R-18版の更新が出来てなくて本当に申し訳ない(無能博士)
千景と紅葉が高知から戻ってきて数日。
日用品の買い足しと気晴らしを兼ねて、六人は一緒に街へと繰り出したのだ。
当然着いていかなくてはならない紅葉は、女の買い物がやたらと長いことを身をもって体験している現状にウンザリしながら、後ろから六人を見守っていた。
「…………めんどくさ。」
「えー、良いじゃん。 楽しいよ?」
「お前はそうだろうな。」
スポーツキャップで申し訳程度の変装をし、制服ではなく私服に身を包む友奈が振り返り言う。 後ろに流した長い髪を一纏めにして垂らしている千景を横目で見ると、紅葉に聞いた。
「ぐんちゃん何かあったの?」
「――――さあ、なんでそう思った。」
一瞬、田舎の夜道の暗闇に転がる3つの肉塊を思い出す。 しかし表情には出さず、自分の側に近づいてきて歩調を合わせる友奈に聞き返した。
「この間ニンジャ……じゃなくて、えーっと……七人なんとかを使ったのもあって、凄く気合が入ってるから故郷で何かあったのかなって思ったんだけど。」
「(忍者ってなんだよ。)」
と思いつつも、紅葉には心当たりがある。 村人からの怯え、家族からの手のひら返し、勇者であるからこそ評価されるのだという事実。
『リーダーだから』と無条件で評価され世間から目を向けられる若葉に、対抗心でも燃やしているのだろう。
「色々あったのさ、家族間でしかわからないことがな。 俺やお前にはわからない事だ。」
「…………ふーん。」
口を尖らせて、面白くなさそうに呟くと、友奈は腰に袋で包み紐で吊るした己の神器・天ノ逆手をつつきながら歩く。 大鎌である大葉刈は勿論のこと、当然だが連射式に改造されている杏の
今持ち出せているのは、友奈の天ノ逆手・若葉の生大刀・球子の
それぞれを袋や竹刀袋、ショルダーバッグに納めた3人と紅葉だけが武器を持ち、それとなく武器を持たないひなた達を囲むようにしていた。
「…………それで、球子のキャンピング道具と杏の古本屋巡りが終わったわけだが、他に行くところはあるのか?」
「私は特に無いが……ひなたは?」
「私も無いですよ、若葉ちゃん。 友奈さんと千景さんはどうです?」
話題を振られた友奈と千景。 友奈が首を横に振って、千景が少し考えてから断る。
「……いえ、私は別に。」
「お前この間新作ゲームのCMじっと見てただろ、店もすぐそこだし行けば良いじゃないか。」
「な、貴方見てたの……!?」
「食堂のテレビだったんだから不可抗力だろ。」
本来であればとっくに発売されていた筈のゲームだったが、バーテックスのせいで販売が延期になっていたのだ。 そんなゲームがようやく発売したとのことで、千景が食い気味にテレビを見ていたのを紅葉は知っている。
「じゃあ俺と千景で店に向かって……残りは近くで待機でいいか。」
「ぐんちゃんが行くなら私も行こうかな~。」
「私も……ちょっと興味があります。」
果たして四人で向かう事となり、残りの三人はゲーム店から少し離れた広場のベンチにて待つことになった。
「万が一変装がバレたりしたら間違いなく囲まれる。 武器を持つ二人でひなたを守れよ、それと俺にワンコールだけ電話しろ。 球子はその身を賭けてひなたの盾になれ、それは最優先だ。」
「タマへの要求だけ厳しすぎないか?」
有無を言わさず、それだけ言い残して千景達と店に向かった紅葉。 その背を見送ってから、ぽつりと球子が呟いた。
「……あいつひなたの事になると急にベラベラ喋り出すよな。」
「しっ、無意識なんだ。 許してやれ。」
「私がなんです?」
「い、いやっ……なんでもないぞ?」
「ひなたはひなたで、ちょい鈍感だよなぁ。」
首を傾げるひなたに、若葉は慌てて言葉を取り繕い、球子はただただ呆れていた。
◆
様々なジャンル、ハードのゲームのPVが騒音を奏でる店内を歩く四人。 早速この手の音に慣れていない友奈とそもそもインドア派の杏は、グロッキーな様子で目を回していた。
「うっ……うるさすぎて耳が……。」
「お二人は、良く平気で、居られますね……。」
「こう言うのは慣れよ。」
「まあ……慣れだな。」
ケロっとしている二人とグロッキーの二人。 まさかあの勇者様がゲーム店に訪れているなんて考えてもいないのか、店員が横目で見てくるも帽子や伊達眼鏡、結んで変えている髪型が相まって誰も友奈達だと気付かない。
