勇者王ガオガイガー STRATOS   作:御伽噺

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ちなみにOPの名前は「勇者王誕生!―伝説ヴァージョン―」にしようと思ってる(キリッ


Number.01 二人の少年

 インフィニット・ストラトス。ISと呼ばれるそれは、簡単に言えばパワードスーツである。しかしそれは明らかに既存のものを凌駕(りょうが)する性能を持っていた。単体での飛行が可能であり、高い機動力をもつ。更に武装の多彩さ、防御力の高さから既存の兵器の全てを上回るとさえ言われている。

 

 しかしそんなISにある、唯一の欠点とも呼べる点……それは、「適正のある女性にしか動かせない」と言う点である。

 

 ISという常識を超越した兵器の登場により、世界は急速に変革した。その一つが女性優遇……裏を返せば男性蔑視の風潮だ。だが、今は関係ないので置いておこう。兎に角、ISが世界を左右するようになった。そして、ISの操縦者の教育機関として設立されたのが……IS学園である。

 

 そして今年、ISを動かせる「男性」が現れた。その知らせはすぐさま世界中に広がった。そしてその少年の姓が「織斑(オリムラ)」だとわかるとさらに世界はざわめいた。それはISを開発した篠ノ之(シノノノ)(タバネ)博士の親友であり、ISバトルで伝説にさえなった強さを持つ女性、織斑千冬(チフユ)と同じ姓だからである。そして彼女の弟であることがわかると、さらに彼への注目は集まった。と同時に、世界中で男性に対するIS操縦適性の検査が行われた。ほぼ諦められていた男性操縦者という存在が、一人現れたのだ。もう一人いないとは限らない。そして結果は。

 

 もう一人の男性操縦者の発見がニュースで流れたのは、一人目の発見から一か月後であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪ガガガッ ガガガッ ガオガイガー! ガガガッ ガガガガッ ガオガイガー!!

 

 

         勇者王(ゆうしゃおう)

     ガ オ ガ イ ガ ー

        GaoGaiGar

        S T R A T O S

 

 

♪吼えろ! 鋼のサイボ(中略)

 

 

♪ガッガッガッガッ ガオガイガー!!

 

 

これは、命を超えて戦った熱き勇者達の終焉を超えた物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

Number.01 「二人の少年」

 

 

 

 

 

 

 

 

 織斑一夏(イチカ)はため息をついた。新学期最初の日。高校の入学式。それは新しい生活の幕開け。普通の人間ならば期待に胸を膨らませるであろう場面。しかし、織斑一夏は違った。彼の周りには女子ばかり。妙な緊張感にクラス全体が包まれている。その原因は、一夏も含むIS男性操縦者の二人がこのクラスにいて、その二人にみんなの意識が集中しているからである。普通なら浮き立つ心も今は沈んでいた。

 

(辛い……これは辛いぞ…)

 

 彼は最初に発見された男性IS操縦者である。しかし、初めての男性操縦者ということで前例がなく、慌ただしいままに様々な手続きを取らされ、気が付いたら周りは女子ばかりのIS学園の中である。ため息のひとつもつきたくなろう。

 

 刺すような視線とまでは言わないが、みんながこちらに極度に集中しているのが分かる。そんな空気の中、副担任の山田(ヤマダ)真耶(マヤ)先生は何とか空気を和ませようと奮闘していた。しかし効果はない。誰もまともに彼女の話を聞いてはいないからだ。仕方なく彼女は生徒達に自己紹介をさせ始めた。

 

(誰か助けてくれないかな……)

 

 ちらりと窓際の席に目をやる。その先には幼馴染の篠ノ之(ホウキ)がいた。しかし彼女は一夏から顔をそらす。

 

(ひょっとして俺、嫌われてる?)

