(4/14誤字と少量の文章の追加と修正)
達真…さんが…大洗にくる…しかも教官として……。
車庫の前で私達あんこうチーム、カバさん、ウサギさん、アヒルさんチームのみんなが整列をして教官である達真さんを待つ。
みんなそれぞれ思い思いの反応を示している。
沙織さんはうっとりした目で、まだかな?まだかな~とそわそわしっぱなし。なんだか、恋する乙女みたいだった。
慌てなくても、もう来られますよ。沙織さんをやや呆れたような口調で答える華さんも、緊張しているのかな?普段よりもピシッとした立ち方な気がした。
それに少し頬が赤いみたい…?
「でもでも~!早く逢いたいじゃん!ねっ?麻子?」
「…なんでそこで私に振るんだ?」
急に自分に話題が振られたじろぐ麻子さんに沙織さんはふふっと何やら意味ありげな視線を送ってる。
「な、なにか言え!何だそのニヤニヤした顔は!?」
沙織さんと麻子さんだからこそわかる視線とその間柄が少しだけ羨ましく思った。
「麻子は会いたくないの?」
あいたくないわけじゃ…ない…。
麻子さんも赤い頬をして俯く、言葉はどんどん小さくなっていて、可愛らしい反応。
「私は、早くお会いしたいです!」
キラキラとした目で答える秋山さん。はっきりと言いきれる秋山さんが少し羨ましいな…。
「わたくしも、達真様に会いたいですわ」
「様!?何それ華!様って何!?」
その言葉に沙織さんがものすごい勢いで反応する、興味津々といった感じで、優花里さん、麻子さんも華さんを見つめている。
華さんは華道もやっているし、すごい丁寧な言葉づかいだから教官として様をつけてるのかな?
でもそんな沙織さん達の反応に内緒です♪といってふふふっと微笑んだ。なにそれきになるー!気になります!…気になる。
みんなの反応をかわしつつ微笑む華さんをみると、女の子というより大人の女性、といった感じ。
でも、やっぱり華さんも頬が赤く見えるのは私の見間違いかな?
みんな達真さんと出会ってたんだなぁ。不思議な縁に少しだけ思い出す、達真さんと出会ったあの日のことを。
私が小学校の夏休みのときだった
お姉ちゃんと一緒にⅡ号戦車で色んな所にいって遊んでいた。アイスを食べたり、男の子みたいに色々なところを駆け回っていた。
そんなある日に、お母さんが紹介した人が達真さんだった。
「まほ、みほ、挨拶をしなさい」
お母さんの部屋に案内されて開口一番にお母さんが口を開く。
スーツ姿で急に見知らぬ人を紹介されて、緊張した私とお姉ちゃんはすぐに挨拶することができなかった。
「まほ、みほ」
少しだけ語気が強くなるお母さんに更に言いにくく口ごもってしまう。
そんな中、達真さんは先に自己紹介をしてくれた。
「俺は扶桑達真、よろしくね?」
私達の目線に合わせて屈んだ達真さんは優しく笑った。
優しい笑顔でニッコリと微笑むと手に持っていたバッグからアイスを取り出して私達にくれた。
大好きでお姉ちゃんと一緒によく食べていたアイス、緊張もほぐれた私達はアイスを受け取りしっかりと挨拶をすることができた。
「よろしくおねがいします!」「よろしくおねがいします」
そんなわたしたちの様子を見ていたお母さんは何か言おうとしたみたいだけど、達真さんにアイスを差し出されて、仕方ないですね。と困惑しながらも受け取っていた。
その顔は少しだけ笑っていた?ように見えたのは記憶違いじゃないと思う。
達真さんは戦車道を私達に教えるために来てくれたとお母さんは教えてくれた。
その日から達真さんは西住家に泊まることになった。
戦車道に関する色々なことを教えてくれ、それだけじゃなく私達姉妹の遊びにも付き合ってくれた。
教育係としての責任もあって付き合ってくれたのかもしれないけど、達真さんと一緒に遊ぶのは楽しくてついつい色々なところに行ってしまった。
それから二週間ほどが経ち、すっかり達真さんとも打ち解けてⅡ号戦車の上でみんなでアイスを食べていた。
私は達真さんの膝の上、お姉ちゃんは達真さんの横で寄り添うように座ってる。
お姉ちゃんも達真さんの膝の上に座るのが好きみたいで、いつもじゃんけんをしてどちらが座るか決めている。
今回は私の勝ちで達真さんの膝に座るのは私。でも今にして思えば、お姉ちゃんは私にわざと負けてくれていたような気がする。沙織さんに言われて気づいたけどいつも無意識に最初にパーを出してたみたい。
そんな中、自分の膝を勝手に椅子にされている達真さん本人は、気にせず二人のやりたいことをやっていいよと言ってくれた。
嬉しい言葉に私は更に達真さんの胸に寄りかかってみる。
