お姉ちゃん、それなに?   作:えんどう豆TW

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過保護な放任

 

 

 

主人の趣味で紅色に染められたこの館は見るものの目を奪うと言われている。正確には目が悪くなるだと思うけど、かっこいい方が好きなんだろうと思う。でもうちもステンドグラスとか、エントランスホールの作りとか結構目に悪くて人のこと言えないんだろうなーと思ったりもする。

 

「それで、今度は私のところに?」

 

そんな趣味の悪い館の主人がまさに目の前にいる。そんな嫌そうな顔しなくても。

 

「してないわよ。…多分」

 

私の瞳にも映らない貴女の顔は他ならぬ貴女以外しか見ることができない。不便じゃない?

 

「別に。自分の顔以外は見えるし、私の顔は美しいからね」

 

すっごい自信、実際に可愛い貴女が言うと説得力があるね。

 

「貴女のお姉ちゃんも可愛いと思うわよ?」

 

お、フォローが入った。よかったねお姉ちゃん。まあ顔は多分私の方が可愛いけど。

 

「勝るとも劣らず、と言っておくわ。不仲を望むわけじゃないしね」

 

でもフランと仲良い私に少なからず嫉妬してるでしょう?

 

「…ノーコメント」

 

隠さなくてもいいのにー。あ、じゃあどうしてフランのところに行かないの?って思ってるでしょ。まあ今回は単純に用事があっただけなんだけどね。

 

「貴女が私とフランをより不仲にしようと企んでるのかと思ったわ」

 

流石にそんなことはないよ。私に得がないじゃない。

 

「損得勘定で動くのは良いことよ。快楽主義者は己の損も他人の損も顧みない奴がたくさんいるからね」

 

まぁ怖い。聖徳太子様のことだね。

 

「…否定はせんよ。あそこにはそういう奴が沢山いる、とだけ」

 

お寺の人はあまり好きじゃないみたい。私はどうでも良いけど商売敵と言っちゃあ無視できないわよね。

 

「…そういや、こいしちゃんは命蓮寺に入信したんだって?よく反対されなかったわね」

 

お姉ちゃん、大体私に干渉しないからね。『自分のことは自分で決めろ、その代わり責任も自分で取れ。どうしようもなくなったら私に泣きついて来なさい』って言われてるよ。

 

「………良い姉ね。私よりもずっと」

 

どうして?貴女はフランのこと好きだし、それで良いじゃない。

 

「それだけじゃダメなのよ。過保護なのも、それをフランが嫌がってるのも、全部知ってるのにどうしようもなく臆病になってしまう。どうしてでしょうね?」

 

うーん、やっぱり大切だから?それとも今まで放っておいたから?

 

「容赦がないわねぇ。でも、きっとそうなんでしょうね。私たちは距離を置きすぎた」

 

私たちと逆だね。まあ、フランにその優しさが伝わってないのは惜しいけれど。

 

「逆?」

 

お姉ちゃんは私が瞳を閉じたのを、自分の過保護のせいだと思ってるからね。今もかは知らないけど、少なくともこの放任主義は半分それ。もう半分は無意識の私を見つけたり止めたりするのが難しいから。

 

「どっちが正しいんでしょうね、過保護か放任か」

 

どっちも、としか。過ぎたるは及ばざるが如し、ちょうどいい距離を保つのが一番いいと思うよ。

 

「それが難しいから悩んでるんじゃない」

 

うちも人のこと言えないからなぁ。でも、目標があり目指すところがあるか無いかは大きな違いだってお姉ちゃんは言ってたよ。

 

「…アレも存外、苦労してるのかもねぇ」

 

毎日泣きながら書類に向かってる時もあるからね。万能のように見えてもその実他の誰かとも変わらない一面が見られると落ち着くものだよ。

 

「それも誰かからの受け売り?」

 

閻魔様が言ってた。あの人だけにはお姉ちゃん、頭が上がらないんだよね。

 

「そりゃまた珍し…くもないか、あの閻魔だものね」

 

そうそう、誰にだって苦手と得意があるんだから、わざわざ苦手なことをする必要もないと思うよ。

あ、紅茶なくなっちゃった。それじゃあ私はこの辺で帰ろうかな。

 

「ねぇ、結局貴女の用事ってなに?」

 

おっと、忘れるところだった。お姉ちゃんから手紙を預かってるんだった。はいどうぞ。

 

「最初に渡せばよかったじゃない」

 

そう言ってレミリアは封筒を開け手紙に目を通す。その顔に出てるのは驚き、目を丸く見開いて文字を追っている。

なにが書いてあったの?

 

「…ふぅん、珍しい。いやなに、会議のお知らせさ。ただあいつが地上で行われる時に来た試しがなくてね。毎回ペットの猫にお使いをさせるだけだ」

 

うんうん。今じゃ慣れたけど昔はお燐もビクビクしながら行ってたもん。そりゃあ自分よりも怖い妖怪ばっかりのところに行きたくはないよねぇ。

 

「ところが今回はあいつ自ら来ると言ったもんだ。どういう風の吹き回しか」

 

それはほんとうに珍しい。まぁきっと、気まぐれなんかじゃなくて───。

 

「裏がある、だろ?そういう奴だもの、そう思われるのも見越して参加するんだろうよ」

 

なるほど。まぁ私もお姉ちゃんに干渉することなんてないからね。ほとんど他人事だけど、まあ頑張ってね。

 

「クク、この私に心配なんて無用よ。精々楽しませてもらうわ」

 

うんうん、いつもの調子に戻ったね。それじゃあ今度こそ私は帰るから、次は3人で遊べるといいね。

 

 




登場人物

・古明地こいし

好き勝手やってる不良娘。お姉ちゃんそんな子に育てた覚えはありませんよ、勝手に育っただけだから。

・館の主人

反抗期の娘と距離を測りかねるお母さんみたいな、そんな感じ。
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