今回は少しだけ主人公の設定なんかも見える話です。
よろしければお付き合いくださいませ。
(3/21 文章の見やすさの調整と後半の文章をちょっとだけ追加しました。)
(3/22 一部誤字修正。肩車→肩に腕を回し。男の人の撫でられる→男の人に撫でられる)
(3/24 過去へのシーンへの移行がわかりにくいため修正。それにともなって文章の追加)
(4/7ご指摘いただいた大量の誤字の修正)
「麻子?」
急に黙ってしまった親友の反応が気になり様子を見てみる。
みぽりんや華、秋山さんもそれぞれ麻子に声をかけていた。
そんな麻子は最初は苦しい顔をしていたと思ったら、今度は顔を赤くしている。
風邪ですか?と心配するみんなに、大丈夫と少しだけどもりつつしっかりと返事をしている。
これは…風邪じゃない反応だ!私にはわかる。小学校の時から麻子を見てきたからわかる!
そう!これはきっと……恋する乙女の反応ね!
あれ?ってことは麻子の好きな人って……もしかして………‥。
扶桑さん!?
そういえば秋山さんも扶桑さんの話をしようとしてた時、戦車とかの話する時みたいなテンションだったし。
麻子だけじゃなくて秋山さんも…?こ、これは大変なことになったかもしれないっ。
でも、確かに分かるかも。扶桑さんいい男だったもん!
あの時の扶桑さん、かっこよかったな~~~。
あの日は学園艦の寄港日でショッピングをしようと街を歩いていた時だったかな…。
一年前
「二人ともいけないんじゃしょうがないか」
折角の休日、買い物に行こうと華も誘おうと思ったんだけど華は稽古で忙しいみたいだし、麻子は眠いって言って布団から出て来なかった。
行けないのは仕方ないから後で二人と麻子のおばあちゃんに何か買っていってあげよう。
最初はまず甘い物!ということでドーナツ屋さんに行くことにしたんだっけ。
ここのお店のショコラフレンチがすっごく美味しいのよねっ!
ん~~~~!!やっぱり美味しいぃ~~~~~~。
どんな風に作ってるんだろう。気になる。この作り方をマスターして男子に食べさせたらイチコロかも!
でもでも!甘いのが好きじゃない男子もいるよね!甘さ控えめな方も作れるようにしなきゃ!
女子力アップ間違いなしだわ!これで彼氏もゲット!!!
おっとっと…、次は洋服を見に行こう。新作も出てるしさらに女子力アップでモテモテ!!!
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う~~~~~~~ん。色々見てたら時間かかっちゃったな~~~~。
大きく伸びをして時計を見てみると、もうすぐ16時になろうかというところだった。
「そろそろ帰ろうかなっ。船も出ちゃうし」
お土産もしっかり買ったし、買い忘れも無し。そう思い港に向かう。
…こうして歩いていても色んな男の人に声を掛けられる。
元気だね!とか、気をつけて帰れよ!とか、もう大変!
今でもモテているけど、これ以上モテちゃったらどうしよう!?
私を巡って三角関係!?
やめて!私をかけて争わないで!?
そこからの骨肉の争いからの決闘!!??
…って…華じゃないんだから…。
…………あれ………?
ふとなんとなく目に入った路地裏。なにか争ってるような声が聞こえる?
男女が言い合うような声。
気になった私は様子を見に行ってみることにしたんだ。
その路地裏には少し開けた場所があって、おそらくそこで話しているんだろう。近づくたびに会話内容が聞こえてくる。
ーーーーじゃんーーーー
ーーーーーなしてーーー
普通じゃない雰囲気を感じながら歩を進めていく。なんだかドキドキしてきちゃった…。
開けた場所が見え、男の人の背中と女の人の正面が見える。
「いいじゃん。ちょーっと遊びに行くだけだって、ね?」
金髪で色黒の男の人が女の子に話しかけていた。でもその声はなんというかチャラチャラしてて嫌な感じだった。
それだけじゃなく女の子の手首を掴んで今にも何処かに連れて行きそうな、そんな危なそうな感じもしていた。
「っ!離して下さい。私はあなたと何処かに行くつもりなんてありません!」
そういって女の子は必死に男の手を振り払おうとしていた。
でも男の人の力には勝てなくて振り払うことができないみたい。
「…いい加減さぁ。黙ってついて来いよ…っ」
さっきのチャラチャラした物言いとは違う冷たい言い方。その言葉に女の子は小さく悲鳴を上げていた。
…私はもう限界だった。嫌がってる女の子を無理やり連れてこうとするなんて絶対に許せない!
