といっても続きを期待してくれてた人がどれだけいるかわかりませんが……。
リアル多忙のためかなり遅れました。
代表決定戦当日。獅子王雄は、アリーナのピットの中にいた。
(準備はすでにできている。エネルギーも満タンだ)
自分の状態を隈なくチェックし、万全であることを確認する。と、そこに一夏や箒、そして担任教師二人が入ってきた。
「獅子王くん、準備はできてますか……えっ!」
「お、お前……!」
「その、姿は……」
「……一応、話には聞いてはいたのだがな」
彼らは、目にした雄の姿に絶句する。水着にも似たISスーツではなく、剥き出しの武骨な機械の身体。それが今の雄の姿だった。
――――獅子王雄。違法研究施設で生まれ育った彼は、幾度となく繰り返された「実験」により、肉体に甚大なダメージを負っていた。研究施設からある組織によって救出された時にはあと数か月も生きられない身体となっていたのだ。しかし彼はそのまま死ぬことを良しとしなかった。彼はその生命を維持するため、肉体の95%以上を機械化し【サイボーグ・ユウ】として生まれ変わったのだ――――
「……驚くよな。こんな姿を見たら」
「雄、お前は……」
「俺は、サイボーグなんだ。言っておくが、これはISを動かせることとは関係ないぞ?」
「わ、わかってるよ」
「聞きたいこともいろいろあるだろうけど……もう時間だからな。また、後で」
そこで千冬が雄に話しかけてきた。
「――獅子王、行けるか?」
「行けます」
頷くと雄はそのままゲートのほうを向いた。当然一夏が尋ねる。
「おい、雄。お前ISは……?」
だがそれに答えることなく雄は左腕を前に突き出して叫んだ。
「イークィィィィィイイイップ!!」
声と同時に左腕を胸の前に持ってくると雄を光が包む。光が収まったそこには、金色の鎧に身を包んだ戦士が立っていた。右眼には緑のサイバースコープ、左腕には緑の石が埋め込まれたガオーブレス。流しっぱなしだった髪の一部は収束し、頭の両側に垂れている。
「行ってくる」
一夏たちに親指を立てつつそう言うと、ピットゲートに向かって駆け出す。ゲートが開くと同時に跳躍。自らの相棒の名を呼ぶ。
「ファランクスガオーッ!!」
雄の背後に「それ」が現れる。そして雄は自身のIS装着のためのキーワードを呟いた。
「フュージョン……!」
パーツごとに分離、展開した「それ」は雄を包み込むと、システムに従い変形を始めた。人型へ変形が完了した「それ」は自らの名を叫んだ。
「 フ ァ イ ッ ガ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ! 」
――――サイボーグ・ユウは、ファランクスガオーとフュージョンすることにより、メカノイド「ファイガー」へと変形するのだ――――
♪ガガガッ ガガガッ ガオガイガー! ガガガッ ガガガガ ガオガイガー!
ガ オ ガ イ ガ ー
GaoGaiGar
S T R A T O S
♪吼えろ! 鋼のサイボ(中略)
♪ガッガッガッガッ ガーオガイガー!
これは、命を超えて戦った熱き勇者達の終焉を超えた物語である。
Number.02 「吼えろ、鋼のサイボーグ」
フュージョンを果たしたファイガーはそのまま上空で待機していた対戦相手のもとへ向かった。
「
「それだけじゃないんだぜ」
「どうでしょうか。男と同じく、珍しいだけではありませんの?」
既にセシリアはレーザーライフルをもって戦闘態勢に入っていた。その姿は他のISと同じく最低限の装甲にしか包まれていない。セシリアのISは特徴的なフィン・アーマーを四枚背負っていた。脚部装甲だけが大きく、そこに制御システムが詰まっていることがわかる。また、頭部のレンズ型のパーツがセシリアの金髪に映えていた。
対するファイガーは顔を含めた全身を装甲に包んでいた。額の緑の石以外に飾りのようなものはない。スラスターを積んだ肩の部分の装甲が大きく、また胸部のシャッターの存在も目を引く。その体型は人間の物とほとんど変わらなかった。ちなみに顔面部分は生身のように動いて言葉を発することができるようで、セシリアはどういう技術なのか少し気になった。
試合開始の鐘が鳴った。だがまだ両者とも動かない。ファイガーは様子見のために、ブルー・ティアーズは最後の情けをかけるために。
「そうですわね……最後のチャンスをあげますわ」
「チャンス……?」
(ライブラリー)
データベースにアクセス。相手のデータを検索する。すぐにお目当てのデータを見つけた。
――第三世代型IS「ブルー・ティアーズ」。BT兵器の試験運用機。自立機動兵器「ブルー・ティアーズ」を装備。理論上ではビームを自在に偏向させることも可能――
(自立機動兵器か……注意が必要だな)
セシリアは今この瞬間に自分のデータが相手に調べられているなど考えもしないだろう。だからこうしてべらべらと喋っているのだ。その油断によって得た時間をファイガーは利用させてもらった。
「わたくしが一方的に勝利するのはもはや明らか。惨めな姿をさらしたくなければ、今のうちに謝っておくことですわね。そうしたら許してあげないこともなくってよ」
「……無理だな。どれだけ打ちのめされても俺は絶対に諦めない。考えは曲げない」
「そう……残念ですわ。それなら――」
(来るっ!)