なんだろう…この感覚…すごい落ち着く…。すぐにお姉ちゃんにも試してもらう。
はたから見たらすごい光景だろうなぁ。男の人の両膝に子供が一人づつ乗って胸の音を聞いてるんだから…。
それからの日々はあっという間だった。戦車道、虫取り、泥にまみれての遊び、色々なことを教えてもらった。
泥まみれの服を見て、お母さんは怒るかと思ったら同じく泥まみれの達真さんを見てまた、仕方ない人ですね。と困惑しつつわずかに笑った。
でも別れの日はやって来た。
始めて出会った日から一年ほどの月日がたった夏休み最後の日。その日に達真さんとお別れしなければいけないことを教えられた。
「なんでっ!?なんで急にお別れなの!」
「‥私も納得できない」
お姉ちゃんと精一杯の講義をするが、事情があるようでもうどうしようもないとのことだった。
私達はまだまだ子供で、さんざん駄々をこねて達真さんやお母さんを困らせた。
お母さんも、取り乱す私達を叱ってはいたがいつもの毅然とした感じではなくどこか寂しそうな口調に感じた。
「やだ、やだっ!お兄ちゃんとお別れなんてやだっ!!」
ついに泣き出してしまう私。お姉ちゃんも泣きそうになるのを必死にこらえてるみたい。
そんな私達を、初めてあったときのように屈んで、私とお姉ちゃんの頭を撫でた。
「ごめんね。本当はもう少し一緒にいて色々教えたかったんだけど…。」
ゆっくり、ゆっくりと優しく頭をなで続けてくれる。私達が落ち着くまでずーっと。
「…もう、会えないの?」
涙で赤くなった目で達真さんを見つめる。私とお姉ちゃん。
「きっと会えるよ」
そう言うと達真さんは私とお姉ちゃんの肩に手を置くと私達を見つめる。
「みほちゃん、まほちゃん。戦車は、戦車道は好き?」
私とお姉ちゃんはうなずく。
戦車、戦車道が大好きで、お母さん、お姉ちゃんと一緒に優勝することを誓ったんだ。
「それなら、大丈夫。二人がその気持を持っていたらまた、会えるよ」
そう言って優しく笑った達真さんが、私が最後に会った達真さんだった。
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「みほ?みーほー?」
沙織さんの声にはっとする。ちょっと考え込んじゃったみたい…。そんな私の様子が気になったのかみんなが気遣ってくれた。
みんな、本当に私に良くしてくれる。大洗に来て本当に良かったって思える。
「う、ううん。なんでもないよ?」
そう言って笑った。
でも……、達真さんは……どう思ってるのかな………。
あの頃はわからなかったが、達真さんは色々な学園や戦車道を志しているところに赴いて、指導をしているみたいで色々なところを飛び回ってるみたい。
…今の私のことも、多分知っていると思う。
黒森峰十連覇をかけた試合。私のせいで優勝を逃し、戦車道から逃げ出した私のことを……。
「皆、揃っているな。」
河嶋先輩の声が聞こえ、前を向くと小山先輩と角谷先輩も揃っていた。達真…さん…教官が来るんだ…。
「では教官、よろしくお願いします。」
その言葉に、みんなの前に教官となった達真さんが現れる。
「今日から大洗学園戦車道の教官をやらせてもらうことになった、扶桑達真です。よろしくね」
そういって頭を下げる達真さんは見た目も雰囲気もあのときのままだった。
スーツを着てぴっしりとした格好をしている達真さんを見るのは久しぶりで、不謹慎かもしれないけど懐かしいと思った。
「教官も来たことだ、これから更にビシビシ行くぞ、お前たち気を抜くなよ!」
「「はい!」」
「それでは訓練をかい」
河嶋先輩が開始の合図を出す前に沙織さんから手が挙がる。
「すいません!教官に質問があります!」
それはあとにし、そう言おうとする前に沙織さんがすばやく質問する。
「教官は、彼女はいますか!」
沙織さんの質問におぉーと周りから声が上がる。
河嶋先輩は最初その質問を却下しようとしてたみたいだけど角谷先輩になにか耳打ちされたあと顔を真赤にして黙ってしまった。どうしたのかな?。
「彼女…か…」
なにか複雑な顔をして、考え込む仕草をする達真さん。
それにみんなも、そして私も達真さんの言葉に興味が出て言葉を待つ。
「…いないね…」
悲しそうな、なんとも言えない苦い表情で達真さんが告げると、そのことにほっとする自分がいた。そんなこと、思っちゃいけないのに…。
「じゃ、じゃあ!わたしなんてどうで、…っとその前に教官私のこと覚えてっ…」
達真様、いい人はいないんですね。
達真さん、一人なのか。
ふーん、教官彼女いないのかー。
彼女は、いない…。な、なんで安心してるんだ私は!
