ロリてんっ! ~ロリコン勇者が転移して、幼女ハーレム作ります~   作:ナマクラ(本物)

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第十七話「幼女神キノ」

「……」

 

 夜。

 

 あの忌々しい二人組によりエマに怖い思いをさせてしまい、オンディーヌに助けられて九死に一生を得た日の、その夜。

 

「一般人であるお前を巻き込みたくなかったんだ、隠してて悪かったなオンディーヌ。────つまり、俺も勇者なんだ」

 

 自らを勇者と明かしたオンディーヌに応えるべく、俺も自らの出自を明かした。日本に生まれ、平凡に暮らし普通の生活をしていた中年の男だと。そして、この世界で体験したことやエマとの出会い、マクロ教の話、すべてを包み隠さず話した。

 

 彼女は、そんな俺の話を黙って聞いていた。時おり相槌を挟みながら、目を見開いて冷や汗を垂らし、俺の話を聞き入っていた。

 

「以上で、俺の話は終わりだ。……魔王、って奴がどんなモンかはよく知らねぇけど、ソイツがエマに危害を加える存在なら容赦をするつもりはない。オンディーヌ、どうか俺に力を貸してほしい」

 

 そして。俺は全て話を終え、黙りこくっているオンディーヌに向き合って。これから共に戦う仲間(オンディーヌ)に向けて、俺は静かに微笑みを見せた。

 

 

 

 

 

「────女神キノ様の名において、この者に呪いの裁きを。水妖精の呪い(オンディーヌ・カース)!!」

「ぐあああああああああ!!」

「ぺ、ペニーさん!!?」

 

 オンディーヌ の こうげき!!

 

 俺 は 呪われた。

 

 

「ちょっと待てや。エマ様は、この幼女はアンタの娘じゃないんかい!!」

 

 話を聞いたオンディーヌはお怒りだった。それはもう、大変にお怒りだった。

 

「オンディーヌ、何をしてるんですか! 何でペニーさんを呪ってるんですか!」

「の、呪われたぁぁぉ!! し、死ぬぅぅう!!」

「いや、だって。だって、だってさぁ!!」

 

 怖い。オンディーヌの呪い、怖い。必死で命乞いをしようと彼女を見上げ、目が合う。

 

 俺を指差し怒鳴るオンディーヌは、目が据わっていた。養豚場の豚を見るような残酷な目で、俺をまっすぐ見据えていた。

 

 いかん。奴は本気だ。

 

「誤解だ、オンディーヌ。お前はこの俺を変態と思っているようだが、それは全くの誤解で────」

「エマ様、ペニー様、あんたらの信仰している女神の名前、何て言った?」

「幼女神ロリータ様です」

「確信犯だろ!! 確信犯なんだろ!? 馬鹿にしやがってこのロリコン屑ヤロウが!!」

 

 ……しまった、言い訳できない。

 

「そ、それで、それでエマ様との関係はなんだって?」

「この世で何より大切な宝物だ」

「その、口に出すのは、少し恥ずかしいです」

「誤解の余地がないよ!! 昨日助けに入ったの後悔し始めてるよ! なんでこんなクズ助けちゃったの私!!」

 

 ぶんぶん、と頭を抱えて喚くオンディーヌ。いや、割と誤解の余地は多いと思うのだが。まぁでも、確かに幼女神ロリータは不味かったな。

 

 さぁて、困った。俺はよく知っている、こうなった女のヒステリーが止まる事はない。誤解だというのに、その誤解を解く術がない。

 

 まだまだ若いが、オンディーヌは立派に女だ。ヒステリックに他者を非難し、話を聞かず感情混じりにわめき散らす女だ。

 

「ペニーさんはクズなんかじゃありません!! 私を、たった一人だけ私を信じてくれて、助けてくれて!」

「え、あ、そうなんだけど! やってることは正しいし、エマ様助けたのは正直感心してるんだけど、でも……でも結局コイツはただのロリコンなんだよぉぉぉぉ!!」

「オンディーヌ。子供が好きで何が悪い」

「開き直った!?」

 

