ロリてんっ! ~ロリコン勇者が転移して、幼女ハーレム作ります~   作:ナマクラ(本物)

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第十話「呪いの装備」

「……あなたは今までどうやって生きてきたのですか」

「む、無理ぃ。こんな重たいもの持てないぃ」

「やっぱり、俺が持つよエマちゃん」

 

 ヒキガエル。

 

 人間は自分の筋力以上に重力の負荷がかかると、ぺしゃりと地面に張り付いてしまうらしい。

 

 今までは俺が持って歩いていた、荷車の乗せきれない荷物の一部を奴隷少女に持たせてみたところ、ヒキガエルの如く無様な姿で道端に倒れ伏してしまった。

 

 一応弁解しておくと、彼女に手渡したのはせいぜい2-3㎏程度の衣類の入った小さな手下げ袋である。

 

「……ええ、そんなに重くないですよね。私でも楽に持てます」

「私、お箸より重いもの持ったことない……、くすん」

「な、ならしょうがないよ。オンディーヌは大事に育てられたんだね、うん」

 

 俺達が拾った少女は、思った以上に虚弱な生き物だった。こんなのが一人旅なんかしたら、そりゃ行き倒れるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とエマが拾った少女の名前は、オンディーヌと名乗った。

 

 彼女はどうやら人攫いに拉致され、山の近くにある人攫いのアジトに捕らえられたらしい。だが、奴隷商人との契約がうまくいきやんややんやと宴会を始めた悪人共の隙を突き、オンディーヌは見事脱走に成功したのだとか。

 

 だが、右も左もわからず、平原をさまよい続け、やがて行き倒れたという。

 

「その境遇には同情はしますけど、あいにく我々も裕福ではありません。食事の世話をするからには、相応の代価をいただきます」

「……命からがら人攫いから逃げだしたのに、結局奴隷にされちゃ世話がないなぁ」

「代価を返していただければ、速やかに解放しますよ。むしろ私にしては非常に良心的な対応なのですが」

「最初は殺して追いはぎする気満々だったもんね、エマちゃん」

「ヒッ……! 契約していただいてありがとうございますエマ様」

 

 非情な現実を知り、オンディーヌは怯えた目でエマを見ている。早くも明確な上下関係が出来てしまったようだ。明らかに年下の幼女相手に媚びを売る、彼女の姿のなんとも寂しいことか。

 

 とはいえ現状、彼女に出来る仕事はない。荷物持ちすら難しいのだ。つまりペディアにたどり着くまで、延々タダ飯食らいを同行させることになる。そんな彼女の立場が低くなってしまうのも無理はない。

 

 それに、

 

「オンディーヌは孤児なのが厳しいですね。家族がいるならば、礼金を請求できるので扱いも良くなるのですが」

「……そう。私は親の顔、知らない子なの。だからもっと私に同情してくれてもいいのよ?」

「私は親の顔を知っています、もう二度と会えなくなりましたが。どちらが不幸なんでしょうかね、オンディーヌ?」

「いかんオンディーヌ、その話題は地雷だ!」

「ヒェッ……!」

 

 オンディーヌの媚びた声色を聞き、エマの目がゴスリと濁る。エ・コリ司祭が死んだとはいえまだ、心の整理をつけ切れていないらしい。自分の目で首だけになった両親を見たのだ、そう簡単に割り切る方が難しいのだろう。

 

 そんなエマの尋常ならざる態度でオンディーヌもだいたい察してしまったらしい。冷や汗を流し目を泳がせながらアタフタしている。

 

「そ、そうだ! 私にも一応、出来ることもあるよ。実は私、せ、戦闘要員になれる!」

「嘘つけ」

「無理でしょう」

 

 そして彼女は混乱したのか。いきなりそんな、あり得ない事を言い出したのだった。

 

「本当だって、私、これでも超貴重な呪術師なんだよ! もうほとんどこの世界には存在しない、本物の呪術を収めた者!」

「呪術、ですって?」

「そう、呪い! 私に呪われたら、大変な目に合うの。ね、役に立つよ私」

 

