以前の今後について、ちろっと書かせて頂きましたが、SANc要素少な目ですが、黒いまっまと強制エンカウントが入る、SAN値を吹き飛ばす、最後の1d10/1d100の運試しをする為だけのシナリオと言っても過言ではありません。
ただ、このシナリオの真相は少々胸糞悪いものかも知れませんので、ご注意ください。
「御子さま、御子さま、お帰りなさい。おかあさんの御子さま。私達のお兄様、お姉様」
黒井小夜林は、都内某所の養護施設に『帰って』来た。
その養護施設は都心部から少し離れた場所にあり広大な敷地を持つ。しかしその敷地内の殆どは、鬱蒼とした林であり家屋はそこまで広さもない。
部屋数はそれほど無いにも関わらず、小夜林を出迎える子供たちが異様に多く、皆そろいもそろって幼い。
出向かえる大人の姿は見えない。
「ただいま戻りました」
淡々と告げ、手近に居た子供の頭を撫でる。
「御子さま、御子さま、もうすぐです。もうすぐおかあさんに会えます」
「もうすぐです」
「七日後ですよ!おかあさんが、七日後に会いに来てくれます!」
「みんなで、おかあーしゃのとこに、かえりぇるね」
きゃっきゃっと嬉し気な声を上げる筈なのに、子供たちのその目に生気は無く、良く見れば怪我をしている子供が多い。
怪我、というには余りにも生々しい裂傷や打撲痕、異様に痩せた子供など。
本来なら、小さな子のそんな有様に普通の完成ならば眉を寄せ、その不憫さに目を背け、なんなら涙を流し、こんな状況を作った者に憤りを覚えるかもしれないが、小夜林は人の理解の外の生き物だ。
そういうものだ、としか認識できない。
「小夜林さん、お帰りなさい」
幼い子供が多い中に、一人だけ、辛うじて二十歳間近の女性が声を掛ける。
「ただいま戻りました。珪。七日後、なのですか」
珪、と呼ばれた女性は古傷がおおく残る顔を綻ばせて頷く。足が悪いのか、直立するだけでも横へ傾いてしまうが杖等をついて居る様子もない。
「はい。七日後です。いよいよ、おかあさんに会えます。それまでに、もっともっと寂しい子供達を集めましょう。皆でおかあさんを迎えましょう。小夜林さん、あなたが儀式の要です。よろしくお願いしますね」
分りました、とだけ小夜林は頷いた。
周囲の子供たちは、尚も嬉しそうにはしゃいだ声をあげていた。
◇
現在、灰原哀と名乗る少女は夕暮れの小学校を一人後にする。普段は、なんやかやと登下校を秘密の共有者である江戸川コナンや少年探偵団の面々と行うのだが、今日は様々な要因が重なり一人での下校だった。
ほんの少し前、組織から逃げ出したばかりの頃は、いくら姿が変わっていたとしても表に出る事に恐怖していた。
それが今は呑気にランドセルなどを背負い、夕暮れの道を一人で歩んでいる。
彼のおかげなのだろう、と心中でのみ小さく微笑む。
「灰原哀、ちゃん…?」
知らない声に、呼び止められる。
振り返り見上げた顔はやはり知らない顔だ。痩せて、髪も肌も手入れのされていないぼろぼろで着た物も身動ぎする度に嫌な臭いがする程に薄汚れている。
そんな有様の中年女性。
「……」
名を呼ばれても、見ず知らずの見るからに怪しい風体の人物に返事をして、肯定を示したやる義理もない。
灰原はポケットの中に手を入れ、110を押し、直ぐにでも発信できる様に身構える。
「お父さんや、お母さんは居るの?」
唐突にそんな事を聞いてくる。
もちろん、『灰原哀』に両親は居ない。実在しない子供だ。
…宮野志保にも、もう両親も、姉も居ないが。
「寂しい思いはして居ない?ご飯はちゃんと食べてる、おかあさんに会いたくなる日はない?」
頬のこけた、まるで疫病神の様な女が矢継ぎ早に問いかけてくる。
「可哀想に、可哀想に…こんなに小さい子が…」
にじり寄る様に歩み寄る女に合わせて、後退する。