 

 数年ぶりにあった幼馴染の態度にちょっとショックを受けた一夏だった。

 

「……くん、織斑一夏くん!」

「は、はいっ!」

「あ、あのっ、大声出してごめんね? お、怒ってるかな?」

 

 呼ばれていたことに気付いて慌てて立ち上がる。真耶は彼に対し何度も頭を下げた。曰く、既に一夏の番が来たらしい。

 

「いや、そこまで謝らなくても……っていうか自己紹介しますから」

 

 とりあえず真耶を落ち着かせることに成功した一夏は後ろを振り向いた。

 

(うっ……)

 

 一夏は自身に突き刺さる視線に気圧(けお)された。だが、何か言わなくてはと口を開く。

 

「織斑一夏です……よろしくお願いします」

 

 とりあえずそれだけ言ったが、周りからは「もっと」と無言の圧力。しかし一夏は特にいうべきこともなかったので――

 

「以上です」

 

 その空気をぶった切った。これを無意識にできる一夏は大物なのかもしれない。しかしその直後に一夏の頭はパシンッっとはたかれた。

 

「自己紹介もまともにできんのか貴様は」

 

 振り返った一夏が見たのは、黒いスーツとタイトスカート。肩まで伸ばした黒い髪。鋭い吊り目。

 

「え……? ち…千冬姉!?」

 

 バシン! 一夏は発言後0.3秒で頭をはたかれた。

 

「ここは学園だ。織斑先生と呼べ。……ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」

「いえ、会議が長引いたのなら仕方ないですし」

 

 一夏の頭を出席簿で叩いた人物こそ、織斑千冬。彼の実姉であり、ISバトル元日本代表である。一夏を黙らせてから改めてクラスの生徒達に名乗った千冬。彼女に大歓声が浴びせられる。生ける伝説とも呼べるブリュンヒルデの姿を前に、彼女に憧れを抱いている思春期女子達が我慢できるはずもなかったのだ。彼女は眉を(しか)めてため息を吐く。

 

「やれやれ、毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。それとも私のクラスにだけ集中させているのか?」

 

「さっき織斑くん、千冬姉って言ってたよね……」

「ということは姉弟!? やっぱりISが使えるのもそれが関係して……」

「いいなぁっ、代わってほしいなぁっ」

 

 女子たちはざわざわと落ち着かない。しかし千冬はそのよく通る声で言い放った。

 

「黙れ。……織斑のせいで時間をとられた。もうSHRは終わり、と言いたいが気になるだろうからもう一人の男にも自己紹介させる。――獅子王」

「はい」

 

 そして一夏の隣に座っていた少年が立った。長い赤い髪――こういう色を緋色というのだろうか――を背に垂らし、彼はクライメートを見つめていた。この周りの大勢の女子からの視線に全く動じていない。一夏は彼が少し羨ましくなった。

 

「獅子王(ユウ)。IS男性操縦者。趣味は空と海を眺めること。特技は格闘技。生まれはアメリカだが、国籍は日本だ。……これでいいか」

 

 それだけ言うと雄は席に着いた。無愛想な雄の態度に少し空気が悪くなりかける。が、千冬がすぐに話し始めたため、それ以上何か起きることはなかった。

 

 

 

 

 SHR(ショートホームルーム)後の休み時間。雄は自分の机に座っていた。彼は自分に集まる視線に辟易していた。完全に見世物扱いである。

 

(予想以上だな…これは)

 

 あまり他人の目を気にしない雄だが、流石に十を超える人間の視線に晒されては平静ではいられない。

 

「なあ、少しいいか?」

「ん?」

 

 一夏に声をかけられた雄はそちらへ顔を向ける。

 

「さっき自己紹介したけど、織斑一夏だ。一夏って呼んでくれ」

「あ、ああ……獅子王雄だ。俺も雄で構わない」

「俺達しか男がいないわけだし、男同士これからよろしくな」

「あ、ああ」

 

 雄は気さくな一夏の態度に少し面食らった。あまり先程の自分の態度は良くなかったと周りの反応から分かっていたからだった。そんな中臆せず自分に話しかけてくる一夏に、雄は少し興味と好感を持った。

 