「お別れですわね!」
言葉と同時に閃光が走った。だが予想していたファイガーは身体を半身にすることでかろうじてかわした。一瞬驚いた顔をしたセシリアだったが、すぐさま表情を引き締めるとそのまま射撃の雨をファイガーに降らせる。だがファイガーは大出力のスラスターが生み出す機動力に任せてその雨の中を潜り抜けた。
ファイガーにある武装らしい武装は両腕のファイガークローのみである。必然的に近づかなければ何もできない。ガキン、と音がしてクローが構えられた。
「近距離戦を挑もうというのですか? 中距離射撃型のわたくしに? 冗談もほどほどにしなさいな!」
「どうかな。やってみなきゃわからない、ぜ!」
言葉と同時にセシリアの連射の隙をついてファイガーは接近を試みる。
「不可能ですわ。だって……ブルー・ティアーズ!」
「何っ!」
スカート部分からフィン状パーツが二つ分離し、ファイガーに向かって接近してくる。と同時にそれらからレーザーが放たれた。ファイガーはとっさに両腕を交差させてレーザーを受け止める。ダメージは小さかったが、ファイガーはそれを注意深く見つめた。このフィンパーツこそが機体の名称にもなっている自立機動兵器「ブルー・ティアーズ」。それらは操縦者の意思に従い、ファイガーへ接近。様々な方向から攻撃を加えてきた。
「さあ、踊りなさい。わたくしとブルー・ティアーズが奏でる
正面からの射撃だけに気を付けていればよかったさっきとは違い、今度は三つの砲口に気を付けなければならない。ファイガーはその表情をわずかに歪めた。
「悪いがダンスは習ったことないんでね!」
「あら、レディの誘いを断らないのが紳士ではなくて!」
「俺はアメリカ育ちなんだ!」
舌戦の最中も攻撃がやむことはない。背後と右下からの攻撃を避ける。直後に右足を振り上げた。右足があった位置をセシリアの大口径レーザーが撃ちぬいていった。
「くっ」
ファイガーは攻撃を潜り抜けながら、セシリアのスカートアーマーに残ったままの二枚のフィンパーツのことを考えた。
(あれもおそらくビットだろう。なら、まだ二機しか使われていないうちに勝負に出るべきか。このままでは、ジリ貧だ!)
「ちょこまかと……! そこっ!」
「く、おおっ!」
強引に体をひねり、真下と左後ろ、ビット二機同時の攻撃を紙一重でかわす。シールドエネルギーは削られたが、その無理でできた一瞬の隙をついてファイガーはセシリアに突撃した。
「まだですわ!」
案の定セシリア本人の射撃をかわした直後にビットが二機セシリアから離れ、こちらに向かって攻撃してきた。
「くっ!」
距離を詰めるためあえて完全には避けない。左足を撃たれながらもファイガーはセシリアに接近することに成功した。
「そんな無茶をっ!?」
「くらえっ!」
「くぅっ!」
顔目掛けて繰り出したクローは、抱えたライフルを盾代わりにされたため防がれる。直後センサーに反応、急上昇。足元をレーザーが通り過ぎて行った。
(このまま距離を離されるわけにはいかない!)
「ふんっ!」
上昇した勢いのまま空中で回転。セシリアの脳天目掛けて踵落し。今度は避けられた。周りからレーザーが飛んでくる。が、さっきほどたいしたことはなかった。
「離れなさい!」
「断る!」
ビットもファイガーとセシリアが接近しすぎて狙いにくく攻撃が甘くなっているのだ。最も望ましい状態である。ファイガーはセシリアから離れるわけにはいかなかった。
それから数分。戦況は依然変わらずファイガーが超近接戦でセシリアに迫っていた。レーザーをたまに受けながらも、こちらも着実にダメージを与えている。
(ファイガーの耐久力が高くてよかった)
ファイガーの装甲は他のISと比べるとかなり強固であり、更にシールドバリアーに回されているエネルギーが多いため、打たれ強いのである。このままいけば……とファイガーは一瞬気を緩めてしまった。
「この、いい加減に……!」
そしてファイガーの攻撃の手が緩んだとき、セシリアが勝負に出た。制御ミスでビットの攻撃が自分に当たりかねないので今までは自重していたが、その自重をやめてビット全てで攻撃し始めたのだ。
「うぉわっ!?」
「調子に乗っていられるのは、ここまででしてよ!」
突如目の前に出現したレーザーの網。それを回避しようとすると今度は別の方向にまた網が張られる。ファイガーも流石にこれには苦戦し、距離を離さざるを得なくなってしまう。再び一方的に攻撃を受けることになってしまった。
(今までの攻防でセシリアはかなりエネルギーを食ったはずだ。だけど……!)