 どうせ、喚き散らされるのならば。俺は変に否定せず、真っ正面から宣言してやろう。

 

 案外、その方が女も呆れ果てて黙りこくる筈だ。俺は呪い殺されるわけにはいかないし、土下座でもして呪いを解いてもらうしかない。

 

「子供は宝だ。未来へと続く、命の奔流だ。俺は、子供を守るためなら何でもする」

「お、おう」

「エマにはもう、身寄りがない。俺以外に頼る人間はいない。俺は死ぬわけにはいかん、オンディーヌが俺をどう思おうが気にしないが命だけは助けてくれ」

「あ、でも、えっと」

「この通りだ!」

「ぺ、ペニーさん。そんな、オンディーヌごときに頭を下げなくても!」

「オンディーヌごとき!? 私、エマ様の中での位置付けどれだけ低いの!?」

 

 土下座。土下座。

 

 この謝意に溢れた体勢をみよ、オンディーヌ。大の大人の、中年のオッサンの土下座だぞ。見苦しかろう。

 

 これでも、この俺を許さないと言えるのか!?

 

「あまり調子に乗らないでください、奴隷風情が」

「はい? エマ様?」

 

 情けない大人の土下座に硬直しているオンディーヌは、近付いてきたエマに背中を触られるまで棒立ちしていて、

 

奴隷虐(ドレッド)

「ぎゃああああぁぁぁぁ!!!」

 

 苦悶の絶叫と共に、オンディーヌは激しく痙攣し始めた。

 

 な、何これ?

 

「い、痛たたたたぁぁぁ!! やめ、やめて、やめろぉ!?」

「……奴隷は、基本的にご主人に逆らえないんです。逆らうとこうなる訳で」

「あが、あがががががが」

「オンディーヌ、貴方の主人は私です。……もし、ペニーさんの呪いを解かなければ、分かりますね?」

「分かっ……分かっ……ゆるっ……してっ……」

「分かりますね?」

 

 ……あ、奴隷ってそういう感じなんだ。白目を向いてビクンビクンと震えているオンディーヌは、そこはかとなく哀れだった。

 

「エマ、昨日はオンディーヌに助けてもらった訳だし、そろそろ」

「ペニーさんの呪いを解くまでは止めません」

「とくっ……解くからぁぁぁ!!」

「エマ、それ以上いけない」

 

 苦悶に悶えるオンディーヌの顔がお嫁にいけない顔になってる。そんなに痛いのか、アレ。

 

 他人を苦しめて喜ぶ趣味はない、そろそろ助けてやろう。

 

「エマちゃん? オンディーヌ死んじゃうよこれ」

「心配しなくても大丈夫ですよペニーさん。この魔法は痛みを与えるだけで、怪我したり死んだりしませんから。のたうち回ってどこかに頭をぶつければ、話は別ですけど」

「解説してないでっ……!! 早くっ解放っ……!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴隷契約が終わったら……覚えてろ……」

「まだ反抗心ありますね。ま、見ててくださいペニーさん。すぐに従順な下僕へ生まれ変わらせます」

「いや、オンディーヌは旅の仲間候補で……。というか、今の魔法なに?」

「私はまだ奴隷商品を扱った事がなかったので、市場で学んで来ました。反骨するプライドをへし折るのがコツだそうです」

 

 朗報、エマちゃん奴隷の扱い方を習得する。

 

 ……やばいなぁ。エマちゃんの性格、どんどん歪んでいってないか。この世界の倫理観そのものも冷たいけど、それでもエマちゃんには人を信じる良い娘に育ってほしいのに。

 

 一応、庇っておこうか。この二人が不仲になれば、いつかオンディーヌがエマちゃんを呪いかねない。

 

「エマちゃん、奴隷扱いはそろそろやめないか? オンディーヌは一応勇者で」

「そこも腹立たしいポイントです。キノ教の勇者なら、奴隷落ちしたとしてもキノの教会が資金援助してくれるに決まってるじゃないですか」

「……あっ」

 

