ロリてんっ! ~ロリコン勇者が転移して、幼女ハーレム作ります~   作:ナマクラ(本物)

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第十八話「黒幕」

 その女は、女神(ババア)だった。

 

 慈母(はんにゃ)の如き笑顔を浮かべ、純白の衣(かれいしゅう)を身に纏い、慈しみ(いかり)に満ちた声で、彼女は壁に激突し倒れ込んだ俺に問いかけた。

 

「……汝の神は、誰ですか~?」

「幼女神ロリータ様だ」

 

 そして女神の脳血管がブチキレる音がした。まぁ、女神に脳血管があるかは議論の余地があるだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「色々と、本当に色々と文句を言いたかったのですー。いくら天から語りかけても、『怪電波』扱いされて聞き流されるしー。どんなにお願いしてもー、一度も思い通りに動いてくれませんしー?」

「うーわ、口臭いからそれ以上近づかないでくれるかババア」

「キノちゃんの神殿借りてまで降臨してもこの態度ですしー。女神的にあんまり介入するのは自重してましたけど、そろそろこのドチクショーの息の根を止めてやりたくて顕現しちゃいましたー」

「ペニー様、主神に命狙われてますよ!?」

 

 久々に顔を合わした女神(ババア)は、発狂していた。長い金髪をざんばらに振り乱し、鼻先には血管が浮き出ていた。それでいて、女神は笑顔だった。

 

 前々から腹黒い笑顔をする女神だったが、今回は自らの嫌悪感を隠そうともしていない。しかも、俺へ敵意を隠そうともしない。

 

 まーた更年期か。

 

「で? ストレス発散は済んだか年増。まだ帰らないのかババア?」

「あー、そうそうこれですー。このどうしようもなく女神を見下した態度。反吐が出るのですー」

「あ、わわわ、ペニー様? 何で主神に喧嘩売ってるんですか? てか、幼女神ロリータ様ってセファ様の事だったんですか!?」

「断じて違うのですー」

 

 目の光を消してゆらゆら幽鬼の如く立っている女神。その機嫌は最悪のようだ。きっと、何か嫌なことがあって俺に八つ当たりしにきたのだろう。

 

 俺が、相手をしないといけないのだろうか?

 

 こんなのに関わるのは心底嫌だが、なんと今あのババアはオンディーヌにまで詰め寄ろうとしている。

 

 仮にも俺に取り憑いている悪霊なのだ、オンディーヌに相手させるのは間違っているだろう。俺自身の手で祓わねばなるまい。

 

 俺はため息をついて、女神(あくりょう)へと近付いた。本格的な除霊は初めてだが、見よう見まねでやるしかない。

 

「悪霊退散、悪霊退散。ドーマンセーマン、ドーマンセーマン」

「……あのですねー? これは確認なんですがー。貴女は自分の立場を理解して、そーいう態度を取っているんですねー?」

 

 MISS! 女神(ババア)には効果が薄い様だ。詠唱を変えてみよう。

 

「オン ノウマクサラマンダ バザラダトバン……」

「あのですねー? 私を本気で怒らせるとー、もう二度と貴方の元居た世界に戻れなくなりますよー? この世界に取り残されてしまいますよー?」

「……ナンマイダーナンマイダー」

 

 仏教系の呪文で攻めてみたものの、やはりババアには効果が薄そうだ。西洋系の退魔呪文って、何があったっけ? アーメンとか言っとけばいいのかな?

 

 それと、今すこし気になるワードがあった。この女神(アホ)は何と言った? 俺が日本に帰れる?

 

「……そうですよー。貴方は私の力でこの世界に降り立っているわけですー。裏を返せば、私を怒らせたら貴方のいた日本にはもう戻れませ────」

「むしろ、俺に日本に戻るなんて選択肢あったのか。初耳なんだが」

「……」

 

 聞いてないぞ、そんな話。というかたとえ日本に戻れるチャンスがあったとして、俺はこの世界にとどまり続けるし。

 

 だって俺ってば向こうに家族とかいないから、日本に戻る意味はあんまりない。むしろ、大事な大事なエマちゃんが大きくなるまではこの世界に残してくれないと困るくらいだ。

 

「……あー。そういえば言ってなかったのですが、魔王を倒したら元居た世界に戻ることが出来るのですー」

「必要ない」

「うわぁ、帰りたがらない勇者も珍しい……。大概はこの世界の過酷さに辟易して帰還を望むのですがー」

「むしろ帰らされたら困る」

「……あ! そうだ、これ以上私に逆らうのならセファ教の教会から支援を打ち切ってやるのですー」

「元々支援なんぞ受けてないが。今は資金も潤沢だし」

「いや、これからの過酷な旅の中、きっと資金のやりくりに苦しむことになるのですー。その時に泣きついてももう遅いのですよー?」

「そうか、そんなに過酷な旅なら魔王と戦うのは止めようかな。おいババア、俺を勇者から解任して別の勇者を探してくれ。お前の汚らわしい加護とか消していいから」

「え、その……。そ、それは困るのですー、勇者辞退は本当に困るのですー、協定的に私もうこの世界に勇者を連れてこれないのです……」

「だったらつべこべ言うな、介入して来るな、家に帰って顔の皺取りでもしてろ糞ババア」

「あ、あれー? あれー? 何で私の方が立場低くなってるのですかー?」

 