「やめなさいよ!」
「あ?」
「その子嫌がってるじゃない!離しなさいよ!」
「何君~?この子の連れ?」
「そんなことどうだっていいでしょ!その子を離して!」
私の言葉に男はまた少しチャラチャラとした感じで私の全身を見た後、私の顔をみながらニヤニヤと笑い始めた。
「ん~~。君、可愛いしいい感じじゃん。君も連れてっちゃおう」
ニヤニヤ笑いをやめるどころかさらに笑みを深める。絶対にろくなこと考えてない!
それにこんな男に可愛いなんて言われても全然嬉しくないし!
女の子は男のさっきの冷たい言い方に萎縮してしまったのか、手首を掴まれたまま為す術もなく歩いている。
女の子をひっぱったまま男はこちらに向かって来る。私は携帯を男の前に突き出す。
「警察の人に電話したから!もうすぐここまで来るわよ!」
表示されるディスプレイには警察の電話番号。それを見た途端に男の態度が急変した。
「何ふざけたことしてんだこらぁっ!」
男は女の子を後ろに突き飛ばし私の方に向かって来た。
突進を避けて、倒れた女の子のもとに向かう。膝を擦りむいているみたいだった。
男は自分の突進が避けられると思っていなかったのか、そのまま突っ込むような形で倒れて行った。
「大丈夫!?」
女の子は男の怒鳴り声に怯えてしまっていてカタカタと震えている。
「しっかり!一緒に逃げよう!」
女の子の肩に腕を回してこの場から離れようとするが、男が起き上がってしまう。
「このガキ!調子に乗りやがってぇぇ!」
逆上した男はポケットから警棒を取り出してこちらに警棒を振り上げて来た。
「きゃあ!」
ビュンッ!!
警棒が振るわれ女の子と私が離れてしまい尻餅をついてしまった。
立ち上がろうとするよりも速く男はこちらに近づいて来た。
「ふざけたまねするからだ!」
「このガキがぁぁ!!!」
そういい男は私に向かって警棒を振り下ろして来た。
私は反射的に目を閉じてこれから来る衝撃に恐怖していた。
ガキィン!
「え?」
何かがぶつかるような音が聞こえ、恐る恐る目を開けると男が右手を押さえながらうずくまっていた。
事態に頭が追いつかないでいると。うずくまる男の背後、路地裏からこちらに向かって来る男の人が見えた。
その人は男の横を抜け、尻餅をついている私と女の子の手を引いて立たせてくれた。
すごく温かい手だった。しっかりと私達の手を握って力強く引っ張ってくれた。
「あ、あの…」
女の子と共に放心する私は何があったのか聞こうと思った。でもその人の背後、あのチャラ男が立ち上がる姿が見えた。
チャラ男がその人に殴りかかろうとしていた。
「て、てめえ何すんだコラァ!」
「あ、危ないっ!?」
その人は殴りかかる男のパンチを避けたかと思うと、回し蹴りって言うのかな?をものすごい速さで男に当てていた。
チャラ男はなんかグェ!みたいな声を上げてそのまま地面に倒れちゃった。気絶したみたい。
あまりの出来事にあっけにとられていた私と女の子を交互に見るとその人はにっこりと笑った。
「もう、大丈夫」
その笑顔にすごくドキッとした。今まで感じたことのないドキドキ。
さっきまでの恐怖じゃない。でも同じように逃げ出したくなってしまう。
目の前にいるこの人の顔が見れない。でも見つめていたい、そんな不思議な気持ち。
何も言わずに自分に向けられる視線に困惑したのか、その人はえっと・・・大丈夫?と私と女の子の頭を撫でた。
「~~~~~~~~~~~」
や、やばいよ!!なにこれ!?頭撫でられるのすごく気持ちいい!!??どうして!!??