 オンディーヌはそういうと、得意げに首筋の石を見せつけた。ドロリとした禍々しい色のその石はなるほど、呪いのアイテムだと言われたら納得できなくもない。

 

「呪術師って、前の魔王軍との戦いで魔王軍側についてませんでしたか? まさかあなたは、人類の敵?」

「ちょ、違う! 呪術という技術を廃れさせないために、魔王軍と共に戦わなかった呪術師もいるの! その末裔、それが私なの! すごいレアだよ、この世界に生き残った呪術師は私含めて数人しかいないんだから!」

「なるほど。……本当であれば、確かに貴重です。して、どんな攻撃方法を持っているのですか? 呪術師に攻撃魔法を使えるイメージはないのですが」

「……うん、魔法と呪術は別物だから私は魔法を使えない。でも、呪った相手を恐ろしい目に合わせることが出来るの」

 

 ドヤ顔で啖呵を切った呪術少女は、禍々しい石を得意げに握りしめながら、自信満々に俺達に宣言した。

 

「何と私に呪われた者は……、夜、眠れなくなる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い、お願いだから私を売らないでぇぇぇ!!」

「どうやら、呪術師の生き残りだそうです。非常に希少価値が高いかと」

「呪術師、ねぇ。胡散臭いな」

 

 そして一月程の旅の末、俺達は首都ペディアに無事たどり着くことが出来た。その間、結局オンディーヌはタダ飯食らいだった。

 

 魔物の襲撃もあることはあったが、俺のワンパンで終わったからだ。いちいち呪いが発動するまで待つ余裕なんてないし、そんな窮地に陥ることもなかった。

 

「彼女との契約で、この先一月は奴隷として扱って構いません。1日食事を提供する代わり、1日奴隷として生活すると契約に明記しています」

「確かに。んじゃ、この娘の値段だが、2000Gでどうだい?」

「うーん、呪術師ということで希少価値は付きませんかね」

「商談を進めないでぇぇぇぇ!! 男に売られたら私の純潔散っちゃうから!! 最初は好きな人がいいのぉぉぉ!!」

 

 残念なことにエマは、オンディーヌを早々に仲間として見切った。一切仕事を与えず、首都に着き次第奴隷商人に売ろうとそう決めたらしい。

 

 オンディーヌは必至でエマに媚びているが、エマに彼女を保護する気はなさそうだ。

 

「とりあえず10000Gあたりで見積もっているのですが」

「それはボッタクリだよ、お嬢ちゃん。あの娘が処女だとしてもね、一月で10000Gは無い。あんまりふざけた値段を提示するなら、交渉を終わりにするよ」

「流石に吹っ掛けすぎましたか。まぁ確かに、元値が大したことありませんからね。3000Gでどうでしょう」

「そんなに安く見積もらないで、私の純潔!! いやそうじゃない、何でもするから売らないでぇぇ!!」

 

 ……助けてあげるべきだろうか。オンディーヌはそこそこの年齢には達しているが、未熟な面も多そうだ。まだまだ成長途中と考えたら、保護してやるべき存在かもしれない。

 

「私を売ったら呪うよ、呪っちゃうよエマ様!! あんたもう、二度と眠れなくなるよ! いいの!? いいの!!?」

「その場合は貴女を考えつく限り残酷な方法で殺します。売価は手に入りませんが、呪われてしまったなら仕方ない。煮えたぎった油はお好きですかオンディーヌ?」

「ひぃぃぃ!! 何でこの子こんな残酷な性格してるの! ペニー様、アンタどういう育て方したの!?」

「……エマちゃんは根は優しい子なんだ、うん」

「絶対に嘘だぁぁぁぁ!!」

 

 オンディーヌが慟哭する。どうしよう。

 

 多分、きっと、恐らくエマは元々は優しい娘だ。少し今は、両親を失って性格が歪んでいるだけだ。

 

「あー、そう言う脅しをする奴隷は売りにくいなぁ。悪い嬢ちゃん、別の店当たってくれや」

「そんな! もうこうなれば格安でいいです、そちらの言う通り2000Gくらいで────」

「主人を呪うなんて発言が出てくるあたり、奴隷教育がなっちゃいないよ。本物の呪術師だった時にめんどくさいしな、ウチは買取拒否だ」

「そ、そんな」

「イヤッホォォウ!! 助かった!!」

 

