ロリてんっ! ~ロリコン勇者が転移して、幼女ハーレム作ります~   作:ナマクラ(本物)

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第九話「幼女の奴隷」

 俺が送り出されたこの世界における人間とは、とても矮小な存在である。

 

 街を抜けて大自然の中に放り出されると、強靭な戦闘能力を持たない人間は、あっという間の魔物の餌になる。

 

 だから人間は徒党を組んで、武器を開発し、戦術を練り、集落を築き上げた。人間は、知恵を絞ってこの世界で生きているのだ。

 

 裏を返せば。集団を追われ、村八分となり、一人街外へと放り出されてしまえば、その人間に未来はない。エマ姉がそうであったように、町の外で人間はあっさりと命を落とす。この世界における平原とは、地獄への入り口なのだ。

 

 俺は幸いにも、女神(ババア)に唾液を塗りたくられる試練を乗り越えた結果、すさまじい身体能力を手に入れこの世界へとやってきた。この身体能力がなければ、俺はこちらに来た初日にリザードの腹の中に納まっただろう。

 

 ……俺はふと考えてしまう。俺は今までこの世界に来て好き勝手をしてきたつもりだが、実は全てあのババア神の狙い通りなのではないか、と。

 

 俺には大切なものが出来た。家族を失ってしまい、俺以外に頼れる大人のいない少女、エマだ。

 

 俺は魔王なんかどうでも良い、関わらないでおこうと思っていた。だが、もしこの先魔王がエマに害を及ぼすような事があるなら、俺に戦う理由が出来てしまう。いや、状況次第では積極的に戦いに行く可能性もあるだろう。

 

 そう、あの女神の目論見通り。俺は、魔王と相対せねばならないかもしれないのだ。

 

 ……じつに、忌々しい感覚。全て、あのババアの掌の上で踊らされていると言う不快感。

 

 可愛いエマと出会わせてくれたことだけは、あのババア神に感謝しておこう。だが俺は、そう簡単に思い通りに動く気はない。俺は俺の好きに生きていく。そう簡単に思い通りになると思うな、年増女神め。

 

 

 

 

 

 

 ────いや、一度たりとも思い通りに動いてくれた事ないじゃないですかー

 

 ────動いてくれた事ないじゃないですかー

 

 ────ですかー

 

 

 

 

 

 

 む、怪電波。無視しよう。

 

 そんな俺とエマは、結局もともとの予定通り、首都ぺディアを目指して旅を続けている。

 

 何故勇者が漫遊していたのか? とエマに尋ねられたが、魔王と戦う前に世界を旅しておきたいと言ったら納得してくれた。

 

 今のところ、魔王による侵略は始まっていない。だがエマによると、女神により勇者がこの世界に転移されたということは、間もなく侵略が始まる前触れなのだとか。 

 

 魔王と闘うならば、一度首都に赴き装備を整えるのも悪くない。エマは俺に首都へ向かうよう勧め、俺はその提案に乗った。

 

 首都までの道のりは遠い。ざっと一月はかかるらしい。あいにく旅の準備は出来なかったものの、俺は魔物を狩れる程度には強いので、道中で食料に困ることはなかった。

 

 飲み水に関しては、エマが小まめに河を見つけては補充してくれた。二人旅だからか、余り水や食料が不足することはなかった。

 

 エマが居なければと思うと、少しゾッとする。俺は今、炊事や金銭管理、道案内に家事雑事は全て彼女に任せっきりだ。

 

 この異世界で最初にエマに出会えたのは、俺にとって望外の幸福らしい。

 

 もし、女神の勧めるままエマと出会わず旅をしていたら、今ごろ俺は野垂れ死んでいたかもしれない。だだっ広い平原で満足に食事も水も取れず、衰弱しきったところで魔物の餌になる未来が、容易に想像できる。

 

 そう、まるで────

 

 

「ペニーさん。見てください、人の死体です。追い剥ぎしましょう」

「……いや、まだ生きてるんじゃないかな、あの人」

「見た感じ弱りきっているので、あれはほぼ死体です。幸運にも服を着ていますし、ひょっとしたら身銭もあるかもしれません。ラッキーです」

 

 

 ────まるで、俺達の進む道の最中で倒れ伏しているあの人物の様に。 

 

 その人物はうつ伏せに倒れ、辛うじて手を進行方向に向けて倒れている。右膝を微かに曲げているあたりを見ると、歩いてる最中ふらりと倒れたのだろうか。

 

