幸せってなんだろうか、俺はふと哲学的な事を考えていた。
というのも、目の前に幼女がいて頭を下げてるからだ。
やめて、幼女の土下座とかダメージがすごい。
「しゅいませんでしたぁ!」
「うん、取り敢えず説明してくれ」
幼女は泣きながら説明してくれた。
そりゃもう、何言ってるのか分からないけど教えてくれた。
まとめると、よくある二次小説のように転生させてあげるよって話だった。
「その手の話って俺嫌いなんだよな。一時期は流行ったけど、最近は実は裏があったりとか奇をてらった作品が多いわけじゃん。神様、騙そうとしてません」
「それほどの力を持ってない」
「さようかー」
そんな権力とかあったら転生なんて面倒な事しないで魂を消し飛ばして隠蔽するらしい。
発言が黒い、これが腹黒属性か。
「なんでも叶えてあげるよ、そんで行きたい世界に連れてってあげるよ」
「その世界って見ただけで発狂する化物だらけだったりします?」
「なにそれこわい」
俺の知ってる神様だよ!異世界って時点で恐怖しか感じない俺は、TRPG勢である。
異世界ハーレム、ただし奇形の異形生物だけってな。
まぁ、平和な世界がいいな。
「願いは一つだけだかんね」
「えっ……それじゃあ、俺の願いは叶わなさそうだな」
「えっ、欲張りは良くないよ」
人間の欲望は際限ないから仕方ない。
うむ、どうするか……待てよ、行きたい世界は選べんだよな。
「分かった。俺の財産が働かなくても一生なくならないようにしてくれ」
「そんな簡単な事でいいの、分かった」
俺はそして、純真な幼女を騙した。
幼女ってチョロいって分かんだね。
行きたい世界は、オーバーロードの世界。
つまり、新世界の神になる!
そこは全てが黄金で出来た城、それは空中に飛んでいた。
「フハハハハ、カンストプレイヤー共がゴミのようだ」
「…………」
「漸くだ、漸くだよジャンヌ!俺の野望が叶うんだ」
ワールドアイテムを用いた自爆特攻が行われるが、金の力は偉大である。
そんな世界の意思すら、天上の意思を操れる俺の前では無意味。
「悪いが、俺達にはアイテムを用いた攻撃は無効化される」
『汚いぞ、このチーター』
「ふははは、愚民どものメッセージが心地いいわ」
だったら、課金してしまえばいい。
最も、会社を買収した俺には通用しないがな。
黄金の波紋を背後で展開しながら、そこら辺を一掃する。
フハハハ、このロールプレイが堪らんのである。
のこり三十分、そろそろ移動するとしよう。
「漸くだ、待ってたぜ世界の終わり、そして俺は新世界の神になる」
この十年の計画を実行する時が来たのだ。
DMMORPGユグドラシル、それは要約するとゲームの中に入れるゲーム。
現実はクソゲーがリアルな世界で人々はゲームにハマっていた。
今じゃ運営のやりたい放題に人がいないが最盛期はニュースになるくらいには盛り上がっていた。
さて、その世界で有名な男がいる。
公式チーター、ギルガメッシュ。
その中の人が金持ちクソニートなのは有名だが、正体は知られてない。
会社をやめる際に暴露した奴の話では株主で運営を好き放題出来るとかそういう噂があったりする。
そんな彼のギルド『バビロニア』は黄金の空飛ぶ城、空中庭園バビロンである。
そんなバビロンが向かった場所、そこは社会人ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』
アバターが異形種のみで構成され、悪のロールプレイで賑わったギルド。
そんな彼らのギルド拠点『ナザリック地下大墳墓』に来ていた。
「フハハハハ、我様が来た!」
「来たな、英雄王!」
ナザリック地下大墳墓の上空から、空中を歩くように降りていく俺の声に応える声があった。
それは、ナザリックのギルド長モモンガの声だ。
「フン、湿気た面だなモモンガ。どうやら、待ち人にはフラれたと見える」
「世迷言を、ゲームであってゲームでないが貴様の口癖だったな。そんな物は幻想だ。みんなリアルがあり、そして、リアルこそが現実だ」
「くだらん。貴様自身が、それを言うか」
その哀愁漂う異形に対し、俺が思ったのは失望だった。
俺自身がこのゲームにハマっていたのは確かだが、同じくらい目の前の骨もハマっていたと自覚している。
そんな奴が、まるで心が折れたかのように思ってもいないことを言うのだ。
リアルが現実で、ゲームは所詮ゲームだというのならば、こんなところに最期までしがみついてないで別のゲームにでも行けばいい。
にも関わらず、終りが来るときまでギルドを維持したのは何のためか、ただ惰性でそれが出来るだろうか。
「お前に、お前に何が……」
「フン、分かるものか。もはや語る口は必要あるまい、起動せよ我が宝物庫ゲートオブバビロン!」
「なっ、マジックキャスターに開幕アイテムブッパとか頭おかしいだろ!」
「フハハハハ、我がルールだ!」
俺の放ったアイテムが発射されていく。
それを慌てて避けるモモンガ、アイテムを駆使したり魔法を駆使したり、実に必死である。
更に面白いのは、アイテムを爆破する事である。
爆破すると、あぁ五万の課金アイテムを戸惑いなく爆破するなんて!このブルジョアめ!などと罵詈雑言が聞こえるのだ。
フハハハ、我が財力も力である。
これぞ、壊れた幻想(有料版)だ!
