そこは宇宙だった。
巨大な白い物体、それは月と呼ばれる物。
その何もない地平線の広がる無限の大地。
その場所に、俺はいた。
「ここが第五特異点、観測聖杯ムーンセル」
その中心にはピンク色の光を纏う城があった。
休憩5000円、宿泊8000円とデカイ看板が横にある。
「あれぇぇぇぇぇぇ!?」
もっと幻想的で、マーボー好きな神父が売店にいたり学生達が勉強してたり、ガラス張りの回廊とかワカメみたいなトラップとか、着物に皮ジャン着た裏ボス的なNPCとか、くっそ可愛い保健室の後輩がいたりとか、俺の知ってるムーンセルじゃなかった。
「どういうことだ、月の裏側どころか地表面なんだが」
「あらあら、大丈夫ですか?これは休息が必要、どうですか一発」
「ファック!貴様が元凶か!」
卑猥な手付きで、コンビニ行こうぜというノリでピンクにライトアップされた城を指差す女がいた。
ソイツの名は殺生院キアラ、神の如きビッチであれと設定した存在である。
「私はただ、自分の欲望に忠実なだけなのです。自分の階層を自由に出来るのなら、細やかな願いくらい叶えていいではないですか。アレは、私の願う小さな希望の象徴、可愛らしい少女の夢のような物です」
「どう見てもラブホですよね!詩的に言ってるけど欲望の象徴ですよね、可愛くねぇから!」
「もう、貴方に叱られては恥じ入るばかりでございます。続きはホテルで」
「そういうプレイじゃねぇんだよ!」
まさか、短期間のうちにどうやったかは知らんがラブホを立てていやがった。
まるで意味が分からんぞ案件である。
「この階層は電脳世界、いらないもののリソースを使えば建造物などデータですので簡単に作れます」
「おかしい、コンセプトは俺が収集した知識のある場所なんだけど」
「勿論です、だから人類の観測機たるムーンセルにはあらゆる知識があります。無いのは実体験、ならばここは私が体験させるしか無い、つまりセ○クスするしかない」
「その発想は可笑しい」
どうしてそんなこと言った、言え!
そう糾弾しそうになった。
いや、俺が設定してしまったからなんだが。
キャラ設定に忠実というか、俺も再現しすぎたかも知れない。
「そうあれかしと望んだのはマスターではないですかぁ」
「あぅっ……」
触れただけで、俺の身体に電流が走る。
な、なんだこれ……ダメだ、この先は地獄だぞ。
「ねぇ、ちょっとだけ」
「おうふ」
背中が包まれる、もう柔らかいとかそういう次元じゃなくて包容力で包まれてる気がする。
もう、俺の背中にある二つの脂肪は概念かもしれない。
漂う匂いにクラクラしてくる、どうしよう知力が低下してる気がする。
あれ、どうして俺はこんなところにいるんだろう。
きっと疲れてるんだ、休息しないと……ま、待て!危ない、今のは危ないぞ!
SAN値が絶対低下した、今の俺は正気じゃなかった気がする。
「男と女の関係に理性の挟む余地など必要でして」
「もう好きにしてくれ」
ど、どういうことだ。
俺の身体が勝手に動いてやがる。
くそ、口が滑ったぞ。
「マスターも素直じゃないですねぇ」
「心までは屈しない、絶対に絶対にだ」
そう、俺は仕方なく一緒にホテルに行くだけだ。
行くだけで何もしない。
は、はじめてはすきなこに……すきなこってだれだろう。
あたまがぼーっと、あれなんで……なんではだかになってるんだ。
「さぁ、ますたぁ……」
「そこまでです、エロ尼!マスターさんのピンチに颯爽登場、銀河美少女である謎のヒロインXでオルタなのは私、私が来たのでこれで勝つる」
「その声は、ペンドラゴン卿!」
「可愛いは正義、つまり私こそが正義である。正義は勝つ、戦わずして私の勝利は確定的に明らか」
「頭がバグってる、これだからバーサーカーは」
「黙りなさい、久しぶりに労働する私は疲れている。最初からクライマックスなのです」
アレはえっちゃん?
えっ、えっちゃんが現実にいる?
えっちゃん、えっちゃん、えっちゃん、うううわぁああああああああああああああああああああああん!
クンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくん!
