名探偵と探索者でいあ!いあ!   作:犬(ゆきいろ)

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二本目のシナリオとは、直接関係無いような、今回のシナリオにも関係して居る様な…何かです。
NPC量産回とも言う。
時系列は、本当に「彼らが母を求めている間』だったり少し未来だったり、少し過去だったりいろいろです。
伏線盛り合わせ回とも。
基本的に、シナリオ毎に事件を解決していきますが、閑話は全体を通しての何か、ですかね…?

最後に、NPCは良く死ぬしよく発狂します。




閑話 彼らが母を求めている間に…

ある中規模な製薬会社が所持する一つの研究所のエントランスで、ふんわりとした癖っ毛に同じくふんわりとしいたフェミニンな白のワンピース姿の女が、びーびーと鳴り響く、来客用と表示されたゲートにあわあわと左右を見回していた。

 

「あ、あれ?あれれ?すいま、すいません!?あれ?何でかな!?」

 

あわあわと慌てる彼女の豊満な胸がそれに合わせて揺れる。エントランスを通過する社員らしき男性達はその様子にごくりと唾をのみ、哀れなまでに慌てふためく彼女を先程そちらのゲートへ案内した受付嬢も思わず見つめてしまう。

まさに、(おっぱい)SIZ18。

 

「申し訳ございません。こちらの施設は弊社の製品開発の場と成っておりますので、社外秘のデータが多数保管されて居る為通信機器や撮影機材の持ち込みは一切禁止されております。お客様を疑う様で失礼かとは思いますが、機械類は全て此方でお預かりいたします」

 

「あ、あ、そうなんですね。すいません。アポを下さった方は何も伝えて下さらなくて、うう、すいませんっ」

 

最早涙目である。

 

「それは申し訳ございません…。では改めて、スマートフォンやPCなど有りましたら此方へお預けください。腕時計や装身具に関しましてはゲートを通過されてからのお返しと成ります」

 

「は、はい!すいません!」

 

やはり胸を揺らしながら、ふわっとした女性は小さなバッグを丸ごと受付嬢に渡し、再びゲートを潜ろうとするが…びーびーとまた警報が 。

 

「あ、あれ!?何でだろう!?あ、これのせいですかね!」

 

首に掛け…というよりも最早胸の上に乗っている状態のドッグタグを摘まみ、外すが受付嬢は困った顔をする。

 

「そこまで小さく薄い物には反応しない筈なのですが…」

 

その言葉の通りに、やはり金属探知機は再び鳴った。

 

 

 

ある中規模な製薬会社は、とある『組織』のフロント企業として機能して居た。

勿論、その会社に勤める殆どの人間はそんな事知る由もなくごくごく真っ当に仕事をこなしている。隠れ蓑として機能して居るのだから、それも当然の事だ。

ごく普通の企業として存在しているが、経営部は完全に『組織』のものであり会社の利益よりも『組織』にとって有益な方針を選んでいる。

ある程度纏った金の動き、研究機材や研究資材の大量購入にあたり、こういった企業が有ると何かと便利なのだ。そして今回の様に、秘密の取引の場においても、有用性を発揮する。

社内に『組織』の者が普通に働いており、その人物の名でアポイントを取り安全な対談の場を得る。

 

今回もその類だったのだが…来るはずの人物がなかなか訪れず、ごく一般的な会社の応接室に似つかわしくない黒ずくめの男二人、ジンとウォッカは徐々にイラつきを増していた。

 

「ça fait longtemps!Monsieur!」

 

約束の時間を過ぎても、現れない待ち人に苛立ちを募らせていたウォッカは此方へ向かう足音と、扉を開く音に反応し相手を確かめずに文句の一つでも浴びせかけようと勢い込んで立ち上がったが、それ以上の勢いで持って約束をしていた女が飛び込んで来る。

怒気を露わにした大柄の男の気迫にも物怖じせずに、親し気な挨拶の言葉を発し左右と交互に頬を合わせリップ音を鳴らす。

因みに大きな胸も、頬を合わせるの順じ押し付けれられている。

そのあまりの勢いに怒気を込めてぶつける筈だった罵声はどこかへ飛んで行った。

 

「ジンもお久しぶりです!また会えて嬉しい!私、貴方達とお仕事させてもらえるのとても好きです。連絡を頂いてから楽しみで、」

 