「それで、ぐんちゃんは何を買うの?」
「新発売のゲームは全部よ、高嶋さんも遊べそうなものはあるだろうし、その…………良かったら、どう?」
千景にとっては賭けにも等しい提案だが、友奈は景気良く了承する。 しかしその後に渋い顔をして、千景の後ろの棚にあるパッケージを見た。
「おー……あーでも、私ゲームって紅葉くんが中古で買ってくれたゲームボーイしか知らないんだけど、ぐんちゃんって普段なに遊んでるの。」
「それは古すぎ…………大丈夫かしら、PS4だとかは難しすぎるかもしれないし……。」
ウンウンと唸りながら友奈に適当となるゲームハードを選ぶ千景から離れて二人だけにしてやった紅葉は、杏の目当てである恋愛ゲームコーナーに訪れていた。 杏もまた、愛読書のゲーム版を探しながら目を輝かせる。
「(オタクって大概こんな感じだな。)」
あれやこれやとパッケージを手に取っては、興奮冷めやらぬまま戻すのを繰り返す杏。
紅葉が並べられた複数のパッケージからなんとなく手に取った一つは、杏の見ていた女性向けの男側が
その内のヒロインの一人、内気な様子を思わせる絵柄の少女を見て――――――ふと、紅葉は故郷の幼馴染を思い出す。
「…………水都。」
ふんわりとしたショートの茶髪。 眠そうな瞳。 内気な態度。 夜の風が窓を叩く音を怖がり、小さいときは何度か同じ布団で眠ったこともあった。
だがもう会えない。 諏訪からの連絡が途絶え、若葉たちが戦っているということは――――。
「紅葉さん?」
「――――。」
耳鳴りのような音が脳を支配する程に集中していた紅葉は、真横から聞こえた杏の声で現実に意識を引き戻される。
「……大丈夫ですか?」
「……なんでもない、それより欲しいゲームは見つけたのか。」
「ああ……はい、これです。」
そう言って見せてきたパッケージはやや古いハードのソフトだった。 値段を見て、懐から財布を取り出して紅葉はパッケージを取り上げた。
「本買ってて資金はもう無いだろ、千景の分と纏めて買ってやる。」
「えっ……そんな、悪いですよ。」
「構わん、暇潰しの本を借りるお返しだ。」
必要以上の勘繰りを避けるためか、そそくさと千景の元に向かっていった紅葉だが――――――杏は確かに見た。
「(あの顔…………あの目は……初めて会ったときの顔に戻ったみたいだった……。)」
生きることを諦めたような、死ぬことに躊躇いが無いような。 それこそ、生きているのではなく
底知れぬ不安感と、どうにも拭いきれない嫌な予感に、杏は無意識に提げていた鞄の紐を握っていた。
◆
「おせーなぁあいつら。」
「買い物とは、そんなものですよ。」
「千景や杏は兎も角、友奈と紅葉はゲームなんてするのか? イメージが湧かないな。」
ベンチに腰掛けたひなたと若葉に、暇そうに近くをうろうろと徘徊する球子。
買い物の戦利品である袋を傍らに置き、目立つ金色の髪の毛を纏めて収納した帽子を気にする若葉が、ふとひなたに聞いてくる。
「そう言えば、千景が一時帰宅して帰ってから紅葉もどこか雰囲気が変わった気がするのだが……なにか知らないか。」
「――――ごめんなさい、私には分かりません。」
「…………そうか。」
含みのある微笑に、若葉は踏み入れない。 あからさまに何かを隠しているが、ひなたがこう言う顔をした時に質問をしたところで、のらりくらりとかわされるだけに終わるからだ。
そしてひなたが知っているのは、千景と共に帰って来た紅葉の
そして――――隠しきれない僅かな鉄錆びの臭い。
「(紅葉さん、貴方は…………。)」
俯くひなたを気にして声をかけようとした若葉だったが、間近のビルに発生した突風―――いわゆるビル風が若葉の帽子を巻き上げて吹き飛ばした。 風に乗って舞い上がった金の髪が扇状に広がり、重力に従って下へと落ちる。
「っ……しまった、帽子が……!」
慌てた声色の若葉に、市民の何人かが視線を向ける。 そうして、若葉達はベンチを壁にしながらもあっさりと囲まれてしまった。
「これは不味いな……ひなた、紅葉に言われた通りにしておいてくれ、少し離れてもらうように説明する間は球子がひなたの近くに居て欲しい。」
