平日の、通勤通学ラッシュ地獄過ぎてしばしたった頃、と言いつつも都心部に有る駅なので人気が引くことはないその駅前で妙な二人組の子供が居た。
小学校低学年程度の少年と、見るからに外国人といった顔立ちとカラーリングの少女が缶コーヒーを啜りながら二人並んでベンチに腰掛けている。
最近小さな子供の誘拐事件が横行するなかで、この取り合わせはいささか妙で、物騒でもある。
「それで、えと、エドガー…エロ。エロか…エロくん!!」
「コナンでいいよ、もう」
コナンは現在、平日中の正午も前に何故か金髪碧眼の微妙に片言な少女を相手にするに至ったかと言うと、今朝に起きた二つの事象に起因する。
一つ目は、今朝に帝丹小学校からの連絡であり、「本日臨時休校」と言った旨のものでもう一つはその連絡を受けて直ぐにコナンとして所持して居るものではなく、工藤新一名義の携帯へ阿笠博士よりのもの。
曰、『灰原哀が姿を消した』というもの。
昨日誘拐についての話をされ…と言うが、見た目や身体能力はともかく小さな子供でもなく、ましてやどこぞの探偵とは違い危ない事に自ら首を突っ込む様な真似はしない。
それに、夜が明けるまで博士は彼女が居なくなっている事に気づかなかったというのだ。
素性が素性なだけに、気軽に警察に連絡する事もできずに、まさか何か組織に関係することで有ったら…と考えた結果コナンへ連絡を寄越して来たのだ。
もちろん、そんな話を聞いてコナンは即座に阿笠邸へ向かった。
誘拐事件のせいでの臨時休校ではある為、蘭や小五郎にはいい顔をされなかったがずっと屋内で遊ぶし、帰りは博士に送って貰うから!と言いくるめてやって来たのだ。
酷く狼狽えた様子の博士を何とか宥めつつ、詳しい状況を聞くも朝まで気づかなったという通りに目立った痕跡を見つける事は無かった。
争った形跡も無しに、まるで自発的に消えた様に、ただただ静かに行方を眩ませた。
見つけたものと言えば、地下の研究室の机に、全てを聞き直した様に広げられたままに成っている彼女の『母親の声』が記録されているあのテープ。
━おかあさん
探偵事務所の前で会った、妙な女が脳内に蘇る。彼女が口にした『お母さん』という言葉が嫌に脳にこびりついていた。
「なあ、博士…あいつ不審者に声を掛けられたとか言って無かったか?」
彼女の性質を考えれば、もし不審者に声をかけられていたとしても心配を掛けない様にと報告していない可能性の方が高い。
「…いや…全くなかった筈じゃが…」
少し思い返す様にするが、やはりそんな話は出て居なかった様だ。
『母』というワードが妙に引っ掛かった。
今東都で横行している誘拐事件と、灰原の失踪を繋ぐ具体的な物は無いが嫌に、そのワードが重なり探偵としての経験がそこに何かあると告げるのだ。
「黒のゆりかご…」
ぽそりと、その言葉を呟く。
あの女の下げたトートバックに示されたロゴと、その文字。弾かれた様にスマホを引っ張り出し検索をする。
「なんじゃ?どうかしたのか?」
直ぐに検索結果が表示され、一番上にとあるホームページが示され、その下には纏め記事の様な物が数件。
一番上のホームページを開く。
【黒のゆりかご園
20■■年■月を持ちまして閉園致しました】
トップページにその文字だけが表示され、他のページ飛ぶ場所もなくたったそれだけのページでありどこに有ったのかも一体何の施設だったかも、閉園理由も何も明記されていない。
そこに含まれる情報は約2年前に閉鎖されているという事だ。
検索結果画面に戻り、その下に続く纏め記事にざっと目を通してみるが全てネット上のゴシップやホラーチックな噂話、そんな物の寄せ集めであり目星い情報を直ぐに拾い上げる事は困難だった。
「博士。ちょっと『黒のゆりかご園』について調べてくれねぇか?」
「黒のゆりかご園、と言うのが哀くんが居なくなったことに事に関係しておるのか?」
「いや…確証はねーけど…たぶん…」
何故か、殆ど公開されていない誘拐されたという子供達の情報も有ればこの件に関係して居るのかも判断も付くのだろうが…如何せん情報が無さ過ぎるのだ。
「俺も調べて来る」
警察に相談出来ない以上、自身で見つけ出すしかない。
目的不明のままに誘拐された子供たちの安否も気がかりであり、出来る事ならこちらも解決すべきだろう。
そう決心も新たにしたところで、出来れば目立たない様にと名を伏せ続けていた新一として知り合いの警察官へ此度の誘拐事件の情報提供を頼み、先ずは誘拐されたとされる子供について調べてみようとうごきだした。