教官、彼女いないのね。
達真さん、彼女いないんだ。
「た、武部、もういいだろう!教官、訓練を!」
色々な声が聞こえるがどれも小さな声ではっきりと聞こえなかった。つぶやいちゃった私の声も聞こえてないといいな…。
武部さんの質問は河嶋先輩に遮られて有耶無耶になっちゃった。
達真さんも切り上げたほうがいいと思ったのか訓練を始めようとみんなに指示を出している。みんながそれぞれの訓練に向かっていく。
そして私達の方に向くと私と目が合った。
ドキッとする。緊張で少しだけ固くなってしまう。
「俺が教える前に西住さんが色々教えてると思うから、その内容を教えてくれるかな?」
昔と変わらない声と表情で声をかけてくれる達真さん。
でも私の緊張はいまだ解けずギクシャクした返事をしちゃってると思う。
「…みほちゃん?緊張してる?」
あの頃のように私の名前を呼んでくれる達真さんに緊張とは違うギクシャクした感じが出てしまう。なんだか、恥ずかしい…。
「ご、ごめんなさい。教官。なんだか緊張してしまって…」
ふむ、と私をみると急にいたずらっぽい笑みを浮かべると。
「昔みたいに お兄ちゃん って呼んでもいいんだよ?」
と笑った。
「た、達真さん!?」
そ、そんな昔の呼び方…できないよぉ…。皆もいるし…。
お兄ちゃん……‥?
お兄ちゃんって……?
沙織さんたちから好奇の目を向けられる。
その好奇心が行動に移される前に私は達真さんとの訓練メニューについての話を進めるのだった。
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本日はここまで、全員、解散!!
「「お疲れ様でした!」」
きょうかーん、お疲れ様ー。お疲れ様ぜよ。お疲れ様です。
「お疲れ様。気をつけて帰ってね」
訓練が終わり、沙織さんたちと一緒に帰りの予定を考えていたときだった。
「西住さん。ちょっといいかな?」
「はい?」
「ちょっと話があるから、車庫まで来てくれるかな?」
二人だけで話すのは、まだ緊張してしまうかもしれない。
「えっと…」
「あ、じゃあ私達も」
そんな私の空気を察してくれたのか沙織さんたちもついていこうとしてくれる。
「んーとごめんね。大事な話だから、二人で話したいんだ」
やんわりと、でもはっきりとした拒否の言葉をする達真さん。
でも…。とまだ悩む沙織さん達。本当に、私にはもったいないくらい、大切な友達…。
だから迷惑はかけられない。
「大丈夫です。行きましょう」
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「…あの…話って…」
車庫についてすぐ、達真さんは私に背中を向けて考えるような素振りをしたあと私に向き直った。
「…みほちゃん。今でも戦車道は好き?」
真っ直ぐに私を見つめて達真さんは聞いた。心配そうな達真さんの顔。
少しだけ考える。戦車道から逃げて、そのあと逃げた先で、戦車道を半ば無理矢理に受けられそうになったし、一度は断ろうとしたけど今ははっきりと言える。
「はい、大好きです!」
私の言葉に、達真さんは目を細めるとそっか…ととつぶやき。私の前に立つ。
見つめる達真さんの目をしっかりと見据える。戦車道が好きだという思いを伝えるために。
「みほちゃん」
「はい」
ぽん、と頭の上に手を置かれた。
え、あ、あのっ
「きょ、教官っ。急にどうしたんですか!?」
ど、どうしたんだろう急に!?わ、わたしなにかしたかな!?