「はい、分かりました。」
「おう。 任せタマえ。」
若葉が一歩前に出たことで、民衆が一歩下がる。 念のために下がるようにと説明する裏で、ひなたは紅葉にワンコールだけ電話を繋げて切った。
流石のリーダーシップか、若葉の言葉を素直に聞き入れた民衆の行動は、遠巻きに撮影なんかをする程度に収まった。
やがてはカメラマンなんかが撮影に来るかもしれないが、それより早くに帰れば良い。 後は紅葉達が来るのを待つだけ。
――――それだけであれば、問題など発生しないだろう。 ホッとため息をついた若葉は、不意に視界の端に金属の反射する光を見付ける。
「そこの男、止まれ。」
するりと自然な動きで背中の竹刀袋を下ろし、白鞘の太刀――――生大刀を取り出して左手に持つと、威圧するように敵意を発した。
だがニット帽を深く被り口許をマスクで隠す男は、その手に刃渡りの短いナイフを持って突き進んでくる。 声が届いていないどころか、若葉の声に反応して猪のように突撃してきた。
モーセが海を割ったように人の波が左右に裂け、男の進路を妨害する者は居なくなる。
「っ…………止まれ!」
人に刃を向けるわけにはいかない。 咄嗟に鞘を反転させて峰を向けるようにした若葉は、鯉口を切って右手を柄に置いた。 しかし、峰打ちだろうと、当て方が悪ければ打撲では済まない。
ざわめく民衆。 ナイフを持った男。 勇者としての立場。 後ろには守らないといけない者も居る。 思考が加速し、最適解を求めた若葉は、故に反射的に最もこの場における『答え』を叫ぶ。
「――――紅葉っ!!」
「ああ、それでいい。」
男の背後、マンションの影から、人型の影が伸びてくる。 自分を覆う影に疑問を覚えた男が振り返りその正体を探るよりも早く、ブーツで容赦なく背中を踏みつけるように押し倒された。
ぐしゃっと何かが砕ける音がした男の背中を足場に着地したのは、若葉の求めた存在である先人紅葉だった。 踏み潰されても尚立ち上がろうとする男の後頭部を踵で踏みつけ、顔面を地面に押し付けるようにストンプする。
「寝てろ。」
「紅葉、お前ここまでどうやって……?」
若葉の視界には野次馬と勇者を見に来た市民でごった返し、歩道は愚か道路すら埋まっている。 人混みを避けるには人が多すぎるのだ。
「あー……あそこ。」
「…………は?」
紅葉は当然かのように、背後のマンションの一室を指差した。 その一室の窓は大きなモノでぶち抜いたように損壊している。
「店から出たら人が多くて邪魔でな、マンションを突っ切ってきた。」
「ハルクかおめーは。」
大人用のショルダーバッグから旋刃盤こと神屋楯比売を引っ張り出しながらそう言う球子と、その横で不安気に顛末を見守るひなた。 紅葉は懐からスマホを取り出して若葉に投げ渡し、一際強く男の頭を蹴りながら言った。
「三好に連絡しろ、『緊急事態』と言えば通じる筈だ。 俺は辺りを警戒するから、お前はひなた達と一緒に――――――。」
ベンチの近くにいた二人に目線を向けた紅葉は、言葉を失いつつ即座に駆け出す。状況を理解していない野次馬を掻き分けて、別の男が球子とひなたの元に向かっていたからだ。
「ぼさっとするな球子、左だ!」
「んぇ? ――――うぉおおっ!?」
球子が左を向き、男を視界に納める。 男の手に握られた軍用マチェットが振りかぶられ、上段から振り下ろされた。
盾を構えた球子の腕に、重く鋭い衝撃が走る。
「どけ。」
「ぬわぁぁぁぁ…………!」
二度目の振り下ろしの前に割り込み、紅葉が球子を後ろに放る。 直後、紅葉の水平に構えた左腕にマチェットが叩き付けられた。
ガギ、ギッと金属音が鳴り、腕を保護する籠手との間に火花が生じた。
左腕の仕込み刃を出そうとした紅葉だったが、耳障りな音を奏でて半端に飛び出すだけで終わる。 千景の実家と今の防御を合わせてパーツが破損でもしたのか、カウンターをするにも次の攻撃を防いでからになるだろう。
「っ――――面倒な……。」
癇癪を起こした子供のようにがむしゃらに振り下ろされるマチェットを籠手でどうにか防ぐ紅葉。 左腕に衝撃が蓄積して、痛みよりも痺れが目立ち出す。
「(一……二……ここ。)」
数回目の振り下ろしに合わせた動きでマチェットを握る手元を押さえる。
