【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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話の並びだけで見るとめっちゃ時系列ぐちゃぐちゃですが、杏誕生日回→紅葉狼化番外→で、ここです。 うーんややこしい。

尚この作品は大量の後付け、設定改変、キャラ崩壊、ご都合主義で成り立っています。
ご了承下さい。(事後報告)




祝福 上里ひなたは欲張りである

 

 

 

鈍い腰の痛みと鳥の囀りがアラームの代わりとなり、目が覚めた。 カーテンの隙間から朝日が射し込み、寝ていた体勢でまぶたを開けた俺の右半身が重い。

 

幸福感すらあるダルさを我慢して腕に乗った重圧の状態を確かめると、それは頭だった。

紫混じりの黒髪で、赤い瞳を覆ったまぶたは眠っている証拠。

 

 

布団をめくると、俺のベッドの中に、俺に寄り添うようにひなたが眠っていた。

 

もはや下着として機能していない程に着崩れたベビードールと、その艶めかしくも神秘性すら感じる色白の肌と豊満な胸を隠す為に布団をかけ直す。

 

 

「んん……も…じ、さ……。」

「う゛。」

 

寝惚けたまま、ひなたは俺の首筋に唇を当てて肌を吸ってくる。 見間違える人が居ない程度には、完全に事後だろう。

 

 

俺とひなたは昨夜、夜中までただお互いの情欲をぶつけ合った。 穴という穴に欲望を流し込んだ記憶が、妙に鮮明に残っている。

 

獣のように貪り合い、やがて疲れ果て、最後には着替える暇も無く抱き合って眠りに就いた二人の関係をなんと呼ぶのだろうか。

 

我慢の限界から相手に襲い掛かり、長年蓄積し続けた欲をぶつけた奴と、その被害者を、まさか『恋人同士』等とは呼ぶまい。

 

挑発されて理性を破壊されたとはいえ、してしまった以上言い訳は無用。

 

どうするべきか、とは思うがわりと普通に犯罪だ。 この世界が我々にとってそこそこ都合良く出来ているとはいえ、限度ってもんがある。

 

 

 

ともあれ、今のひなたに起きられたら間違いなく第2ラウンドが始まるため、俺は軽くシャワーを浴びてから着替えて部屋を出た。

 

寄宿舎の談話室に向かうと、そこのソファーにうつ伏せで力なく寝転がっている歌野に出くわした。 なにやってんだこいつ。

 

 

「…………おはよう。」

「ぁぅぁぅぁーぅー。」

 

駄目みたいですね。

 

救急車でも呼ぶべきかと思案していると、歌野はむくりと起き上がりこちらを見てくる。

 

 

「…………あのね。」

「はい。」

「うるさい。」

「はい?」

 

 

目元にクマを作って俺とは違う意味でげっそりしている歌野は、それでもイラつきを隠さずふらふらと動いて立ち上がった。

 

そして力無く顔をこっちに傾け額を胸に叩き付けるように直立したまま倒れ込んでくると、その体勢のまま話始める。 『人』と言う字は人と人が支え合って出来ているアレみたいになってるし、どつかれて普通に痛い。

 

「ぐぇえ!」

「夜に帰ってきたと思ったら夜中までギシギシギシギシと盛っちゃってまぁ…………ねえ、なに、私への嫌がらせか何か?」

「……あー、正直すまん、理性失ってて記憶にないんだわ。」

「強めに叩くぞ。 みーちゃんにワンセットしかない耳栓突っ込んでずっと我慢してたのよ? 眠すぎてさっきから野菜畑が見えるわ。」

 

お花畑じゃないんだ。

 

 

俺が前世で誰と結婚したかなんて話してないし人間関係が拗れるから言わなかったが、言わなかったら言わなかったで現在進行形で変な方向に拗れている気がする。

 

「そんなに煩かったのか?」

「外には聞こえてないだろうけど、私と貴方の部屋の壁薄いからね…………お陰で嫌でもギシアンが聞こえてくるのよ。」

「ギシアン言うな。」

 

 

睨むようにして文句を言ってくる歌野。 夜中まで煩かったと言うが、下手したらそれが朝まで続いてたのだからまだ優しい方だぞ。

 