「それにしても良かったぜ、男がもう一人いて」

「流石にこの中に一人は……辛いだろうな」

「ああ。考えただけでぞっとするな」

 

 話しをしながら一夏は雄を眺める。なんだか不自然な感じがする。どこにもおかしいところはないはずなのだが、彼が制服を着ていることに違和感を覚えた。そこで一夏は雄の制服の左腕の部分がなぜか盛り上がっているのを見つけた。

 

「何だ、その左腕?」

「ん、いや……これは……」

 

 雄が口籠(くちごも)る。そこでチャイムが鳴った。

 

「……もう時間だ。授業の準備しないと」

「そうだな……」

 

(何か聞いちゃいけないことだったのか?)

 

 また別の機会に聞いてみよう、と一夏は思った。

 

 

 

 

 そして一時限目、IS基礎理論の授業が終わった。雄は授業内容をまとめていた。

 

(今はまだ分からないところはない……。教科書に書いてあること以前のことしか語ってないからな)

 

 つまりはISについて学んだものならば常識の部分である。隣の一夏は頭をひねっていたが、雄はまだ理解できていた。

 

(この程度はISについて知ろうとすれば、必ず触れる部分だしな……)

 

「ちょっといいか」

「え?」

 

 一人の少女が一夏に話しかけていた。

 

(なんだ織斑の方か。俺には関係ないか)

 

「……箒?」

「…………」

 

(ホウキ……髪型か? ……ああ、そういうことか)

 

 そのまま一夏は少女に教室の外に連れて行かれた。雄はその背中を目で追った。

 

(織斑と篠ノ之……か)

 

 彼女は篠ノ之箒。篠ノ之束博士の実妹である。どうやら昔二人には交流があったようだ。二人が何を話すのか気になったが、積もる話もあるだろうということで雄は無言で二人を見送った。

 

 二人を見る雄の視線には若干の憧憬が見られた。

 

 

 

 ちなみに雄は一夏が連れて行かれたせいで倍になった視線にさらされることになった。

 

 

 

 

 

 

 次の授業は真耶の担当だった。中身はまたしても、雄にとっては今更の内容だった。

 

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり――」

 

(……暇だな。しかしせめてノートをとる姿勢ぐらいとろう。成績に響く……といっても成績に(こだわ)りはないんだが)

 

 そんなことを考えていると、真耶が一夏に尋ねた。

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

「あ、えっと」

「わからないことがあったら聞いてくださいね。なにせ私は先生ですから」

「……先生!」

「はい、織斑くん!」

「ほとんど全部わかりません」

 

 雄は開いた口が塞がらなかった。流石にこれはない。せめて一部にしろと言いたかった。

 

「し、獅子王くんはどうですか?」

 

 涙目の真耶。雄には彼女の気持ちは良く分かった。

 

「ないです。全く」

「何ぃ!?」

 

 一夏が雄を見る。裏切り者とでも言いたそうだった。見かねたのか、千冬が口を開く。

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

 教室に乾いた音が響いた。

 

 

 

 

 

 

「ちょっとそこのお二人、よろしくて?」

「へ?」

「……?」

 

 織斑姉弟の漫才もどきがあった授業の後、男二人に話しかけてきた少女がいた。金髪ロールの「いかにも」なお嬢様だった。同時に二人を見下した雰囲気も「いかにも」現代の女子のようだった。

 

「聞いてます? お返事は?」

「あ、ああ。聞いてるけど」

「何か用か?」

 

 再度の問いかけに雄は考え事をやめ、意識を目の前の女子に集中させた。

 

「まあ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

「……? 俺と君は初対面だと思うのだが……」

「俺も君が誰か知らないんだけど」

 

 雄と一夏は困惑する。この高圧的な少女は何なのだろうと。

 

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを?」

「セシリア……ああ、イギリスの国家代表候補生のか?」

 

 名前で思い出す雄。学園に来る前に一通りのことは事前に調べていた。その情報の中に彼女のことがあった。顔は知らなかったが。

 

