「やれやれ、全く度し難いにも程がありますね」
淡い金髪は瓶詰めされたような色合いで、その赤い瞳は見透かすように深い知性が宿っている。
その身は幼いが、しかし均整のとれたその肉体はすでに完成している。
未完成でありながら、完全であろう身体は不思議な雰囲気を纏っていた。
誰もが、その高貴な血筋を感じせずにはいられない。
王であれ、王たれと、生まれながらに王として君臨していた。
そんな少年は、頭上に二つの脂肪の塊を乗せられながら呆れていた。
「それと、毒婦。いい加減僕を離しなさい、寛大な僕でも狼藉には誅罰でもって応じなければならない」
「あぁんいけず、ですがそんなマスターも……ポッ、なんちゃって」
「はぁ、やれやれ。やれやれ系主人公とか流行らないんですけどね、まったく」
言われて離れる殺生院キアラに深い溜め息を吐きながら少年は玉座に座る。
黄金で作られた玉座ではなく、深く沈み込めるような作りの椅子だ。
というか、人をダメにする椅子だった。
「原点だからと言って素晴らしいとは限らない。神秘という点ではそうだが、技術という点では最先端であることも考慮すべきだ」
「で、アンタの本音は?」
「人をダメにする椅子ってすごい」
「どっちが度し難いんだか」
呆れる聖女に、そんなこと言わなくてもいいじゃないかとだらし無い姿で言う。
その姿は子供であり、あと全裸だった。
「取り敢えず服を着なさい」
「えー」
「燃やすわよ?」
「はーい」
さて、仕切り直しとちゃんとした玉座に座る。
そもそも、事の発端はキアラであった。
「マスターの宝具の中には年齢詐称薬的な物があるのでは」
「若返り薬~よし、これでおねショタだぁ」
「おねショタ、なんと甘美な響き」
気づけば子供になっていた。
なお、大人のギルの誤算は思考まで若返ってしまったことだ。
その結果、設定上の性格のようになってしまった。
コナン君になろうとしたらガチ子供になってしまったのである。
なお、記憶はあるけど別人だと思っている。
どこで道を間違えたらあんな風になるのかとすら思えるレベルだ。
「取り敢えず、招集です。引きこもってる刑部姫も、絶対に来て下さい」
「いやでーす」
「残念ながら、無理です」
「きゃぁぁぁ!?何々、なんで落ちたと思ったらみんなのところにいるの!?」
「僕に出来ないことはないですからね」
玉座の間に、全ての階層主が集まっていた。
そこには真面目な雰囲気しかなかった。
彼が大人だったらこうはいかないだろうと言う感じだ。
「第一階層主、ネロ・クラウディウスである。奏者よ、呼びかけに応じてやったのだ褒めよ」
「第二階層主、刑部姫マーちゃんの前に……帰っていい?」
「第三階層主、アリスだよお兄ちゃん、なにして遊ぶの?」
「第四階層主、マシュキリエライト先輩の元に」
「第五階層主、殺生院キアラです。うふふ、さぁマスター私といい事しましょう」
「第六階層主、ヒロインエックスオルタ御身の前に、そしてエロ尼は死すべし」
「…………」
「ジャンヌ、点呼は大事ですよ」
「チッ、第七階層主ジャンヌ・ダルク・オルタよ。何笑ってんのよ、張ったおすわよ!」
「はいよく出来ました」
「ッ!燃やす、燃やしてやる!」
「「「まぁまぁ」」」
一人反骨精神のある者がいたが、概ね忠誠は感じた。
そんな確認作業をしたのは、偏にモモンガがやってるのカッコイイしやりたいなぁとか思ったからである。
つまり、特に意味はない。
「大人の僕は子供の姿になってこの世界でおねショタライフなどと、馬鹿なことを考えていたみたいですけどね。僕はそんなことしませんよ」
その言葉に、皆が息を飲む。
少なからずショックのようなものを受けていたのだ。
というのも、キャラ設定の中に全員重度のショタコンであるという記載があったのだ。
恐ろしきは人間の業である。
「しかし、何もない人生というのは中々どうしてつまらない。治世しない王などタダの無能、治める国のないことほど悲しいことはない」
