お前はだれだ
正体を現せこの化け物め。
法王のその言葉を受けて僕は言い返す。
「僕は人間だ。」
異世界特典で怪物に姿を変えようと田中太郎のここ ろはいつでも人間のものだ。
法王は僕の言葉を受けて片方のまゆをつり上げながら
「はぁ?」とこえをだした。
「お前が人間?」
僕は頷く。
「お前も人間?」
勇一は頷く。
「そうか。」
「じゃああれはなんだ?」
そうして法王の指差した方向には僕と勇一がいる。あれは鏡だろう。
「そうだ、あれは真実を映す鏡だ。」
ようく見ておけ、法王の真意がわからない。鏡を見て何になると言うのだろうか。
「鏡みてなんだっていうんだろうなぁ?」と勇一がぼやく
僕も同じ気持ちだ。
鏡を、じっと見つめる。すると鏡の中の僕たちの姿がヌメヌメとした光沢のある触手に変わっていく。
「うおおおおお!?」
思わず野太い声をあげる勇一と僕。
「これがお前たちの真実だ。」
いや、真実と言われても、なんだ、その困ります。
「なに?」
こんなの見せられても手が込んでいる細工ですねとしか思えないんです。
「なるほど、じゃああれは誰だ?」
いつの間にか法王の拘束を解いてしまったらしい法王の指差した方向に目を向けると田中太郎と佐藤勇一がいる。
「太郎?」
勇一もいる。
「あの方達こそはこの世界を救うために異なる世界から来た勇者、その名を田中太郎殿、佐藤勇一殿である。」
待てよそれじゃここにいる僕らは何なんだ。
「決まっている。」
「お前たちこそこの世界の侵略を企む悪神の手先に他ならぬ。」
田中太郎が口を開く
「覚悟しろ怪物め」
佐藤勇一が強い意思を感じさせる表情で告げる。
「俺たちが元の世界に戻るために」
死んでくれ。
僕は自分の手に視線を向ける。あの鏡は間違いで僕は田中太郎で間違いはないのだ、自分の目にはいつもと同じ自分の手のひらがあるだけーー
自分の手に視線を向ける。そこにあったのは怪物の触手だった。
うそだうそだ信じない僕は田中太郎だ××町で産まれた三人家族で14歳の人間だ決して触手の化け物なんかじゃない。
自分の記憶を繰り返し反芻する、どれも家族と、友人と田中太郎が笑い合っている。
まて、どうして僕の記憶に僕の顔が写っているおかしいだろう。
法王が真剣な表情で触手の怪物に語りかける。
「もう一度聞こうか。お前はだれだ」
耳元で誰かが獣の遠吠えのような音を出している。僕はそれが触手の怪物になった自分が出している音であると自身の喉の痛みで初めて知った。
ぼくのなまえは田中太郎、異世界から元の世界にもどるために神様に会いたいの。
違う。
僕の名前は×××××この素敵な世界を父なる神の愛で満たすため人の神様を殺しに来たのだ。
田中太郎は田中太郎(偽)だったんだよ!!
優しい人でも勇気ある人でもこの結末は変わらない。だからこそ異世界に転移するのは誰でもよかったのだ。重要なのはただ一つ、神の敵を殺すこと。
田中太郎は偽物だった、では彼の異世界での行動は意味がなかったのか?
その答えはきっと彼らにしかわからない。
次回、吠えろ