「え? 君が?」

「そう、わたくしは国から選ばれたエリートなのですわ! 本来はわたくしのような選ばれた人間とは、クラスと同じくする事だけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

「そうか。それはラッキーだ」

「……馬鹿にしていますの?」

(お前が幸運だと言ったんだろう)

 

 内心突っ込む雄。もっとも、一夏の棒読みがひどかったせいかもしれないが。

 

「大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待外れもいいところ。そっちの男は少しは覚えがあるようですが……身だしなみというものを知らないのかしら? そんな髪で公の場に出てくるなんて……」

「俺に何かを期待されても困るんだが」

「悪いな、今までそんなものとは無縁の生活をしていたんだ」

 

あえてISとは関わらないようにされていた一夏。奇抜な外見の人間ばかりと一緒にいた雄。二人にそれぞれISの知識と身だしなみを求めても無駄だろう。さらに言えば雄の髪型はそうする必要があるからこうしているのである。

 

「ふん。まあでも? わたくしは優秀ですから、あなた方のような人間にも優しくしてあげますわよ」

「そいつはありがたいな」

 

 雄が放った皮肉にも気付かずセシリアは続ける。

 

「それと、ISのことで分からないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

「入試って……あれだろ、IS動かして戦うやつ。それなら俺も倒したぞ、教官」

「は……?」

 

 ぴしり、とセシリアが固まった。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

「女子ではってオチじゃないのか?」

「つ、つまりわたくしだけではないと?」

「いや、知らないけど」

「あ、あなたはどうなんですか!? まさか……」

 

 答えを求められた雄は首を横に振る。

 

「いや、俺はそもそも戦っていない。試験を免除する何かを俺の保護者……と言うことになっている人物が差し出したらしい」

「試験を免除!? その何かとはなんですの!?」

「いや、俺も知らないから……」

 

 その時チャイムが鳴った。まだ何かいいたそうなセシリアだったが、

 

「っ……! またあとで来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」

「よくない」

「おい雄」

「このっ……!」

「先生が来るぞ」

「~~っ!!」

 

 肩を震わせて席に帰っていったセシリアを雄は満足げに眺めた。

 

「おい、いいのか雄。あんな挑発して」

「…………」

 

雄がニヤリと笑ったのを見て、一夏は雄の性格の悪さを垣間見た気がした。そして、この話題に触れないことにした。

 

 

 

 

 

 

 そして次の時間。騒動は教壇に立った千冬の一言から始まった。

 

「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 クラス代表とは簡単に言えば学級委員、またはクラス長と言ったところだ。任期は一年。勿論(もちろん)ISバトル関連の出来事にも出ることになる。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「獅子王くんが良いと思います」

「では候補者は織斑一夏、獅子王雄……他にはいないか? ちなみに自薦他薦は問わないぞ」

「お、俺!?」

「…………俺は」

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

 二人が何か言おうとしたのを遮り机を叩いてセシリアが立ち上がった。

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! このセシリア・オルコットにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

(いちいちフルネームを名乗るのか)

 

 そんなずれたことを雄は頭の片隅で思った。彼は彼女の言葉を否定しなかった。いちいち反論するのも面倒だったし、言うだけなら勝手にしろと思ったからだ。

 

「実力から行けばこのわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

「イギリスも島国だろ(ぼそっ)」

「何か!?」

「イヤナニモ」

 

 つぶやきに反応したセシリアから雄は目を逸らす。

 

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

(実力がトップがなるべきという点だけは同意できるな)

 

 だんだんヒートアップしていくセシリア。片手を胸に当て、もう片手を机についている。まるで演説でもしているかのようだ。ドラマとして放映されるとしたらきっと斜め下からのアングルで映されるに違いない。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなければ行けないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

(む……先に言われた)

 

 雄が口を開く前に一夏が言葉を発していた。

 

「なっ……!?」

 

 それを聞いてセシリアは顔を真っ赤にした。

 

「あ、あなた…わたくしの国を侮辱しますの!?」

「先に侮辱したのは君だろ」

「決闘ですわ!」

「ああ、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

「……これは俺も参加するのか?」

「勿論ですわ!」

 

 首をひねる雄にセシリアが断言する。

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらあなたたちわたくしの小間使い――いえ、奴隷にしますわよ」

「なめるなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

「負けてやる理由も見当たらないしな」

「そう? 何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

 

(こういうのを「フラグ」というのか?)

