お姉ちゃん、それなに?   作:えんどう豆TW

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かなり落ち着いたこいしちゃんになってしまった、誰だろうこれ
あとあとがきに勝手なイメージの登場人物紹介を書き始めたのでよかったらそちらも見てください


悪人かどうかは笑顔を見ればわかる

 

妖怪の私が神社にいる、という珍妙な光景は幻想郷では珍しいことではない。もちろん聖なる力的なものには多少なりとも弱いけれど、そんなちんけなもので消滅するほど力の弱い妖怪でもない。

 

「お掃除終わり〜っと!」

 

私の目の前で落ち葉を掃き捨てていた神社の巫女が嬉しそうにこちらに走ってくる。目出度い色の巫女も人気だが、この頭の愉快な巫女も私は嫌いじゃない。

 

「なんですか?なんかとても失礼なことを考えてません?」

「なんでみんなそう言うのかな。私よりよっぽどサトリ妖怪の適正あるんじゃない?」

「そりゃそんな生暖かい目で見られてたら誰でも気づきますよ」

 

先日のおばさんのことを思い出す。あれはもう少し特殊な部類だったりするのかもしれない。

 

「それで、今日はどういったご用件で?」

「暇だったから」

「・・・じゃああっちの暇神社にでも行けばいいじゃないですか」

「遠いじゃない」

 

巫女はまともに取り合う気がないと思ったのか、ため息を一つついて私の横に腰かけた。

 

「私は忙しいんですけどね〜」

「落ち葉を弄る以外に何かあったの?」

「掃除ですけど!まあ別に予定があるわけでもないですけど!」

 

急に不機嫌になられるとびっくりするじゃない。

 

「そりゃあ、予定のない女なんて言われたら誰だって怒りますよ。あーあ、素敵な殿方との出会いでもないかなー」

「人里行けばいいんじゃない?逆ナン逆ナン」

「私は清楚で可憐な乙女なんですぅ〜、そんなはしたない真似なんてしませんよ」

「へぇ〜姦しい女が清楚で可憐な、ねぇ」

「悪口が過ぎませんか?泣きそうなんですけど」

 

口が悪いのは姉譲りだから許してほしい。私は悪くないし育った環境が悪い。

 

「あー・・・まぁ、あの人は確かに」

「でしょ?ドブ川を煮詰めた方がマシなほど性格の悪いお姉ちゃんを見て育った私が可哀想」

「およそ自分の姉を表しているとは思えない言葉ですよね」

 

事実だもの。勘違いしないでほしいけど、私はお姉ちゃんが嫌いな訳じゃない。むしろ大好き。

 

「で、ソレもさとりさんから貰ったものですか?」

「うん、とっても気に入ってるんだ」

「体に悪いですよ〜って言っても辞めないんですよねぇみんな、そもそも妖怪に健康とかそんな概念があるのかは知りませんが」

「無いんじゃない?まあ精神面の影響は少なからずありそうだけどね」

 

実を言うと煙草を始めてから無意識の抑制がよくできている。なんでかは知らないけど、私の目が開いたりしたのと関係があるのかも。

 

「外の世界にいた頃は男子なんかがこっそりトイレで吸ってるのを先生に見つかって怒られたりしてましたね。懐かしいなぁ」

「外の世界ではダメなんだ」

「ダメというか、20歳までは吸っちゃダメだったんですよ」

 

じゃあ私は良いんだね、というと巫女は曖昧な笑顔を浮かべた。

 

「その見た目で吸ってたら間違いなく捕まりますけどね」

「何百年生きてると思ってんのさ」

「でも外見は10歳にも満たないように見えますけどね」

 

ちんちくりんで悪かったね。

 

「そういう意味じゃないですよ」

「まあでも、物が心の拠り所になるのは良くないって聞いたよ」

「そうですよ!やはり心の拠り所は神にあるべし!この機会にこいしさんも守谷神社に───」

「あーはいはい!その話はまた今度!」

 

危うく宗教勧誘の嵐に遭うところだった。くわばらくわばら。

と、そこに一陣の風。目の前に黒い翼を持った少女が降りてくる。

 