 微かに背中が上下しているので、生きてはいそうである。

 

「……誰……か……、水…………」

 

 そして、意識もあるらしい。俺とエマの会話が聞こえたのだろうか、掠れた声が倒れているその人物から聞こえてきた。

 

「おや。まだ意識があるようなので、一思いに殺ってしまいましょうか」

「エマちゃん、容赦ないね……」

「他人に情けをかけることの馬鹿らしさは、骨身に染みてますので。ペニーさん以外の人は皆ムシケラと思うようにしています」

「おお、過激ぃ……」

 

 そう言って倒れている人物を見下すエマの青い瞳は、氷のように冷徹だった。どうやら、両親と姉を失ったせいでエマの情操が著しく傷害されているらしい。

 

 このままでは、エマは冷徹な性格に育ってしまうかもしれない。姉との会話を思い出すに、本来エマは根の優しい子の筈だ。

 

 ここは一つエマの為にも、倒れているあの人を助けておこう。食料管理をしているエマには負担をかけることになるが、人を助ける事の大切さも忘れないで欲しいのだ。

 

「……エマちゃん、スマン。俺はさ、あの人に食料を分けてやりたい」

「そう言うと思いました」

 

 俺はそう、恐る恐るエマに提案してみると。意外にも彼女は呆れたという表情のまま、僅かに微笑んだ。

 

「どれだけ私が言っても、ペニーさんははきっとあの人を助けるんだろうって、思ってました」

「すまん、エマには負担をかける。怒らないのか?」

「まさか。そんな貴方だからこそ、私は付いていくって決めたんです。本音は、あんなの追い剥ぎしてポイするのが一番良いと思うんですけどね」

 

 そんな恐ろしいことを言って笑うエマは、少しばかり嬉しそうだった。

 

「私自身あれだけペニーさんに助けられた癖に、ペニーさんが他の人を助けるのを止める権利なんてありませんよ。分かりました、食料を分けてあげましょう」

「うん。ごめんね、エマちゃん」

 

 良かった。彼女はまだ人間不信に陥っていない。冷徹な思考回路を身に付けてしまっているが、きちんと人の事を考えてあげる心も持っている。

 

 少し、安心した。

 

「いえいえ。あ、だけどペニーさんはそこで待っててくれませんか? 私が考えるに、ただこの人に食事を施すだけでは何も変わらないので」

「どういうことだい?」

 

 さっそく助けにいこうと俺は倒れた人物に駆け寄ろうとしたが、くいっとエマに服の袖を引っ張られた。

 

 どうやら、彼女には彼女の考えがあるらしい。

 

「我々の施しによって、例えここで一食を得たとして。半日も経てば、あの人は再び行き倒れます。状況は何も変わりません、まさか一生施し続ける訳ではないのでしょう?」

「そ、そうだね」

「真の人格者は、腹を空かせたものに食事を与えず、食事を得る手段を示すと聞きます。だからここは、私にお任せを」

 

 エマは何やら小難しい事を言い、俺を置いて一人でつかつかと歩いていった。

 

 食事を与えるのではなく、食事を得る手段を示す? こんな平原のど真ん中で? そんな事、一体感どうやって────

 

「そこの方、無様に平原で行き倒れているそこのお方。貴方は食事が欲しいですか?」

「………欲しい、お願いします、何か私に固形物を……。もう一週間は食べてなくて……」

 

 エマが話しかけると、物凄い食い付きで倒れていた人物が振り返った。話しかけられるのを待ち構えていたらしい。

 

 その倒れた人物は、女性の様だ。黒髪ロングの、幸薄そうな女性だった。

 

 年は分からないが、かなり幼い顔つきをしている。見た目だけなら中学生くらいだろうか。

 

 だが俺のセンサーが反応しない当たり、幼女(13歳以下)では無さそうだ。少し幼げな高校生あたりだろう。

 

「ええ。先程、私の旅仲間と相談しまして、貴女が望むなら食事を提供する運びになりました」

「ほ、本当……? あ、ありがと、ありがとう……。このご恩は────」

「お礼は必要ありませんよ、ビジネスライクにいきましょう。では、こちらの奴隷誓約書にサインをお願いしますね」

 

 そう言ってエマは口元を歪め、1枚の羊皮紙を差し出した。彼女のその目は、先程のごとく冷徹な光を帯びている。

 

 ……エ、エマちゃん?