刃が額から数センチ手前で止まり、手首を捻りつつ手元から弾くようにマチェットを地面に叩き落とした。
そのまま男の右手を左手でねじり腕を動かせなくしてから、紅葉は欠片の容赦も無く右手で顎をひたすらに殴り続ける。
脳を揺らして意識を奪うためにガンガンと握り拳で顎を横に殴った末に、脇腹を蹴り飛ばす。 勇者の命を狙うものが現れたという事実が、ようやく野次馬達の危機感を煽った。
ごった返していた市民達は、こぞってその場から離れようと来た道を引き返すように走り出した。 落ちているマチェットを茂みに投げ捨てた紅葉は、放り投げた球子を介抱するひなたと警戒している若葉に駆け寄る。
「無事だな。」
「ああ、助かった。 ……ところで友奈達はどうした?」
「店に残ってもらっている。」
「そうか。」
ひとまずは安全か、と呟き、若葉は生大刀を鞘に納め直した。
「一旦離れよう、まだ誰かが襲ってきても、この近くの公園なら道路のど真ん中よりは迎撃しやすい。」
「そうするか。 おい、立て球子。」
「ぐぉおお……乱暴すぎんだろお前……!」
知るか、と吐き捨て、紅葉は辺りを見回す。 二人だけとは限らないし、仮に紅葉が勇者を狙うなら―――――三人目を用意する。
「球子を前に、その後ろをお前とひなた。 俺が殿を勤めてここから離脱するぞ。」
「わかった。 ひなた……大丈夫か?」
「…………え、えぇ、大丈夫ですよ。」
見るからに顔色を青くしているひなた。 当然だろう、殺意を向けられる可能性があることを理解していても、実際に向けられるまではその恐ろしさに気付けない。
紅葉に蹴り倒され殴り脳を揺すられた男二人は、暫く意識が戻ることはないだろう。 尤も、戻らないように紅葉は徹底的に頭を狙ったのだが。
ひなたと球子に合わせて走る二人は、辺りを警戒しながら走っていた。 だからこそ一番最初に紅葉が危惧していた三人目に、目敏く、且つ偶然にも若葉が気付いてしまった。
そして紅葉は、若葉が路地裏へと視線を向けたことで全てを察して、ひなたと若葉の側面に立ち路地裏と二人の間に立ち塞がる。
――――瞬間、花火よりも鋭い爆音が響く。
「――――がっ」
顔を守るために添えた右腕に弾丸がめりこみ、大きく弾かれる。 続けて四回爆発音が響き、隙だらけの紅葉の胸と腹に、四つの穴が空いた。
五回の発砲音に、三人の動きが止まる。 逃げようとした四人に合わせて飛び出す――――安堵した瞬間という最も隙が生まれる瞬間を狙われ、紅葉は仰向けに背中から地面に倒れた。
「な、あ……!?」
「紅葉!!」
「紅葉さん!?」
血走った目を向けて、五発撃ち終えた警察の拳銃のトリガーを尚もカチカチと引き続ける男を前に、若葉と球子が紅葉の上体を後ろから起こして支えるひなたの盾になる。
「紅葉さん!? 紅葉さん! しっかり! そんな……撃たれ…………えっ……?」
瞳に涙が滲みぼやけた視界のまま、ひなたは傷口を押さえようとしたのに、本来なら流れている筈だろう液体の感触が無かった。
そして
「――――どけ、馬鹿共」
寝起きのようにしれっと起き上がり、紅葉は若葉と球子を左右にどかすと、腰のホルスターからH&KP30を引き抜いて発砲する。
一発が男の拳銃を弾き飛ばし、二発目と三発目が胸に穴を空け、四発目が額に穴を空けた。 お返しかのような動きで撃ち終えた紅葉は、ホルスターに銃を戻して座り直す。
「…………お、お前……。」
「今、死んだんじゃ」
「勝手に殺すな。 ああ、くそ、息が詰まる。」
ワイシャツのボタンを千切るように胸元を開くと、そこにはめり込んで潰れた四発の弾丸が黒い生地に止められていた。
防刃ベストと防弾チョッキの重ね着が、拳銃の弾丸を受け止めていたのだ。
「ひなた、無事か?」
「っ……。」
紅葉はひなたの怪我を気にして手を伸ばすが――――ひなたは怯えた様子で後退りする。
その視線は、腰の拳銃と防弾チョッキが止めた潰れた弾丸に向いていた。 些か、少しばかり、少女には受け止めきれない状況が続いている。
ひなたに恐怖の対象としての揺らいだ瞳を向けられている紅葉は、伸ばした手を強く握り、深くため息をついて言った。
「
何故ゆゆゆssで人対人を書いているんだ…………ぜんぜんわからない……私は雰囲気でゆゆゆssを書いている。