 ……あっ。

 

「なのに、わざわざ身分を偽ってなぜ私達に付きまとったのですか? きっと、腹に何か後ろ暗い考えを潜めているのでしょう。我々も急ぐ旅路です、手早くまとまったお金を返してくれた方が助かったのに」

「……あー」

「で、いつでも解放される事が出来たのに、わざわざ私達に付きまとった理由はなんですかオンディーヌ?」

「…………てへへ?」

「思い付いてなかったのかオンディーヌ」

「……所詮オンディーヌはオンディーヌですね」

 

 オンディーヌは居心地悪そうに、目を左右へ振りながら頬を掻いている。気付いていなかったようだ。

 

 俺自身、今までそんな考えはなかった。勇者なら自分の神様の教会に行けば資金援助を受けられる。そりゃ、そうだ。

 

 ……なら俺も、あのババアの勧めた教会に行けばもっと手軽にお金が手に入ったのか……? そういや、あの男女勇者二人は、実践経験少なそうなのにそれなりの装備揃えてたな。

 

 あの二人も、教会に援助してもらって装備を揃えていたのか。俺、自分でお金を稼ぐ必要なかったじゃん。

 

 

 

 ────問題はあの女神(ババア)の名前が一切分からないことだ。それとなく、それとなくこの二人から他の女神の話を聞けないかなぁ。

 

 

 

「じゃ、今からキノ教の教会に行きます? 借金を全額足揃えて返していただければ、私達としてはこれ以上貴女に関わるつもりはないのですが」

「了解ですエマ様。これで、これでやっと人並みの生活が……」

「これで、やっと元の二人旅。一安心です」

「あ、結局オンディーヌは俺達と旅しないのか?」

「あー。ペニー様、勇者同士でパーティ組むのって仲が良い女神同士じゃなき基本ダメなんだって。幼女神ロリータとか言うよく分かんない女神はちょっと……」

「それはロリータ様に対する侮辱ですか?」

「ヒエッ、狂信者……」

 

 ま、そんな神様いないんだけどな。俺が勝手に崇拝してるだけだし。エマ、なんかごめん。

 

「あ、そーだ。あの男女はパーティー組んでたみたいだけど、アイツらは仲良い女神同士ってことなのか? 女神については何も知らないんだ、教えてくれオンディーヌ」

「勇者なら自分の女神様に聞けば良いじゃん……。あ、ロリータ様って生まれたての女神なんだっけ? それでよく分かってないの?」

「おう」

「了解了解、簡単しか知らんけど教えたげる。後で、キノ様にも詳しく聞いといたげるよ、あんたの言うロリータ様とやらについて」

「サンキュー、オンディーヌ」

 

 オンディーヌは微笑んだ。ようやく奴隷から解放される時が来て、喜んでいるのかもしれない。エマとしても、お金が返ってくるなら万々歳だそうだ。

 

 明日、この町のキノ教の教会を聞いてオンディーヌを売り飛ばしにいく方針となった。だから、今のうちにオンディーヌから聞ける話は聞いておきたい。

 

 他の女神の、具体的な情報について。

 

「太古の昔、この世に宗教と言う概念を作り上げた5人の女神様がいて、それぞれ性格がまるで違った。それぞれが、自分に近い感性の人間を信徒として集め、それぞれの思うまま理想を掲げた」

「あ、それ私も知ってます。マクロ教の聖典に載ってました」

「で、その女神様の中で最も寛容で、最も話がわかると言われているのが女神キノ様。自分の持つ欲望に忠実であれ、欲望を満たすために他者を害するなかれ、皆が皆の為したいことを為す世界こそ世界の完成形である。これがキノ様の教えだよ」

「一般的にキノ教は『享楽主義』と呼ばれていますね。人に迷惑をかけない範囲で楽しいと思うことを楽しみましょうと言う、ある意味自堕落な宗派です」

「あーキノ様は、確かに『享楽』の女神って言われてるね。楽しいって感情は、生きる意欲であり生きる意味なんだよ。その楽しみを全員で共有し、皆が笑顔になれる世界は素晴らしいと思わないかい?」

