この次のシナリオ、どうしよう…と思って居たところ気づいたらいあ!いあ!しゅぶ=にぐらす!の方が要望が増えていましたのと、繋がり的にいあいあおかあさん!!した方がいいのか?と思いますので、いあいあ!して東都にお母さまをお迎えする事になりました。
生きろ。
コナンが目を覚ますと、かまど旅館が燃え上がっていた。
慌てて周囲を見渡せば、救急車に消防車、パトカー等が複数あり、自身は救急隊員と話をする蘭の膝の上に抱き上げられていた。
もっと良く辺りを見回そうとすると、後頭部に鈍い痛みが走る。
それと同時に、これまでの経緯が駆け巡る。
宮口絹江の依頼により、その弟を探してかまど旅館へやって来た。そこで、目星い証言は得られなかったが、同じように何かを探りに来た加賀知と、旅館を探索した結果に見つけたもの。
それは支配人が人を焼き殺していた記録。
そして忍び込んだ地下階で見つけた稼働中の焼却炉、その中にコナンたちと同じ日に宿泊予定だった二人組の一人が正に燃えていた。
これは証拠などと言って居られないと、通報するも、警察が到着する以前に支配人の此方の動きが見つかり、乱闘に発展した。
弟の遺留品を見つけてしまった絹江は支配人へ掴み掛かる勢いで、すっかり開き直ったた支配人は焼却炉を暴走させ証拠も、遺留品も、旅館ごと燃やそうとした。
ここでふと、違和感を覚えるが、一体何なのかが思い出せない。
もやもやと脳と頭蓋の隙間に水銀でも流された様に頭が重い…。
暴発する焼却炉、ヤクザと結託し邪魔者の処分をしていた、人間を焼くのが趣味だと高笑う支配人、建築法に違反し、スプリンクラーのない旅館、黒い影、あっと言う間に燃え広がる炎、弟の名を呼ぶ絹江の声、黒い蹄…。
反芻される光景を、異物とノイズが乱す。
到着した警官に、笑いながら全てを話す支配人…どこか、焦点の合わない目で。
再び、違和感を覚える。確かに、加賀知と旅館内を調べて回った様な気がするのに記憶にある映像に加賀知や黒井の姿がほとんど思い出せない。
「コナン君、大丈夫…?」
膝の上に抱えたコナンが、額を抑え眉を顰めるのを不安そうに蘭は見つめる。
「ちょっと…あ、ううん!大丈夫!」
心配させまいと、元気に声を上げる。それと同時に、調子が悪いなどと思われてこのまま救急車で運ばれても堪らない。
「そういえば、加賀知さんと黒井さんは?」
記憶の映像に無い二人を探すと、少し離れた場所で二人がぽつりと居るのを見つけて、蘭の腕を掻い潜り駆け寄っていく。
視覚的な記憶はない癖に、しっかりと覚えて居る加賀知の言葉、
『…ひとつ忠告しよう。小夜林は、まぁまだ問題ない部類だが、いいかい?少年。全身真っ黒な男に出会ったら全力で逃げるべきだ。関わってはいけない。今君が小夜林を怪しんだ思考手順で持ってあいつらに挑む事は危険だ。小夜林は今は無害な可愛い仔山羊なのだからね』
◇
「人巳。僕は『コレ』をアザ…ええと、お、おじい様?経由で返しに行ってきます。僕はただ仕え、奉仕するものだけど流石に他所へ行く『モノ』を横取りは不味いと思いますから」
『コレ』といい、フリルとリボンで彩られた身体、腹部の辺りを撫でる。何かの呼称を呼ぼうとし、目の前の人巳に気を使った様にぼかした呼び方を使いながらも、それで正しいのかと思案する様に目を逸らす。
「ああ、そうか。召喚は成されなかったとはいえ、あれらは神に奉げられた供物か。そのまま小夜林が持つのは不味いんだね」
その辺の事情は人巳には分からないが、奉仕種族という奴も大変なのだろう。
こけしごとヨグ=ソトースへの贄を呑み込んでしまったものだから、その贄を返しに行く必要があるのだろう。
「僕は今回の件を上の方たちに伝えて、後はその方々で死人の処理はどうとでも、うわあ!?」
この旅館を訪れた時と全く同じように、小夜林に江戸川少年が後ろからぶつかる。
「黒井お姉さん!二人とも大丈夫だった!?」
小さな子供が小夜林の腰にしがみ付く様にしながら、心配気に見上げる。
人巳が僅かに面白く無さそうな顔をした。
「…僕はお姉さんではありません。はい。問題ありません。君は人巳のお手伝いをしてくれた様ですね。ありがとうございます」
うん!と子供らしく笑うが、15、6にしては些か幼過ぎないだろうか?と思いつつも小夜林は頭を撫でる。子供にはこうするものだと、『育った家』で学習していた。
「ああ、本当に助かったよ。ところで君のお姉さんが心配そうに見て居るよ?」
やはりどこか面白く無さそうな声音の人巳が、ちょっとばかり強引にコナンを引きはがし、こちらを心配そうに見つめる毛利蘭へ向けて押し出す。
子供への嫉妬なのか、ミートシールドお疲れ様、とでも言いそうな雰囲気である。
