なんか秘封欲というより宇佐美欲に任せて書いたちょっとよくわからない話です
私が高校の頃の友達が・・・友達というほど親しくない程度のクラスメイトが、いつの日か私に言ったことがあった。
「自販機の天然水がさ、110円だとなんかちょっと損した気分になって100円ぴったりだとすごい得した気になるよね」
貴女もそう思うでしょ?とでも言いたげな目でこちらを見ながらそう言うので、私はそのとき曖昧に笑って誤魔化した。
たかが10円で人の気持ちが変わるものか、とその頃の私は思ったのだ。別にお金に困るような家庭にいたわけでもなく、高校生ながらのお小遣いとしてはなかなかの額も貰っていたと思う。いや当時でもやっぱり他との違いはよく感じていた。
つまるところ、私のこの頃の高慢さ加減と言ったらもうこの手記に残したくないくらいだったということだ。超能力が使えて、不思議な世界に出入りできて、成績も常にトップで。きっと私は選ばれた人間なんだという無意識の自覚が頭にこびりついていた。だからそんな矮小な違いなんぞ私にすればとるに足らない、くだらないものだと思った。彼女からすれば、私に議論させる気もなければといったところだろう。頭の中でこんなしょうもないマウントを取っているとも思うまい。
そんな私の肥大化した自意識とも呼べるものを打ち払ってくれるのが幻想の世界だった。無意識に他人を見下している自分と、幻想の中にいる自分、果たしてどちらが本当の自分なのか。それともどちらも本当の自分なのか。あれから10年経った今でもたまにそんなことを思う。私の幻想の世界は消えてしまったのか、それとも本当にあった幻想の世界が消えてしまったのか。
「どう?これ」
「どう?って言われても」
ある大学のカフェでの会話。二人の少女は丸いテーブルを挟んで向かい合っていた。二人の視線の先にはテーブルの上に置かれたタブレット端末・・・ではなく、かなり年月が過ぎたと見える、紙媒体の日記帳だった。今どき紙に文字を記す人なんていないのだから、当然昔のものということになる。
「ご先祖様の手記でしょう?」
「そうなんだけどさ」
「貴女のご先祖様って超能力使えたのね」
「驚かないんだ?メリーが境界見える異能持ちだからかな」
メリーと呼ばれた金髪の少女はため息混じりに対面する黒髪少女を指さした。
「異能持ちの貴女が子孫だからよ、蓮子」
「それもそうか。じゃあメリーのご先祖様もなんかあるのかな」
「さあ?」
蓮子と呼ばれた少女は特に気にした様子もなくカラカラと笑った。
「誰の手記かはわからない、と」
「そうなんだよねぇ。でも問題はそこじゃなくてここ」
蓮子は文章の中の1か所を指差した。
「幻想の世界ってあるでしょ?これ、なんか思い当たらない?」
「境界の中の世界・・・」
「そう!」
メリーの答えに蓮子は目を見開いて身を乗り出した。
「私のご先祖様はきっと境界の中の世界に行けたんだ!そしてそれを楽しそうに記してある・・・」
「境界の中は危険なはずなんだけどね。超能力が使えたから平気だったとか?」
「それがこの『幻想の世界』について書かれたものはまだ見つかってないんだよねぇ」
「ふむ。この人は自分の妄想だったんじゃないかって疑ってるみたいだけど・・・」
じっくりと手記を読み返しながらメリーは呟いた。
「メリーはどう思う?妄想だったと思う?」
「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。確かめる術はないからね。でも・・・」
「でも?」
「あったほうが、楽しいじゃない?」
そう言ったメリーの言葉に笑顔で応えるのは他でもない蓮子だった。
「それでこそ、秘封倶楽部の一員!」
彼女たちの目は今日も未知への興味で満ちている。
地底に、いや、地霊殿にいると考え事が増える気がする。自分の家が一番落ち着くから、といえばその通りなのだけれど。自分の部屋に帰ると前に董子が地底に来た時のことを思い出す。
「董子、元気かなぁ」
きっと元気だろう。死んだらこっちに来るのかな、それとも閻魔様のもとに行くのかな。また会いたいな。
「人間かぁ」
人間は好きじゃない。かといって嫌いでもない。興味はあるけど関わりたいかはまた別。でも董子は好き。
「部屋、どうしよっかなぁ」
董子に人が住んでる部屋だと思わなかったなんて言われちゃった。無機質すぎるなんて言われたけど、たまにしか帰らないんだから特に何も置く必要ないじゃんって思っちゃう。
「フランの部屋はぬいぐるみとか色々あったなぁ」
あと血とか。
「ま、いっか」
そのうちなんとかしよう。