「あー、一理あるような?」

 

 働いたら負けだと思ってる。何故かそんな台詞が、頭に浮かんできた。

 

「で、そのキノ様と仲が悪い宗派は2つ。ぶっちゃけあの男女なんだけど、カルバ教とテトラ教だね」

「一方カルバ教とテトラ教は、お互い仲良しです。あの二人がパーティー組んでたのも納得ですね、おそらく女神が狙って引き合わせたんでしょう」

 

 あの二人か。

 

 男の方は頭のネジが何本も外れた言動をしていたし、女の方はとんだサイコパスだった。きっと考え方も近いのだろう。

 

「実力主義で、個人の能力こそ全てなのがカルバ教。これ、男の方ね? 俗に『孤高』の女神カルバとか吹聴されてるね。で、負けたやつはクズだとか弱いやつに人権はないとか、ちょっと頭がアレな宗派だよカルバ教は」

「と言うか動物とか魔物と同じレベルですよ、あの連中。負けたら勝った側に尻尾を振って従う、群れの長を倒したらその人間が群れの長になる、みたいな事を当たり前だと思っています」

「ある意味分かりやすいな。でも、アイツ俺にぶっ倒されても負け認めなかったけど……」

「負けを認めさえしたら素直ですよ、カルバ教は。現に、敗北を悟った瞬間オンディーヌに土下座しましたしね」

「あー、負けを認めさせるのが面倒くさいのか……」

 

 そういや、何かと理由をつけて俺に負けを認めてなかったな、あの男。負けを認めてしまったら絶対服従だもんな。

 

「それ、で。女の方が一番たちが悪い、世界で最も忌み嫌われてる宗派。それがすなわち、テトラ教です」

「エマ様を躊躇なく人質に取る辺り、想像出来ると思うけど。今回の魔王討伐で、最も警戒しないといけない味方はあの女だと思うよ?」

「え? あの女、そんなにヤバイの?」

 

 一見すると、あの女はまだ常識的に見えたが。行動はサイコパスだったが、言動だけはまともだったような。

 

「あの宗派、道徳とか倫理観は『自身の本心を悟られないための心の装飾』としか思ってないらしいからね……。常識的だと思われるためだけに倫理観を習得してる連中、それがテトラ教徒です」

「目的を達成するには手段を選ぶな。どんなに見下げた手を使おうと、勝てば正義。それが『狡猾』の女神テトラの教えです」

「たち悪っ!?」

 

 想像してた以上に、テトラ教はたち悪かった。あの一見常識的な言動は、全部演技だったのかよ。

 

 あーでも納得した。力こそ正義、倫理観なんて糞食らえなカルバ教。結果こそ正義、倫理観は利用するテトラ教。

 

 大本は食い違っているけど、案外似た者同士なのかもしれない。

 

「で、その他の女神は? 女神マクロはなんとなく知ってるけど」

「女神マクロは『慈愛』の女神で、誰彼構わず困った人がいたら助けましょうっていう、全ての宗派でいちばん優しい女神と聞いてたんだけど……」

「けっ……」

「話聞いてると、何かイメージ違うなぁ。マクロ教って奴隷肯定してるんだね」

「奴隷になったとして、他人を愛する心を失っちゃダメって教えですからね。今思うと、奴隷を支配する階級に都合の良い教えです。マクロ教徒に成金や貴族が多いのも納得です」

「慈愛、ね……。無償の愛ほど胡散臭いモンは無い、エマちゃんの話を聞いてよくわかったよ」

 

 マクロ教の連中、酷かったなぁ……。享楽主義の女神キノが、なんか一番まともに思えてきた。

 