 

「ハンデはどのくらいつける?」

「あら、早速お願いかしら?」

「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

一夏がそういった瞬間クラスから爆笑が巻き起こる。

 

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

「織斑くんは、それは確かにISを使えるかも知れないけど、それだけでしょ?」

「やめときなよ。今の女に男が勝てるわけ無いんだから」

 

 流石に一夏もクラス中から憐れみの声をかけられては、意地を張ることも出来なかった。

 

「……じゃあ、ハンデはいい」

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、わたくしがハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがあるのね。……そっちの黙ったままのあなたもそう考えていたりしないでしょうね?」

 

 今まであまり発言しなかった雄がここで口を開いた。

 

「馬鹿馬鹿しいな」

「なっ、なんですって!」

「聞こえなかったのか? 馬鹿馬鹿しいといったんだ」

 

 雄は立ち上がり、セシリアを見据えた。

 

「男だとか女だとか……そんな(くく)りには意味がない。例えば俺は、5分以内にあんた以外のこのクラスの女子生徒全員を倒せる自信があるが、俺の姉には30秒以内に負けるだろうな。性別関係なく強い奴は強い、弱い奴は弱いんだ。当たり前だろ?」

 

 雄はさらに言葉をつづける。

 

「『男は女に勝てない』。そんな歪んだ常識は……打ち砕いてやる。あんたとの戦いでな」

 

 それは明らかな宣戦布告だった。

 

「いいでしょう……二人とも後悔させてあげますわ!」

 

 結局、一週間後の放課後に戦いが行われることになった。順番は、セシリアVS雄、一夏VSセシリア、雄VS一夏。公正な抽選の結果である。

 

 

 

 

 

 

 放課後。専門用語の羅列に頭を抱えた一夏と、それを尻目に帰り支度を行っていた雄。そんな二人に真耶が近付く。何か用事があるらしい。

 

「えっとですね、二人の寮の部屋が決まりました」

「俺の部屋、決まってないんじゃ……」

「事情が事情なので、無理矢理ねじ込んだみたいですよ」

 

首をひねる一夏に真耶は説明する。

 

「織斑くん、そのあたりのことって政府から聞いてます?」

「いや、別に……それで? 俺は何号室ですか」

「一夏と俺は同じ部屋なんですか」

「いえ、織斑くんが1025号室で、獅子王くんは1038号室ですね。織斑くんは女子と相部屋ですよ」

「な、なんでですか!?」

 

まさかの事態に一夏は真耶に詰め寄る。

 

「な、なんでと言われても……」

「諦めろ。決定事項なんだろう」

「け、けどさ……」

 

 雄が一夏を諭しているところに千冬がやってきて、一夏の荷物は寮に運んであることを伝えた。もっとも中身が着替えと携帯の充電器だけでは、後から娯楽品を持ってくる必要もあるだろうが。二人の会話が終わると、雄は(彼視点で)一番重要なことを尋ねた。

 

「荷物の搬入と、工事は終わってますか?」

「あ、はい。一応終わったと業者からは連絡がありましたが……」

「そうですか、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 寮についた雄は、自室の確認を行う。雄の部屋は特殊で、普通の部屋を二つ繋げたものだった。ちなみに廊下につながる扉は一つしかなく、建物の構造上、雄の部屋が二部屋分の大きさであることは外からはわからない。扉から入る方の部屋は一夏たちと同じ普通の部屋であったが、壁に道具を使って調べないと分からないような隠しドアを取り付けてあった。そしてそのドアからしか入れない隣の部屋は全く構造が違った。

 

