最近浮気気味というか、こっちの方もちゃんと見てほしいよね。全然終わってないし。
「最近のこの前半のメタコーナーみたいなの、なんなのかしらね」
書いてて恥ずかしくならないのかしら、とお姉ちゃんはため息をつく。そんなもの、読者に読んでもらうために書いてるんだから俯瞰視点で書くわけないでしょ。
「それもそうか」
せっかくだし私もなんかオリジナルキャラクター作っちゃおうかな、古明地こいしの妹とか。名前は何にしよう、さとり、こいし、と来たら次は・・・いや思いつかない。
「悲しくなるだけよ、イマジナリーフレンドって」
それもそうか。
ついぞ煙草を吸おうとも全く第三の目が開かなくなってきたこの頃。そういやそれがきっかけだったなって忘れてる人も多いんじゃないでしょうか。慣れって怖いね。
話は変わって、私は結構色んなものの影響を受けやすい、って自覚がある。推理小説を読むと探偵の真似事がしたくなり、勧善懲悪の物語を読むと正義のヒーローに憧れたりする。正義って何?って聞かれたらまあ答えられないけどね。お前が信じるお前を信じろ。
で、私が今何にはまっているかというと。
「お姉ちゃん、まだ気づいてないの?この幻想郷で起こっていることは全て秘密結社フリーメイシンが裏で操ってるんだよね」
「・・・頭痛が痛いわね」
そう、突如として人里で流行りだした陰謀論だ。これが中々に説得力がある、というか色んな謎の共通点を暴き出し、そこから秘密結社がありその正体を突き止めようというものである。
「で、我が聡明なる妹君におかれましてはどうしてそのようなクソくだらない陰謀論を嬉々として私に語ってくるのかしら」
「こうしちゃいられない、早くみんなにも伝えないと!」
「待ちなさい」
地霊殿を抜け出すが早いかと思いきや私の肩を掴んで離さないのはお姉ちゃん。随分と情熱的だけど今はそれどころじゃないんだから。
「人里に隠された3つの『6』。これが意味するところは、お姉ちゃんならもうわかるよね?そう、もう始まってるってことなんだよね」
「何も始まってないわよ」
驚いた、まさかここまでお姉ちゃんが鈍いとは。いや、まさかわざと、いやいやもしかして私を止めようとしているのではないだろうか。唯一この世界の秘密に気づいてしまった私を、組織から狙わせないためにここで引き止めようとしているんだね。そうに違いない。
「まさかお姉ちゃんがフリーメイシンの一員だったなんてね・・・。でも、大丈夫!私はお姉ちゃんの味方に決まってるじゃん!だから手を貸すよ、どんな悪事だったとしても!」
「盛大な勘違いをしているところ悪いけどね」
私とは対照的に冷ややかな視線が冷蔵庫、冷凍庫くらいの温度になりついには絶対零度の視線へと最終進化。
「私は秘密結社とやらの一員でもなければフリーメイシンなんてものはそもそも存在しない」
「隠さなくていいんだよ。私がそんなことでお姉ちゃんから離れると思ったの?もっと妹を信じてよ!」
「話を聞けよ頼むから」
興奮冷めやらぬ私はお姉ちゃんを説得しようと試みたが失敗に終わってしまった。しかし秘密結社が一体何をしているところなのかは気になるところ。
「大体、あんたなんでそんなに裏に人を潜ませたがるのよ」
「だってこんなに色んなことが重なって、偶然なわけないじゃん」
「あのねぇ、その繋がってないことをあたかも繋がってるように見せてるのが商法ってことよ」
「くっ、意地でも認めないつもりね・・・」
「だからそんなもんないんだって」
もしやお姉ちゃんは脅されてるのではないだろうか。いやそんなわけないか、お姉ちゃんに限って人に屈することはない気がする。
と、考え込んでいるとずいとお姉ちゃんが私の顔に思いきり顔を近づけてきた。不意打ちで好きな人の顔が目の前に現れたらもう私の顔は真っ赤っかになってしまい意識が遠のいてああこれが宇宙の真理だったのね・・・。
全く自分の妹ながらこの影響の受けやすさはいかがなものかと思う。この頭の中と心の中は一体どうなってるのやら。
「変な気を起こさないといいのだけれど」
一応この辺りは信頼している。まあ異変に首を突っ込んだりと最近その心配も現実味を帯びてくるというものだが。いっそ人里でその陰謀論とやらを語っている人間を特定して始末してやろうかと思ったが、これも却下した。どうせもういろんな人間に広まっているのだろう。だとしたら里のいくつかを灰にするくらいやらないと意味がない。そんなことをしたら私の立場と言えど八雲紫が黙っていないだろう。ふぅと息をつく。
見下ろすと気を失って(?)すやすやと寝息を立てる妹の顔がある。秘密結社ねぇ、と小さく呟くも私のもとにすら全く入ってこない情報なのだから存在するわけがない。第一そんな危険なものが存在するとしたら私が真っ先に抑えているはずだ。
「・・・私まで何影響されてるんだか」
首を横に振りくだらない妄想を消し去り、こいしをベッドに寝かせるために立ち上がった。そろそろ幻想郷の会議の時間だし、お燐にいつまでもお使いさせっぱなしというわけにもいかないだろう。・・・今日私が出るのは決してその陰謀論とやらの話題が出ることを期待してというわけではない、いやほんとに。
山の神やら妖怪の賢者やら吸血鬼の当主やらと錚々たるメンツが話し合いをする中、私はふと考えた。裏から幻想郷を支配する組織、人里と妖怪たちをコントロールする創造主、それぞれの息がかかった人里の有力者たち。
「さとり、珍しく貴女自ら出向いたと思ったら上の空?流石に傲慢すぎるのではないかしらね」
八雲紫がジト目で睨んでくる。
「ああ、いえ・・・。すいません」
すると目を丸くし、扇子で口元を隠した。私が謝るのがそんなに珍しいですか、そうですか。
「貴女達の話はちゃんと聞いてますよ。続けてください、幻想郷を裏から操る秘密結社の会議をね」
くすくすと笑いながら突拍子もないことを言う私を、八雲紫はまるで毛虫でも見るようなしかめつらで眺めていた。