男の人に撫でられるのなんて初めてだけどなんで!?なんでこんなに気持ちがいいの!!??
どうして良いかわからなくなり、横目でちらりと撫でられている女の子をみると目を細めて気持ちよさそうにしていた。
きっと私と同じでどうしていいのかわからないのだろう。そんな女の子と目が合った。
見てみると、とても可愛らしい女の子だった。
灰色?クリーム色?のような髪色をしていて目はツリ目がち、でもお人形さんみたいな女の子。
撫でられている女の子と撫でている二人を見るとなかなかの身長差ですごく可愛らしい感じ。
身長おっきいなぁ。いくつぐらいなんだろ?…って!助けてくれたんだからしっかりと顔を見てお礼言わないと!
「あ、あの!!」
私が声を張り上げると撫でていた手を止めてその人と女の子は私を見つめる。
う…、見られるとドキドキする…。で、でもちゃんと言わないと!
「助けてくれてっ!ありがとうございましたっ!」
精一杯の感謝を込めたお辞儀をする。
すると女の子もありがとうございましたとお礼とお辞儀をする。
「いや、怪我もないようでよかったよ」
そう言ってまたニッコリと笑う。
も~!その顔は反則だよ~!
また照れてしまい顔を背けそうになっていると、私の袖をくいっくいと引っ張る感触が。
「おねえさんも、助けてくれてありがとう…」
「う、ううんっ。大丈夫だよ!女は度胸!ってね!」
そういって胸をドンっと叩くと女の子も笑ってくれたようだった。うう、ちょっと強く叩き過ぎた…。
穏やかな空気になり私は疑問に思っていたことを口にした。
「そういえば、すごい音がしたと思ったらちゃら、男の人がうずくまってたんですけど何をしたんですか?」
「それにものすごいキックも…」
「それは、相手の警棒の持ち手部分に石をぶつけたからね」
「石!?」
私は驚いた。チャラ男とその人の距離は10Mは離れていたのにそこから当てるなんて…。
「キックは一応、武道をやっていたからそれでかな」
「へぇ~。すごいすごい!あんなことまで出来ちゃうなんて!」
本当にすごかった!くるんって回ったと思ったらキックがズバーンって!
「…すごかったです」
私と女の子はうんうんと頷く。
そんな中サイレンの音が聞こえて、警察の人達が来てくれた。
「通報があったのはここだ!」
「この倒れてる男は…」
「ご無事ですか?」
「あ、こっちでーす!」
手を上げて警察の人達を呼ぶ。あっというまに倒れてるチャラ男を車に連れて行ってしまった。
私達の状態を確認し終わり、一人の警官があの人に話しかけていた。
「これは…貴方が?」
その言葉に警察の人はまじまじとあの人を見つめると突然、ハッ!としたような顔をする。
なんだろう?あの人も居心地が悪そうなそんな顔をしている。
「もしかして貴方は扶桑 達真さんですか!?」
その言葉を聞いた途端あの人、扶桑 達真さんがやばっという顔をする。
そこからの扶桑さんの行動は早かった。
警察の人の言葉をのらりくらりと交わして私達の前から立ち去ろうとしていた。
あれ!?いつの間にあんなに離れてたっけ!?さっきまで私達の近くにいたのに…。
いつの間にか扶桑さんは路地裏を戻り、大通りへと歩を進めていた。
あっけにとられる私達。
立ち去ろうとする寸前の扶桑さん。
どうしよう!?このままじゃ名前しかわからないままお別れになってしまう。そんなのは嫌!
なんとかして扶桑さんの情報を得ようと思った私が発した言葉は…………。
「あ……あのっ!!!!」
「肉じゃがっ!!!!好きですかっ!!??」
だった…。
肉じゃが。美味しいですよね。