というか朝に先に起きたのが俺じゃなくてひなただったら確実に学校遅刻する事になるからな。

 

 

寝起きのひなたは当然のように朝の生理現象で元気な俺のモノを鷲掴みにしてこう言うのだ、『続きをしましょうか、紅葉さん』と。

 

そして大赦への出勤はほぼ毎日遅刻をするのだった。 ひなたより早く起きろよって話なんですけどね、昔の俺朝に弱かったのよ。

 

 

あと左腕使えないから寝起きだと全く抵抗できない。 結果、付いたアダ名はピーチ姫。

 

「……今何時だ。」

「あー、5時半。」

「そう…………あ。」

 

スマホで時間を確かめるついでに、日時に目が行く。 そう言えば、10月の4日がひなたの誕生日だったな。 違いますー、忘れてたんじゃなくて昨日のインパクトを引き摺ってるだけですー。

 

 

プレゼントどうしよっかなー、とか考えていたら、ふと歌野の顔が視界に入って思い出した。

 

「端にある俺達の部屋の真逆に水都の部屋があるんだから、そっちに避難して寝たら良かったんじゃないの。」

「………………張り倒すぞ。」

 

ああん、理不尽。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業も進んで昼休憩。

 

教室で弁当を食っていると、控えめに扉をスライドする音がした。 見ればそこにはひなたが立っていて、その手に小さい弁当箱を包んだ風呂敷を持っている。

 

学校に行く準備をしに戻った時はまだ寝ていたから起きないよう静かに用意して部屋を出たのだが、どうやらその後、ちゃんと自室に戻ったのだろう。

 

 

「紅葉さん、お昼、一緒にいいですか?」

 

本人は小声で聞いたつもりなのだろうが、ひなたが教室に入ってきた事で静かになった教室内の生徒共にはハッキリと聞こえてしまっている。

 

途端にざわめきだす昼食中のグループ達が、ひそひそと話始めた。

 

聞こえてしまっている限りでは、やれ先人さんの彼女か、やれあんな娘いたかと好き放題に言っている。 彼女かどうかは俺が聞きたい。

 

 

「…………わざわざこっちまで来た奴に帰れなんて言えるわけ無いだろ、入りな。」

「……ふふ、ありがとうございます。」

 

パタパタと上履きを鳴らして小走りで近寄ってくるひなたを見ていると、なんか犬の尻尾を幻視するよね。 実際に生えてたのは俺だけど、尾てい骨の辺りに、ぶんぶん振られている尻尾が不思議と見えてくる。

 

適当に前の席の椅子を借りて座らせると、ひなたはその小さい弁当箱を開けて広げた。 色とりどりでバランスの取れたおかずに、梅干しが乗せられたシンプルな白米と、まあ普通ですこと。

 

 

「所で昨日の事だが。」

「……まだシ足りませんか?」

「違う。」

 

一瞬妖艶な目付きのままで唇を舐めたが、否定され残念そうに弁当をつつくひなた。 足りませんか?じゃないが。 それはお前だろう、俺から誘った事なんて前世でも数える程しか無いぞ。

 

 

「先にお前に手を出そうとしておいて言うセリフじゃないだろうが、あんな事をして関係に亀裂が入ったりしたらどうするんだ。」

「あら、紅葉さんは、私が嫌い?」

「そうではない。」

 

つくづく面倒な男だな、とは思う。 ハッキリ言うが、俺は銀もひなたも、二人とも好きなんだろう。 ひなたがあんな手に出た理由が分からないほどアホじゃないし。

 

 

「ひなたの気持ちには、答えたい。 でも……あー、そのなぁ。 自分でも笑いそうなくらい甲斐性が無くてな、色々と迷ってるんだよ。」

「…………紅葉さんって、難儀な性格してますよね。」

「そうだな。」

 

肯定しちゃうんですか……と言い苦笑いするひなたは、ふと箸を弁当箱に突っ込むと、だし巻き玉子をつまんで俺の口許に持ってくる。

 

 

「……なに?」

「そんな難しいことを考えてないで、私のだし巻き玉子の味の感想でもどうですか? はい、あーん。」

「はあ……。」

 

悩みの原因に言われると少しばかりイラッと来るが、まあ、いいか。

 