 雄は壁の前に立つと左腕をかざす。すると隠し扉が音もなく開いた。その部屋は普通の部屋の壁や家具、シャワールームなどをすべて取っ払い、一つの大きな部屋にしてあった。部屋の真ん中には手術台とマッサージチェアを足して二で割ったようなベッドがあった。その横には何やら機械が置いてある。雄はその機械に近づくと、機能が正常に稼働するか確かめた。

 

(……一応大丈夫だな)

「……しかし、女子の視線を受けるというのも意外と疲れるな。わかってはいたが……」

 

 機能を確かめた雄はそのままどこかと通信をおこなう。遠くからなにやらどたばたと音が聞こえてきた。情けない悲鳴も聞こえる。一夏が何かやらかしたに違いない。

 

(……楽しそう、だな。俺は、あれに混ざれるのだろうか……)

 

 そう考えたところで、通信がつながった。

 

 

 

 

「こちらIS学園、獅子王雄。――――聞こえますか」

 

「――――さん。ええ、心配しなくて大丈夫ですよ。まだ一日目なんですから」

 

「ええ、織斑一夏はいいやつでしたよ。俺でも、仲良くできそうです」

 

「もう、それはいいじゃないですか。意地悪なこと言わないでください。そんなこと言ってると――兄さんに愛想を尽かされますよ」

 

「嘘嘘! 嘘ですよ! ごめんなさい! だから――姉さんに言いつけるのはやめてください!」

 

「本当にやめてくださいよ? それで、――や――は元気ですか?」

 

「ああ、よかったです。――――さんや――――さんは?」

 

「相変わらずですね。兄妹仲が良くて何よりです」

 

「あ、博士? 大丈夫ですよ。何も不調はありません」

 

「だから大丈夫ですって。何かあったらすぐに連絡しますから。――――達は待機中なんでしょう?」

 

「ほら、心配しすぎなんですよ博士」

 

「あ、――――さん。……え? ちょっと待ってくださいよ! それは博士の領分であって俺はそんなこと……!」

 

「ああもう! 博士! あなたのせいで俺が妙な疑い掛けられてるじゃないですか!」

 

「……わかってますよ、俺がここにいる理由は。表向きは織斑一夏の監視と警護。でも本当は俺に……」

 

「ありがとうございます。皆さんのおかげで俺は……」

 

「ええ、あとで今日の記録を送っておきますから。……それじゃ」

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「なあ……」

「…………」

「なあって、いつまで怒ってるんだよ」

「……怒ってなどいない」

「顔が不機嫌そうじゃん」

「生まれつきだ」

 

そんな会話をしている一夏と箒を、雄は朝食(トースト)を食べながら眺めていた。

 

(同室は篠ノ之だったのか)

 

「雄もなんか箒に言ってくれよ。昨日からまともに会話してくれないんだ」

「え、あ? ……まあ、あまり意地を張るなよ。揉め事は早めに解決するに限る」

「い、意地を張ってなど!」

「だったら会話くらいしてくれよ」

「うぐ、それはお前が……」

「俺が?」

「な、何でもない!」

 

(痴話喧嘩ほど面倒臭いものはないな)

 

 そうしているうちに女子三人が近付いてきた。一緒に食事したい(会話したい)らしい。彼女たちの頼みを男子二人は快諾した。

 

「織斑くん、朝なのによく食べるね。獅子王くんはあんまりだけど」

「俺は夜少なめに取るタイプだから」

「俺は朝はそれほど食欲が湧かないんだ。昼と夜はそれなりに食べるが」

 

雄は割と会話を楽しみながら楽しみながら朝食を取った。

 

 

 

 

 

 

 一夏に専用機が与えられることになる。そのことを千冬から聞かされたのは四時間目の前の休み時間だった。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機が無い。だから少し待て。学園が専用機を用意するそうだ。獅子王、お前には……」

「問題無いです。俺には既に自分の機体があるので」

「何?」

 

