【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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総合評価1300到達。
次に目指すは1500到達ですね(白目)




トゥルーエンド/白鳥歌野

 

 

 

ガタゴトと砂利道を走る軽トラが、視界に田畑の広がる道を走っていた。

 

鋪装されていない土の道路には軽トラ以外に一台の車もなく、そのトラックには、太陽光を電力に変えるソーラーパネルがくっついている。

 

パネルは荷台の複数あるバッテリーに繋がっていて、さらにそれがトラックの奥へと伸びている。 バッテリーの横には、棚が備え付けられていた。

 

「よく動くな、このオンボロ軽トラ。」

「そうねぇ……道端に転がってたのを再利用して、パーツ継ぎ接ぎして、大社の人に頼んで太陽光で動かせるように改造したのよ。」

「昔そんな感じの番組やってたな。」

「農家がアイドルやってる奴だっけ?」

「…………いや、逆じゃね?」

 

 

助手席で窓を開け肘を突いてボーッと外を眺めていた紅葉は、楽しそうにトラックのハンドルを握る歌野と、そんな会話を交わしながら香川から岡山の方面へと向かっていた。

 

新西暦6年。 紅葉と歌野が20歳のとある日、開拓が進みつつある四国の外に住居を設けそこで暮らすという計画が進んだ際、歌野が定期的に自家製の野菜を届けにいくという提案をしたのが事の発端であった。

 

 

それから12年が経過し二人が32歳になったある日、歌野が配達の日に紅葉を誘った事から冒頭に繋がる。 ――――あっ。 と、思い出したように声を上げた歌野が不意に紅葉に問いかけた。

 

「そういえば貴方って、最近ふら~っとどこかに放浪すること少なくなったわね。」

「娘にぶちギレられた。」

「あら…………。」

 

 

紅葉の左手に付けられた指輪が、真昼の太陽を反射した。 歌野は頭を振って、ハンドルを切り道を曲がる。

 

「『良い歳なんだから若葉さんを使ってあっちこっちに放浪するのはやめてください』って言われちゃってさあ…………四国に居てもやること無いから暇で暇でしょーがないのよ俺。」

「自業自得じゃない…………いやぁ貴方じゃなくてあの人の方に似てくれて助かってるわね、貴方の血を濃く継いでたら大変だもの。」

 

 

酷いな――――――と思ったが、自分の血を色濃く継いだ昔の娘がしょっちゅう面倒事に巻き込まれていた事を思い出す。 今の娘にもそんな事があったりしたら、堪ったものではない。

 

紅葉は目的地が近付いてきたのを確認して、開けていたドアの窓を上げた。

 

「着いたわよ。」

「ああ……大分復興が進んだな。」

 

 

岡山の一角。 かつて星屑に襲われ、滅ぼされた廃村を利用した村に訪れた二人は、四国外の生活の実験を手伝う人たちを見かける。

 

村人達もまた、見慣れたトラックを見付けてそれぞれが駆け寄ってきた。

 

トラックから降りてドアを閉めた歌野に不意に一人の子供が飛び付いた。 遅れてもう一人、また一人と歌野に引っ付き離れない。

 

「野菜ヤクザだー!」

「ヤクザのねーちゃん!」

「ヤクザーーー!!」

 

「ぐおお……っ」

「ヤクザ呼ばわりされてるのかお前。」

 

 

そのまま三人に押し潰されるように倒された歌野を見て、さしもの紅葉も見てはいけないモノを見たような顔をする。

 

直ぐ様現れた親が子供をひっぺがし、頭を何度も振って謝罪する光景は歌野にとってはもう見慣れている。 なにせこれで7回目だ。

 

「……で、なんでヤクザなの。」

「せめて『野菜』を付けなさい。 どう考えても、理由なんて()()しかないでしょう?」

「……ああ、()()か。」

 

トントンと自分の右頬を指で叩く歌野。そこには見るも無惨な火傷の痕が痛々しく残っていた。

 

天の神による回避不可能の祟りにより、足繁く通っていた『かめや』の爆発事故に巻き込まれた事が理由である。 咄嗟に園子を庇った結果、歌野にそれこそ呪いのように付きまとっていた。

 

 

シンプルな質問である。

 

普段から快活で朗らかな美人だが、その顔には浅黒く焦げた色がこびりついているのだ。 相手が歌野のようなポジティブの擬人化でもなかったら、一生を通して同情の視線を浴びることとなるのは確実。

 

 

もしもこんな火傷を負ったのが園子だったりしたら。 そう考えた歌野は、園子からの謝罪も勇者部の哀れみも跳ね返してこうして生きている。

 

ただ、強い。

 

 

「そりゃ、勇者に選ばれるわな。」

「なに?」

「なんでもねぇ。」

 

 

