海未ちゃんハッピーバースデー!

1 / 1
園田海未生誕祭2018

「凛二等兵、どうだ?」

「はっ、希隊長。抜かりありませんにゃ」

「よしよし、これで完璧……。驚く顔が目に浮かぶやん」

「明日が楽しみですにゃ」

 

 

 

 

翌日。

「凛と希に呼ばれて来ましたが……姿が見えませんね。穂乃果とことりにも呼ばれているので、あまり時間を取られたくないのですが……」

屋上へとやってきた海未は、呼び出した人物を探して辺りを見渡す。

「一度電話をしてみましょうか」

そう言って海未がケータイを取り出した所へ、

「う、み、ちゃあーんっ!」

騒々しくドアを開け放ち小柄な人影が突撃をかましてきた。

「ぐっ……⁉︎ り、凛ですか?」

不意打ちだったものの転倒だけは回避し、海未は踏み止まる。

ひとまず凛を引き剥がし、唐突な全力ハグをしてきた後輩に戸惑いつつ、その疑問を問う為に口を開く。

「わしっ」

前に、海未のささやかな胸部が手のひらに覆われた。

「ひっ……⁉︎」

思わず上げそうになった悲鳴を何とか飲み込み、大体察しはつくが何事かと振り返る。

「やー控えめな感じも悪くないやんな〜。でもにこっちよりかは、いい感じだと思ったで!」

そこには、いつの間に背後へ回り込んだのか、いい顔をした希が親指を立てていた。

「……なるほど」

意外にも冷静な反応を見せた海未は、小さく頷く。

「…………覚悟はいいようですね?」

全く笑っていない笑顔。

「や、やー海未ちゃん怖いで〜? 軽いジョークやん?」

「ジョークで済む問題じゃありません!」

自分を抱くように胸元を死守しながら、海未は叫ぶ。そして一歩踏み出した所で、

「にゃーっ!」

パーン! と。

「ひゃう……⁉︎」

「お、可愛い声」

「…………っ!」

希への抗議を中断し、今度は凛へと振り返る。

「に、にゃー、海未ちゃん、顔怖いにゃ〜」

「誰のせいですか! そもそも何考えてるんですか⁉︎ 耳元でクラッカーを鳴らすなんて非常識にも程があります!」

「まあまあ、海未ちゃん。凛ちゃんだって、はしゃぎたい時くらいあるやろ?」

「いつもはしゃいでるじゃないですか」

この上ない正論である。

「そうかもしれんけど、たまには羽目を外したくなるやん?」

「いつも外してるじゃないですか」

ド正論。

「いやいや、流石にいつもはもうちょっと真面目やで?」

「“もうちょっと”って何ですか。普段からもっと真面目でいて下さい」

取りつく島も無かった。

「海未ちゃん、海未ちゃん」

希に辛辣な回答をしていた海未の肩を、凛が叩いた。

「ああそうでした。凛、まだあなたへの話は終わっ……」

プスリ。振り返った海未の頬に、人差し指が刺さった。

「引っかかったにゃー!」

「小学生ですか!」

「まあまあ、海未ちゃん。あんまり怒るとシワ寄っちゃうで? これでも飲んでリラックスリラックス」

「はぁ……そうですね」

色々と諦めたのか、海未はため息をついて希が差し出したペットボトルを受け取る。

「……希」

「なーにー?」

「これ、炭酸飲料専用のペットボトルに見えるのですが」

「だってコーラだもん」

「……私をおちょくるのは、そんなに楽しいですか?」

「あ、海未ちゃんって炭酸ダメだったやんなぁ」

「このユニットでどれだけ一緒にいたと思ってるんですか! 差し入れにキャラメルを入れないように気を付けたり、お泊まりの時は魚料理は作らないようにしたり、苦労していたのは私だけだったんですか⁉︎」

