学んで、祓魔局に入庁して、独立祓魔官になった。

私が彼を守る。

こいつはここで倒す……!

 

 

決意とともに結界を複数展開する。

 

 

「ほっ。」

 

 

蘆屋道満の笑い声が合図のように、二匹の鬼と、一匹の大鳥が私目掛けて突進してくる。

 

 

二匹の鬼の攻撃を結界で受け止める。

片手で呪符を抜いて、大鳥に向かって放つ。

 

 

「タニヤタ・ウダカダイバナ・エンケイエンケイ・ソワカ!」

 

 

大鳥は大きく水蒸気を発生させ姿が隠れる。

 

 

「シット!」

 

 

間髪入れず結界を突破した男が殴りかかる。

 

 

「クッ。」

 

 

間一髪でその攻撃を避けて、距離を取る。

 

 

 

「甘いのだわ〜。」

 

 

女が上空から飛びかかってくる。

 

 

「もうっ!」

 

 

簡易的な結界を張る。

その結界は紙のように簡単に破られてしまう。

その一瞬のタイムラグの間に急所を避ける。

 

 

「……ッ!!」

 

 

声にならない悲鳴が出る。

女の攻撃は辛うじて急所を避けたが、左腕に直撃した。

鉛のように重い痛みが左腕に広がる。

利き手じゃないだけマシかしら。

こんな絶体絶命の時にそんな事をふと考えて自分の能天気さに笑ってしまう。

 

 

「ムキー!なに笑ってるのよ!!」

 

 

女が突進してくる。

まずは立て直すしかない。

再び結界を張って、後ろへ飛び去り距離を取ろうとする。

 

 

「!?」

 

 

それを先回りするように、大鳥が私の背後に移動して、炎気を吐き出した。

強大な火気が私に向かって飛んでくる。

 

 

逃げなければ女に殴り殺される、逃げれば火気に焼き殺される。

 

 

これは万事休すかしら……。

観念して、霊気の生成を辞める。

 

 

太一……!!

 

 

最期に思い浮かんだのはやっぱり彼の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっ。」

 

 

老人の歓喜の声が闇夜にこだまする。

 

 

私の背後から、強大な水気が発生した。

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

 

目の前から、女の悲鳴が聞こえる。

 

 

「……なにが起こってるの?」

 

 

事態が飲み込めずに私は周りを見渡す。

 

 

「なんとか間に合った……」

 

 

鉄塔の上に人影を一つ見つけた。

 

 

その人物は、今一番頼りになる、しかし一番この場に来て欲しくない人物だった。




お久しぶりです。

もはや間が空いたとか言うレベルじゃないですけど……


なるべく次も早く投稿できるように頑張ります。
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