 千冬が怪訝そうな顔をする。当たり前だ。急に現れた男性操縦者に既に専用機が与えられているなど不自然すぎる。そんな千冬に雄は事情を説明する。

 

「……俺の保護者は、ISの研究・開発機関に所属しているんです。それで俺がISを操縦できるとわかったので、機関のほうからちょうどできあがったテスト機を与えてくれることに」

「そうか、なら心配は要らないな」

 

(テスト機か……確かにテスト機ではあるんだが)

 

「……???」

 

 雄は隣の一夏が周囲の女子の羨望の視線の意味を理解できていないことに気付いた。

 

「一夏、ISのコアの数は僅か467個しかないな」

「あ、ああ。らしいな」

「それだけしかないコアのひとつが国にも企業にも所属していないお前に与えられるんだ。お前がどれだけ優遇されているかわかるだろう?」

「なるほど、そうだったのか」

 

 さらに言えば、ISコア事態がブラックボックスで、現在コアの製造は篠ノ之束にしか不可能であり、さらにその彼女がこれ以上の製造を拒んでいるという事実もコアの希少性を高めている。

 

「そういうことだ。お前の場合は状況が状況なのでデータ収集のために専用機が与えられる」

 

(それって俺は実験体ってことなんじゃ……)

 

 千冬の言葉に一夏はそう思ったが、賢明にも口には出さなかった。

 

 その後、篠ノ之箒が篠ノ之束の妹だということが発覚し、騒ぎになった。また、その次の休み時間にセシリアが案の定挑発しに来て一夏の無自覚の対応に逆に煽られたりなどがあった。

 

 

 

 

 

 

 放課後、雄は一夏と箒の剣道の試合を見に、剣道場を訪れていた。昼食時、先輩生徒が一夏に近づいてきたことで嫉妬に駆られた箒が、ついISのことを教えることを約束してしまったのだ。しかし、その前に腕が鈍っていないか確かめに箒は一夏を剣道場に連れてきた。結果は一夏が中学の時家計のために剣道をやめバイトをしていたこともあり、箒の勝ちだったが……

 

「鍛え直す! IS以前の問題だ! これから毎日、放課後三時間、私が稽古をつけてやる!」

「え。それはちょっと長いような――ていうかISのことをだな」

「だからそれ以前の問題だと言っている!」

 

 箒は一夏が自分に負けたのが気に入らないらしい。思い人に昔と同じく強くあってほしいのだ。だからといってISのことを何も教えないのはどうだろう。

 

(……俺はとりあえずISの勉強をしておこう)

 

 雄がこれからの予定を立てているうちに、一夏を置いて箒は帰ってしまった。箒に負けた一夏に女子の視線が突き刺さっていた。

 

「雄、ちょっと俺と戦ってくれよ。早く勘を取り戻したいんだ。箒は帰っちまったし」

「ああ、構わないぞ」

「……っておい、着替えて防具つけろよ」

 

 制服のまま竹刀を構えた雄に対して一夏は突っ込む。だが雄は当然のごとく答えた。

 

「大丈夫だ。俺は強い。お前よりもずっと強い。ので、防具をつけなくてもいいし、着替えなくてもいい」

「おい、人が親切で……」

「文句があるなら試してみるといい」

「……ああもう、どうなっても知らねえぞ!」

 

 結局、一夏は雄にもボコボコにされ、一夏は一人落ち込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

――次回予告(PREVIEW)――

 

(小林さんの声を脳内再生承認!)

 

 君たちに最新情報を公開しよう!

 

 セシリアの挑戦を受け、クラス代表を決める戦いに出ることになった雄と一夏。しかし、雄は普通の人間ではなかった。鋼のサイボーグは果たして勝利を掴めるのか。

 

 勇気の力を見せつけろ、雄! 今こそフュージョンの時!

 

 勇者王ガオガイガーSTRATOS、Next「吼えろ、鋼のサイボーグ」

 

 次回もこの作品で、ファイナルフュージョン承認!!

 

 

 これが、勝利の鍵だ! 【ファイガー】

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