「その前に言う事が有んだろうが!兄貴を何分待たせたと思ってんだ!」

 

まるで少女の様にはしゃぐ女を、漸く勢いを取り戻したウォッカが一括する、と華やいでいた女の顔が一瞬して曇る。

 

「わ、あ…!そうでした!ご、ごめんない…!わ、わた私ったらうっかりエントランスで止められてしまって…あのあの、ご迷惑をおかけしてしまって」

 

「いいからとっとと座れ。誰のせいで時間が押してると思ってんだ?」

 

慌てふためき謝罪する女に最後まで言わせず、ジンが向かいのソファ、先程まではウォッカの座って居た場所を顎でしゃくれば、ぴゃっと、驚いた兎の様に着席する。

 

「あ、あの、お話の前にこれだけちょっと出させてください」

 

よいしょ、とおもむろに白いワンピースの胸元に手を突っ込み、その谷間から小さな銀色の拳銃を取り出し目の前のローテーブルに乗せる。

 

「遅、遅れちゃってたので、慌てて走ってきたので、その、汗を掻いちゃって…もし部品が錆びたりしたら、可哀想なので…」

 

ゆるい癖っ毛の髪を恥ずかし気に顔から払いながら女は赤面する。

 

この女は完全に組織の人間という訳ではない。むしろ、こんな妙なモノを抱え込みたくない。というのが強い。

名前はジル・フールを自称している。元軍人という自己申告で、現在は『掃除屋』として必要になれば呼び出す、使いっ走りの様なものであり、裏切りの心配のない、使い勝手のいい道具だ。

 

さらに、この女は狂人だ。

 

伝手を辿った先で、この自身を『愚か者』と名乗る女を見つけた際に、接触した奴はその柔らかな、虫も殺せ無さそうな柔らかくおどおどとした女に聞いたいう「今まで何人殺した?」と問いに、

 

「私は誰一人殺していません。ただ、脳という素晴らしい装置を腐るだけの汚らしい肉体から救ってあげてるだけです」

 

そう微笑んだという。また、何処にでも銃を持ち込む為に、自ら左腕を切り落とし金属製の義手を着け…と噂されるがこのフールは『肉体』を蔑視している。

機械を信奉していると言っても過言ではない。己の肉体さえ腐肉として厭うた可能性もある。

他にも、気味の悪い噂は多々聞く。フールの近くで虫の羽音が常に聞こえるやら、喋る生首を抱えていたやら…。まったく馬鹿げた話である。

だがそんなもの、関係無いほどに使い勝手がいい。『掃除屋』というが、彼女は始末屋としての側面を持つ。なんの痕跡もなく、人間を消して見せる。

しかも報酬が、その標的たる人間で済む。

 

消えても問題のない人間を与えれば、それで満足している。組織の指示に従っていればフールは望むモノが手に入る。離反する要素がない。

 

それに、今回の標的は『バケモノ』だ。

 

「…てえ訳だ。あいつの知識を外に持ち出される位なら、消しちまった方がいいだろ」

 

事のあらましなど話しても、この人間の脳みそを集める事にご執心の恋する乙女の如き狂人には関係のない話だろう。

単純な話。今回のターゲットはシェリーが放棄した研究を一時的に継続させていた『バケモノ』だ。

 

この狂人は、超常的『バケモノ』の姿を見てどう反応するのかと観察する様に見つめながら監視カメラの映像より抜き出した画像を投げて寄越す。

 

そこには映って居るはずだ。

人間の様に二足歩行をし、人間と変わらない背丈を持つ鱗に覆われた蜥蜴の様な生物が。

 

「……蛇人間…?」

 

その画像をぽかん、として見つめていたフールが、まるで糖蜜漬けの菫でも口に含んだ幼女の様に、心底嬉し気に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱちり、と明りを灯した瞬間背中にぞわり、と嫌な感覚が駆け抜ける。

その感覚には覚えが有った。

もちろん、組織にも知られていない超個人的に借りている一室に、何者かの気配があるという事もだが、この感覚は違うと知って居る。知ってしまっている。

 

いつか、何時だったか、暗い地下駐車場に這い寄った黒い影、黒い自分自身。

不可解な経験と本能的な恐怖心…。

 