「で、最後に。我が女神キノと一番仲の良い宗派が『叡知』の女神、セファ教だね」

「この宗派は、俯瞰的な視野をもつストイックな人が多いです。冷静に状況を判断し、最良の行動を即断即決せよ、さすれば汝は満たされん。そんな教えと聞いています」

「セファ教徒は空気読めない真面目な人間が多いらしいよ。享楽的なウチらキノ教徒に振り回される事が多いんだってさ」

 

 そして、ここで初めて聞く女神の名前。

 

 だが、多分コイツはあの女神(ババア)では無いだろう。奴は、叡知だの冷静だのから最も遠いヒステリックなババアだった。

 

 しまったな。あのババア、本当に生まれたての女神だったのか。残念だ、結局あの女神の情報は何も手に入らなかった。

 

「セファ教の勇者は未だに行方知れず、ですね」

「なぁオンディーヌ、生まれたての女神の情報は、何もないんだな?」

「無いよ。でも教会に連れて行ってくれるなら、そこでキノ様に聞いてあげるってば」

「おーけーおーけー。じゃあ、明日だな。やっとロリータ様の詳しい情報が手に入る」

「……女神様と連絡、取り合ってないの?」

「女神ロリータの教会、ないからな」

「あー。でも、女神からの声は聞こえる筈だけど……?」

 

 む? そうなのか。

 

 あ、そういやちょくちょく頭に怪電波が飛び交ってたっけ? あれ、まさかババアの声だったのか。

 

「いや。きっと、生まれたてだから声を発信できないのかもしれん。声が聞こえたことはないな」

「成る程」

 

 聞こえてなかったことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、翌日。

 

 道行く人に訪ねて回り、運良く出会えたキノ教徒の旅人から、教会の位置を教えてもらい。

 

 昼下がり、俺達はどことなく陽気な音楽の流れるこざっぱりとした教会の前に立っていた。

 

「ああ、ついにまみえたキノ様の像……。これで私は、私はやっと人間に戻れる……」

「えーっと、私達の提供した食事の日数とオンディーヌの奴隷期間が交換されるので、一般的な女性奴隷の相場から考えると……、勇者ということで足元も見れますし、これはなかなか良い交渉に……」

「なんとなく教会っていうより酒場に見えるな、この建物」

 

 各々が勝手な事を良いながら、教会へと入ると。

 

「……zzz」

 

 ────頬を染め半笑い、長い赤髪の修道女が空っぽのワイン瓶を握りしめ、キノ像に抱きついて半裸で寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ようこそ、迷える子羊達よ。女神キノ様の教会へようこそ」

「何事もなかったかのように取り繕うな」

 

 オンディーヌに肩を揺すられ目を覚ました赤髪の修道女は、にこやかな笑顔を作り脱ぎ散らかした修道服を羽織った。

 

「偉大なるキノにお仕えする修道女様、どうか私の話をお聞きください」

「勿論です、子羊よ。さぁ、胸のうちをさらけ出しなさい……」

「何事もなかったかのように続けるな」

 

 色々突っ込みたくて仕方がないのだが、キノ教徒二人は揺るがない。成る程、こういう宗派なのか。

 

 とりあえず半目でキノ教徒二人を眺めていると、オンディーヌはつらつら自分の出自を話し始めた。

 

 自らが勇者であり、ここにいる悪魔じみた幼女に奴隷にされてしまったから解放してほしい。彼女の訴えを要約するとこんな感じだ。

 

 修道女は、胡散臭そうに話を聞いていたものの。一度女神に祈らせてほしいと必死で訴えるオンディーヌを見て何かを感じたのか、教会の奥へとオンディーヌを連れていった。

 

 来訪者用の女神像ではなく、女神と連絡がとれるガチの神聖な像があるらしい。それを使って、女神と話をするというのだ。

 

 なるほど、その辺の適当な女神像に祈っても女神と連絡とれないのね。そーいやババアも教会にいって祈れって行ってたっけ? そんな気がする。

 

「オンディーヌが本物なら、そこそこの額が見込めますよペニーさん。おそらく、10000G……いや、安いですね。20000Gが最低ラインとして、ふふふ。これでかなり装備にお金を回せます」