再び距離を詰めることは難しいだろう。ファイガーは自分の気の緩みによってこうなったことを理解し、歯噛みする。こちらのシールドエネルギーは半分を切った。ここから相手に再び接近することができるのか。
セシリアは現在の状況に愕然としていた。油断していたとはいえ、代表候補生の自分が一瞬で詰め寄られ防戦一方にされていたのだ。更に残りのシールドエネルギーは三割を切っていた。悔しいが……
「認めざるを得ませんわね……」
「何?」
「貴方の実力ですわ。ここまでやるなんて……男だからと言って、馬鹿にしてすみませんでした」
「…………」
ファイガーは
「それならば俺もだ」
「なにがですの?」
「俺はお前を威張るしか能のない世間の女と同じだと思っていた。自らの過ちを認めることもできない愚かな人間だと。だからこちらも謝罪する」
「いえ、そう思われても仕方のない態度をとったのはこちらですから」
「……お互いに非を認めたところで」
「ええ。仕切り直しですわね」
「ここからが本当の戦いだ! 俺は、絶対に負けない!」
「もう二度とあんな醜態は晒しませんわ! あなたは私の全力で打ち倒してさしあげます!」
再び二人の戦いが始まった。だが最初とは違い、乗り越えるべき壁を見つけたとばかりに二人の顔には笑みが浮かんでいた。
「すげえ……」
ピットで一夏は二人の戦いに圧倒されていた。セシリアの技術にも、雄の機転にも一夏は見惚れていた。自分と同い年の人間があれだけの戦いができることに感動した。そして、自分も強くなりたいと思った。
一夏は今まで守られていた自分が今度は誰かを守るために強くなりたいと漠然と考えていたが、それだけでなくあの二人に追いつきたいと思った。あの二人と並んで立ちたい。あの二人と戦って……勝ちたい。
「ちくしょう……二人が、遠く遠く感じる……!」
それは一夏がかつて感じたことのないほどの対抗心だった。
そんな一夏を箒は隣で見ていた。彼のそんな視線を向けられる二人に対して少しばかりの嫉妬を覚えた。が、頭を振ってすぐさまその考えを追い払った。自分が強くなればいい。そうすれば一夏は自分もその視線で見てくれるのだ、と思い直す。
だがその嫉妬は彼女の心の奥底にこびりついて取れなかった。
千冬はファイガーの戦いをじっと見つめていた。随分とISに慣れた動きだ。IS学園に提出された書類では獅子王雄は織斑一夏がISを動かす前からISに乗っていたとある。その存在は混乱を避けるため隠されていたとも。一応筋は通っているようにも思える。
(獅子王の出自も一応証明されている。だが、奴の所属……宇宙開発公団か)
――――宇宙開発公団。半ば諦められていた宇宙開発を進めることを目的として二年前に元々あった政府の組織を再編成して設立されたそれは、瞬く間に新技術を開発し宇宙進出を現実のものにしようとしていた――――
(宇宙開発公団はいろいろと謎が多い組織だと聞いている……奴がそれに関わっていないとも限らない。少し、注意しておくか……)
千冬は、獅子王雄をしばらく監視し続けることを決めた。
「くっ!」
ファイガーは追い詰められていた。先程から全くセシリアに近づけないのだ。一応ビットは三機に減っている。しかしそれから減らすことはできないでいた。死角を狙ってくることに気付いて一機墜としたのはいいが、セシリアも以降は警戒して機動を読ませないように、狙いが分からないように複雑にビットを動かしてきたのだ。
「よくここまで粘りましたわね……ですが、そろそろおしまいにしましょう」
ビットが全機こちらに向かってくる。ファイガーは切り札を切る覚悟を決めた。
(もうエネルギーがない…! こうなったら、やるしかない!)
「墜ちなさい!」
「まだまだぁ!」
ビットのレーザーが眼前に迫る。ファイガーは両腕を腰の横で構えた。胸部シャッターが開く!