ベルモットは反射の様に振り向いた。

振り向いたそこに居たのは、つい先ほどまで顔を合わせていた筈の、

 

「ジン…じゃないわよね?」

 

黒一色のその姿、ただしそれは銀色であった筈の髪まで闇色に塗り込められていた。

 

「来ちゃった」

 

まるで、語尾にハートマークでもつきそうなトーンで血色の悪い頬を自身の手で挟み込んで小首を傾げるようなぶりっ子ポーズ付である。

そんなもの、絶対に当人がやらない。もしやったのなら、正気を疑う。それか度重なる面倒ごとにとうとう気でも振れたかと憐みの目を向けて、暫くの休養を進める。

しかしその人をおちょくった様な言動、これは、確かに見たあの時の…。

 

「……ニーアね?」

 

「ふははは!正解!!よくまあ覚えて居たものだ!!POW対抗ロール成功、おめでとう!神話技能を2%程進呈してやってもいい!」

 

全く同じ声でありながら、全くもっての別物。

ここまでそっくりに似せておきながら、わざとその完成度を崩す態度。何がしたいのか、何を考えているのか分からない。

喋る内容さえも意味の分からない、トチ狂ったものである。正気を持たない者が持つ強大な力程恐ろしいものはない。

 

「何が目的なの…?」

 

自身の背後に現れ、現在は真正面に陣取るニーア。つまるところ、彼女が通った入り口は現在ニーアが塞いで居る。目的の分からない狂人のからの離脱方法を模索しながら訪ねる。

 

「いや?別に?ただ君がとっても頑張っているみたいだから、ちょっと手助けでもしてやろうかとね。俺は頑張って生きている人間がだぁあい好きなんだ」

 

にやにやと、厭らしい笑みで嗤う。

それはどう見ても『頑張る人間を手助けしたい』などと言うものではない。どちらかと言えば、人の破滅を望む悪魔にしか見えない。

 

「あなたはそんな親切な人には見えないけれど?」

 

口角が引きつきそうになるのを、嘲笑の形でもって誤魔化す。

 

「何を言ってるんだか!俺はとても親切だぜ?なにせ、俺は人間と対話してやってる!まあ、出来れば人間どもが狂気と混乱に陥って嘆きながら破滅していく様を見たいなって願望はあるかな」

 

胡散臭いウィンクを飛ばして来る。それをジンの顔でやるは止めて欲しい。不気味過ぎて仕方ない。

だがやはり、ニーアは悪魔の類の様で、ベルモットを唆しに来た様だ。

そこで、彼女は気づく。

 

ニーアは決して狂人ではない。

闇の様な双眸は、確かに理知を灯している。叡智を持ちながら、どうなるかを理解して居ながら、全てが台無しになる道を敢えて選び、言葉の通りに全てを絶望に叩き落そうと画策して愉しそうににやにやと嗤う顔。

 

「ん?ああ、言っとくが、俺は本当に君の手助けをしてやる気だぜ?君が救われる事でより愉しい展開が待って居る…ほら、なんだ。君の宝物なんだろ?『Silver Bullet』と『Angeel』だったかな?」

 

びくり、と彼女の肩が震える。

 

ここに現れた時点でこのニーアという人物が尋常ではない者だというのは察して居るが、一体コレは何処まで知って居るのだろうかと怖気を感じる。

何もかもを見通して居る様な…。

 

「おお?興味を持ったようだなあ!よしよし、いいぞいいぞ。それじゃあ少しお話しようか」

 

「……分かったわ。あなたの話を聞かせて。…でもその変装は止めてくれない?そんなテンションのジンは見ていて鳥肌がたつの。それか完璧にやりきって」

 

「えぇ~黒いのはぁ俺のポリシーなんだぞぉう」

 

眉を顰めきゃっとばかりに肩を竦める、黒髪のジンに鳥肌が立った。

 

 

 

 

 

 

「よいしょー」

 

すたん、とわざとらしい音を立てて駅の構内から飛び出し着地したのは日本人離れした顔立ちの少女。

それもその筈で、日本人ではない。強い日差しに、直ぐに赤くなってしまいそうな白い肌に雨上がりの空の様な清々しい青の瞳。幼げな顔立ちに、背格好でありおまけに胸部も残念な絶壁であるがその見た目よりも歳は上である。