 店主との商談が破綻し、エマは絶望の表情で俺の方へ振り向いた。

 

 ……いや、俺を見られても困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後。数店、同じように奴隷商人の店を回ったが、オンディーヌを買い取ってくれる商人は居なかった。

 

 オンディーヌが自分を呪術師だと吹聴し、呪ってやると言って回ったのが効いたらしい。エマは徐々に憔悴し、最後の店に断られた瞬間に地面に膝をついて泣き出してしまった。

 

 心が痛む反面、オンディーヌが助かって良かったとも感じる。何とも、俺は複雑な心境だった。

 

「呪いです……。まるで呪いの装備です、オンディーヌは」

「ドヤァ。有能で可愛いオンディーヌちゃんを、もっと大事にするべきですエマ様は。損はさせませんよ!?」

「駄目、抑えるんです私。ここでオンディーヌを油で煮ても、一月分の食料が丸損です。なんとか、彼女に金銭的価値を……」

「そ、そんな事言わずに、私も頑張りますから! それにペニー様はお強いし、私も安全ってモノです! 実に良い人に拾われた!」

「エマちゃん、落ち着いて。般若のような表情になってるから」

 

 絶望しきったエマとは対称的に、オンディーヌはニコニコの笑顔だ。確かに、彼女の様なうら若き女性が奴隷にされたら、どんな目に遭うかは簡単に想像がつく。

 

 もっともエマは性知識が無いせいで、それに気付いていなさそうだが。もしエマにそんな知識があれば、即座に彼女は売春婦として仕事をさせられる羽目になるだろう。

 

「その、もう少しオンディーヌの面倒見てあげても良いんじゃないかな? まだ余裕はあるし」

「ですが、ペニーさん。彼女をこの先、我々の旅につれていく方が危険なのでは? 早めに売ってあげた方が、オンディーヌ自身にとっても良い筈なんですが……」

「あー……」

 

 そういや、俺って一応魔王倒す旅に出てるんだっけ。あんまり自覚なかったな。そっか、そのつもりならオンディーヌは確かに連れていけない。

 

 ま、ぶっちゃけまだ魔王を倒しにいくとは決めてないんだけどね。この世界における魔王とやらの情報を集めてから決めよう。

 

「……はぁ、その辺の人手の足りない店で労役させますか。休みなしで延々と働き続ければ、僅かですが資金を回収できるでしょう」

「え、私店で働かされるの? 貴重な呪術師だよ、もっと私に合った職場で────」

「良いから働いてください、この穀潰し」

 

 自称呪術師の甘えたニートの様な要望は、エマに一蹴される。確かに彼女は、仕事を選べる立場ではない。

 

 

 

 

 

 

 ──首都ぺディアに到着した、その日。

 

 オンディーヌの引き取り先を見つけられなかった俺達は、節約を兼ねて安宿に泊まる事となった。

 

 格安なだけあり、案内されたのはかなり狭い部屋だった。エマと二人ギリギリ並んで寝れる程のスペースしかない。

 

 だがそれはそれでむしろ役得だ。夜、エマは甘えるように俺に抱きついて来て、悶々として寝付けなかった。

 

 

 

 

 

 こうして無事に長い旅を終え、俺達は目的地だった首都ぺディアへとたどり着いた。だが、この首都ぺディアで俺達の旅は大きな転機を迎えることとなる事に、俺もエマもまだ気づいていなかった。

 

 勇者同士は、惹かれ合うように運命付けられている。そしてペニーは、首都ぺディアで新たな運命と出会う事となる。

 

 

 

 

 

 

 ────ちなみに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この扱いは、ないんじゃないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 オンディーヌに部屋を借りるのは流石にエマが納得せず、彼女は奴隷檻で体育座りをして就寝した。

 

 まあ彼女の年齢なら、ギリギリ耐えられるだろう。許せオンディーヌ。




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