遺灰、それも混じっていた歯の形状的に人間の物だと思われるもの。そんな物を見つけてしまった上に、なんとも奇妙な音が響いたのだ。
どうにも、腑に落ちないもよもやとしたものを引きずりながらも蘭や小五郎、死体と共にいた名も知らぬ男性の元へと戻るべきだろう。竹城という自称、風水師という胡散臭さ満点の男も合流しているはずだ。彼からも聞きたい事はある。
宮口正平に、偶然というにはあまりにも顔の特徴を捉えたこけし。その中にも当然の様に入れられていた灰と骨の一部。そこに記された日付は姉である絹江へ「助けてくれ」と言葉を残した日と同じものだった。
これは限りなく支配人のクロが濃厚だが、今この場でそれを暴き立てるのは不味い様に思う。宮口絹江という依頼人は弟に対して些か過剰な反応をする。
この旅館に来るまでに幾度も、「あの子には私が居なきゃだめなの」と繰り返している。
人間が不自然な形で焼け死んだ上で、件のこけしの話などしようものなら彼女がいったいどういった行動に出るかわからないのだ。
「…あれ?」
こけしやその中身、支配人と面識があるらしい竹城についてどう話を詰めていくか考えていたコナンのは目の前の光景に首をかしげた。
戻ってきた一階の喫茶店スペースには、いくらか人が足りていなかった。
コナンと黒井より先に一階へ向かったであろう、竹城という男。
途中まで共に来た黒井。
彼女の連れの加賀知。
その三人の姿が見当たらない。まさか旅館の外に出たわけでは無いどう。どう見ても不信な人死にがあったのだ。動揺する女性陣は兎も角、もと警察官であり今でも数多の事件に巻き込まれる小五郎も居るのだ。その状況でこの旅館から出ていくなんて無理な筈だ。
「おや?どうかしたかい?」
振り返った背後、たった今コナンも降りてきた階段から白と黒の人影がこちらに向かいつつ声をかけてくる。
「加賀知さんたち…いつの間に、何時から皆のところから離れたの…?」
それは不信感を込めての問い。
コナンは終始二階にいたが、その二人が上ってきた気配は一切しなかった。それ以前にこんな状況でふらふらと歩き回っているというのも不信感を加速させる。
「ついさっきですよ。僕たちも君と同じようにお手洗いに行っただけです」
しれっと、何て事無いように黒井は答える。
「コナン君!遅かったじゃない!一人でどこいってたのよ」
心配そうな顔をした蘭が、絹江を祥子に任せ階段下でたむろする三人にかけよりながら声をかける。そんな彼女に謝罪する以前に思わず問いを投げ掛けてしまったのは仕方ないだろう。
「ねぇ!蘭姉ちゃん!加賀知さんたちってさっきまでここに居たの?ずっと?ボクも今上から降りて来たんだけど、すれ違ったりしなくて、へんだなーって」
無邪気に不思議がるように訪ねてみると、蘭はきょとん、として、何を聞いているんだ?とでもするように小首をかしげてから淀みなく答える。
「ええ。人巳さんたち『ついさっきまでずっと一緒に居た』わ」
淀みなく、答えたはずなのだがその言葉になんとも言い表せない酷く感覚的な違和感を覚える。
「それじゃぁ、ボクが戻って来るまでに、竹城さんっていうおじさんが一階に来たと思うんだけど…そのおじさんは?」
今度こそ彼女は不思議そうにして答えた。
「そんな人、来てないど…。それよりもう勝手にどっか行っちゃだめよ?」
そう言いながら手を引かれ、皆の所へ向かおうとするがコナンは慌ててしまう。
来ていない?そんな馬鹿な。確かに彼は階段を下って行った。そこを下れば確実に喫茶店のスペースからも見えるだろうに…まるで途中で消えたとでもいうのだろうか。
「…そうです。じっとしていられないのなら、僕と遊びましょうか」
馬鹿な。という思いで階段周辺をきょろきょろ振り返る幼い少年の姿を見て何を思ったのか黒井がそう話かけてくる。
そして何かをこちらへ示すように差し出す。
「ウジャボードというものです。こっくりさん、と言えば君も分かるでしょうか」
名称や、その由来なぜコインやグラスかが動くのか、という事は知ってりるが、オカルトという側面からは全く信じていない物のだった。
加賀知「他はちゃんと効き目出てるに、困ったことだ…」