控え目な照明のみの地下駐車場にて、美しい金糸の髪を持った美女は歩みを止めた。
日本人とはかけ離れたすらりとして居ながらも、女性的な体つきの彼女の足音に合わせてもう一つの規則的な足音が付いて回っていたからだ。
これが国外だったのなら、女の一人歩きに付きまとう足音、しかも薄暗い場所というだけで叫ばれたり、武道立ち技されたり、こぶしスタンガン判定を受けても仕方ないがこの日本ではその限りでもない。
だから金髪の美女もただ振り向くだけに留めた。
そして自身の足音にぴったり合わせて張り付いて来ていた人物を真正面に捉えた。
「…あなたは、誰…?」
一瞬息を飲み、呆けた様な声での誰何がやっとだった。
彼女の背後に居たのは、彼女自身。
姿形、そっくりそのままの美女がにやり、と笑いながら立って居た。違いはカラーリング。
彼女の髪は美しい金色で、瞳は澄んだ青、肌はミルクの様に白い。しかし背後を付かず離れず影の様に追っていた女は違った。
顔立ちも背格好も一緒な筈なのに、その髪は黒く、その瞳は黒く、その肌は死人の様な血色が失せた土気色に浅黒い。身にまとった服も黒く、全身が闇で塗りこめた様に黒い。
「誰?面白い事を聞くのね。見れば分かるでしょう?貴女自身よ」
そうして発せられる声も、そのトーンも彼女自身。
「『クリス・ヴィンヤード』?『シャロン・ヴィンヤード』?それとも『ベルモット』?何も変わらない。私は貴女自身」
ただ、くすくすと笑う顔は見る者を不快にさせる嘲笑で、その美貌を完全に損なっている。自分以外全て取るに足らないガラクタだと嘲る貌。
這い寄り聞くもの、見る者を不安にさせる闇その物の様な存在がそこに居る。
「良くできた変装ね。私は私よ。他の誰でもない」
ベルモットの出した結論はそれだった「千の顔を持つ魔女」。そう称される彼女も他人に成りすますなんて容易い事だ。
目の前の『黒い自分』も誰かの悪趣味な変装なのだろう。問題は三つの呼称全てを関連付けて呼びかけて来るという事。
この女…いや性別すらも不確定なこいつは何者なのか…?
「冗談だ」
突然響いた声が、低い男性のものに変わる。
「いやいやいや、そう身構えるなよ。ちょっとからかっただけじゃないですかヤダー。あと銃は止めとけ。これ、親切心。うっかり中身を見たいのかあ?」
人格その物が切り替わる様に、声質もその口調も変転していく。余りにも異様なヒトガタ。
ベルモットは最大の虚栄を張って涼しい声を取り繕って尋ねる。
「…で?おふざけだったのなら、あなたは何なの?」
自分と同じ貌を持った人影が、こくりと首を傾げてくつくつと笑いを零す。心底愉しそうに口角を上げて笑う。
「いやね、ふっふふふ!あぁ、思い出し笑いさ。気にするな。ちょっと玩具…おっと失礼。知人の一人が先程、正に愉快痛快不愉快な誤解を招いたようでねぇ!!あっははは!これは、逃す手は無いと思ったのサ!何なら誤解では無くしてやろうと思っただけだ。ああ、そうだ。『何者か』だったね。君と同じさ『千の貌』とも呼ばれる。いろいろありすぎてなぁ。この身体では無いがまぁニーア・ホーテプと名乗って居たりもする。まぁ好きに呼べばいいさ」
くつくつ。
喉の奥で猫がする様に笑う自分自身、という姿に僅かに後退する。
本来の彼女が、自身のドッペルゲンガー程度に恐れ慄く様なやわな人物ではない。
これの衝動は純然たる恐怖。生きている以上避けられない、原始的な生物としての危機感が訴える反射の様なよろめき。
あの影の如き、世界の果ての如き黒い瞳を覗き続けてはいけない。
その先に辿り着いて得られるものは崩壊だけだ。
「という訳さ。覚えて居たのなら今後ともヨロシク」
「…!!」
ぐわり、と足を動かす事も無しに接近した真っ黒な人物はベルモットの額を爪まで真っ黒な指で一つツン、と軽く小突く。
その瞬間、彼女の意識はひび割れる様にして崩れ、一瞬の眩暈の後にクリアになる。
そこには既に人影が無かった。
貌を持たぬ神の姿も無かった。
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キャラクターシート
※無双にならない程度に神話生物で探索しよう。を念頭に身内卓で遊んだ際の実際のキャラシです。一見強そうですがもっと制限が盛られて居たので結構難易度高かったです※
※もう小夜林に関してはバレバレかなって事で提示します※
※それでも最後の足掻き敵に━と()で隠している心算です※
名前:黒井 小夜林(くろい さより) 年齢:━ 性別:━ 職業:ヴィジュアル系バンドのボーカル
STR(筋力):44 DEX(俊敏):14 INT(知性):14 アイデア:70
CON(体力):17 APP(外見):12(━) POW(精神):18 幸 運:90
SIZ(体格):12(44) SAN:━ EDU(教養):12 知 識:60
H P:14(30) M P:━ ダメージボーナス:2d6
特殊な技能
・踏みつけ40 ・━━80 ・忍び歩き60 ・森の中に隠れる80
呪文
「━━ブ=ニ━━スの招来」
「黒い仔山羊の招来」
「アザトースの呪詛」
黒井「黒いだけでコナン君に誤解されそうなので、最初に弁明しておきます」
加賀知「小夜林はまだマシな方の黒い奴だけど、やたらと突かない方がいいぞ。江戸川君」