お姉ちゃん、それなに?   作:えんどう豆TW

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評価バーに色ついたり多くの人に見てもらったりホクホク顔です、感謝感激砂嵐
今回も真面目な感じの話が続いてしまってそろそろ発狂するシリアス書けないマン


移ろい行く先は

 

 

 

命蓮寺に入信する。そう言った時お姉ちゃんは酷く驚いていたけれど、特に止めることも理由を聞くこともしなかった。

 

『よく見極めなさい。その教義は理屈なき神によるもの。よく聞きよく考え、貴女が取り込める分だけ学びなさい。外側の私たちにはいいとこ取りの権利がある』

 

それ以外はなにも言わなかった。お姉ちゃんが真剣な顔で私に何かを言う時、無意識下でもそれだけは守ってきた。

命蓮寺の人たちは、比較的束縛の少ない方だと思う。飲酒は寺と無関係なところで、趣向品は禁止しないけどなるべく控える。そんな程度だった。なんなら、飲酒してる人もいたし。

 

「あ、こいしちゃん。昼ごはんの準備手伝ってくれない?」

 

この人は一輪と呼ばれていた。見たことあると思ってたけど、宗教戦争をやってた時に戦ってるのを見かけた覚えがある。そもそも、この人たちは地底に封印されていた事があるから、なんとなしに顔を覚えてる人は多い。何人かを除いてだけど。

 

「今日は冷えるからあったかい物にしたいわねぇ。何かいい案ないかしら」

 

鍋とか良いんじゃない?冬と言ったら鍋みたいなところあるし。

 

「昼からそんなにがっつり?…まぁ、いっか。お野菜切らないとね〜」

 

ちらりと台所にあるお酒を一瞥する一輪。結局お酒好きな人の方が多いお寺だった。

前に一度なんでお酒を我慢してこの寺にあるのか聞いたことがある。何人かに聞いたけど、帰ってきた答えはどれも同じ。信仰しているのは教義ではなく聖だから、だった。

聖はこのお寺で一番偉い人の名前だ。みんな彼女を慕ってこの寺にいる。

 

「こいしちゃんは鍋に水入れて火にかけといて〜」

 

は〜い。

私の見極めはまだ終わらない。

 

 

 

 

 

昼食後、私が縁側で暇を持て余してると誰かが隣に座った。聖だった。

 

「このお寺にはもう慣れましたか?」

 

うん、堅苦しいのもないし、不便もそんなに。でも良いの?私は修行もしてないし、結構好き勝手やってるけど。

 

「構いませんよ。だって貴女は入信ではなく見学をしたい、と言いましたからね」

 

私はお姉ちゃんの言葉をもらい、再度命蓮寺を訪れた時にそう言った。聖は快く承諾したけれど、かれこれ3ヶ月ほど経った今でも見学中だ。暇な時に適当に行って、適当に命蓮寺の人たちと過ごす。見学というかもはや遊びにきているような感じだった。

 

「正直なことを言いますと、貴女が入信するつもりがないのもわかっています。それでも私…いえ、私たちは貴女がここにきてくれることを嬉しく思うのですよ」

 

それはどうして?

 

「簡単ですよ。何度も来てくれるということは、少なからず私たちを好いてここに訪れるのでしょう。それが嬉しくない人はいませんよ」

 

あんまり意識したことなかったけど、そうなのかも。うんうん、友達が遊びに来てくれたら嬉しいもんね。

 

「その通りです。それに、貴女はよく考え行動する人です。同じ考えの者だけが集まっていても、進展は大きくないのです」

 

そういうものかな。でもきっと、お姉ちゃんが私に入信を許したのもそういうことなんだろうな。

結果的に入信はしなかったけれど、私は退屈しないし新しい発見もある。そんな成長を期待して私を送り出したんだと思う。

 

「とても賢い方なのですね、さとりさんは。そして貴女を信頼しているからこそ送り出したのでしょう」

 

でも自分たちの宗教が利用されてるってことだよ?仏教的にはお姉ちゃんみたいなクズは許せないんじゃない?

そう聞くとクスクスと笑いながら聖は首を横に振った。

 

「仏教は人を裁くためのものではありませんよ。そしてこの世で誰かが正しいと決まっていないように、仏教もまたこの世の全てでは無いのです」

 

難しい話だね。じゃあどうして貴女は仏教を信じるの?

 

「それもまた難しい話です。私が信じると決めたから、としか言えませんね」

 

それから少し考えて再び口を開く。

 

「何かを目指して仏教を信じているわけではありません。ただ自分の在り方として、仏教の教義を実現しようとしているだけですから」

 

じゃあ、目標とか無いの?無いのにずっと教義を守るってこと?

 

「まあ、そういうことになりますね。ただ…妖怪と人間が共存できる世界を仏教で実現できたら、と思うようにはなりました」

 

少し悲しそうに、少し懐かしそうに昔を想う目だった。

 

でもそれは無理。絶対に無理。人間も妖怪も、お手手を繋いで仲良くなんて無理。だって私は人間の心の中を見てしまったから。他の妖怪の心も見てしまったから。その心の中のどす黒い感情は私たちの中に住み続けて溝を深めるばかりだ。

 

「それはきっと、貴女の経験がそういうのでしょうね。私と貴女で生きてきた道筋は違います、それが今の私たちの考え方の違いに現れるのは当然のことです」

 

…なんだか負けた気分。そう言われると言い返せないじゃない。

気分転換に煙草を取り出して火をつける。聖は顔色一つ変えずに煙の行方を眺めていた。

 

「私たちも人間によって封印された身ですが…それでも、信じたいのです」

 

向き合うことができなかったのは、私だけだったのかな。

 

 




登場人物

・古明地こいし

闇深ちゃん。得体の知れなさが怖さを引き立てるところもgood。

・一輪

お酒一番好きそう。一般人すぎて周りに振り回されるタイプ。

・聖

なんでも許すウーマン。母は強し。
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