周りにガン見されながら、俺はだし巻き玉子を口に入れた。

 

 

「ん。 悪い、箸噛んじゃった。」

「いえいえ、ありがとうございます。」

「は?」

 

何故かお礼を言われ、俺がだし巻き玉子と一緒に噛んじゃった箸を大事そうに仕舞うと、新たな箸を取り出してしれっと食べ進めるひなた。 俺が噛んだ箸ジップロックに入れたの見たぞ。

 

 

「お前、なんか……変態加減が酷くなったな。」

 

「そんな……ふふ、変態だなんて。 別にあの格好のまま自室に戻るとき、誰かに見られたらどうしようとドキドキしたりなんてそんなわけ無いじゃないですか。」

 

「したのか……。」

 

ひなたは昔から若干アブノーマルな行動をしていたが、今のようにオープンではなかった。 この世界では既に数年経過しているからか、精神の成熟が早まったのかもしれない。

 

確かに大人のこいつはマゾっ気があったし、俺にわざわざ不定期で薬を盛って襲われてたのも、たまには俺から攻められたかったかららしいし。

 

 

――――生前のひなたとは全く違う動きをされては、流石の俺でも気付かざるを得ない。 これ昔のひなたと同じように相手にすると痛い目見るな?

 

……もう見てるか、と、幸せそうに微笑を浮かべて弁当を食べるひなたを見ながらそう考える。 だが不思議と、不快感は無かった。

 

 

 

ああ、そうか。 俺は、このひなたが未来の妻だから好きなんじゃない。 俺はこの世界で見てきた、『このひなた』が、好きなんだ。 それを人は、惚れた弱みと言うのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月4日。

 

ひなたの誕生日会を部室で部員達と開いた紅葉は、若葉と一緒にひなたに近付いた。 『本日の主役』と書かれたタスキを歌野に付けられたひなたが振り返る。

 

「誕生日おめでとう、ひなた。」

「私と紅葉で買ったカメラだ、受け取ってくれ。」

「まあ……ありがとうございます、高かったでしょうに。」

「折半すればあまり掛からないさ。」

 

ラッピングされた箱を手渡すと、開かれた中から女子でも持てるよう軽量化された最新式のカメラが入っていた。

 

折半すれば、と言った若葉の脇腹をつついて、紅葉が続ける。

 

 

「俺とお前で7:3だったろ、なにちょっと盛ってんだよ。」

「…………い、良いだろう、別に。」

 

口を尖らせモゴモゴと言い訳する若葉に、はいはいと聞き流す紅葉。 ひなたはカメラを起動し持っていた新しいSDカードを差し込むと、カメラを構えて言った。

 

 

「では、皆さんと先ず一枚撮りましょう。」

 

 

その一言で集まった勇者と巫女を一纏めにし、タイマーをセットして一番前に立つひなた。 左腕を若葉の、右腕を紅葉の腕にそれぞれ絡め、引き寄せる。

 

二人の顔がひなたに近付くと、二人にしか聞こえないような小声で呟く。

 

 

「――――感謝をしてもしきれません、若葉ちゃん、紅葉さん。」

 

染み入るような言葉。 それがひなたの最大級の感謝の言葉だと、二人は知っていた。

 

 

そしてパシャリ、と。 シャッターが切られる音がした。 後に勇者部のアルバムに追加されるその写真の中の人達は、皆が笑顔だったらしい。

 

 

 

写真のデータを確認しているひなたを、紅葉はボーッとしながら見ていた。 そうしながら、ひなたがあんな――――誘惑するように迫る理由を、考えていた。

 

そうしていると、一つの答えが浮かび上がってきた。

 

 

ひなたは甘えたいのだ。

 

でも、皆の大黒柱で居る時間が長すぎた。 それ故に、例えば逆に若葉に膝枕をねだる等と言った甘え方が分からないのかもしれない。

 

そう考えると、半ば無理やり襲ってくる事にも合点が行く。 あれが、ひなたにとっての…………ひなたなりの甘え方なのだろう。

 

 

だから、本気で嫌がれない。 だってひなたは本気なんだから。

 

 

「(だからって薬盛るのは違うと思う。)」

 

栄養ドリンクのような味のする薬を何度も盛られていた過去を思いだし身震いする紅葉。 今の体は昔と違って毒物に強いから多分効かないだろうと高を括っていた時、ひなたに話し掛けられた。