「ならばどうする奏者よ」
「建国さ、それに暇潰し相手もいるしね」
「もしかして戦争じゃないですかヤダー、それって絶対モモンガちゃんのとこでしょ」
「僕は裁定者だよ。彼が人間染みた化物か、化物染みた人間か見定める必要があるのさ」
この世に王は唯一人。
故に、死の王たる化物は殺さなければならない。
しかし、化け物じみた人間であるならば、応ともそれは臣民に他ならない。
ならば愛そう、臣民を、民草を愛することもまた王として当たり前のことなのだから。
「さて、ではまず手始めに人類を救おうか」
ギルガメッシュ(子供)の前には小さな手鏡があった。
ユグドラシル時代、使えないアイテムであったそれは此方では微妙に役立つアイテムとなっていた。
それは、遠く離れた場所の光景を写す道具である。
「先輩、人が人を襲っています。こんな事、酷すぎます……」
「必要であるならば、それは摂理だ。だが、マシュ。君の悲しみは正しい、この殺戮に意味など無い。意味などあってはならないんだ」
「では、どうするのですか」
「助けるよ。野に咲く花を愛でる事も時には大事だからね」
悲しそうなマシュの顔が笑顔に包まれる。
守りたい、この笑顔。
マシュは純粋なキャラ設定だからな子供みたいに無垢だ。
うんうん、村人が犯されてる場面は見せないようにしよう。
「ダッサ、バッカじゃないの?田舎者の芋女がアンタのタイプな訳」
「そうだよ。ジャンヌ、君のことが好きなんだから当たり前じゃないか」
「アンタさぁ……そういうの、困るからやめてくんないかな……大人の方がもっと、こう、可愛げがあったんだけど」
「大人の僕は男らしさに欠けてたと思うんだよね」
じゃあジャンヌはどうかなと思えば、自分と重ね合わせてでも居たのか逃げる少女二人組を不快そうに見ていた。
いや、どちらかと言えば追いかける騎士達の方だろうか。
何にせよ、気に食わなさそうなのと口説いたときに照れてるのが可愛い。
「キアラ、刑部、オルタ、アリス、マシュは待機で」
「やったー、引きこもるぞバリバリ篭もるぜ~」
「ネロとジャンヌは僕と一緒に村に、良いよね」
「うむ、余と奏者がおれば何もかも解決だ」
「……行くだけよ、えぇ後は何もしませんから」
お供を二人選び、転移アイテムで移動する。
それはドアのような道具で開けば移動できる。
設定上空間を繋いでいるアイテムだ。
「どうみても、マーちゃんのそれどこでもドアだよね」
「再現度高いですよね、言い値で買いましたよ」
ガチャとドアを開けば、あら不思議な事に村の中である。
さて、人助けをしますか。
「何者だ!」
「パーフェクトエンパイア!」
ネロが開幕と同時に魔法を発動した。
パーフェクトウォーリアーに近い魔法で、レベルをそのままに好きな職業に変更できる。
ただし、数時間というクールタイムと全MP消費というデメリットもある。
「目には目を、騎士には騎士を、余こそ皇帝であり騎士である!」
「ただのセイバーじゃない」
「餓鬼と女二人だ、やれ!」
「ふっ、余に対して獣欲に塗れた目を向けるとは万死に値するわ!」
そう言って、セイバーは黄金の盃(MP回復アイテム)から酒を飲み干し走り出す。
そして、赤く燃える剣を振り回し騎士を斬っていく。
踊るように、ドレスが翻り、騎士の身体が吹き飛んでいく。
うわ、つよい。
「私、別にいらなかったわね」
「えぇ、そのようです」
「死ねぇぇぇ!」
眼の前で騎士が剣を振り下ろすが、自動防御のアイテムが作動して透明な壁が出来る。
複数人が攻撃するも、既の所で弾かれるので意味はない。
戦う必要はないのだ。
「奏者よ、はぁぁぁ!」
アクロバティックな動きで飛び跳ねたネロが首を薙ぎ、そしていつしか騎士達は全滅した。
「どうだ奏者よ、余を褒めるが良い」
「うん、大儀である」
「うむ、頭を撫でても良いのだぞ」
「しょうがないなぁ、ほら」