驚く私の様子を気にすることもなく達真さんは私の頭をなで始める。
「んっ」
ドキドキしていていたのが収まっていき、あったかい気持ちがわいてくる。
「みほちゃん」
撫でる手はそのままにそっと私の名前を呼んだ。
「黒森峰のことは聞いてるよ」
「…はい」
びくりと身体が反応してしまう。
達真さんにも、怒られちゃうのかな……。怖い…。お母さんやお姉ちゃん、そして達真さんにまで否定されてしまったら私は…。今のままでいられるだろうか…。
大切な友達ができた。その友人たちに迷惑をかけずにいられるだろうか……耐えられるだろうか……。
達真さんと目が合う。
「お疲れ様。よく、頑張ったね…」
あの日のように、笑って……くれた……。
誰にも言われなかった言葉。
「あ…」
何度も自分に言い聞かしてきた。私は間違ったことはしていない。後悔はないんだと。でも、本当にそうだったのだろうか…。
…人の命より優先されることなんてないはず。もちろん、会場には優秀なスタッフさんもいるし、私が行かなくても良かったのかもしれない。
でも、目の前で危ない目にあってる仲間がいて無視することなんてできない。
だからきっと、お母さんだって……。
「犠牲なくして、大きな勝利は得られないのです」
…お母さん………。………私は………私は……………。
「でもっ」
「西住の名を持つものとしての自覚を持ちなさい」
……もう、耐えられなかった……………。
私は……大洗に転校した。もう、戦車道にかかわらないように……見ないように。
…でも…達真さんは私を……見てくれた……。見つけてくれた……。
「…うんっ…ありがとう、お兄ちゃん!」
我慢できずにお兄ちゃんの胸に飛び込んだ。
一瞬驚いたような顔をしたけど、しっかりと受け止めてくれた。…温かくて、大きな胸、すごく安心する私の…大好きな場所…。
お兄ちゃんの鼓動、とくん、とくんって聞こえる。それが心地よくて何度も頬を胸にこすりつけてしまう。
そのまま頭をなで続けてくれる。
お兄ちゃん…。
撫でていた手をそっと掴んで私の頬に持っていき頬ずりする。
お兄ちゃんの手…。優しくておっきな手。
「お兄ちゃん…」
見上げるとお兄ちゃんと目が合った。お兄ちゃんは小首をかしげたあとに、またにっこりと笑った。
とくん、と私の胸が鳴った。
…ふと、そうするのが当たり前みたいに、私は無意識に背伸びをしていた。掴んでいたお兄ちゃんの手をそっと離し、お兄ちゃんの胸に両手を置いて、ゆっくりと目を……。
カラン
「「あ」」
物音に驚き、車庫の入り口を見つめると沙織さんとばっちり目が合った。その後ろには華さん、麻子さん、優花里さんもこちらを覗き込んでいた。
「ごめんね…みほ。心配だったから様子を見に来ちゃった」
申し訳なさそうにみんながこちらに向かってきた。心配かけちゃったみたい…。みんな優しいな…。
「いやー、覗くつもりはなかったんだけど。いい雰囲気になってたから邪魔したら悪いかなーって」
てへへと笑う沙織さん。
「覗きは良くないですよ」
「覗きは良くない」
「覗きは良くないです」
沙織さんを冷ややかな目で見つめる華さん達。
「な、何よそれぇ!皆だって止めないで見てたじゃん!」
その言葉に皆はうっ!っと口ごもる。あはは、見てたんだ……。
「で、でも本当にすごくいい雰囲気だったんだよっ。それに今だって」
「え?」
その言葉に自分の姿を確認する。
私は今、お兄ちゃんの胸に手を当てている。胸に飛び込んでる姿だ。
「あの…皆……どこから、見てたの……?」
どんどん、自分の体温が上昇していくのが分かる。
「え?えーと…みほが…胸に飛び込んだところから…かな?」
じゃあ、全部、全部…見れちゃってた…。頬ずりしたところも、そ、それに私、き、キスしようと……!?
今更自分のしようとしていたことに気づいた瞬間に、私の顔はボッと赤くなる。
「ご、ごめんなさいーーーーーーー!!!」
思いっきり、走って逃げました……。
戦車道からは逃げないと決めたけど。まだ、恋愛からは逃げちゃいそう…。