 

 

「紅葉さん、紅葉さん。」

「あい。」

「私とツーショット、撮ってください。」

「……若葉としたら。」

「……貴方じゃないと嫌です。」

 

無駄に可愛らしく頬を膨らませるひなたに、仕方無いと言いたげな表情で渋々立ち上がる。

 

カメラのタイマーを再度セットし、三脚にカメラを乗せたひなたを見て、目ざとく風が声を上げた。

 

 

「あら、ひなた。 またカメラ撮るの?」

「はい、紅葉さんとです。」

「ふーん、若葉じゃなくていいんだ。」

「紅葉さんじゃないと意味がありませんから。」

 

意味深に言葉を区切ったひなた。 風は首を傾げ、他の部員はその会話になんとなく耳を向ける。

 

 

「…………どういう意味?」

 

風に聞かれると、待ってましたと言わんばかりに、カメラのタイマーが切れて写真が撮られる直前になる瞬間紅葉に抱き着いた。

 

諦めたように、紅葉もまた、ひなたの腰に手を回してより体を密着させる。

 

 

「こう言うことですっ!」

「こう言うことらしいでーす。」

 

 

『―――――はああああああ!!?』

 

間を置いて、風達は叫んだ。 唯一劇を見るように離れて観察していた歌野と釣られて隣に立っていた水都だけが、冷静に二人を見ている。

 

 

「こうなるだろうと思った。」

「そうなの?」

「ソーナノ。」

 

 

そして先程のように、パシャリとシャッターが切られた。 そのカメラの画面には――――――満面の笑みを浮かべるひなたと、呆れたように苦笑いを溢す紅葉が写っている。

 

 

その裏で繰り広げられる、目の前で起こった恋愛事情に興奮する今時の女子である園子ズと杏、また後輩に先を越されたと嘆く風、面白くなさそうに紅葉とひなたを見る暗い瞳の銀といった光景。

 

正に、阿鼻叫喚だった。

 

 

 

「…………どーすんだこれ。」

「落ち着くまで待つ?」

「落ち着くの、何時間掛かるかしら。」

 

 






前半のR-17.9にあるまじき後半のほのぼの回、これは中和されて実質健全ですね間違いない。

ファンブックはまだ買えてないんですが、Twitterに流れてきた情報によればベビードール服の絵があるとかなんとか。 なんだかこう、予言者になった気分ですね(絶対違う)



ひなた様
・手遅れなレベルのM。 紅葉さんになんで薬盛るのって? たまには向こうから攻められたいからに決まってるじゃないですか! あと『お薬』は栄養ドリンクベースなので毒が効かなくても効果あります(無慈悲)
西暦の時からそこそこ気になってはいたけどまだ恋愛感情ではなかった、でも神樹世界の紅葉と関わった結果爆発的に欲しいと言う欲望が膨れ上がってこうなった。

ピーチ姫
・責任取らないといけないけどまだ心の中に銀が居るしでもひなたも好きだしどうしよう。 とか考えてたらあれよあれよとゴールイン、ぎんもみひなルートが解放されました。
中身が元既婚者のジジイなせいで二人纏めて選ぶ選択肢を考えられない。 まあ紅葉が考えられてないだけで裏では着々とハーレムルート(約2人)の外堀埋まってきてるんですけど。


銀ちゃん
・すげー面白くない。 絶対奪ってやる。 『恋敵』と言うよりは『恋のライバル』って感じ。 ぎんもみひなルートは銀の誕生日回なので気長に待ってて。

農筋王
・みーちゃんに揉まれまくってとある一部が大きい。 あっても邪魔なだけなんだけど。 紅葉? あー、まあ、ヤっちゃった責任取るってんなら良いんじゃない?




日本庭園K
・9月半ばの段階で「紅葉と若葉にカメラでも買わせるか……」とか考えてたら公式にやられた。 私が先かゆゆゆいが先か、卵が先か鶏が先か。

そして私はTwitterのTLに某氏の描いたベビードール銀ちゃんが流れてきて11回死んだ。


変態度高いキャラって無駄に戦闘能力も高いじゃないですか、つまりそう言うことです。

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