提供された情報から、何か誘拐された子供に共通点は見当たらず…何故か警察の持つ情報も曖昧な部分が多いせいで事件の輪郭がさっぱりつかめないコナンは現場に行ってみようとまずは駅へ向かった所でその金髪の少女と出会ったのだ。
ただ、彼女に目を止めたのは彼女自身の外見ではなく何か、まるで邪る様に何事かを話す男に見覚えが有ったからだった。
長身に、銀色の長い髪、全身黒ずくめの衣装。忘れるわけも無く、直ぐに気づいた。
「ジン…!?」
表情までは見えないが、少女の方はぷりぷりと起こった様にして居るがじゃれ合う様な、親し気な印象を受けるその様子に呆気に取られる。
数語会話し、少女を置いてジンは去っていく。
ふと我に返った様にはっとし、慌てて中指を立てて唾を吐き、口汚く罵り出しそうな勢いの金髪の少女へと駆け寄る。
走って行った訳では無いの既にジンの姿は掻き消える様に見えなく成っていた。
「お姉さん!!」
「どうわあ!?」
勢いよく駆け寄り、少女の腰にタックルする様な勢いで走り込んで来たコナンに少女は妙な悲鳴を上げた。
「さっきの人と知り合いなの!?」
「んな訳ねーデス!!誰が有んなくその様に害悪しか産まないヤツと知りあいなんかしてやらナイよー!」
見知らぬ少年に急に意味の分からない質問をされても、反射の様に否定する少女にコナンも少し冷静になる。
「で、でもさっき仲良さそうにしてなかった…?それに害悪しか産まない奴、なんて言うんだから、どんな人か知ってるんじゃないの…?」
「良くなーい!!ぜんっぜん良くない!!あんな奴知らないシ、アレは今日初めて会ったし、人をコバカにしやがっテ!!というか君はダレ?アレとどんな関係なの…まさかアレの落とし子的なあれ…!?」
「ンなわけねぇだろ!?」
ばっと距離をとり、所謂荒ぶる鷹のポーズで威嚇する少女のとんでも予測に思わずコナンもばっと突っ込みを入れる。
「…じゃあ、なんでアレが気に成るの?アレに関わってもロクな目に逢わないヨ…」
やっぱり何か知ってるんじゃねーか…という物言いだが、明らかな敵意と警戒心が見え少なくとも組織の人間ではない様に思えた。
…実際に物凄く嫌そうな顔して居る。
「……まあイイヨ。ところできみ、黒のゆりかご園ってトコは何行のバスに乗ればいいか知らない?」
「それ!ボクも行きたいんだ!お姉さん何処に有るか知ってるの?」
そう聞いた途端に、今まで眉間に皺を寄せて「おのれ!!」とでも言う様な顔をしていた少女が悲しそうな顔をする。
「ぐぐればデルと思ったんだけど、出なかった…」
すっかり落ち込んでしまった少女の言葉にコナンもがっかりするも、この人の持つ情報も加えれば少しでも役立つかも知れない。
彼女も『黒のゆりかご園』を目指しているらし上に、先程の様子も気になって仕方がない。一緒に行動すれば探りを入れるチャンスもあるだろう。
「じゃあボクと一緒に行き方を探さない?二人で探せばすぐだよ!」
明らかに自身の年齢の半分以下の幼児と協力した所で、どうにかなるかと言えば、無理だと思うのが普通だろうに、金髪の少女は少々あたまの方の数値が低かったのかその申し出に喜んで応じたのだった。
そうして冒頭に戻るの。
「コナン…コナン…うん!!言いやすいね!!私はリート・神崎ダヨー。よろしくね」
甘い加糖のコーヒーを飲んで元気を取り戻したリートがニコニコと自己紹介をする。
「リートお姉さんってどこの人なの?」
「出身はイギリスだよー。今は日本に住んでるねーDNA的には1/4日本人だヨ」
聞いて居ない情報までぼろぼろと落として来る…。大丈夫なのだろうかこの人。
「どうして黒のゆりかご園に行きたいの…?」
「友達…あ、お姉ちゃんの友達なんだケドね!わたしも友達だと思ってるコの実家で、ちょっと連絡取れないから見てきてってパシラされたんだよ!コナンはどうして行きたいの?孤児のオトモダチでも居るの?」
リートとの会話で、黒のゆりかご園と言うのが養護施設の類らしいと知る。
「えっと…ボクの友達がそこに居るかも知れなくて…。でも黒のゆりかご園って2年前にやめちゃったんだよね?リートお姉さんのお友達は経営者側の人のなの?」
ふーん??とリートは首を傾げる。明らかに意味を良く理解して居ない、というか、そんな事気にしてなかった、という顔をしている…。
喋り方や、その良く分かって居ない表情にコナンは些かこの先に不安を覚え始めた。
NPC リート・神崎
かなり頭足りてない系探索者であり、鉄アレイをマスターキーと言い張り鍵開け物理等を決行する脳味噌筋肉族。
コナンの捜査方針とは相いれない自由奔放系な、擦れた引継ぎ探索者である。
職業ステータス技能はナイショ。
ただお察しの通り、INTとEDUが残念。