もうすぐで春と言うにはまだ肌寒いが、些か季節外れなダッフルコートの黄色が殊更に幼い印象を与えている。キャラメル色のショートブーツもヒールが無く、幼い印象しか与えない。

子供じみた黄色のダッフルコートとキャラメル色のショートブーツの中間色である、高い位置で一つに結んだ髪がスッキプする様に動く彼女の動きで揺れ、子犬の尻尾の様だった。

 

「えっと…クロ…の実家…地図…でないヨ…」

 

ひょっこひょこと意気揚々とバスの時刻表を見に来た彼女だが、多量の数字と行先の羅列と己の持ったスマートフォンの画面を交互に見て、眉をハの字に顰めて悲しそうな表情をする。

そうして周囲をきょろきょろとするが、まさに、外国人、と言った様な容姿の彼女に英語で話しかけられたらと、外国語アレルギーを拗らせた人々が視線を逸らし避けて行く。

 

そんな中、物怖じなく金色の髪を揺らす少女に近づく影がある。

イケメンしか許されない、或いは極度のお洒落音痴が故の選択か、全身黒一色のコーディネートに銀色の長髪。すらっとした長身であり、こちらも日本人離れした外見である。冷徹な表情にこちらの方は、外見を差し引いても人が裂けて通るだろう。

が、先程からきょろきょろしている少女の知人かと言えば、違う様だ。

じっと、覗き込まれる様にした少女も、不思議そうにその男の顔を見返している。

 

「……?……!!出たナ!この鬼!悪魔!鬼畜ゲドー!邪神!!えんがちょえんがちょ!!」

 

しばし、見知らぬ男に凝視され小首を傾げていた彼女は、その黒い真影の様な瞳を覗き込みはっとした様に飛び退り、イントネーションの妙な罵倒を浴びせかける。ついでに手刀をチョップよろしく振り回している。

 

「うん。まあ、邪神なんだけどね?いやー…やっぱり馬鹿って最強だね?アホって無敵だね?流石脳味噌筋肉族だね?SAN値を全部溶かした狂人は出がらしの様で何の旨味も魅力もないね?なんでお前そんなに元気なの?馬鹿なの?死ぬの?是非周囲に混乱と破滅を振りまいた上で死んでくれ~」

 

少女は長身の男の形をしたモノに額ををぽすぽすと押さえられながら、理の内側に生きているものとっては分からない事を言われながら金茶の髪を揺らしながらパタパタと手を振る。

 

「なんだオマエ、いつも真っ黒なくせしテ今日は銀髪…くっそ!一瞬間違えるところだったですヨ!」

 

「ああ、これ?気にすんなよ。ちょっとリアリティに凝って見ただけだ。……安心しろ?中身は皆大好きな俺だからなっ」

 

「うごー!!滅せヨー!!」

 

ぶんぶんと腕を振り回すが、リーチが余りにも違い過ぎて当りはせず、大型犬に挑みかかる小さい子犬しか見えない状態を作り出していた。

 

「よーし。そこまで言うなら張り切って今、ここで、人間体をばーんてしちゅぞ~」

 

「やめテ!オマエ本当に嫌い!!あっちいけーもうヤダ嫌い!!」

 

きゃんきゃんと吠えるように抵抗する少女の様子ににやにやしながら、ぽすぽすと額を叩き続ける。

 

「うん。まあ、今回は君にちょっかいを掛けに来た訳ではないんだよねえ。君のお友達の『クロちゃん』?彼女がアブナイお姉さんに狙われてる感じがするからさあ、君に伝えに来てあげたんだよ。ほら、何だかんだ、君はいっぱい俺を愉しませてくれた訳だからねえ」

 

その言葉に、むすぅ…とする少女を置いて、長身の男は手をひらひらと振りながら去っていく。

 

もちろん、少女はその黒い影を追う事はしなかった。

そして、怪しげな男と言い合いをする彼女を見つめる、眼鏡の少年に気づいては居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

彼女の意識は唐突に浮上した。

 

いや、そんな訳はない。彼女の意識が浮上することなんて、二度とない筈だった。

何故なら彼女の命は失われた。彼女の魂は既に消滅した。

 

その筈だった。

 

宮野明美は、確かに死んだはずだった。

 