 かびーん、と悪魔は涙目になりあたふたし始める。どうやらやっと、この女神(ババア)は自分の立場を自覚したみたいだ。

 

 俺はほぼ無理矢理この世界に連れてこられて、よくわからん敵を倒しにいかされる代理戦争の兵士にされた立場。代理戦争を依頼した側の方が、立場が低くて当然だろう。

 

 ────それに、そもそも。

 

「あと、お前に言っておくことがあるぞ自称女神」

「自称じゃないのですー、マジ女神なのですー」

「俺は一度も、お前を味方と見なした事はないからな。胡散臭すぎるんだよ、この年増が」

 

 俺はこの女神とやらを、最初から一切に信用していないのだ。

 

「────その理由を、伺ってもよろしいですかー?」

「まぁいくつか理由はあるが。最大の理由は、勘だ」

「勘、て」

「初めて会った時からずっと、貴様には嫌悪感しか感じなかった。見るだけで吐き気を催す、不快感がある。ただ年増というだけでは、ここまで生理的な嫌悪感を感じない筈だ」

 

 そう。

 

 俺は元々、女嫌いではあった。特に、更年期に差し掛かる羊水の濁ったババアには吐き気すら催した。

 

 だけど、こいつはレベルが違う。こいつを見ているだけで俺の全身の細胞のが、嫌悪の感情で悲鳴をあげている。

 

「糞ババアお前さ。この際はっきり聞くけど、俺の敵だろ?」

「……」

 

 俺は確信をもって。ババアにそう、問いかけた。

 

 

 

 

 

「ふ、ふふふ。成る程、あの忌々しい態度は全てを察した上での行動だったのですねー」

 

 

 

 

 

 悪寒。

 

 女神キノのその神殿を、凄まじい冷気が覆い尽くす。その冷気の出所は勿論、目の前の年増だった。

 

「ひっひえぇ!? ペニー様!? セファ様!?これ、何がどーなってるんですか!?」

「オンディーヌ、俺の後ろに隠れてろ」

「理由はよく分からないのですがー、確信されているみたいですねー。全く、貴方を選んだのはセファ渾身の失策なのですー」

 

 女神セファは、能面の様な無表情になり。そして、まるで無機物を見るかのように俺を見下した。

 

「ペニー、私の勇者よー。貴方の評価を上方修正してあげますのですー。私がバレる様なヘマをしていないにも関わらず、直感だけでそこまで見抜いた貴方は素晴らしいのです」

「で? お前の狙いは何なんだババア?」

「ふふふー、内緒なのです。と言うかどーせ、私が何を言っても信頼しないのでしょう? 構わないのです、これからは私の事を信頼せずとも構わない。こうなればビジネスライクに契約と行きましょう……」

 

 そして、いつもの間延びをした口調は鳴りを潜め。冷徹に、無感情に、ただ淡々と熟女(ババア)は告げる。

 

「少女エマを失いたくなければ、魔王を倒せ。分かりやすい契約でしょう?」

「……ほう。変に味方面せずシンプルに来てもらった方が、俺としてもやり易いね」

「ふふ、初めからこうすれば良かったのですねー」

 

 今まで嫌悪感しか感じなかったババアのその反応は、幾らか俺好みだった。初めて、こいつの本性が見えた気がした。

 

「こちらからの依頼としては『セファ教の勇者を名乗って』『魔王を討伐すること』だけなのです。悪い契約ではないでしょう? 魔王が世界を統べれば少女エマは殺される可能性が高いのでー、元々貴方は魔王と戦う定めなのですー」

「悪いが、この世界でお前の信徒を増やすつもりはない。セファ教の勇者を名乗って活躍すれば、信徒が増えてしまうだろう? だからこれからも、俺はロリータ様の勇者として振る舞う」

「ずいぶん嫌われているのですねー。何か今まで、私が貴方に迷惑をかけましたかー? 貴方が私に勝手に嫌悪感を感じているだけで、今のところ貴方にとってマイナスになるような事をした覚えはありませんですよ? ……この世界に連れてきたことも含めて、ね」

「馬鹿を言え。お前、エマを見捨てただろ」

 

 目を見開いて、フラフラと首を左右に振りながら笑う女神の頼みを俺は一蹴した。

 

 どうやら、俺に「女神セファの勇者」として名前を売って欲しいらしい。だが、こんな女神の布教を手伝うつもりはない。なにせ、

 