そんな想い人の行動に、小夜林は顔面の筋肉の動きだけで微笑んでみせる。ぎこちない演技の様な笑みだが、その声音は本当に嬉し気でどこかくすぐったそうにする。
「人巳は時々子供の様に焼きもちを焼きますね。でも、僕は、それがちょっとくすぐったくて嬉しいです。なので、僕だけ別行動に成ってしまうのは残念ですが、このまま」
そこまで言った所で、何も変更されていない着信音が小夜林のフリル過多の服のどこかから鳴り響く。ごそごそとスマートフォンを抜き出して画面を確認してから通話を開始はせずに人巳の顔を見上げる。
「……すいません。すこし外しますね」
◇
加賀知に押し出されるままに蘭の元へ向かいつつも、直ぐに「おじさんの所にいってくるー!」と誤魔化し人の輪から外れたコナンは、先程黒井に付けた盗聴器が拾う音を確認した瞬間聞こえたのは着信音だった。
着信音と共に、あの蹄のブーツが立てる足音がして直ぐに止まり、黒井の声が聞こえる。
━もしもし。……はい。僕です。
━いえ。特に用件も仕事も入ってはいません。
━お母さま、ですか…。はい。分かりました。では僕はこのままそちらに向かいます。
相手方の声は一切聞こえないが、黒井の母親についての話だったようだ。
通話が終わると直ぐに、また別の通話が始まる。
━もしもし人巳ですか。僕です。申し訳ありませんが、お母さまがいらっしゃる様ですので僕はお迎えする準備の為にこのまま帰る事に成ってしまいました。
どうやら、加賀知へ連絡をしたらしく二人はこのまま離れて別行動になるらしい。
まあ、本命はなにやら今回の事件や、「今は無害になった」と言わる真っ黒な出で立ちの黒井なのだから、問題は無いだろう…。
━ああ、違いますよ。都内にある家です。…そうです。そこの事です。はい。では、道中お気をつけて。
会話的に母親はが上京でもするのだろうか?その報告だけであり先程漏れ聞いた『上の者への連絡』とはなんなのか何の情報も無いままだ。
なんの情報も無いままに、通話は終わってしまう。
例の黒ずくめの奴らとは関係なかったとしても、今回のヤクザと繋がりのあった事件を調べに来たと言っていた二人にその顛末を誰かに伝えると言う黒井は何やら良からぬ動きをしているのかも知れないと警戒し、彼女の方に盗聴器を仕掛けたのだが…。
コツコツ、と数時間の間に聞きなれたあの蹄のブーツが鳴らす足音が暫く続いたかと思うと、突然音が消える。ノイズなども入り込まずに、無音。
無音が聞こえる。
目の前に闇が広がる様な感覚、の次の瞬間に音が溢れる。フルートに近い、笛の音色。神経を焦がす様なリズムを刻む太鼓の音。恐怖に音をつけた様な音が曲の様に重なりながらも、ただの不協和音の様に捻子くれながら脳髄を侵すように響き、反射の様に装着したイヤホンを叩き落とし、飛び退り、肩で息をする。
その一連の動作を行った後に、何故、自分がこれほどまでに怯えたのかが理解できずにコナンは呆然としてしまう。
直ぐにはっと我に返った様にし、イヤホンを拾い上げるが最早何の音もしなかった。先程の様な無音が広がって居るわけではなく、本当に機械の壊れた様なざらついた音だけがしていた。
◇
かぽかぽと、蹄のままの音を立てて小走りに去っていく小柄な姿の小夜林の後ろ姿を微笑ましく眺めながら、先程からマナーモードの為、ひたすらに振動で訴えてきていたスマホを引っ張りだす。
非通知と表示されていた。
「はい。加賀知です」
どこか笑い含みの反応で人巳は応対する。
電話の向こうからは僅かに棘の有る、底冷えのする様な声が届く。
「残念だがね、以前にも言った通り、契約は満了だ。私はあそこでやれることやりつくした。もう、用はないんだ」
数語、通信機器の向こうから怒気を込められた言葉が届くのに、人巳は本格的に笑いだす。
「それは脅しの心算かい?いいさ、やって見ればいい。君たちは私をバケモノと呼んだ。見た筈だ、認識を攪乱し人心を惑わすのを。それに…我らが偉大な父は慈愛に満ちているが、大変執念深い。裏切者も、加護を与えた身内を傷つける事も許しはしない、必ず報復をもたらす」
通話の先の相手は言葉を失った様に反応が途切れる。
「……分かってくれて嬉しいよ。そじゃあ、また、私が欲する設備と資材、資金を用意できたらいつでも連絡しておくれよ」
誰も見ていない場で、人巳はにっこりと笑う。
「さようなら、ジン」
別れを最後まで聞かづに、通話は切られていた。
「おやおやこれは酷い」
ちっとも残念ではなさそうな顔をしながら、人巳はそんな事を呟いて最早興味はないとばかりにスマホを戻し帰途に付く。電話をする為に人の輪から離れて行ったのだが、そのまま姿をくらまそうとする人巳を止める者はだれもいなかった。
◇
『 』(むめいさいきしょ)。
四人組の日本のバンドグループ。