だが現に、彼女の意識は浮上し、目を開き、飛び起きるに至った。

彼女はしっかりと覚えて居た。小さな探偵へ残した今際の言葉と、握った小さな手を。自身の死の瞬間をしっかりと認識していた筈なのに、今こうして確りと自己を認識出来ている事に、理解が追い付かなくなり、無意味な瞬きを繰り返す。

 

おかしな話だが、自分が生きている、という事象に恐怖が込み上げてくる。

 

不安を紛らわせる為に、彷徨わせた視線が自身が何も着ていない事に気づき、咄嗟に自身の身体を抱いてしゃがみ込む。

周囲に何か脅威は無いかと、全裸で目覚めた若く美しい女性にしては落ち着いた様子で、辺りも見渡す。

 

「ここは…どこ…?私…なんで…」

 

もっともな疑問を口に出す。

その言葉に反応する者は無く、辺りはしん…としていた。

 

その静まり返った場所は、どうやら礼拝堂の様な場所らしいが、教会にお決まりの十字架もキリスト像もない。代わりに大きなタペストリーが掲げられている。

そこには見たことの無い校章が画かれていた。

 

クエスチョンマークを三つ、放射状に連ねた様な形状の印。

 

記憶を探って見ても、全く見覚えの無い物であった。

良く見れば、彼女が横たわっていた足元には所謂魔法陣の様な物が描かれており、何か、白い粉が少量零れ落ちていた。

何やら、嫌な予感がした。

予感、或いは、この礼拝堂を埋める不穏な気配。逃げ出すにも、全裸では心もとないともう一度周囲を見渡す。

礼拝堂内は薄暗く、1Mも離れてしまえば物の形は分かり辛くなってしまう。

それでも、礼拝堂内に設えられたベンチの一つにかけられた黄色いローブを見つける事は出来た。何も無いよりはマシだと思いそれを拝借し、身にまとう。

 

一体ここは何処で、何が起きたのか分からない状況に精神がちりちりと音を立てるのを感じながら、辺りを更に良く探ろうと目を凝らし、一歩を踏み出した所で、彼女は気づいてしまった。

 

「ひっ…!!い、いや…」

 

そうして、何とか勇気を振り絞って動かしていた体の力が抜け、引き付けの様な悲鳴を上げて腰を抜かしてしまう。

 

「いやあああああああぁああぁああ!!」

 

今まで堪えていた不安や恐怖が、一気に発露し、それは悲鳴という形でもって彼女から発散される。

 

彼女は見てしまったのだ。丁度彼女が目覚めたのと対局の壁際に吊るされた物。

大人に子供、男に女、統一性のない数人の人間が天井からつるされていた。それのどれもが体の一部が持ち去られ、ぶらりと静かに吊られている。

床には原型もなく解体された人間だったらしき物が乱雑に置かれている。

でろリと臓器を溢れさせたもの、綺麗に頭蓋骨縦に割られ断面を晒す首。もとの部位など分からない程にぐちゃぐちゃとミインチにされた肉の山。

または、人間に近しいが妙に捻じれて歪んだ皮を持たない、筋繊維が露出した異形の肉塊がごろごろと横たわる。

 

天井から吊り下げられた人間たちには、大き目の白い紙に文字が書かれ貼り付けられている。

嫌らしい事に、その紙は噴出しの形に切り取られまるで死体たちが語りかけて来るように見えた。しかも、わざわざその吊り下げられた人間に合わせて口調まで変えられている。

 

『おはよう、幸運な誰ともしれないおねえちゃん!』

 

『貴女の身体は私達の身体を奪って蘇生されたのよ』

 

『これだけの人間があんた一人の為に死んだんだ。もう一度眠りたいなんて言わないよな?』

 

『君を生き返らせた人は、少し席を外して居るんだ。寂しいかもしれないが僕たちと待って居て欲しい』

 

『ね?ね?ね?他人の死の上で得た生はどう?足元の彼らも皆、貴方の犠牲』

 

『でも誇ってくれ。君が唯一の成功例だ』

 

 

 

 




ニーア・ホーテプ「マッチポンプ設置が愉しい」

加賀知「某組織、スパイと神話生物に入り込まれ過ぎで可哀想になってきたねえ」

正直原作キャラじゃないNPCは、私や身内のロストキャラなのであっさり殺すしすでに発狂してる。
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