「この世界に来たその日、お前の薦めたとおりに麓の村にいってしまえば。エマはリザードの餌になっていたよな?」

「……でしょうねー」

「俺が助けにいけばエマは生き延びれたのに、お前はそれを勧めなかった。幼女を見捨てるような神を、俺は信用しないし布教しない」

 

 俺は、この世界に連れてこられた初日。自身の直感を信じて平原に一人取り残されていたエマの下へと向かった。一方でこの女神は、平原への道を進めず麓の村へいけと指示した。

 

 それは、つまり。この女にとって、エマは心底どうでもいい存在だったと言うことだ。

 

「その当時の少女エマはマクロ教徒なのですー。私が助けるのは、お役所違いというヤツです」

「宗派が違うから、幼女を見捨てるのか?」

「……まー良いです、今さら貴方から信頼を得るつもりはないので。ならセファ教の布教はしなくてよし、魔王を倒せばそれで契約完了としてあげましょうー。その代わり、セファ教会による支援は一切受けられないと思ってくださいー」

「望むところだ」

「シンプルな契約です。魔王を倒せば、貴方は邪魔されずこの世界でエマと暮らせます。魔王から逃げれば、セファ教会は全て貴方達の迫害に回ります。少女エマが大事ならば、魔王を倒すのですー」

 

 俺の弾劾を聞いた女神セファは、笑顔を潜め無表情となり静かに命令を下した。豊満な胸に手を置き、静かに目を閉じてセファは続ける。

 

「手始めにペニーよ、勇者オンディーヌと旅をするのです。オンディーヌは護衛がいないと十分な力を発揮できませんー。貴方の様な、ね」

「分かったよ」

「それと。……嫌な予感がするのです、武器防具を近日中に仕立て上げてください。必ず、一度は実践で使って新しい装備に慣れておくこと」

「へぇ、随分と気を使ってくれるんだな」

「貴方と私は、利害が一致している同志なのです。魔王を倒すまでは、私のことを信用してくれて構わないのです、ふふふ」

 

 その、女神の感情のこもらない言葉を聞いて。俺はなんとなく、ババアが嘘を言ってないような気がした。

 

 魔王を倒したい、というのはこのババアの本心なのだろう。それに関するアドバイスは、素直に聞いてやったほうがいいかも知れない。

 

「装備の仕立てはほぼ終わっている。後は、適当な依頼を受けておけば良いんだな」

「よろしいのです。期待しているのですよ、我が勇者よー」

 

 そう言って粒子となり消えゆくババアは、我が意を得たりと顔に書いてあった。アイツはやはり、俺を利用する気満々のようだ。

 

 だが。俺を勇者として利用しなければならない限り、あのババアがエマに手を出してくる可能性は低いだろう。俺がヤツに従ってさえいれば、エマは安全なのだ。

 

 厄介なことになった。だが、俺のやることは今までと変わらない。

 

 今までどおり、俺はエマのために戦う。それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どやぁぁぁぁぁ!! 見ましたか、見ましたかキノちゃん!!」

「……セファ、頑張った」

 

 そして、天界にて。

 

 普段は穏やかな性格の女神セファは、珍しく声を荒らげて両の拳を突き上げガッツポーズをかましていた。

 

「は、初めて!! 初めてあの馬鹿を思い通りに動かせたのです! その代わり、私が黒幕っぽい立ち位置になってますけど!」

 

 それは、今までろくに言うことを聞いてくれなかった自らの選んだ勇者の、初めてその舵を取る事が出来た喜びである。

 

 セファは今まで導いてきた中で最も扱いづらかった今代勇者に、毎日ひどく胃を痛めていたのだ。

 

「……セファ、全ての諸悪の根元っぽい振舞いしてた。超ウケる」

「何でも良いのです。あのバカに言うことを聞かせられた、それだけでハッピーなのですよ。……はぁぁ、マクロ教徒(いきょうと)の生死とかまで見ていられないのです。それで妙に突っかかってきてたのですね、あのバカ」

 

 その代償として、女神セファは自らの勇者からラスボス扱いされているのだが。彼女としてもそれは折り込み済みである。

 

 セファがエマを見捨てた(と思われてる)せいで、最早ペニーに信頼してもらうことは不可能だろう。

 

 ならば勇者ペニーの行動を操るには、味方に立って指示を出すより敵に回って交渉する方が楽だ。そんな叡知の女神セファの渾身の奇策が、見事にハマった。

 

「でも確かに最近、マクロの様子おかしい。あんな話を許すタイプじゃない」

「……そこなのです。ペニーの女神嫌いに、マクロちゃんの所業も一役買っていると思うのです。マクロちゃん、何か事情があるのかもしれませんね」

 

 その一方で、わずかな懸念が女神によぎる。誰よりも優しく、愛にうるさい女神マクロの教徒が行ったあまりに残虐な所業。

 

 何か、天界に想定外の事態が進行しているのではないか? そんな一抹の不安が、二柱の女神によぎっていた。

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