「え?」「ん?」

「あっ……」

勢いに任せて必要以上の事を口走った海未。

「わ、忘れて下さい!」

それで引き下がる二人ではない。

「え〜海未ちゃん、そんな事まで考えてくれてたんだにゃ〜」

「厳しいように見えて、実は誰よりもウチらの事思いやってたんやな〜」

ニヤニヤと、海未の肩を叩く。

「か、からかわないで下さい!」

顔を赤く染めてそっぽを向いた海未。それを見て、凛と希は楽しそうに笑顔を作る。

「お、そうそう。忘れる所やった」

ふと、希が思い出したように手を叩いた。

「今日ここに来る前、穂乃果ちゃんからお饅頭を貰ってたんよ」

「えっ」

その言葉に、海未は勢いよく振り返った。露骨すぎたと我に返り、再び顔を赤く染めたが。

「穂むらのお饅頭って、やっぱり美味しかったよね〜」

ニコニコした凛の言葉に、海未は引っかかりを覚える。

「……美味し“かった”?」

「いやー、あまりにも美味しそうだったから、ウチと凛ちゃんで全部食べちゃったんよ〜」

「海未ちゃんごめんね〜」

「…………そうですか」

途端に声の抑揚が無くなる海未。

「……………………」

しばらく黙っていた海未は、

「凛、希」

静かな声で、目の前の二人の名前を呼んだ。

当然こちらを向いた二人に、可能な限り無表情で海未は続ける。

「そこに正座なさい」

「え……でも海未ちゃん、ここって下コンクリート……」

「結構痛いにゃ……」

「何か文句でも?」

「「……はい」」

有無を言わさない威圧のこもった言葉に、希と凛は従うしかなかった。

「そのまま目を閉じなさい」

その言葉に、自然と海未の右手に視線が行く二人。

「希ちゃん……」

「ウチらは、一線を超えてしまったんや……」

だが、諦めて目を閉じた。

「潔いですね。……では」

暗闇の視界。海未の声がしてから、一瞬の静寂。頬への衝撃を覚悟した二人は、

「……何をすると思いましたか?」

回された腕の感覚で、拍子抜けして目を開けた。

「えっと……海未ちゃん?」

「……どういう事やん?」

戸惑う二人に、

「凛と希の考えなど、お見通しなんですよ」

ハグした状態の海未が口を開いた。

「どうせ、“私にサプライズを仕掛けよう”とか考えていたのでしょう? 今日が何の日か、私が知らないとでも思いましたか?」

「「…………」」

図星だった。

「私だって、やられっぱなしは悔しいですから。引っかかったフリをしてました」

耳元で聞こえる得意げな声に、

「えっと……いつから気付いてたの?」

「最初からですよ。凛と希が、わざわざ今日呼び出す辺り何かあると怪しんでましたから。……途中の悪ふざけには、本気で怒ってましたが」

「希隊長……」

「完敗や、凛二等兵……。海未軍曹には全部お見通しだったんや……」

「誰が軍曹ですか」

ようやくハグを解放した海未は、少しはにかんで何かを期待する目で二人を見た。

「それで、あの……やはり、ちゃんと言っていただけると……」

凛と希も顔を見合わせ、にっこり笑う。

「な、何ですかその顔は! 私だって、楽しみにしていたんです! 別にいいでしょう⁉︎」

「まだ何も言ってないにゃ」

「海未ちゃんも可愛いトコあるやん」

軽口を叩いてから、凛と希はせーのと息を合わせる。

「「海未ちゃん、お誕生日おめでとう!」」

屋上に響いたお祝いの言葉。

海未も笑って、胸の前で手を合わせた。

「二人共、ありがとうございます。とても、とても嬉しいです」

 

 

 

 

「さあ、一件落着した所で、ほむまんを食べましょうか!」

「あ、全部食べちゃったのはホントなんだ〜」

「え……?」

「リアリティ出す為やったん」

「そんなリアリティはいりません!」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。