「エマちゃん、こういう時はイキイキしてるね」

「根っからの商人ですからね。父様も母様も、私をそう育ててくれました」

 

 一方、エマちゃんはとてもご機嫌な模様。こうやってずっと笑ってくれていたら、最高なのだが。

 

 そんなニコニコしているエマを愛でてオンディーヌを待つこと、10分ほど。教会の椅子に座ってエマの髪を薙いであげていた幸せの最中、何故か先程の修道女が奥から出てきて。

 

 無粋にもイチャイチャしている俺とエマに、頬を固く話しかけてきた。

 

「あー、ペニー様? 申し訳ありませんが、その。少しご足労いただけますか?」

「ん、俺?」

「女神様が貴方とお話ししたいとのことです」

「あー、了解。エマちゃん、少し待っててくれ」

「……はーい」

 

 まったく、もう。俺と女神キノとやらに、何の関係があるというのか。空気が読めないなぁ。

 

 とはいえ、俺も本物の女神に色々聞いてみたいことがあったのも事実。せっかくのお誘いだ、頼りになら無い俺のクソババァの代わりに、色々と尋ねたいことを尋ねてしまおう。

 

「こちらです」

 

 微妙にワインの染みがこびりついた修道服の女に連れられ、俺は奥の部屋に案内された。

 

 そこには、荘厳な表情で俺を見下ろす石像があった。

 

 

 女神、キノ。

 

 その姿に、俺は衝撃を受ける。その像は、来訪者用のふくよかでだらしないワガママボディの女神像とはかけ離れており。

 

 ────女神キノの像は、つるぺたな幼女の像だった。

 

 

「あ、あ、あ……」

「あの、ペニー様。あちらのお方が、その、貴方と二人で話をしたいと」

「ペニー様、聞いてるー?」

 

 居たのだ。幼女の神様は、ここにいた。

 

 あどけない顔は、満面の笑顔で満ちて。像の両手を広げたそのポーズからは、天真爛漫さが溢れており。

 

 まさに、美の化身だ。愛らしさの権化だ。

 

「……」

「ペニー様ー? 注目すべきはキノ様の像じゃなくて、そこに顕現してる貴方の主神の……」

「はぁー、凄いです。まさか本物の女神様が地上に現れるなんて……。私も一度は本物のキノ様に、ご謁見したいものです」

「……素晴らしい。ああ、そうか。幼女神ロリータとは、世界とは、女神キノの事だったのか」

「ペニー様、聞いてる? 聞こえてる? ほら、あそこ、あそこに貴方の主神さん来てるよ」

 

 俺は、気づけば頭を垂れていた。

 

 女神キノのその神々しさに、無意識のうちに頭を下げ、無心に祈っていた。

 

「……がれですー」

「そうか。俺が信仰すべきは、俺が称えるべきはキノ様だったんだ……」

「ぺ、ペニー様? ちょ、ちょっと! ほら、主神様来てるよ? てか、ペニー様はキノ教徒だったの? なんでキノ様拝んでるの!? あれ、本物のセファ様だよね?」

「ああ……キノ様の平坦な胸に顔を埋めたい……」

「……いい加減に、しやがれですー……」

「般若!? ちょ、セファ様が般若みたいな顔になってるって!! 反応して! セファ様に気付いて、何か反応してあげてペニー様ぁ!!」

 

 オンディーヌが、何か騒いでいる。うるさいなぁ、俺はやっと信仰すべき女神に出会えたというのに。

 

 ……ん? よくみると、オンディーヌの隣にどこかで見たことのあるババアが……?

 

 

 

 

 

 

 

「……真・女神パーンチ」

「のわぁぁ!!」

「わ、私の教会の壁がぁぁぁ!!」

 

 そして、俺は凄まじい豪速の拳により、壁に叩きつけられた。

 

 その刹那、微かに目に映ったのは、怒りで顔をしわくちゃにした醜い妖怪ババアだった。

 

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