「ファントムリィィィィング!」
現れた光輪を盾にして突っ込む。光輪が発する強力な力場はビットのレーザーを散らし、ファイガーへのダメージを最小限にする。
「そんな!」
「ぉぉぉぉおおおおっ!」
一瞬動きを止めたセシリアに向かってファイガーは突っ込んだ。この一瞬が最後のチャンスだと分かっていたからだ。だが、向かってくるファイガーを見て、セシリアはその表情を驚愕から微笑へと変えた。ファイガーはそれに気づき離脱しようとしたが、遅かった。
「かかりましたわね」
ガコンと音がしてセシリアのスカートアーマーの突起が動いた。
「ブルー・ティアーズは……」
セシリアから離れた
「六機あってよ!」
――大爆発を起こした。
――――自立機動兵器「ブルー・ティアーズ」。操縦者の意思によって稼働するそれは、レーザー射撃型の四機と、ミサイル型の二機の計六機で構成されているのだ――――
セシリアはファイガーを包んだ黒煙を、正確にはその向こうをじっと見つめていた。試合終了の合図は出ていない。ということは、未だファイガーは健在であるということだ。セシリアはビットを周囲に待機させ、ファイガーが煙の中から飛び出してくるのをじっと待っていた。
(さあ、来なさい。出てきたところを蜂の巣にしてあげますわ)
しかしファイガーが煙の中から姿を現すことはなかった。何故なら。
「もらったぁ!」
「上!?」
突如上空からファイガーがその姿を現したからである。不意打ちの一撃はセシリアが咄嗟に盾にしたレーザーライフルを叩き斬った。セシリアはライフルの残骸をファイガーに投げつけ、自身の近接武装を呼び出そうとした。が、その動きは一手遅かった。次の瞬間には素手になったセシリアの胴にファイガーの腕が吸い込まれたていたのである。その一撃は絶対防御を発動させ、ブルー・ティアーズのエネルギーは底をついた。
『試合終了。勝者、獅子王雄』
こうして戦いは雄の勝利に終わった。
「わたくしの負けですわね。お見事でしたわ」
「いや、こっちも危なかった。一手違えば負けていたのは俺だったよ」
「ふふ、優しいんですのね」
「素直な感想だよ」
飛翔するエネルギーさえ無いセシリアのために、ファイガーは彼女を横抱きにしてピットへ向かっていた。ちなみにこの現場は観客全員に見られている。横抱き――つまりお姫様抱っこという結構恥ずかしい体勢なのだが、話に夢中になっている二人はその視線に気づくことは全然なかった。
「それよりも、煙の中からいつの間に脱出していたのですか? わたくしは見逃さないよう集中していたはずなのですけど」
「それは『ファントムカモフラージュ』のおかげだな。簡単に言えば光学迷彩でハイパーセンサーの目を潜り抜けたんだ」
「そういうことでしたのね」
試合前の敵意が嘘のように消え失せ、二人は長年の友人であるかのように言葉を交わしていた。戦いを通じてお互いを認め合った二人の間には確かな絆が芽生えていた。
セシリア側のピットにつくと、ファイガーはセシリアを降ろした。
「このまま連続で一夏と戦うのか。……大丈夫なのか?」
「心配は無用ですわ。予備のパーツもありますし、この程度で音を上げるような訓練は受けていませんもの」
「そうか。じゃあ……その、頑張ってくれ」
「あら、男同士でそっちを応援するものとばかり思っていたのですけれど」
セシリアの言葉にISを解除した雄は少し
「いや、その……友達……として応援したかったというか」
自分と対等に戦った男。それが恥ずかしがる姿が可笑しかったセシリアは思わず噴き出した。
「な、なんだよ。友達じゃいけなかったか」
「うふふ、いえ……そうではありませんわ。でも、ふふっ、あまりにも先程の戦いの時と印象と違いすぎて……あははっ」
「笑うなよ……」
そう言いながらも、雄の顔にも笑みが浮かんでいた。
「ふふふ、失礼しました。こちらこそ貴方の友達でよろしいのですか?」
「……
「ええ。よろしくお願いしますわ、雄さん」
――
(小林さんの声を脳内再生承認!)
君たちに最新情報を公開しよう!
セシリアとの戦いを制し勝利をつかんだ雄。一夏は彼の姿に心を揺さぶられる。
雄とセシリアの戦いに触発されて、かつてない気迫で自らの戦いに臨む一夏。
雄とセシリアへの対抗心、自分の姉が織斑千冬であることの誇り。
恐れずに戦え、一夏!
勇者王ガオガイガーStratos、Next「吼えろ、鋼のサイボーグ」
次回もこの作品で、ファイナルフュージョン承認!!
これが、勝利の鍵だ! 【
当たり前のことでもわざわざ口に出したり、とりあえず敵が何かしたら「なにっ!?」と驚いたりするのはガオガイガーではよくあること。