「ハァハァ、この野郎!最期の最期まで迷惑な――」
「どうだモモンガ、ここは楽しいだろ」
「――……えっ?」
何だかんだ、迷惑だと言いながら俺は目の前で笑っている主人公を見る。
そうだ、元は幻想だとしてもここは紛れもない現実だ。
これはお前の物語で、俺はそこに間借りさせてもらっている存在。
だからこそ、お前が楽しめるそんな物語でも良い気がする。
少なくとも、一人孤独に仲間を待ち続ける、そんな物語はなくなってもいいだろう。
たとえそれが、決められた運命だとしても、そんな運命をぶち殺す上条さんムーブである。
「時空の果てまで、この世界は余さず我の庭だ。故に我が保証する。世界は決して、そなたを飽きさせることはない」
「英雄王……あぁ、俺はみんなといたこの世界が大好きだ!」
「言うではないか。フム、興がのったぞ不死王。貴様の誇るナザリック、その最下層を案内することを許す。それ、早く我を案内しろ」
「上から目線な!まぁいい、どうせ最期だし誰にも見せないのは作りがいが無いもんなぁ」
そう言って、俺の言葉に応じるモモンガ。
それこそが、俺の目的だと知らずに快く応じてくれた。
何がなんでも、俺は原作に近い状況を作りたかったからな。
「つまらん、賑やかしもいないとは……NPCを連れてこい」
「良いだろう、リアクションの準備は十分か英雄王」
「おうおう、ロールプレイめんどいからはやくしろよ」
「えー、やっと乗ってきたのに」
そんな顔文字みたいな顔されても困る。
俺もノリノリだったけど、ずっとアレって疲れるんだもん。
「いやぁ、こうしてみると凝ってるなぁ」
「はっ、俺の所の方がすごいし」
「勝てるわけがない、こんな二十四時間普通にインしてるクソニートに」
「とか言いつつ、アイテム独占した時は流石の俺も焦った件」
「あったなぁ、そんなことも」
原作開始まで、十年の間は普通に遊んでた。
主人公達が色々やってるのを見ながら、アニメじゃ知らなかったなぁと新しい一面を見ながら有り余った時間を誰よりも費やした。
ずっといるし、課金しまくりで、狂人扱いされたけど、みんなゲームじゃなくてこれが現実だからと言うと納得したのか黙ったもんな。
「うはぁ、キメェ。このNPCの設定の量よ」
「アルベドの設定、凝ってるなぁ」
「因みに俺の嫁達も裏設定すげぇからな」
「お前はいちいち対抗意識を持たんと生きていけないのか」
分かってないなぁ、設定も現実になると思ったら文字制限いっぱいまで書くもんなんだよ。
まぁ、俺の言葉を信じてないのが普通だけどな。
「うわぁ、ビッチって……確かにギャップ萌えだったけど、流石に」
「それで愛してるとか書いちゃうモモンガに草」
「黙れ、おねショタ野郎が」
「おま、それを言ったら戦争だぞ!特殊性癖揃いのナザリック勢と戦争だぞ」
「やめよう、逆にダメージを食らった」
他愛ない会話をしながら、ゲーム終了の時間を待つ。
荘厳な玉座に座る死の支配者と人類の裁定者ムーブの俺である。
あと一分か、どれ何か言ってやるか。
「なぁ、モモンガ知ってるか?百年前の小説じゃ、ゲームが現実になるって物があるんだぜ」
「あぁ、都市伝説の類ですよね。懐かしいなぁ、最初期はそんな話もあったけ」
「ゲーム終了までログアウトしないと、そのまま異世界転移だよ」
「ハハハ、ナザリックが異世界行き?それは楽しそうだ」
「見ろよ不死王、貴様の眼前にいる臣下共の姿を。コイツらが動き出すのだ」
「それは……そんなことが起きたら、きっと驚くだろうな」
「また幾度なりとも挑むが良いぞ。不死王、次も我が勝つがな」
「えっ?」
次の瞬間、俺は身が竦むような感覚を覚える。
同時に、花弁のような物が発生し火花を散らす。
火花の中心、そこには武器を持ったNPC達の姿があった。
「えぇぇぇぇぇ!?」
「モモンガ様!」
「フハハハハ、さらばだモモンガ!いや、アインズウールゴウン!未来永劫楽しむが良い、これは貴様の物語だ!」
「待て、説明しろ英雄王!本当に待てぇぇぇ!っていうか、それリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン!」
「お前の物は我の物だ」
「このジャイアンがぁぁぁぁ!」
叫ぶモモンガを他所に、俺は転移する。
さぁ、産声をあげよう。
俺が、新世界の神になった瞬間であった。