誤魔化すように、紅葉は野菜を入れたカゴを棚から出して、イチゴのように甘いトマトにかじりついた。

 

「あ、それ150円。」

「……金取るのかよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道のトラックの中で、二人は無言だった。

 

度々デコボコの道を走りながら上下に揺れるトラックの天井に紅葉が頭をぶつける以外で、特にアクシデントはない。

 

 

背もたれに体を預けて深くため息をついた紅葉が、ふと口を開く。

 

「お前が野菜の配達をするって決めたの、水都の夢を継いだつもりだからだろ。」

「……流石に分かる?」

 

 

まあな。 と言い、紅葉は続ける。

 

「神樹の力が歌野というアンテナと、農具という神聖な道具を通して土壌に染み込んだ結果、お前の野菜の種はどんな土地でも問題なく育つとんでもない野菜に変異した。」

 

「あれにはビビったわ。」

 

「そして四国中および四国外の破壊されて放置されている土壌に埋めても育つことが分かって、今も尚四国外での栽培は続いている。 つまり、ある種お前の農業王になるという夢は叶った訳だ。」

 

「そうねぇ。」

 

 

日本中で歌野の野菜が育つ。

 

その結果で夢が叶ったのだと判断した歌野は、要するに次に何をしようかで悩んでいた。

 

故に、水都の夢を借りたのだ。

 

「今はまだ四国から出てすぐの所でしか暮らせないけど、いつかは日本中を人の住める場所にする。 なら、私も日本中を走り回らないとね?」

 

「はっ、日本中の復興が住むまで何百年掛かるかよ。」

「それを見届ける為に貴方が居るんじゃないの。」

「……まあ、お前が生きてるうちに、長野くらいまでは行けるようにしないとな。」

 

 

スマホからガラケーに戻した紅葉は、待受の写真を眺める。 画面には勇者部にいた頃に撮った勇者部メンバーがぎゅうぎゅう詰めに収まって撮った、暑苦しい写真が写っていた。

 

「いつか、貴方は私たちを忘れる時が来るのね。」

「お前らみたいなキャラが濃い連中をどうやって忘れるんだよ。 ヤクザ扱いされてるんだし、いっそのことコートに帽子にサングラスでも付けてみるか?」

「嫌よ、農業は続けるんだからそんな格好したらすぐ泥だらけで使い物にならなくなるじゃないの。」

 

 

筋金入りの思考回路に、紅葉はただ呆れるしかできない。 ああでも……と続けた歌野が、ハンドルの革を撫でて言った。

 

「この子に名前を付けるくらいはした方が良いかしら。」

「良いんじゃない。」

 

 

ぶっきらぼうに答えた紅葉に対して、少し考えてから、思い付いた単語を唱えた。

 

「ソーラーカー……みときち?」

「多方面から訴えられそうだけど、あえてそれがいい。 今度ドアに名前ペイントするか。」

 

「そうね、みーちゃんなら笑って許してくれるだろうし!」

「いやあどうかなぁ。」

 

 

 

二人は知らない、堂々としたパクリに自分の名前を使われている事に本人が驚いていることを。

 

その横で同居人が死ぬほど笑い転げて倒れている事を。

 

 

夕陽に照らされながら、トラックの中で、二人は何気ない思出話に花を咲かせている。

 

それはきっと、西暦で死に、神世紀を生きて、新西暦を歩んでいる――――奇怪な機会を与えられた、二人だけの特権なのだろう。

 

 

 







831893のねーちゃん
・ヤクザ呼ばわりの原因は主に年取って更に圧力と貫禄の出た首から右頬への火傷痕。 あのツラでコートに帽子にサングラスとかただのマフィアやんけ。
みーちゃんの夢を継ぎつつ農業も続ける二足のわらじを平気で実践するやべーやつ。
この世界においての歌野は農家がアイドルやってるあの番組がきっかけで農業王目指してるので、ソーラーカーみときちはパクリじゃないですリスペクトです。


新西暦の娘ちゃん
・紅葉の娘とは思えないほどのしっかり者。 くたばり損ないが日本各地をタクシーを使って放浪している理由は知らされているが、それでも限度と言うものがあるので勘弁して欲しい。
紅葉が20の時の子なのでもう中学生だけど思春期はまだ。 恐れるがいい、『お父さんの服と一緒に洗濯しないで』の破壊力を。

昔の娘
・頭ぱっぱらぱーのキチガイシスターにチェーンソーで左肩をがりがりされたり怪物に指を切り落とされた事がある紅葉が本気で同情した可哀想な方。 詳しくは神話事件編を読んで(ダイマ)。


みときち
・ソーラーカーみときちってなに!?

高嶋神
・(笑いすぎて床を転げ回ってる。)




次の更新はクリスマスです。
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