甘いものを食べすぎると塩味が欲しくなるように、日常にもまた非日常となるスパイスが求められるってわけ。つまり平穏だけじゃみんな飽きちゃうんだよね。
「・・・?そうね」
うん、私もなんでこんなこと言ってるかわからないけど、そういうことだよ。
ところでお姉ちゃんはあの時ああしてればみたいな後悔ってないの?
「そりゃあるわよ。でももう遅いじゃない」
いやそうなんだけどね。こう、『そうじゃなかった自分』みたいなのを妄想するときってたまにない?理想の自分みたいなのに近いと思うんだけど。
「あったかしらねぇ・・・今が理想に近いから何とも」
ああそうですか。そうですよねお姉ちゃんに聞いた私が悪かったねごめんね。
「そんなに失礼な返事をされるようなことを言ったかしらね」
いやいや、いつも通り私の大好きなお姉ちゃんで安心したよ。
次はお燐に聞いてみることにしよう。あの子はこの地霊殿で一番まともといっても過言じゃないし、きっと私の期待するような答えが待ってるはず。
「あ、こいし様。めずらしいですね、私に何か?」
「うん。お燐はここ最近でなんか後悔したこととかある?」
「微妙に嫌な質問ですね・・・」
それもそうか。まあほら、懺悔するつもりで私に話してみなよ。
「ええー・・・?最近はあまりないですけど、人と話してるとそのあとくらいにもっとうまい返し方があったなぁとか思ったりしますね」
あーそれそれそういうの。やっぱりそんなときってもっとうまくできたら違ったかならみたいな妄想したりする?
「妄想・・・うーん、失敗したなぁって思ったりするとたまにありますね」
だよねだよね!いやーお燐に聞いて正解だったよ。今度ご飯を御馳走してあげようね。
「ほんとですか!?」
ほんとほんと、あとでね。
「で、あんたは何しに来たのよ?」
「神社の掃除の手伝い?」
「本当にそうなら助かるんだけどね」
「まあまあ、一回休憩してもいいと思うよ」
私がぺしぺしと隣の床を叩くと霊夢は手に持った竹ぼうきを立てかけて隣に座った。
「最近は余計な客も少なかったのに」
「余計じゃない客ならいいでしょ?」
「余計な客なのよ私からしたら」
冷たいなぁと思いつつ本題に入る。なにせ私たち妖怪は長生きだ。そんな妖怪に後悔の念を問うたところで仕方ないなんて返答が関の山。なら人間に聞くのが一番いいと私は考えたのだ。我ながら冴えてるね。
「霊夢は最近後悔したことってある?」
「何よ急に。・・・ないけど」
「はぁ~~~~・・・・・・」
終了。なんでよ、一つくらいあってもよくない?なんていうか、こう、ねぇ?
「別になくてもいいでしょ。むしろいいことじゃない」
「そうなんだけど!そうなんだけどさ~~~~」
「大体後悔した時にはもう遅いんだから、仕方ないでしょ」
「・・・うわぁ」
本当に人間かと疑いたくなる。お姉ちゃんの影がちらついてちょっと引いてしまった。いやでも霊夢はこういう達観したところあるし、聞く相手を間違えたというかそもそもこの幻想郷にまともな人間がいないというか。
「そんな過去に追われてばかりじゃおちおち掃除も出来やしないわよ。今できること以外に何ができるっていうの?」
そうだね。もうほんとにもう、おばあちゃんだよ霊夢は。
「命がいらないのね?」
ん、これは後悔。そう感じる頃には私の体は地面を蹴って神社から脱兎のごとく逃げだしていたのだった。
「今死んじゃったらお燐との約束がなくなっちゃうからね」
がま口が軽いことに気づいた私はまたしても後悔することになるのだが、それはもう少し後のことだ。