 

「どっ、奴隷!?」

「はい、貴女には奴隷になっていただきます。もし、このまま私達に放置されれば、貴女は命を落とすでしょうね。今から貴女に提供する食事はすなわち、貴女の命と同義です。当然、相応の対価を支払って頂きますよ」

「えっ……。えっ……?」

「ここにパンと燻製肉があります。貴女の命を救う、貴重な食料です。その対価として、貴女は誓約書に血判を記してもらいます」

「あっ……ああっ……」

「私は料理の心得が有りましてね。これは自信作です、香辛草が良質みたいで、なかなかに美味しいですよ?」

「ああ、ああああー」

 

 悪魔(エマ)はニコリと腹を空かせた娘に微笑み、ぷらぷらと燻製肉を倒れた少女の前で左右へ揺らす。

 

 そして、先程の羊皮紙の一角を指さして、優しく微笑んだ。

 

「ここです。ここに、貴女の血液を付着させて、私の奴隷になると宣言してください。それで貴女の命は、助かるのです」

「そんな、私は、でも」

「何かを得るには対価が必要です。まぁ、見返りを求めず他人へ施しを与える宗派の方もいらっしゃるみたいですが、私はそうではありません」

「うぅ、ううぅ……」

 

 そ、そろそろエマを止めに入ろうか。俺は女性を奴隷にしてあんなことやこんなことをする趣味はないぞ。ましてや彼女は、まだ未成年である。

 

 いや、そういう欲望がないとは言わないが、自分の欲望に任せて子供を傷つけてしまったら俺はエ・コリと同類だ。それに、14歳以上には興奮しない。

 

 ポリポリと頭をかきながら、俺はエマを説得すべく歩き出して、

 

「あ、ペニーさんはストップ。言いたいことは分かりますが、これも彼女にとって必要な事なのです」

「え、その、エマちゃん?」

 

 機先を制され、エマに手で止められてしまった。

 

「ここからぺディアまで、暫く距離があります。彼女に一食を恵んだ程度では、また行き倒れるだけ」

「そ、そうだな」

「だから私達の旅に同行してもらいましょう。その間の食事も提供するとなれば、流石に彼女に働いてもらうのもやむを得ないかと思います。なので、彼女には奴隷として契約して貰います」

「契約?」

「ええ、一種の雇用契約ですよ。そして、私が彼女に奴隷として色々と雑事を仕込みましょう。そしたら、彼女は生きていくのに困らないはずです」

「雑事を仕込む?」

「ええ。それで提供した食事の代金分働いたら、彼女を奴隷から解放すればいいのですよ。私の料理スキルを覚えてくれたら、彼女は首都でいくらでも就職先はあるはずです。すると彼女はもう行き倒れない」

「……おお!」

 

 成る程。奴隷にすると聞いてビックリしたが、つまりは彼女を手元において働かせるだけか。それにエマちゃんは、彼女が俺達と別れた後のことまで考えている。流石というかなんというか。

 

「……分かりました、そう言うことなら悪い話じゃない…….。私、バリバリ働きます、だから、その、ごはん……」

「ええ。ならば、ここに血判を」

「……痛いのやだなぁ。でも、しょうがないかぁ」

 

 エマの話を聞いて安心した表情になった黒髪の少女は、エマが差し出した先程の紙を受け取る。

 

 そして恐る恐る彼女は親指の先を噛み千切り、その誓約書に血判を押した。

 

「……私、オンディーヌはエマ様の奴隷となることを誓います」

「────ええ。これで契約成立です。では、どうぞゆっくりお召し上がりください」

「あ、ありがとう。本当にありがとう」

「食べた分は働いてもらうので、遠慮なさらず食べてください」

 

 うふふ、と目を細めて笑顔になるエマ。彼女は手に持った食料を彼女へと手渡し、よだれを垂らす黒髪の少女に向かって微笑んでいる。

 

 燻製肉を受け取った彼女は、目を輝かせてむしゃぶりついた。喉がつまらないよう水を飲みながら、暫くぶりの食事を感涙して腹へ入れる彼女の様子は実にほほえましい。

 

 良かった、これで一件落着────

 

 

 

 

 ────ニタリ。

 

 

 

 

 渡したパンと肉を、涙をこぼして頬張る彼女から背を向けて。エマがとんでもなく悪い顔で口元を吊り上げたのは、見なかったことにしよう。

 

 大丈夫。エマちゃんは優しい子の筈なのだ。なにも心配は要らない。




エマちゃんは裏表のない素敵な幼女です
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