「あ、ブン屋だ」

「あやや、こいしさんですか。なかなかお目にかかれない人に出会えましたね」

「取材NGよ?お姉ちゃんにならしてもいいけど」

「ご冗談を。前回返り討ちに遭いましたからね・・・」

 

お姉ちゃんと口で勝負するほど愚かなこともない。読心能力に加えてあの性格の悪さだ、普通の感性を持った人なら即座にノックアウト。

 

「取材の代わりに、今月号の新聞をどうぞ」

「代わりにって何よ。あ、でもお姉ちゃんが新聞のこと褒めてたよ」

「は!?ど、ど、どのように!?」

「『新聞紙ほど便利で使いやすい紙はない』ってさ」

「・・・そんなことだろうと思いましたけどね」

 

上げて落とされる天狗少女。この落胆ぶりを見るためにわざわざ話を持ち出したのだから、私もお姉ちゃんと同類だったりする。

 

「それで、今日は何の用ですか?」

「おっと、忘れることでした。実は───」

 

それから、ここ最近妖怪の山で起きたちょっとした事件の調査が始まった。正直興味がなかったので、欠伸ついでにもう一本と思ったところで箱が空になっているのに気づく。

 

「あー・・・また貰って来なきゃなぁ」

 

独言る。誰も聞こえはしないだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はご飯の用意をしてきますね。こいしさんもよかったら食べていきますか?」

「ううん、今日は家に帰るから」

「そうですか。それではまた」

 

巫女が神社の奥へと消えていくのを見終わると、茜色の空に目を向ける。綺麗だなぁなんて呑気な感想を抱いているといつの間にか隣に小さな影が座っていた。

 

「や、元気だったかい?」

「蛙の神様だ」

「・・・いや違うけど、まあいいや」

 

何か用だろうか?と不思議そうな目を向けているのがわかったのだろうか、私の心を読んだかのように首を横に振った。

 

「別に、夕飯までの暇つぶしさ」

「私そろそろ帰るけど」

「さっき聞いてたよ。ぼーっとしてたから横に座っただけさ」

 

そっか。それっきり黙っていると独り言の様に神様は口を開いた。

 

「心の拠り所ってのはさ、本来自分にあるべきなんだ。物でもなければ、神でもない、最後に助けてくれるのは神様じゃなくて自分だけだからね」

「神様がそれを言うの?」

「神様だから言うのさ。神は人を助けない、ただ見てるだけの薄情な存在だからね」

 

説得力があるなぁ。貴女だから余計に。

 

「失礼な、これでも温情な方だよ」

「えー、そう?貴女からはお姉ちゃんと似たような匂いがする」

 

私がそう言うと神様は少し驚いたように目を見開き、意地悪そうな顔でキシシシと笑った。お姉ちゃんが人を馬鹿にする時の笑顔と重なる。

 

「あれには敵わんさ。そういえば聞いたよ、随分とがっぽり稼いで八雲からお咎めを食らったらしいじゃないか」

「私は全然知らないんだけどね。どうせ別の方法でやるに決まってるよ」

「だろうね。狡猾というかがめついというか」

 

きっとお姉ちゃんが聞いたらさぞ悪い顔で言うだろう。「神様に褒めていただけるなんて、とてもとても光栄ですわ」って。

 

「ま、良いんだけどねー。こいしちゃんも吸いすぎには気をつけなよ。その毒は体を蝕むものじゃない、心を侵すものだ」

「忠告ありがとう。お姉ちゃんにもよく言っておくよ」

「ああ、そうしてくれ」

 

茜色の空がいつのまにか薄暗くなってきた。神様は影に溶けるようにその場から姿を消してしまった。

 




登場人物

・古明地こいし

見た目は子供、中身は空っぽ。頭空っぽの方が夢詰め込めるもんねー。

・古明地さとり(想起)

天上天下唯我独尊、心はいつも我にあり。こいしは私が育てました。

・頭の愉快な巫女

日によってテンションが違う、もはや多重人格。

・ブン屋

根っこのところで善人だから根っからの悪人に負かされる。

・蛙の神様

お姉ちゃんといい勝負のクズ。もう一人の神様が善人だからバランスが取れてる。
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