緋色の夕日の光がどこか淀んだ双眸に不吉な色が差し込んで、不気味さがます。
「おばちゃんとおいで、大丈夫、何も寂しい事がなくなるのよ、おばちゃんと一緒におかあさんに会いに行こう?おかあさんは全てを受け入れて愛してくれるわ」
なにも無い空間をまさぐる様に伸ばした女の両手が灰原の手を握ろうとするのを、ざっぱりと振り払う。
「何かの宗教勧誘かしら?そういうのに興味はないから」
それだけを言い捨てて、灰原哀、という年の割に酷く大人びて、どこか冷えた印象の『児童』は早足にその場を後にした。
◇
江戸川コナンは二度目の小学生生活の中では珍しく、一人で下校していた。
気になって居た新人作家の推理小説の発売日だったので、いつもの少年探偵団の下校の誘いも断り放課後本屋に直行して居た。
しかし問題が一つ。
この小学生の身体、あまり重い物が持てないのだ。
ハードカバーの分厚い推理小説。気になる物を全て買って帰るには、子供の細腕には重労働過ぎるのだ。その為、脳内議決を行い、熟考を重ね、持ち帰れるぎりぎりを選びに選び抜いた。
熟考するあまり、帰路に就く頃にはすっかり夕暮れになって居た。
重い書籍を抱えやっとのことで、居候先の毛利探偵事務所に戻って来ると、事務所の前、正確に言えば下階の喫茶ポアロの真ん前である。そこに業務妨害レベルで、来店者の邪魔に成りそうな立ち位置居り、上階の探偵事務所を見上げている人物が居た。
「おねーさん、探偵事務所に用事なの?」
思わずそう、声を掛けていた。
酷くやつれた、生気のない女だった。
年のころは20代後半位か、着る物もくたびれており、どこか追い詰められたような顔をしていたため、思わず声を掛けていた。
「ひっ…」
声を掛けられた女は、小さな子供に何故それ程まで、という程に怯えた声を上げる。
「…どうしたの?」
「ええ、ええ。なんでもないわ、大丈夫、大丈夫よ。…ああ、僕、ここの子なの?」
「う、うん…上の探偵事務所にお世話になってるんだ…」
そう、と言いながら女は未だに怯えた、挙動不審の儘にしながらも肩にかけたトートバッグから何らかの紙束を引き出しぱらぱらと捲る。
直ぐに顔を上げ、コナンの顔を覗き込む。
「江戸川コナン君?」
こくり、と頷くだけ頷く。
何とは無くに視界に入ったトートバックには木と花で編まれた揺りかごを絵本の様なタッチで描いたロゴに『黒のゆりかご』と文字が入って居た。企業、法人、何かは分からないが組織間で作られたものなのだろう。
「…ずっと探偵さんの所に預けられてるの?」
まあ、世間的にはそういう事になるだろう、と些か気まずい気分に成りながら肯定する。
「お母さんは迎えに来ないの?寂しくないの?酷いと思わないの?辛くないの?」
怯え、おどおどとしていた女が、震える声の儘に矢継ぎ早に言葉を吐き出しながらずいずいと迫って来る。その異様な様子に気おされ、半歩引いた所で、
「あの、うちの子に何か御用ですか?」
学校の帰りにそのまま買い物を済ませて来たのか、食品の詰まった袋を下げた蘭が些か不審そうな顔でコナンの背後に立って居た。
目の前の女のあからさまな挙動不審っぷりに、無意識にコナンの手を握って居た。
「……毛利探偵の娘さん…、高校生…確か、離婚された…妃弁護士の……」
「お父さんとお母さんは別居中なだけです!」
思わずの様に、反射で反論した蘭の声に女は数拍止まった後に、そそくさと何も言わずに人込みに消えて行った。
「…なあに、今の人…」
「さあ…?」
コナンとしてもそれしか言いようが無かったが、取り合えず、怪しい人間で有る事は理解出来た。
クトゥルフのNPCって結構な割合で死んだり、黒幕だったりしますよね。
黒井と加賀知以外の名前のある原作キャラ以外は大抵死ぬか発狂するので覚えなくても問題ありません。はい。