んはぁっ!謎のヒロインXたんの銀色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅい!かわいい!えっちゃん!かわいい!あっああぁああ!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ゲームなんて現実じゃない!あ……小説もアニメもよく考えたら……サーヴァントは現実じゃない?
にゃあああああああああああああん!うぁああああああああああ!そんなぁああああああ!いやぁぁぁあああああああああ!はぁああああああん!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ……て……え!?見……てる?本物のえっちゃんが僕を見てる?
僕を見てるぞ!えっちゃんが僕を見てるぞ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはえっちゃんがいる!
「お、遅すぎたんだ理性が蒸発してやがる。これは緊急治療が必要、∞黒餡子」
「……ハッ、俺は一体何を」
「今更かっこつけても遅いよマスターさん、しかし私が来たからにはもう安心。バーサーカーになった私は知性と理性が両方そなわり最強に見える。普通のサーヴァントが狂化が持つと逆に頭がおかしくなって死ぬ」
「ちょっと何言ってるか分かりません」
可笑しい、俺の設定がバグってる。
あっ、可笑しいに決まってたバーサーカーだもんな。
「なら、二人まとめてセ○クスするしかないじゃない」
「やめろ、マジやめろ。卑猥さすがビッチ、卑猥すぎる」
「ふふふ、3Pの準備は万端か、暗黒卿」
「まだ私のターンは終わりじゃない、サポートキャラを召喚するのです。さぁ、仇敵バベジンよ来い!ライバルが仲間になるポジだろ、来るのです」
呼びかけに応じるがごとく、それは宇宙の彼方から赤い彗星となってやってくる。
俺とえっちゃん、そしてキアラの間にそれはクレーターを創りながら降り立った。
聳える鐡(くろがね)の巨躯、地を揺るがす歩行、唸る蒸気機関、戦慄くギアとシリンダー、噴き上がる蒸気、光る単眼 。
「ロボだこれー!」
「我が名は蒸気王、私の機関が作動し続ける限り、この世界には如何なる悪も存在してはならぬのだ」
「人類悪であり、人類を愛してる私と戦おうというのかしら」
「貴様が世界の敵である限り、我が歩みは止まらぬ。貴公、覚悟は出来たか」
「行くよ、バベジン」
「応!」
ウィーンと光る剣がえっちゃんの腕でブゥンブゥン言ってた。
シュコーと蒸気を纏うバベッジ。
それに高笑いして、腰をクネクネするキアラ。
なんていうか、カオスだった。
「喰らえ」
「私にっ!電撃などっ!おほぉぉぉ!効かにゅぅぅぅ!」
「そんな、私の攻撃が効いてない」
「いや、効いてるだろ」
なんか仲間割れが始まっていた。
ええい、こんなところにいられるか私は帰る。
ということで、ラダーに乗って移動した。
第六特異点、銀河戦争セイバーウォーズを素通りする。
なお、ここは宇宙戦艦が日夜覇権を巡って争う宇宙空間である。
ヴィランとヒーローのNPCがおり、宿敵として謎のヒロインXというえっちゃんのパチもんがいる。
いったい、何トリアなんだ。
そして新たな特異点、ラダーが開いた先は屋敷であった。
洋風の、それこそゲームに出てきそうな館である。
その中を普通に探索すると、何やら物音が聞こえる部屋があった。
「ちょ、待って嘘でしょ、友達だったじゃない」
『私の愛する方は、お姉様だけ……お姉様の愛を全身で受け止める』
「そういう!愛は!求めて!ない!っつーの!」
なんかテレビに向かって叫ぶTシャツ一枚の女がいた。
缶ビールとお菓子、あと漫画がたくさん積んであるテーブルがあった。
世界観がここだけぶち壊しだよ。
「はぁ、まぁイベントスチルは手に入れたしそろそろ着替えようかしら。アイツも来るこ――」
「や、やぁ」
急に立ち上がった彼女が振り返る。
そして、目の前で持っていたコントローラーを落として固まった。
そりゃ、Tシャツ一枚で黒いパンツ丸見えなのは恥ずかしいだろう。
固まるのは仕方ないね、取り敢えず俺が設定していたドレスに着替えようか。
「も……」
「も?」
「燃やす!燃やしてやる!吼え立てよ、我が――」
「ちょ、宝具は不味い!やめろ、やめ、うぎゃぁぁぁぁぁ!」