ページの上部に何処かのステージの上に、四人の人間が居り、旅館で出会ったままの姿の黒井と、加賀知。
ドラムセットの前に座った司祭の様な服装の上からぼろぼろに薄汚れた黄色いローブを纏った、体形から察するに女性で有る事しか分からない人物。椅子に座したままにギターを抱える、足の無い包帯塗れで人相の分からない男性。
そんな中々にインパクトのあるメンバーの写真が貼られている。
実際に文字で書くと「無名祭祀書」、という発音に成るらしい。…本当にバンドを組んで居たのか…という気分になる。
件のかまど旅館の事件から数日、コナンは未だに黒井と加賀知、ひいては加賀知の言っていた『全身真っ黒な男』について気にかかり己の出来る範囲でいろいろと調べ漁っていた。
まず気になった、黒井と加賀知の身元。思い返してみればあの事件の時自分は一切、警察の事情聴取に立ち会えなかった事に思い至る。
毎度毎度、つまみ出されながらも何だかんだと潜りこんで来たコナンだが今回に冠しては、一切関わる事は出来なかった。まるで、誰かの意思でもって遠ざけられた様な程にだった。
そのせいで、あの二人の名前は知っていても、年齢も分からないままだった。
バンド活動をやって居る、とは言っていたが、そのグループ名も聞いていない。
本当にあの二人が所属するグループが有るのか…?と疑問を抱き、先ずは、とそこの所を現代っ子らしくネットで検索をかける。
さて、どういったキーワードを…と考えながらも文字が打ち込まれていく。
『バンド 黒井小夜林 黒山羊』
「やぎ…?」
自分で打ち込んだ文字に疑問を抱く。
本名のまま活動しているとは限らないが、手掛かりとしては入力する。だが何故、山羊、などと入力したのだろうか?確かに蹄のブーツに真っ黒な衣装を纏って居たが…。
どうも、ここ数日思考が自分のものでは無く成ったような気分がする…。
「疲れてんのか…」
むしろこんな幼児化し、幼馴染の家に頃が見込み、行く先々で事件に巻き込まれている状況で発狂しない方が稀なのかしれないと思い直す。
小さくなってからのこれまでも思いだし、些か遠い目になっていたコナンだが、改めて検索結果の画面を見て選択したキーワードは正しかったようだ。
検索結果の上部分に数枚の画像が並ぶが、その中には間違いなく黒井の写真が提示されている。
少し下へスクロールする事で、有名な解説サイトが一番上に出て来る。
グループ名は『 』と無名状態になっており、その何も入力されていない状態を「むめいさいきしょ」と読ませるらしい。
…二人の衣装で半ば予測がついて居たが、所謂そういうジャンルらしい。
あんまりにも当然の様に、なんの偽りもなく存在した二人に、些か面食らった様な気がした。
が、気を取り直してそのページにざっと目を通していく。
悪魔や邪神崇拝、魔女のサバトをモチーフにした楽曲を作成しコアなファンがそれなりに居る、という事が把握出来たが…メンバーそれぞれの個人的な情報はほぼ記載されては居なかった。
このご時世、少しでも知名度があれば出身地や生年月日、経歴などがまとめられしまうものなのだが、このメンバーには伏せられている点が多すぎる。
実際、『工藤新一』で検索するとこの解説ページが作成されていたるするのだ。
過去に解決した事件も列挙されているのだが、ある一定の日付から更新されなくなったそれを見ると、複雑な気分になる。
ふう、とコナンは幼子らしからぬ溜息をつき、余り収穫の得られなかった画面を閉じる。
ぱっと検索サイトのホーム画面へ移り、トップ画面には様々な情報が詰め込まれている。芸能ニュース、天気予報、などなど…。
『東都児童失踪事件 手掛かり皆無』
『女優■■、一般男性と婚姻からのスピード破局』
『明日日本海側では大荒れの予想』
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ぱっと見た中で気になる文面を見つける。
『悪魔と契約の対価か?旅館支配人、取り調べ中に変死』
反射の様にそのニュースを開く。
そこには人が焼ける様を愉しんででいた、悪魔の様な所業を成した男が起こした事件と、その男の末路が綴られている。
亀山俊樹は、逮捕後から体調不良を訴えており取り調べも病室で行っていたようだがその最中、つい昨日、警官たちの前で変死を遂げた。
首元、頸動脈が崩壊し夥しい内出血による即死。
原因は不明。
未知の病気、あるいは薬物の使用が疑われる…などいう事が書かれ、因果応報、自業自得、悪魔の様な所業が招いた結果、等と締めくくられていた…。
加賀知「偉大なる我らが父、我らの主よ、我らの繁栄を再びご覧に入れましょう」
黒井「大戦に負けた後の記憶も知識も封じられたお母さまをお呼びしてもどうかと思うのです」